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ジョジョ×東方ロワイアル 第八部

713貴方にこの血が流れずとも:2020/09/29(火) 00:23:13 ID:mdXdZ3W20

両腕に力を込めて突っ伏した身体をさっさと起こす。続いてうんっと伸びをする。打って変わって、少しだけ身体が軽い。
しぶとく焚かれ続ける煙を吸って吐けば、ほんの少しだけ気持ちも軽い。一歩一歩踏み締める。大丈夫、燻らせるのはこのタバコだけで十分。そう言いたげに足取りは軽やかだ。
玄関の戸を開ければ、身を切り付けるような冷えた空気がひゅるりと滑り込む。タバコの火を消してしまおうと舞い落ちる雪は悪さをするだろう。
それでも止まらず、むしろ走る。その傍には雪を除けるために蓮の葉が寄り添っている。
長い茎をしならせ地面を滑り必死に付いて来る。甲斐甲斐しいと言うより異様な光景だがそれもまたご愛嬌。
風を切りながら、睨む空は曇天。雪雲の向こう側にはきっと夕陽が傾いている。
何故だろう。どうしてあの厚い雲を裂いてまで日暮れを望むのだろう。夕焼けなどいくらでも見て来たのに。黄昏の思い出なんかいくらでもあるのに。
そこにある答えのようなナニカが記憶を揺さぶる。幻想郷に渡る前のあの日が私に語り掛ける。


『“あっち”に行っても同じ空の下で、私たちはこうやって同じ酒を呑むんだろうねぇ』


「ああ。“あっち”でもお酒は呑めたよ。でもアンタは今“どっち”にいるんだ」


同じ空の下にいるのに、杯はもう交わされることはない。そう思うと酒を飲んでもないのに胸が焼ける。
どうしてとか、分からないとか。そんな言葉で止まらないで、その先を知りたい。ここにいれば夕陽が見えるかもしれない。
でも考えれば考えるほど、過去が私を縛り付ける。かつて共に歩んだ情景に目を奪われてしまう。今この瞬間の私のように。
ああ、ヒトの考えなんて真に理解できない。私がそうだ。神奈子が何を考えているのか分かってやれない。
まして死に逝く瞬間リサリサが何を考えたかなんて分かるワケもない。ヒトが生きた意味なんて、考えるだけ詮無きこと。残った者が勝手に考えて勝手に行動すればいい。


「だからリサリサ。私と貴方の家族に会いに行きましょう」


せめてそれが手向けになることを切に願う。
止まりたがる私の身体を、貴方の遺志が動かしてくれる。たとえ私に貴方の血が流れずとも。
私は赤の他人。血の繋がりなんて無い。でも通い合うモノがあれば、きっと『家族』足り得る。その事を千年の付き合いの中で誰よりも分かっているつもりだから。
さあ、行きましょう。互いの無念を晴らすために。


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