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ジョジョ×東方ロワイアル 第八部

773一世の夢と名も無き鳥 ◆e9TEVgec3U:2020/11/09(月) 01:44:26 ID:7dG6hTvE0


刹那、無風の広大な空間に砂を蹴るに近い音が響いた。大きくはないけれども、確かに耳に入る音。
自分と死にかけ一人しか居ない空間なら、当然自身の呼吸音や足音以外は無くて然るべきなのだ。それなのに至近距離で音が鳴っているのだ。
音の主は何なのか。独演の地底世界に来客か。歓迎出来る物は無く、歓迎出来る者は居ない。青娥は瞬間的に身構えた。

が。音の発生源は思ったよりも拍子抜けで。


「抽搐、かしら。ちょっと驚きすぎちゃった」


ジャーキング。うたた寝している時にふとビクッとなるアレである。
意識障害に陥った妹紅の腕の筋肉が不随意に痙攣して砂を掻いていたという、ただそれだけの種明かし。
なんてことのないただの人体に備わった機能だったという事実は安堵と若干の落胆を青娥の瞳に滲ませる。
ディエゴ君が空のDISCを持って来てくれていたならそれはもう大大手柄だったのに、とこの場に居ない人間にケチを付けて、そのまま青娥は妹紅の音を意識の外に捨て置いた。
今最優先で考えるべき事は、目の前でだらんと倒れているこの藤原妹紅の体を運ぶ手段である。


「この先の地霊殿に火車が居るんでしたっけ、死体を運ぶにはうってつけの道具でも置いてないかしら」


もしくは土蜘蛛や鬼が建築道具として使っている手押し車か台車も良いかもね、と舌舐めずり。
ただ、ここに死に損ないの体を置いたままにして一人旧地獄の探索に出るのは、青娥にはなんだか癪な話でもあった。
出払っている最中に誰かがやって来て起こすもしくは殺してしまう可能性、もしくは妹紅が自力で起床してどこかへ行ってしまう可能性。どれらも無い話だとは言えないのだ。
もしこれらを対策するならば、妹紅を引き摺って運んだまま探索という骨の折れる行為をするか、目の届く僅かな範囲のみで探索するしかない。

少なくとも今の妹紅の体は時折痙攣するぐらいで起きる素振りすらも見えないが、用心には越した話でもある。
酩酊しながらも持ち前のボディで酒精を分解し、ものの十数分足らずで快眠を終えた生き証人がまさに青娥自身。
だから、結局この半死人を視界に収めながら運搬用具を探さねばならないという焦燥感が起きるのも致し方無し。
最悪天国に必要な魂に換えは利く、とは言っても時間が経つにつれて次第に減っていく参加者の中からあと二人分。機会損失は余りにも惜しいのだ。
さっくり見付けてさっくり運んでさっくり殺す最短経路を選び取らなければならない。



だから。

それは全く脈絡の無い話で、一瞬一瞬を切り取っても理解が及ばない光景だった。


痙攣が始まってから、青娥は半死人から全く目を逸らしていなかった。己の瞳に常にその変わらぬ姿勢を焼き付けていた。
予兆は何一つとして感じられなかった。人体組成に慣れ親しんだその長年の知識にすら、そんな実例があったなんて事は無い。
妹紅は崩れ落ちた時の体勢のまま、今の今までそこに居たのだと言うのに。


目の前の満身創痍であったハズの少女の体躯が、須臾にも満たぬ間に膨張したかの様な錯覚。
錯覚では無かったのかもしれない。本当にそれは一瞬で、瞼を一回開閉する間に動作は既に終わっていたのだ。



そこには。

昏睡から一瞬で覚醒して立ち上がった藤原妹紅の姿があった。


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