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ジョジョ×東方ロワイアル 第八部

692Яessentimənt:2020/08/14(金) 19:44:10 ID:nr6s2DUA0




「また、私の勝ちね。魔理沙」




 満点の星空の下。
 神社の縁側に座る博麗霊夢が、淡々と結果を述べながらプラムの実にかぶりついた。


「弾幕じゃなくて果物だったろ。まだ敗けちゃいないぜ」
「被弾は被弾よ。アンタの敗け。それとも〝果物を投げつけるのは反則負け〟って、ルールに書いてるとでも?」
「何でルールに書いてないと思う? そんな舐めた真似する馬鹿はどこにも居ないからだぜ」
「私がさっき決めたもん。スペルカード・ルールを決めるのは私なのよ」
「こりゃ参ったな。それこそ反則負けだぜ」


 互いに背中合わせで、勝負の行き先をああだこうだと揉め合う。
 この光景もまた、一度や二度ではなかった。


「そんな事よりお前、本気でやってなかっただろ」
「あら。博麗の巫女はいつだって本気よ」
「ふざけろ。お前が本気だったら私は5回は死んでたぜ」


 魔理沙の見立てでは、そういう予測だった。
 終わった後だからこそ、実感できた。
 後の祭り、である。


「本気よ。……私は、本気で闘ったわ」


 慰めの言葉、なのだろうか。
 背中越しに聞き取った霊夢の声は、いつもよりほんのちょっぴり……弱々しく聞こえた。


「〝あの時〟だってそう。弾幕ごっこじゃなかったとはいえ、〝博麗の巫女〟は立場上……戦わなければならなかった。それしか許されなかった。そんなわけ、ないのに」
「あの時?」


 魔理沙が疑問に思い、振り返ろうとする。
 途中で、やめた。
 言葉に紛れた僅かな感情が、よく知る友人のそれとはかけ離れた別種のモノに聴こえたからだった。

 霊夢はきっと、顔を見られたくない。
 魔理沙はそう思った。
 だからお互い、背中合わせのままに言葉を交わす。


「ジョジョよ。言ったでしょ。私、ジョジョと戦って、負けたの」
「……徐倫の親父さん、か」
「うん。……悔しかった。負けて悔しいなんて思ったのは、初めてよ」
「私はしょっちゅう思ってるけどな。誰かさんのおかげで」


 茶化すように、魔理沙は自嘲する。
 魔理沙が霊夢に勝てなくて悔しがるように。
 霊夢も、承太郎に負けて悔しかったんだな、と。

 そこまでを考え、ひとつ思い至った。


「なあ」
「何よ」
「私もそうだったんだ。負けて悔しかったし、ずっと勝ちたいって思ってた。お前にだ、霊夢」
「……だから、知ってるって」
「じゃあ……これで『一緒』だな」
「は?」
「お前は承太郎に負けて悔しかった。だからまた勝負して、勝ちたかった。
 私もお前に勝ちたかった。勝ってギャフンと言わせたかった。出逢った時からだ」
「…………。」
「なんだ。お前も私と『同じ』じゃないか」
「魔理沙……」
「〝普通の魔法使い〟と同じ、〝普通の巫女〟だぜ。お前もな」


 やっと、自分の心が幾分か救われた気がして。
 今までずっと努力してきた事は、無駄にはならなかったのだと安堵して。
 結局、霊夢にはまた勝てなかったけど。

 魔理沙は初めてこの友人を……少しだけ、理解出来た気がして。
 綺麗に、綻んだ。


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