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ジョジョ×東方ロワイアル 第八部

667星屑になる貴方を抱きしめて:2020/08/06(木) 17:28:27 ID:n3Q3fHho0



 空条承太郎が、死んだ。



 F・Fの脳へ取り憑いた事実は、自分で思う以上に少女を昏迷へと導いてしまった。
 もはや一刻の猶予もないと痛覚した。
 あの場に置かれた棺の数が……もしも『二つ』であったなら。
 もしも……『博麗霊夢』の亡骸まで添えられていたのならば。

 今、自分はどのような行動を取っていたろう。
 少なくとも、これまでに得てきた全ての価値観は音を立てて崩壊していただろう。

 ホワイトスネイクにより一方的に与えられた『DISCの守護』という、使命感のような何か。
 今思えば訳のわからぬ命令を、我が唯一の使命なのだと機械的にこなす仕事ぶりは、客観的に見れば滑稽の極みだったろう。産まれて初めて見た物を親だと思い込む、鳥の刷り込みとさして変わらない。
 生涯翻弄されたままであったろう自分。霊夢と承太郎は、あの泥沼の中から掬い上げてくれた。

 いつしか二人は、F・Fにとって護るべき対象へと昇華した。
 彼女らの隣は、不思議なことに心地好い場所にも思えてきた。幸福感ではなかったが、満足があった。生き甲斐だと言っても良かった。
 虚無感の中で。無個性のままに。DISCをただ守るだけの空っぽだったかつてとは、世界が違って見えた。

 初めて、自己が芽生えた。
 本当の意味での、自分。
 産まれたばかりの自己を、失いたくないと願った。
 F・Fにとっての『死ぬことへの恐怖』は、即ち自己を失うことへの恐怖と同義。

 それが、霊夢と承太郎。
 かけがえのない、宝物。
 その片割れが、バラバラに砕け散った。



 空条承太郎が、死んだ。



 事実を形として初めて知覚した、その瞬間。
 自分の中で刻まれ続けてきた『針』が、停止した。
 失うということは、これ程に恐ろしく。
 そして冷たい、孤独な痛みなのだと。

 なりふり構っていられないと、痛感した。
 F・Fに残ったものは、今や博麗霊夢しかなかった。
 彼女に仇なす者は、どんな手段を使ってでも抹殺しなければと誓った。

 それがたとえ、この『十六夜咲夜』にとって近しい……あるいは大切な相手であっても。


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