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ジョジョ×東方ロワイアル 第八部

687Яessentimənt:2020/08/14(金) 19:38:00 ID:nr6s2DUA0

「誰に向かって『死ね』だなんて言えたわけ?」
「げっ……!?」

 大技を放ち、隙だらけのまま硬直していた魔理沙の頭上に結界を繋げた霊夢は、そこからお祓い棒を振り抜く。
 本日二度目の爆撃。魔理沙の魔女帽と、その〝下〟諸共吹き飛ばしかねないスイングだ。これは弾幕ごっこだが、得物を使用しての打撃はなんら反則とはならない。

「ん!? この手応え……!」

 強靭なお祓い棒から伝わる感触に、違和感。
 昏倒させる勢いで殴ったつもりだが、この攻撃は『防御』されたのだと分かる感触と音が、霊夢の更なる追撃を急遽中断させた。
 こちらに背を向けたままの魔理沙が、ニヤリと笑った気がした。彼女の冠に乗せた魔女帽……その〝下〟から、数多の蠢く生物が顔を出していた。お祓い棒のスイングをミットも無しに止めたのは、コイツらだった。

「掛かったな……『ハーヴェスト』!」
「……気持ち悪! 何、コイツら!」

 ハーヴェストと宣誓を受けて飛び出したこれらの生物は、DISCを経て獲得した魔理沙のスタンドである。彼女が帽子やスカートの下にマジックアイテムを収納する癖がある事は霊夢とて知ってはいたが、ペットの飼育も行っていた事実は初耳だった。

「悪ィな霊夢! 新手のスタンド使い、霧雨魔理沙だぜッ」
「『スタンド』……! 話に聞いたDISCって奴か」

 魔理沙がDISC経由でスタンド使いとなっていた背景など霊夢は聞いていない。つまり意図して隠されていたわけだ。彼女らしい秘中の秘であった。

「次からルールに『スタンドの使用は禁ずる』って記しとこうかしら」
「悪いが、コイツらも立派な弾幕なんだぜ。そして残念だが、お前に『次』は無い!!」

 帽子の中から、スキマ妖怪よろしく恐るべき数の小型スタンドが、ワラワラと増殖しては霊夢へと突進を開始する。三桁には達する数だろうか。
 一匹一匹の被弾は大したことも無さそうだ。しかしスタンドが生み得る能力の可能性を考えた時、迂闊な接触は回避すべきだという結論が百戦錬磨の脳裏を過ぎる。
 幸いなのは、コイツらには速度と弾幕のような対空性能が不足している点だ。物量で被せてこようが、全て躱すのに難儀な技術は要らない。

「呆れたわね魔理沙! こんなモンがアンタの『努力の結晶』ってワケ!? この調子じゃあ100年経っても私には追い付けないわよ!」
「うるせえ! いつまでも上から見下ろしてんじゃないぜ!!」
「あら? 負けて落っこちたヤツを上から見下ろす口実を得るのが『弾幕ごっこ』だって、知らなかったかしら!?」
「今日は随分と御託が多いじゃないか! イラついてるせいか!?」
「アンタのおかげでイラついてるのよねえ!?」
「そりゃホントに私のせいか!? 無関係な人様のせいにするのはお前の得意分野だからな!」
「……っ 減らず口をッ!」
「私の口は増える一方だぜ! スペルカードは黙らされたヤツが負けのルールだッ!」

 高々と張り叫んだ魔理沙は、次に高々と飛翔した。
 弾幕ごっこを嗜む少女らの多くが飛行能力を有しており、霊夢と魔理沙も例外では無い。魔理沙は魔法使いらしく箒での飛行を好み、霊夢は持ち前の能力で飛翔していたが、このゲームにおいては飛行制限が掛けられている。
 だがどうやら、魔理沙の支給品には当たりが紛れていたらしい。箒にまたがり空を飛ぶ彼女は、制空圏というアドバンテージを得た。

「誰の前で、飛んでんのよ……っ」

 地をうねるハーヴェストの軍勢を身軽なステップで避けながら上を仰ぎ、霊夢は毒づくように舌を打った。
 博麗霊夢の『空を飛ぶ程度の能力』は、現在使用不可能とされている。勿論、制限という名目で主催から奪われた結果だった。

 自分は、空を飛べない。
 この能力は単純に空に浮く、というだけでなく。
 この世のあらゆる重力や圧からも無重力とされる、自身の『自由』を意味する性質であった。

 『十六夜咲夜』の命を奪ってしまったという罪の意識は、彼女の精神から『自由』を奪った。もう、以前のように自由そのものとはいかないかもしれない。
 単なる主催からの制限だけでなく、霊夢は自身の犯した罪により枷を嵌められた。この上なく惨めな意識が、生涯自分にまとわりつくのだと覚悟した。

 魔理沙(アイツ)は違う。
 彼女は、自分自身の力で空を翔ぶ資格を所持していた。箒を使っているのも、道具の力に頼るのではなく単なる嗜好の問題だ。
 だってアイツはきっと、自信家だから。
 自分の力を信じ、研磨し、これからの未来も己の努力を変に誇示することなく、強くなっていくに違いない。

 だから、魔理沙は空を翔べる。

 私は翔べない。
 アイツは翔べる。

 私だけが翔べない。
 アイツだけが翔べる。

 魔理沙には、私の気持ちなんて理解出来ない。
 私も、アイツの気持ちを理解する必要は無い。


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