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ジョジョ×東方ロワイアル 第八部
659
:
星屑になる貴方を抱きしめて
:2020/08/06(木) 17:18:07 ID:n3Q3fHho0
『匂い』の正体が、目視できた。
線香であった。仏壇があるわけでもないのに、独特な香りがだだっ広い畳の空間を埋め尽くすようにして漂っている。
F・Fはこの香りがどのような場で使われるか、知識として知っている。
線香とは、故人を弔う場で焚かれるものだ。
死者を想い、悼み、供養する場所で灯される、神聖なものだ。
線香の煙から昇る煙は、天上と現世を繋ぐものだという考えもある。決して生者が乱雑に扱っていい代物ではない。
その聖なる煙をF・Fは、打ち払うようにして鉢ごと薙ぎ払った。
畳の上には音を立てて転がる灰と、三本の線香。F・Fはそれらに見向きもせず、震える両膝を床につけて座り込んだ。
長方形の白くて大きな『箱』がひとつ、鎮座していた。
無論のこと、佇むようにあげられた線香の火はその箱───棺に向けて、であった。
棺と線香。こんなセットが会場に予め設置されていたとは考えづらい。
考えるまでもない。
弔ったのだ。
『誰か』が、『誰か』に向けて。
F・Fがこの地に足を運んだ理由は一つだ。
瀕死の霊夢、承太郎を霧雨魔理沙、空条徐倫の二人に預け、この場所へ向かうよう八雲紫が指示していたからだ。
事が順調であれば───あくまで彼女達にアクシデントの類いが発生していなければ。
この寺院には彼女ら二人と、霊夢・承太郎が居なければおかしい。または、既にここを出立しているか。であるならば、F・Fは急いで此処を出て四人を追うべきだ。
(四人は既にここを出ている。それが最も可能性の高い、結論)
こんな、寺に置かれても不思議なんて無いような棺ひとつ。
気にするまでもない。ゆえに、開けて中身を確認するなど不合理な行いだ。
それがたとえ線香をあげられ、弔いの形跡があろうとも。
自分には、関係ない。
蓋を開ける必要など、ない。
(〝覗く〟だけ……。ただ、中身を見るだけ。十秒と掛からない、なんてことの無い確認)
棺の蓋に、手をかける。
中身なんて見なくていい。
見てはいけない気がする。
見れば、絶対に後悔する。
心中を迸る懇願とは裏腹に、その手は止まってくれない。
F・Fの目はいよいよ固く閉じられた。迫り来る現実に耐えきれずに。
自分にとっては生命線である筈の体中の水分という水分が、冷や汗となって体外へと一斉に放出されていく。下手をすれば骸がひとつ、此処に増えかねないほどに。
呼吸も荒かった。これほどに苦しい感情を経験したのは、初めての事であった。
呼吸に続き、鼓動もうるさい。閑静とすべき空間であるはずなのに、こんなにも雑音で溢れ返っている。
こんなにも狼狽える自分など、あってはならない事だ。
だが、もっと『あってはならない事』の予感が、F・Fの手をそこから先へと進めさせなかった。
情けないと思う。腹を立てるべきだとも思う。
たかだか人間如きに。
しかもその人間は、ついさっき知り合ったような相手だというのに。
それでも。だとしても。
F・Fは、博麗霊夢を失いたくない。
空条承太郎を死なせたくない。
二人でないならば、もはや誰だっていい。
なんなら魔理沙や徐倫が代わりに入っていればとすら思う。
恐怖。それは今日まで『フー・ファイターズ』が理解し得なかった感情だ。
生物として、命を失うことへの忌避感が無かった訳ではない。
だが己の本質に執着を持たなかった彼は、真の意味で恐怖する事は今までなかった。
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