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ジョジョ×東方ロワイアル 第八部
797
:
宇宙一巡後の八雲紫
:2021/02/13(土) 19:12:26 ID:WSuwR3hw0
『ジョルノ・ジョバァーナ』
【夕方】C-4 魔法の森
昨日まで全く元気にしていた人の命が突然に奪われてしまう。そんな事例を、ここ最近は何度も目にすることになっていた。ついぞこの間まではギャングスターに憧れるだけの、そこらの学生と何ら変わらない生活を送っていたというのに。
『生』というのは、一見何気なく享受しているようで、実は想像以上に脆く、儚い。「今日を生き延びた」という事実はきっと、人々が思うより遥かに尊いことなのだろう。普通に生きていたのでは中々気付けないものだ。
イタリアンギャング、ジョルノ・ジョバァーナは弱冠十五の齢にして、この世の些細な真理の一つを理解できていた。
レオーネ・アバッキオ。
ナランチャ・ギルガ。
ブローノ・ブチャラティ。
三人はジョルノにとって大きな存在だ。何者にも代え難い、生涯の仲間だと胸を張って言い切れる。だからこそ熾烈な戦いの中で散っていった彼らの遺体は、ディアボロを討ち倒した後に故郷に届けてあげた。乗っ取った組織や部下など使わず、ジョルノ自ら足を赴かせて。
三人共に家族はいなかった。いたとしても彼らに遺体を届けるような不要な親切を、きっと本人らは望みやしない。『組織』こそが我々の家族(ファミッリァ)であり、元々こういう陽の当たらない生き方でしか希望のなかったアウトローの人間だ。
それでも、それぞれに立派な墓を作ってあげた。組織の一員としてではなく、無二の仲間として。故郷の土へ埋め、限りない敬意を表すため。墓標を作るという行為それ自体にジョルノは大した意味など無い、無駄だとすら感じる価値観の持ち主だったが、一方で形あるものの証として残すことも重要であるとも思っていたし、だからこそ先程はミスタの墓標も簡素ながら作ったのだから。
そして、宇佐見蓮子。八雲紫。
二人の遺体は現在、メリーの持つ『紙』の中に収まっている。正確には〝八雲紫〟の遺体は存在しない。彼女が仮初の肉体として動かしていた〝マエリベリー・ハーン〟の遺体が蓮子の物と同居していた。
言わずもがなメリーは紅魔の戦乱を生き延び、こうしてジョルノらと共にいる。メリーと紫の肉体が交換されたまま片方が死亡した結果、このような複雑怪奇な状況となっているが、死者である八雲紫本来の肉体をメリーが器としている以上、この世の何処にも紫の遺体は存在しない、といった理屈だ。
ややおかしな物言いではあるが、つまりこの場に〝死者の遺体〟は蓮子の物だけだった。自分自身の遺体を目にするという奇妙な体験をメリーが如何程に感じたかは他人の目では計り知れないが、彼女にとって重要なのは親友の遺体の方なのだろう。
「蓮子の遺体は、必ず故郷の土に届けます」
親友の亡骸を見たメリーは、どこか決意を訴える瞳のままにジョルノ達へこう言い放った。勿論ジョルノにその考えを否定するつもりなど一切無いし、手伝ってあげたいと心から思う。現状の余裕の無さを顧みるに、一先ずはこの会場の土に埋めてあげるのはどうかという提言は、心中へ浮かべるだけに留めた。
こんな小手先の技術で捏造されたような、見て呉れだけは立派な殺伐の世界に埋葬したところで意味はない。蓮子の尊厳を想うなら、彼女の生まれ故郷の土でなければ無意味だ、というメリーの無言の念がジョルノを納得させた。
到底異議を挟むことなど出来ない。無駄な気遣いだと否定する行為こそが侮辱以外の何物でもない。それくらいにメリーと蓮子の信頼関係は、他人から見ても窺い知れる結束があった。
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