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真実の……バトルロワイアル 2

185夜明孤島男刀競聞書 ◆hqLsjDR84w:2019/09/23(月) 00:15:49 ID:hQmpsITg0
 
 
【2】

 ――きぃん。

 と、そんな音が響いてようやく圭は正気に戻る。
 慌てて四方に視線を飛ばすと、武蔵と煉獄が揃って刀を抜いていた。
 乱れ切った呼吸で混乱を露わにしている善吉は、圭と同じく呑み込まれかけていたのだろう。

「どういうつもりだ、現人鬼」
「ほう、どうした? もう名前で呼んではくれぬのか、武蔵」
「どういうつもりだと訊いている」

 波裸羅の囃し立てるような笑みは、武蔵の剣気を当てられてなお崩れることはない。

「はッ、赦せ。僅かに溢れ出しただけよ」
「人を誑かすか、現人鬼」
「何事にも誑かされぬ生なぞつまらぬと思わぬか、武芸人」

 笑みはより深くなり、剣気はより圧を増していく。
 武芸者同士の果し合いの約束など、早くも消え失せてしまった。
 これより始まるのは、鬼と人の戦い。もはや、波裸羅と武蔵の間に割って入ることは不可能である。

 そう判断したのが永井圭であり、そう判断しなかったのが煉獄杏寿郎であった。

「待ってくれないか、宮本武蔵。訊きたいことがある」
「待たぬ」
「いいや! なんとしても待ってもらおう!
 先ほど話を聞いた限り、こと鬼殺においてはかの宮本武蔵よりも一日の長があるようだからな!」

 懇願の体を取っていただけで、どうやら最初からほとんど指示であったらしい。
 眉を顰める武蔵の元に歩み寄り、煉獄はその肩を叩く。代われと言っているようなものであった。

「…………のちの鬼退治に繋がるか?」
「うむ! おそらくな! 繋がらなかった場合は申し開きができんが!
 俺の知る鬼とまったく異なるということがわかるので、まあそれはそれで意味はある! 意味はあるので許してほしいものだ!」

 武蔵の肉食動物じみた眼光を受けながら、煉獄は視線を逸らすことも動揺することもない。
 目と目を真っ直ぐに合わせたまま、のちに必ず繋がるという断言もせず、その上で代われと言っているのだ。
 あまりにも厚かましい。
 百年ののち、千年ののちに、剣名を残さんとしている宮本武蔵にとって看過できる提案ではない。
 しかしながら――こと鬼相手となれば、武蔵は剣名を残すためには戦っていない。
 ゆえに武蔵は構えを解き、一歩うしろに身を退いた。
 たかが一歩であるが、その一歩があまりにも大きい意味を持つと理解し、煉獄は僅かに頭を下げた。

「して、なにが訊きたいというのだ?」

 波裸羅が浮かべたままの笑みは、武蔵と煉獄のどちらが相手でも構わないということを物語っていた。

「先ほどのあの魅了の術、アレは君の『血鬼術』か?」

 予期せぬ質問であったのだろうか。
 波裸羅から笑みが消え失せ、その眉間にしわが刻まれた。

「あんなもの、術などと呼んでよい代物ではない。
 ただ、鬼の氣が外に漏れ出しただけに過ぎぬ。善吉と圭が勝手に中てられただけよ。
 波裸羅が本気で術を放ったならば、貴様らがいかに鬼斬りに慣れているとて容易に防げるはずがなかろう」
「なるほど。一理ある」


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