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ジョジョ×東方ロワイアル 第八部

725きっと。:2020/10/25(日) 02:34:47 ID:KeTKQLrA0
『蓬莱山輝夜』
【夕方】E-3 川の畔


 奇跡、などという安易な単語を扱うのは個人的に不満はあったが、恐らくこれは奇跡に近い確率なのだろう。
 世には奇跡を操る巫女なども居るらしいし、身内には幸運の白兎も居る。どちらかと言えば後者が持つ天運とやらが、共に住まう内に自分の握り拳に移っていたのかもしれない。


「───なんてね。こんな物拾ったからと言って、どうこうするものでもないからねぇ」


 紙片に纏わり付いた雪をパタパタと削ぎ落とし、だいぶ細苦しくなってきた陽光に照らし合わせる。
 地上の撮影機による『写真』だった。本来のサイズより半分程に縮小……というより破かれている。つまりは『半分だけの写真』を輝夜は偶然にも発見出来たのだ。

 少し前から悪天候は加速の一途を辿っており、視界は悪いわ、行進が滞るわ、何より寒いわで三拍子の災難が輝夜を襲っていた。
 このような非道い環境を愛車マジックミラー号で何とかゴリ押すという状況。屋根にも当然雪が降り積もり、自慢の隠密性も形無しであった。
 そんな折、車のガラスに異物が突如張り付いた。なんぞやと車を降りて確かめた所、この半分だけの写真だったというわけだ。周囲の悪環境を顧みれば、この写真が輝夜の元に降って湧いたのは奇跡と称しても違和感なく、普通であれば気付くことなくスルーしていたろう。

「ねえ、リンゴォ? この写真に写ってる不細工に笑う女……『誰』に見える?」

 すっかり冷たくなった着物の袖をしゃらんと翻し、雪の冠を頭に乗せながら輝夜は後方から付いてくる男へと声を掛けた。
 視界の雪が邪魔なのか、はたまた輝夜本人の存在が邪魔なのか。とにかく鬱陶しそうに目を細めて、男は翳された写真を覗く。輝夜と違って薄着である自身の恰好を意にも介さず、リンゴォと呼ばれた男はひたすら平坦な口調で以て答えた。

「件の『藤原妹紅』に見えるな」
「私にもそう見えるわね。アナタが殺した、藤原妹紅の姿に」

 随分と皮肉たっぷりに言い放った様に見える輝夜の台詞は、事実リンゴォへの皮肉だった。偶然拾った半分だけの写真に収まる女は、いつ撮ったかは定かではないが確かに藤原妹紅本人の姿である。
 そして、このぎこちない笑顔を垂らした妹紅を〝妹紅でなくした〟原因とも言える男こそ、輝夜が長くお供に連れるリンゴォその人である。それが発覚した当初こそ輝夜も怒りを顕にしていたが、こうして後腐れない程まで同行するに至れた経緯とは、当人の間のみで理解出来ていれば良い話であった。(リンゴォはそう思っていない可能性が高いが)
 というわけで輝夜のリンゴォに対する恨み辛みという類の感情は、遥か彼方の過去に置いてきた今更な毒気でしかない。にもかかわらず妹紅の名を出して皮肉を綴るというのは、輝夜がねちっこいとかではなく、単に彼女元来の持つ悪戯心であった。

「……オレを非難しているつもりであれば」
「あ、あ〜〜もういいわ。アナタがジョークも通じない人間だって事を忘れてた」

 その独風な人間性ゆえに、からかい甲斐など微塵もない。男への評価を今一度改めた輝夜は、ここには居ない鈴仙の姿を夢想し焦がれた。誰よりもからかい甲斐のあるペットなのだ。

「その女の所に向かうのだろう。……居場所は分かるのか?」
「アテはある。無ければこうして雪の中、意味もなく彷徨わないわよ」

 リンゴォの問いかけに輝夜は、いかにも当然といった風に即答で返す。ここで「アテなんかない」などとぬかせば、この気難しい男は今度こそ呆れ果てて躊躇せず去り行くだろう。
 そんな事態を防ぐため、輝夜は根拠の無い台詞をどの風吹かしながら言い放ったのである。ここでリンゴォに抜けてもらっては、この後来るであろう『ひと仕事』を任せられる適任が居なくなってしまうから気を遣うものだ。


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