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ジョジョ×東方ロワイアル 第八部

734ビターにはなりきれない:2020/11/04(水) 18:01:09 ID:UVCbRvCA0
 ところが目の前の不躾な女と来たら、ドッピオの予想した反応とは少し異なる面持ちをこびり付かせていた。
 鳩が豆鉄砲を食らう。端的に表すなら、そういう滑稽なリアクションだ。

「…………あ? アンタまさか……幻想郷を知らないわけじゃないだろうね」

 幻想郷。聞きなれぬ単語だ。
 だが思い起こしてみれば、確か最初にこの会場まで連れてこられたあの時……主催のどっちだかがそんな単語をポロリと口にしていたような気もする。
 しかしそれだけだ。そんな曖昧な〝気がする〟程度の、ほぼほぼ初聞きの単語には間違いない。

「し、知らねーぞ。そんな、ゲンソーキョーだなんて言葉は」

 よってドッピオは、正直な答えを示した。反射的に返した台詞だったが、何故だか相手にはよく効いたらしいことが分かる。


「幻想郷の人間じゃ、ないの? ………………マジ?」


 先までの威風堂々とした登場は既に過去となっていた。
 思いがけない成り行きに、図らずもポカンと口を半開きにする女。騙し討ちを仕掛けるなら今だろうかという邪念がドッピオの心に過ぎったが、エピタフの予知に新展開が現れない様子を見届けると、もう暫くこの微妙な空気を堪能しなければならないらしいと観念した。



「…………ワケがわからん」



 首を振りながら女は、細く呟くように零した。

 どう考えても、こっちの台詞だった。


▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽

 普段から自責や悔恨といった後暗い感情に縛られることも少ない八坂神奈子。時には奸計を巡らし、大胆不敵な施策を打ち出す頭脳派な一面もあるにせよ、後を引かないサバサバした快活な性格は、周囲にとって好ましく映っていた。
 そしてそれこそが自分にとっても無二なる性質であり、持ち味でもあると神奈子は自覚している。近頃ではフランクさを売りに転換し、少しでもと信仰を掻き集めたい商売根性を考え始めているくらいだった。

 そんな神奈子が、今日。
 この地上に顕現して恐らく初めて、本気で『後悔』している。
 豪胆な気質ゆえ、これまで面に出すことは控えてはいたが……本来は頭を抱えたい気持ちで一杯だった。

 ───早苗は幻想郷(ここ)に連れてくるべきじゃなかった。

 邪念を振り払うようにして、頭をブンと回す。最終的に幻想郷まで添う道を決意したのは早苗自身ではあったが、やはり強引にでも押し留めるべきだったんじゃないかと。
 不毛に過ぎない思惟をどこまで掘り進めたところで、自らの歩みを鈍重にするだけだ。後悔を重ねてあの子を外へ帰せるというのなら、幾らでも後悔してやる。
 現実はそうもいかない。幻想郷が我々の想像していた『理想郷』とは、遥かに異質で血生臭い土地である事を知ってしまった。ひとたび潜れば二度とは戻れぬ、地獄の釜である事も。
 神奈子にとって此処の『異常性』は既に十分な理解として呑み込んでいたが、どうやら幻想郷という閉鎖的な世界にとってはこれが『平常』であるらしいのだ。個の身勝手な感情でこの調和を乱せば、強制的に排されるであろうことは明白。
 座せる椅子は一つだという。九十という大人数を考えれば、随分と狭量な二柱だ。ただでさえこの土地には住処を追われた、或いは行き場を失った神や妖が、希望を求めて辿り着く最後の楽園と聞くのに。
 どう誂えて膳立てした儀かは神奈子の知らぬ所であったが、九十という夥しい生贄の数にも、一席という遥か狭窄な椅子の数にも、恐らくに意味は用意してあるのだろう。不平不満が無いとは言わないが、所詮新参者の神奈子が口を挟める道理もなかった。


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