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ジョジョ×東方ロワイアル 第八部

668星屑になる貴方を抱きしめて:2020/08/06(木) 17:28:53 ID:n3Q3fHho0


「霊夢…………霊夢…………霊夢…………ッ!」


 白雪の上を駆け抜ける足取りは、ここへ至る時とは同じ速度ではありながらも真逆だと言えた。
 一直線に向かう目的地は不明瞭である。しかし彼女の意思は、霊夢という、もはや唯一となってしまった拠り所に引かれるようにして鼓動を打つだけだ。

 霊夢は、ホワイトスネイクに縛られていたF・Fへと『自由』を与えた者の名だ。
 博麗霊夢という究極の自由が、誰かに脅かされる事などあってはならない。
 承太郎の亡骸があの寺院で丁寧に弔われていたという事は、逆説的に考えれば霊夢は存命なのだ。

 駆けつけて護るには、まだ間に合う。
 手の届く場所に、きっと彼女はいる。
 護らなければ。今度こそ、護らなければ。


「霊夢…………霊夢は…………霊夢、が……ッ!」


 言葉のていすら紡がれていない文脈が、息と同時に喉から溢れ出す。もはや留まることを知らなかった。
 先程の大男。危険な空気こそあったものの、優先すべきは霊夢の護衛だと、あの場では捨て置いた。
 5秒で始末できる、などと大言を吐いてはみたものの、当然ながらハッタリもいい所だった。幾ら時を止めたとしても、恐らく苦戦は必至だったに違いない。
 それぐらい、奴と自分との『生物』としての格に壁を感じた。アレは人間の皮を被った、怪物だ。

 ただ……自分の。
 いや、正確には十六夜咲夜の肉体が持つ『時を止める力』の覚醒を感じた。
 以前までの1秒か2秒という短時間から、一気に5秒は止めていられるという確信があった。この確信が、ハッタリのような形で思わず口をついてしまったのは余計な行為だったと、今になって後悔する。
 覚醒の切っ掛けが何かは考えたくなかったし、必要性も感じない。

 この『5秒』という時間は、空条承太郎が全盛期中に止められた停止時間だと、彼女は知らない。
 そこに因果関係などない。何より彼は、もうこの世には居ないのだから。

 5秒間、時間を止められる。
 今はその事実だけで充分。
 この力さえあれば……『敵』を排除するには事足りる。


「だから、無事でいて。───霊夢」


 女は出鱈目に時を止めながら、走り続けた。
 呼吸をおいて、5秒。
 またおいて、更に5秒。
 強引に。
 残った寿命を出力するように。
 絶えず進みゆく時間の針から置いていかれることを、恐れるように。


 着々と、焦がれる人物との距離を縮めて行った。
 そこに敵が居るのならば……彼女の中に、もはや躊躇出来るほどの心の余裕なんか、ありはしなかった。


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