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ジョジョ×東方ロワイアル 第八部

759一世の夢と名も無き鳥 ◆e9TEVgec3U:2020/11/09(月) 01:19:53 ID:7dG6hTvE0


【夕方】C-3 地下水道





日の射さぬ地下の寒さに、重ね掛けされた灯りの乏しさ。
更には会場内の降雪の影響もやはり色濃く、服一枚では活動にも一苦労するであろう冷えた空気が全面に入り込んでいる。
近代要素を少しずつ内包し変わり果てた幻想郷、もといこの会場内でも地下道は一際夜の暗さを強調してくる場所と言っても過言ではない。
常人には暗夜の礫を恐れずにはいられない、そんな暗澹たる回廊にタップダンスを踊るかのような足取りで闊歩する女が一人。
屈託無き純粋な笑顔にその歩調、半袖を意に介さず、しかもボロボロになったその被服。そして赤に塗れ煌々と輝く右腕。
一挙一動が紛れもなく、夜を恐れぬ人外である事の証左である事を悠々と物語っている。


女の名は、霍青娥。
自らの欲に溺れ、陶酔し、殉じる事を善しとする邪性の仙人。
そして、八雲紫をその手で弑した幻想郷に仇なすモノ。

否。彼女自身に幻想郷に敵対した等という自覚は微塵も存在し得ない。
ただ結果的にそうなったというだけの話。邪仙の目線から語ればそれはただの済んだ禍根で、欲を満たす方法で、他に尽くす道標だったに過ぎない。
愉悦を一網打尽にする最短距離を選んだらたまたまあのにっくき賢者サマが死んでしまいました、という一文で調書は終了である。
食欲を満たすという目的の為、懐石料理みたいな味気なさの連続なんかより中華料理の大皿ばかりのフルコースを選んだ、それと同列に語れるだけの事項。
満漢全席を鱈腹、とまでは行かなかったにしろ珠玉の一皿を貪り尽くせば上機嫌になるのも至極当然であろう。


吾不足止、未不知足也。
しかしながら、探究心も好奇心も彼女の生涯では留まる事など有り得ない。
停滞こそが不浄であり、欲を満たそうとしなくなってしまえば精神的な死が明白となる。

それでも尚、この高揚に酔いしれるのは得た物の大きさ故か。


「〜〜♪」


どこに誰が潜んでいるのか分からないにも関わらず、彼女は存在を誇示するかのように自らの音色を奏で続ける。
古き元神の鼻歌は、澄み切った音とは裏腹にどこか高らかで混じり気の無い歪さで遠く遠くの客席へとその存在感を顕にし。
ポツポツと点在する灯りをスポットライトかの様にその全身で浴びながら、この世界は自分の独壇場だと謳うように。
誰か敵が来るかもしれないという懸念も置き去りにしたかの様に光学迷彩すら紙の中、青と白で構成されたお気に入りの服装で舞い踊る。
放たれた音色を耳にしてくれる聴衆なんかどこにも存在しないにも関わらず、邪仙自らの為だけに爛々と響き続けるのだ。


その姿は舞台装置の上に据えられた偶像にどこか似ていて。

まさしく、帳に遮られたアンダーグラウンドの世界に相応しい。


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