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ジョジョ×東方ロワイアル 第八部

799宇宙一巡後の八雲紫:2021/02/13(土) 19:18:30 ID:WSuwR3hw0

 貴方は〝マエリベリー〟なのですか。
 それとも〝八雲紫〟なのですか。

 ジョルノがメリーへとこれまで幾度か浮かべた疑問が、再び思考を上塗りする。無論、彼女は疑いようもなくマエリベリー・ハーンその人である筈で、八雲紫は確かに死亡した筈である。
 だが容姿そのものは八雲紫の肉体を動かしている。この摩訶不思議なからくりについてジョルノは敢えて問い質すことを自重していたが、肉体の『交換現象』については他人事ではない体験が彼自身にも深く根付いていた。

 肉体の交換。
 魂。そして記憶の在り処。


「……ディアボロ」


 湧いて出てきた数あるピースの一つ。モヤモヤとした幾つかの不定形を解明する、僅かばかりの光明。
 それにまつわる重要なヒントを口走ったのは意外にも、後ろを付いて来る鈴仙からだった。

「鈴仙。どうして今、その名前を……?」

 足を止めて振り返るジョルノ。その視線には生徒へと解答を促す教師ばりの期待感と、かつての宿敵を同じくした異邦の友との同調、それへの僅かな意外性が混合した色合いを含んでいる。

「あ、いやーえっと、なんていうか」

 指摘を受けた鈴仙は不意をうたれ、両手を胸の前でばたばたと振った。思わずジョルノの気を引いた言葉は、どうやら深い意図があったわけでもないらしい。

「ディアボロって、娘のトリッシュの肉体を乗っ取って自由に動かしてるんでしょ? それって今のメリーと少し状況が似てるなって、唐突に思ったの」

 ジョルノの宿した期待感はハードルの上でも下でもなく、平均値ど真ん中に突っ込んで露へ消えた。彼女らしいといえば彼女らしい。
 とはいえ鈴仙と自分の中に蓄えた情報量には当然それぞれに差がある。ディアボロの名を出せただけでも、鈴仙としては及第点と言えた。
 そして偶然にしろ何にしろ、このタイミングでディアボロを連想した鈴仙とのシンクロは、きっと無意味ではない。万事には繋がりという因果がある。

「確かに……ディアボロはどういう手段かで、トリッシュの肉体へと乗り移っています。一方でメリーも、過程に大きな違いはあれど紫さんの肉体と『交換』しています。さらりとやってのけている行為のようですが、僕は少し気に掛かります」

 ジョルノにとって渦中の人間としたいのは、メリーその人である。
 そして、その様な離れ業を可能とした八雲紫の秘めた真意である。

「メリー。何故あの人は、人間である貴方の肉体とわざわざ交換したのでしょうか。僕にはどうしても、そこに深い意図が隠されているような気がしてならないのです」

 彼女にとってはやり切れない喪失の直後ゆえ、詮索は時間を置くつもりであった。当事者間では既に理解を得た措置なのかも知れなかったが、ジョルノらはまだこの肉体交換の理由については何一つ知らされていない。

 〝肉体を交換する〟───今回のような現象は実の所、彼にとっても初めての事ではなかった。それこそ自らの『ルーツ』にも無関係とは言えない体験が、ジョルノの好奇心以上の何かを押し出し、メリーへの詮索へと乗り切らせた。
 過去を一つ一つ紐解くかの如く、ジョルノはゆっくりと想起しながらも語る。他人へ軽率に語っていい出来事では決してない。それでも今という地点から一歩歩み出すには、遅かれ早かれ整理すべき山積みの記憶だという意識もあった。


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