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ジョジョ×東方ロワイアル 第八部
736
:
ビターにはなりきれない
:2020/11/04(水) 18:03:30 ID:UVCbRvCA0
ひとひら、ふたひらと、斑であった白雪も。刻を重ねるにつれて、力強く勢いを増してゆく。
まるで彼ら一片一片に何者かの強固な意思が混在し、この地に脈動する魍魎を纏めて祓うかの如き指向性を感じる。
寒い。薄めのセーター1枚という装いであるドッピオには、この環境が暫く続きそうだという空模様には憂いしかなかった。
「……この雪は、アンタの仕業ですか」
地べたに胡座をかきながら、じっと思いに耽ける神奈子と名乗った女。先程は彼女へ対しひどく攻撃的な態度で迎えたドッピオだが、今では幾分か落ち着き、やや萎縮しつつも警戒心混じりに会話出来ている。
この小さな洞穴に正体不明の女を招き入れた理由があるのなら、それは彼女が望んだからだ。
対話を望み。着座を望み。即ち一時的な停戦を彼女が望んでいるから、ドッピオは今このような場を設けている。
実質的に抗う余地は無い。神奈子という女は、己の望みや我儘といった〝我〟を叶えさせる力を擁している。対峙してすぐ、ドッピオが気付かされた彼女の圧倒的〝格〟であった。
そうでなければドッピオはとうに攻撃している。彼女の肩に担がれた無骨な銃器が牽制に一役買っていたのは偽りなき事実だが、それ以上に神奈子の纏う空気が尋常でない域のそれだと、ドッピオへ如実に伝えていた。
早い話、ドッピオは臆した。無言の圧力に屈し、一時の自陣である洞穴へと彼女を迎えた。迎えざるを得なかった。孤軍奮闘という立場上、これはある種の敗北ともいえる。
とはいえ、このコミュニケーションにもメリットは確かにある。女が何を企んで接触してきたのかは知ったことではないが……
───少なくともドッピオは第二回放送の内容を耳にチラとも入れてない。
あらゆる局面においてこの穴は、大きな躓きを誘発する深い窪みになる。とても二の次に回していい問題ではなかった。
「……チッ。こっちからの質問は歯牙にもかけないってわけか」
「聞こえてるよ。雪(これ)は別に私の力じゃない。さっきのくたびれた里で空から落ちてきた、フードの男の能力だろうさ」
「だがボクには、アンタの周囲を雪が〝避けて〟落ちていくように見えた」
「そりゃ気のせいだ」
気のせいの一言で一蹴。あくまで爪隠す鷹で通すつもりだろう。当然ではあるが。
従ってドッピオも、秘中の秘であるエピタフの隠蔽は怠らない。互いに妥協のラインを探りながら、差し出せる札は差し出し、貰える札は根こそぎ奪ってやりたい。相手も同じ思考のはずだ。
では〝自分が殺し合いに積極的かどうか?〟 これが隠蔽出来ると出来ないとでは今後に大きく響きそうだが、少なくとも今回は現時点で互いに悟っている。ドッピオの方は服の返り血を隠し切れていないし、神奈子の装いや空気も明らかに戦闘者としてのそれだ。
お互い『乗った側』の姿勢を隠そうともしない。勘繰るまでもなく、まず前提にこれを承知している。
偽りなき信条が記された名刺。このテーブルは、双方がこれを提示させた段階から合意の卓となっていた。
ドッピオも当初は、差し当たり放送内容だけでも入手出来れば儲けもの、程度に考えていた。どこかのタイミングで隙を突き、仕留めにいける戦果を得たなら上々の出来。
だがこのイマイチ浅略の域を出ないプランも、神奈子の口から『幻想郷』という単語が出た辺りで早くも霞みがかっている。
「確認するが、アンタは……いや、アンタもつまり『幻想郷』の人間じゃなく、『外の世界』の人間なのかい?」
深い思案から放たれた神奈子が、今一度の念押しを試みた。何度問われようと、それに対するドッピオの答えに変化はない。
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