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ジョジョ×東方ロワイアル 第八部

747ビターにはなりきれない:2020/11/04(水) 18:16:53 ID:UVCbRvCA0


「───アンタはどうして、誰かを殺すんだい?」


 言い終えて気付く。この疑問は何の脈絡もない、不意で無意味な質問でしかないことに。
 しまった、と後悔した。凡そ彼女の性格には相応しくない、無駄という名の追求。
 はっとした時点では遅かった。ドッピオはそれを背で受け、ゆっくりとこちらを振り返る。その瞳には、さっき神奈子へと見せたような冷たさがあった。
 今、神奈子が最も欲しているかもしれない冷酷さ。もしかして自分は、彼のその瞳に惹かれたから殺す気が失せたのかもしれない。そう思った。

 揺蕩う自分と少年とを見比べて、彼の秘める『原動力』がふと、気になっただけ。
 あるいは、どこかで彼を羨ましく思ったのかもしれない。

 だから、尋ねた。
 我慢できず、尋ねてしまった。
 大した意味もなく。

 冷徹を携えた眼光のままに、少年は唇を開く。


「……それは、何故ボクが優勝を狙うって意味ですか」


 愚問だ、とでも言いたげな視線。神奈子が後悔した理由が、その視線の中にあった。
 悪かった。訊くまでもなかったね、と。
 くだらぬ質問なんて取り下げ、ドッピオには早くここから去って欲しい気持ちが我が身に充満した。
 だが、訊いてしまった。馬鹿げた問いと分かりきっていながら、降って湧いた興趣を抑える気が起きなかった。
 彼の持つ不思議な原動力が、神奈子の〝これから〟にとって少しでもの『糧』になればいい。
 僅かながらの、そんな期待も込められた問い掛けだった。

「あぁ、そうとも。どうしてアンタは、この殺し合いを最後まで生き抜こうとする?」

 だが、ひとたび口走った疑問はもう、自らの意思で留めることは出来なかった。

 「命じられたから」と言って欲しかった。あの二柱の最高神から「生贄同士で争え」と。
 または「死にたくないから」とか、そういう尤もな理由。同情を引ける理由。
 神奈子が求めている答えは、そういう無難で、人として当然で、些些たる理由。

 それで良かった。それで納得できる。
 殺されたくないから、殺す。
 生物学的。原始的。そんな理由で、十分。


「命じられたから、ってのも大きいですがね」


 神奈子の求める答えが、少年の口から形違わず現れた。
 ほんの一瞬、安堵の笑みを覗かせる神奈子。
 そうでなければならない。元より我々は、巻き込まれた側の者なのだから。
 どれだけ人道に反しようと、誰しもが己が身を。または身内を重んじる。神奈子にその行為を否定する権利はない。

 しかし彼の答え……その意味する所は、神奈子の望みからは正反対の位置にあった。


「でも、あのクソ主催共に命令されたからじゃない。ボクに命令を下せる方は、この世で唯一人です。
 『ボス』に命令されたから、殺す。そしてボク自身も、あの方を優勝させる為に誰かを殺す。全部、あの方の為です。その為ならボクは、命だって捧げられる」


 少年の瞳は、黒く輝き放っていた。


「──────?」

 閉口する神奈子。その瞳に射竦められるように、全身が硬直する。
 言っている意味が、わからない。


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