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ジョジョ×東方ロワイアル 第八部

798宇宙一巡後の八雲紫:2021/02/13(土) 19:16:32 ID:WSuwR3hw0
 今。三人は地下道から抜け、魔法の森と思しき地域を進んでいる。時刻は夜と言うには早いが、深林特有の鬱蒼とした薄暗さは、まるで闇を結晶に閉じ込めたような光明なき針路だった。
 数歩先の草陰からいつ奇襲を受けてもおかしくないほどの暗路を、メリーを先頭にジョルノ、鈴仙と列ねている。本来なら最も対応力のあるジョルノを陣頭に位置すべきだったが、メリーが率先して船頭役に躍り出たのはジョルノ達も意表を突かれた。

 何か、思う所があるのだろうか。
 ふと漏れた、あまりに脳天気な想察をジョルノは恥じてあしらう。
 思う所だらけに決まっている。一人になりたいとか、顔を見られたくないとか、理由は幾らでも考えつく。状況が状況だけに好きにはさせてあげられないが、背中から眺めた彼女の様子や歩幅には、悲壮感といった類の感情は予想に反して見受けられない。
 奇襲に関しては最後尾の鈴仙が波長レーダーを光らせているので問題はクリアしているが、堂々と光源を作動させながら宵闇を裂き歩くメリーの勇ましさに、さしものジョルノといえど心強さすら感じる。そしてその『心強さ』といった印象は、メリーという一般人の少女には如何にも似つかわしくない評価でもあった。

 程なくしてジョルノは、前方の背に語り掛けた。質問の内容自体は、どうでもよい事柄だったのかも知れない。
 ただ〝彼女〟を知るという工程に、言葉と言葉のやり取りを用いただけの話。

「メリー。少し、訊きづらいのですが」
「何かしら? ジョジョ」
「貴方自身の遺体、と言うべきでしょうか。つまり〝マエリベリー・ハーン〟の遺体はどうするのですか?」

 誰が聞いても奇妙としか言えない内容でしかないが、現実にメリーは自分自身の遺体を紙に入れて持ち歩いている状態。本人としては、言ってはなんだが処遇に困るような所持品ではなかろうか。

「そうねえ。このまま蓮子と一緒のお墓にでも入れちゃおうかしら。蓮子は嫌がりそうだけど」

 冗談交じりにメリーはくすりと微笑む。秘めた感情も読み取れない、妖艶さすら連想させる反応だった。そして何事も無かったかのようにすぐまた背を向け歩を進め出す様も、少女の掴み所の無さをより助長していた。
 サンタクロースを信じる純粋無垢な幼子のような。覗く者の目をとろりと蕩けさせる艶美な魔女のような。相反する属性を宿しながらも、一個に閉じ込め調和を成立させる矛盾。そんな不思議な雰囲気を纏う女性を、ジョルノは知っている。

(……似ている。あの人に)

 メリーの意外ともいえる姿を、ジョルノは八雲紫のそれへと重ねる。不自然なほどに酷似した姿の二人はまるで鏡合わせに映る、生き写しの存在。もっとも、今のメリーはまさにその八雲紫そのものの姿形なのだが。
 彼女は元々、こういう笑い方をする少女なのだろうか。こういう、不謹慎とも取れる反応を返せる少女なのだろうか。
 出会ったばかりのメリーの人となりを、ジョルノはまだ掴みきれていない。それ故に、真実は分からない。

 そうでない、とするなら。

 〝これ〟は誰かの影響で顕在化された、彼女本来とは少し───そして決定的にズレてしまったメリーの姿とでもいうのだろうか。


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