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真実の……バトルロワイアル 2
254
:
見えざる糸
◆GO82qGZUNE
:2019/10/12(土) 14:43:25 ID:ZJglAnJo0
「……!」
視線を正面に固定したまま、ゆっくりとカードデッキを構える。ミラーに映る自分の姿を見るよりも早く、漆黒の装甲が音もなく瞬着する。
何かが、いる。
姿は見えず声も聞こえない。だが、いる。確実に。
自分の物ではない誰かの視線と意思が周囲の空間を満たし、巨大な生物の体内に閉じ込められたような感覚。鎧で体を覆っているにも関わらず、丸裸で雪原に放り出されたかのように肌に突き刺さる怜悧な殺意。
いや、これは殺意や敵意といった熱のあるものではなく……
昆虫の捕食本能めいた、もっと無機質な脅威にも思えた。
"……義勇"
口にしかけた言葉を寸前で呑みこむ。声を発した瞬間に奴は襲ってくる───そんな確信がある。義勇が白銀色の剣を下段に構える様を視界の端で捉える。空気が重い。あまりに音が無さすぎて、逆に耳鳴りが聞こえてきそうだった。
相手の正体も攻撃方法も分からないこの状況で、もっとも適切な防御手段は「避ける」こと。オルタナティブ・ゼロという強固な鎧こそあるが、水澤悠のような人智を超えた力の持ち主を、雅貴は既に知っている。とにかく相手の能力を見極めないことには「受け止める」ことも「撃ち落とす」こともままならない。まずは攻撃方法を正確に見極める目と、攻撃より早く動く足が必要だ。
どこから来る?
半身に構えた手先が汗に濡れ、心臓が鼓動を増していく。小さく息を吸い込み、吐き出し、圧力の放たれる先に向かって更に一歩、踏み込む。
その瞬間、雅貴は自分の間違いに気付いた。
正しい選択は「避ける」ことではなく「受け止める」ことだった。
───攻撃は全方位360度からやってきた。
咄嗟に後方へ跳躍し、裏拳の形に握った右手を水平に振り抜くことで精一杯だった。
上空、地面、四方の空間───考え得るありとあらゆる場所から突き出た「なにか」が、あらゆる角度から雅貴を襲ったのだ。
振り抜いた拳が正面と右方からの攻撃を撃ち落とし、脱出のためのスペースを生む。半ば倒れ込むような格好で着地すると同時、雅貴の横を滑り込む形で義勇が踏み込んだ。
───水の呼吸 拾壱ノ型 凪
踏み込み一閃。空間を塗り潰す邪気の一切と共に、暴威の悉くが薙ぎ払われる。
裁断され宙を舞う細かな破片。雅貴はそこで、やっと攻撃の正体を認識する。
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