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ジョジョ×東方ロワイアル 第八部
650
:
紅の土竜
:2020/07/31(金) 17:43:19 ID:LM0DDSIo0
「この石仮面は───使わないわ。少なくとも、まだ」
サンタナなりに、さり気なく示してやったつもりであった。
手を引いてあげた、などという女々しい優しさではなくとも、不器用なりに道を指してやったのだ。
石仮面、という近道を。
純粋な強さを得る、確実な手段を。
「……使わない?」
少女の答えは、拒否。
やや意外であった。これからの生命に関わる重要な方針を、現状においてとはいえこの弱者は放棄したのだから。
「それは何故だ」
強くなる。それはサンタナにとって、ある日突然求められた絶対的な選択。であると同時に、狭き道だ。
弱ければ求める物も手に入らない。己程度が欲すには高望みが過ぎる『目標』を、彼は求め続けるしか無かった。
武人ワムウと拳を交わしたのは、何故だ。
必要であった儀式だからだ。
試合の末にサンタナは、強さを手に出来た。
求めたから、手にしたのだ。
勝ちたかったから、得られたのだ。
それがこの───。
「───『鬼』の流法」
短めな呟きと、火走のような明瞭が男の周囲を纏った。
何事かと静葉が身を竦める次の瞬間には、既に『変化』は終わっていた。
「え……」
「これがオレの手にした『強さ』だ。尤も、まだ未完ではある形態だが」
赤黒い双角を新たに宿し、巨人の子孫かと見紛う体躯は二回りほど縮ませている。しかれども、その体積を反比例させるように放出される肉体の熱は、間近にいる静葉の肌をちりちりと灼いた。
素人目に見ても、この『変化』が生物としての強度を格段に底上げする技術だという事は明らかだった。
「そ、それが……貴方の『強さ』なの?」
「そのようなモノ、だ。オレはある時、どうしようもない『壁』にぶつかった。その壁に手を掛ける為……這いつくばりながら必死こいて求めた強さが、この鬼の流法だ。
小娘。お前は何故、そうしない?」
鬼の流法と、石仮面による吸血鬼化。昇華の次元こそ違えど、また到達への敷居の高さこそ違えど。
この二つは、『力』を求める我々同士、同じ目標に至れる手法だ。少なくとも、サンタナはそう思っている。
だから理解出来なかった。静葉が目の前に転がる力へと腕を伸ばそうとしない、その理由が。
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