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ジョジョ×東方ロワイアル 第八部

698Яessentimənt:2020/08/14(金) 19:50:42 ID:nr6s2DUA0

 F・Fの最期の言葉には、霊夢の他に〝魔理沙〟の名があった。焼け爛れた声帯で聞き取りづらくはあったが、確かに魔理沙を呼んだのだ。
 〝F・F〟がこの時、霧雨魔理沙の名を呼ぶ道理は考えづらい。
 それならば、ここで魔理沙の名を出したのは肉体である〝咲夜〟の方の記憶が介入しているのだろう。
 もしも〝F・F〟の意思が〝咲夜〟の意思を大きく凌駕していたならば、死んでいたのはきっと……霊夢を害する敵として映った魔理沙の方だったろう。
 〝咲夜〟にはきっと、この後に起こり得る魔理沙の心情が予測出来てしまった。だから〝彼女〟は、最期に魔理沙の名前を呟いた。


 〝十六夜咲夜〟を殺した霊夢の苦痛を、魔理沙にも味わって欲しくない。
 〝F・F〟の記憶をも併せ持った、この〝咲夜〟だったからこそ。
 霊夢の苦しみを知ってしまった、この〝咲夜〟だったからこそ。
 霊夢と同じ苦しみが魔理沙にも訪れるであろう未来を危惧した。

 彼女の最期の言葉は、霊夢にとっては勿論。
 魔理沙にとっても、清き救いの言葉になる。
 霊夢はそれを、すぐに理解出来た。


 しかし……それを魔理沙が理解するには、彼女にとって多くの災厄が一度に降り過ぎた。


「ぁ……………咲夜……わたしが、ころした……のか……?」


 少女の口から漏れ出るように発されたその言葉は、少しの語弊を除いて───真実である。
 問題なのは、その〝語弊〟……すなわち、たった今、命を奪った相手が、正確には十六夜咲夜ではなく、F・Fだったのだと。
 今の魔理沙に、その差を理解する心の余裕など……微塵も残っていなかった。


 咲夜の命を奪ったのは、自分。
 正気に戻った魔理沙には、この事実しか残っていない。



「ぁ……うそ、だ………………ぁぁあ、ああ……」



「「魔理沙っ!!」」


 重なった二つの声は、霊夢と徐倫。
 二人が止める間もなく、魔理沙はその場を逃げるようにして駆け出した。
 無理からぬ悲劇だ。どうしてこんな最悪の場面で、我々を襲った狂気の罠は抜け出ていったのだろうか。
 少女を正気へと戻すには、あまりにも残酷なタイミングだった。まるで意地の悪い悪魔が、ここを覗いていたかのように。


 そろそろ、日が暮れる。
 夕闇に消えた魔女服の背中を、霊夢は重く伏せた眼で見送った。
 自分には、彼女を追う資格なんか無いとでも自嘲するような表情で。


「───徐倫」


 代わりに、傍の女の名を呼んだ。
 女は名を呼ばれると、視線を霊夢に向ける。
 霊夢と同じく、重く伏した……どこか力無い眼であった。

「……なんだ」
「徐倫は、魔理沙をお願い。……アイツ、怪我してるから」

 F・Fをこんな冷たい雪の上に置いて行くことは出来ない。
 しかしそれ以上に、霊夢には魔理沙に会わす顔がなかった。
 今は、魔理沙を追いたくない。しばらく顔を見るのですら、拒絶感が浮き出た。


 このまま、魔理沙とは会えなくなるのかもしれない。
 そんな漠然とした予感すら、霊夢の中に生まれた。


「私が、怪我させちゃったから。勝手な言い分だけど……だから、アイツを……支えてやって」
「本当に、勝手だな。じゃあその前に、ひとつだけ聞かせてくれ」

 伏し目の徐倫は、意を決したように顔を上げる。
 彼女の視線の先には、今はもう息のない亡骸が寝ていた。


「そいつは……〝F・F〟なのか?」
「…………………ええ」
「………………そっか」


 気を、回すべきだったのだろう。
 大切な者を喪ったのは、何も霊夢と魔理沙の二人だけではないという事に。

 徐倫に魔理沙を追わせる行為は、もしやすれば悪手なのかもしれないと。
 今更ながらに、霊夢は後悔した。


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