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ジョジョ×東方ロワイアル 第八部

740ビターにはなりきれない:2020/11/04(水) 18:10:41 ID:UVCbRvCA0

「……では、遠慮なく」

 唐突に少年が菓子へと手を伸ばす。掴み取った一つの菓子は、これまた日本では有名な老舗菓子。どこの店の棚にも並ぶような、ありふれたミニロールケーキの洋菓子だ。
 それを意外にも丁寧な手つきで、包装を取り除いてゆく。少年の顔立ちからして、彼は欧州出の人間らしかった。出身国はきっとスイーツに熱のある方面なのだろうと、神奈子は無根拠な想像をたてる。
 「毒など入ってない」とは念押したし、実際入ってないのだが、あからさまな敵から渡された不審物を警戒するのは世の条理だ。定石に倣うべきであるこの少年は、今まで随分とこちらを警戒していたにもかかわらず、次の瞬間あっさりと菓子を口に入れた。
 まるである時点から『毒などない』と把握したみたいに、次へ移す行動に戸惑いがない。なよなよしとした見た目に反し度胸があるのか。神奈子からすれば好ましい対応なのは確かだが。
 少年が頬張った一口サイズの菓子が、咀嚼と共にゴクリと胃に潜り込んだのを見届ける。残った空の包装紙を彼は、神奈子へ反目するようにその辺へと粗末に投げ捨てた。この悪質な行為に目敏く喝を入れるほど、神奈子も頓珍漢ではないが。


 さて。かなり話が逸れてしまった。
 尤もそれは、神奈子の抱える事情が自発的に陥没へと向かったような自爆。イレギュラーな交通事故でしかない。
 本来この少年に会いに来た理由は、とある参加者に興味が出たからであった。今は自分自身の都合など、考えるに詮無きことだ。

「で、そろそろ話を進めようかしら。ドッピオ君」
「〝君〟はやめろ……ッ!」
「失礼。じゃあ、そうだね……」

 一体何から話すべきかと、神奈子は顎に指を当てて逡巡する。確認しておきたい事柄が、思ったより多かったからだった。
 神奈子とこの少年──ドッピオは、既に最低限の情報は交わされている。名前は勿論ながら、ここ『幻想郷』という土地の大まかな概要と、神奈子が外の世界から来た『神』であること、先に行われた第二回放送内容、等々。
 これらを聞いたドッピオも流石に目を丸くし、暫く俯きながら何事かを思案している様子を見せた。時折小さく震え、頭を抱える素振りも見せていた。
 言葉が出ないのは、先の理由により神奈子も同様である。二人して一様に頬を打たれたような気分を味わったのだ。しかも神奈子に至っては、自身の存在意義にも影響しかねない新情報が明らかとなったのだから。

 だが……『存在意義』という話で語るなら。
 どうやらそれは、神奈子のみの特殊事情という訳でもなさそうだ。


「色々と話したい事もあるけど、まずは───アンタの名前についてだね。〝ヴィネガー・ドッピオ〟」


 初めにこの少年から名を尋ねた時より疑問だったのだ。まずはこの矛盾を紐解いていきたい。
 神奈子は荷から一枚の名簿を取り出し、ドッピオの眼前で軽くぱしんと指で叩いて見せた。

「どうしてアンタの名前がこの名簿上に記述されてないか。コイツは大きな謎だ」
「知るかッ! あのクソ主催共に聞け主催共に!」

 数度に渡って名を問い質してみたが、少年の返答は頑なに一本調子の内容で返される。嘘を吐いている様子にも見えなかったので、彼の名は実際にヴィネガー・ドッピオと考えていいのだろう。
 しかし幾ら名簿の上から下まで目を往復させようと、ドッピオの名は存在していなかった。参加者の一名を取り零すなどと、こんな初歩的な大ポカが有り得るだろうか?

「有り得ねえだろッ! 別に無くて困るようなモンでもねーが、奴ら絶対オレをナメてやがるぜッ!」
「キレるな、ドッピオ……」

 前触れもなくいきり立つドッピオへ対し、神奈子は早くも慣れたように「どうどう」と抑える。
 どうやら彼はかなりの癇癪持ちというか、ともすれば二重人格の様な変貌を時折に見せてくれる。基本的には自己主張の少ない、比較的穏やかな少年なのだろうが……ギャップもあって、どうにも扱いづらかった。
 従って神奈子は、これ以上彼自身の癇に障るような真似を避けるべく、現段階で考えても解けそうにない名簿の謎は切り上げることとした。

 本題に入りたい。
 考えようによっては、ドッピオにとっての『爆弾』は寧ろこっちの話題だろう。


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