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ジョジョ×東方ロワイアル 第八部

786一世の夢と名も無き鳥 ◆e9TEVgec3U:2020/11/09(月) 02:17:00 ID:7dG6hTvE0



時間の経過が更にローラーで薄く引き伸ばされて、藤原妹紅の接近速度が更に遅くなったように見受けられる。
ただ明瞭で捷急な意識とは打って変わって、脚を動かして蹴りを回避するには体の動くスピードはあまりにも緩慢で、まるで水が体中を纏わり付いているかのよう。
それは避けるという選択肢を初めから除いた状態でセーブとロードを行ってしまった詰みの状態を青娥自身に簡単に想起させて。
青娥自身の思考速度だけが急上昇して他全てを置き去りにしているのは火を見るより明らかだった。

気付けば眼中のコマ送りの光景とは別に、脳裏に色々な映像が上映され始めているのを青娥はなんとなしに自覚させられている。
最初に現れたのは映像では無く、タキュスピスューキアと読める古典希臘語の文字がただただ画面いっぱいに表示されていただけだったけれども。
その文字はきっとアルバムのタイトルか何かなのだと思えてしまえる程に、それ以降の支離滅裂な映像群は青娥に馴染みが深い懐かしさの塊で。
これが走馬灯なのでしょう、と青娥には即断で理解出来てしまった。他に観客が誰も居ない上映会の、たった一人のお客様になったかのように。
過去の些細な出来事ばかりが映画館のスクリーンばりに大画面で浮かんでは通り過ぎ、その連続が留まることを知らず。



――木の重厚さを感じずにはいられない古風な建築物と、その奥で威光を放つヒト。
昔々あるところにおはしましたは、かの高名な聖徳王。道術の弟子にして天に祝福された才知の持ち主。
周囲にて立つ緑髪や白髪にも見覚えがあるけれども、やはりその中でも彼女はズバ抜けていた。



――暗く澱んだ薄明かりの一本道で、眼前で弱々しく威勢を放つ紫色の少女。
かの妖怪の賢者の最期をその手前から再生しているのだろう、心臓を突き刺す手前から流れてくれるとは実に気が利いている。
彼女もまた、今のこの光景のように走馬灯を見てから逝ったのか。



――石窟の中、小神霊揺蕩う中を一目散に付いてくる紅白の少女。
これは確か幻想郷での一幕だったか。あの時の豊聡耳様の復活から、聖大僧正や山の仙人様といった浅からぬ縁を繋いだのだったか。
博麗の巫女もジョースターの系譜と同じく、今生きているなら決してその手を止めぬ強さを再燃させて立ちはだかるに違いない。



――紅々と整えられた煌びやかな内装の建物の中、こちらを見下ろす全身金色のカリスマ性。
それはきっと一目惚れの初邂逅のシーン。その金の髪も服飾も、後光を一面に浴びたかのような神々しささえ放っていた。
だからこそ、その目指した先の天国という概念も含めて少女のように恋をしたのかもしれない。




――青々とした、なんて事のない空。

透明さが売りの水の色とは違い、他の色に滲んで馴染む事に長けたような一面の群青世界。




その光景が脳内の銀幕に表示されるや否や、青娥の体を包むかのように。
どこかで見た懐かしさのある空色に対し、感傷に浸る猶予さえも許さないと言わんばかりに。

ガクッ、と。体幹全てが崩れる程の衝撃が襲った。


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