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ジョジョ×東方ロワイアル 第八部
643
:
紅の土竜
:2020/07/31(金) 17:36:24 ID:LM0DDSIo0
『勇気』も『誇り』も、物理的な力が伴っていない限りは、より大きな『強さ』に踏み躙られる。世の条理だった。
ではこいしの生き様は、果たして無意味だと断じられるのか?
サンタナには……そうは思えなかった。
ワムウの膝元に抱えられながら両の瞳を閉じゆく少女へ対し、サンタナの心には確かに『称賛』が芽生えたのだから。
そして今。
古明地こいしと同じように『強さ』を求め、悩んでいた『弱者』が目の前にて悶えていた。
カーズの暴力に侵略され、命を摘み取られるこいし。図式の上では、今のこの状況はそれと同じだ。
さながらカーズと同じ類の暴を、サンタナは眼前の静葉に振るっている。既視感の宿るこの光景をしてサンタナは、先の台詞を吐いたのだった。
同じ弱者でも、こいしと静葉ではこうまでに違うのか、と。
「か……は……っ ぅ、うう……あ、ぐぅ……!」
反撃を試みるでもなく、少女は蓄積するばかりのダメージにただただ悶えるだけ。
これでは、とても『称賛』など出来ない。
こんな虫けらに、『勇気』も『誇り』もありはしない。
例えあったとしても……それはこいしとは種からして異なる、真の弱者がほざく低級な生き様だ。
これでは、とても『糧』にはならない。
こんな虫けらを、一匹潰したところで。
サンタナの『生き様』を……刻み付けることなど出来ない。『証』を残すことなど、出来ない。
「お前は……殺す価値もない様なゴミだった。心底、呆れたぞ。お前にも……お前の様な虫けらを配下に持つ、DIOにも」
この邂逅は、元を正せばDIOの橋渡しあっての『縁』だ。それはサンタナにとっても、静葉にとっても同じであった。
彼女がDIOからどういった紹介文を受けてこの地へ降りて来たのかは知らないが、凡そサンタナと似たような文言であろうことは予想出来る。
共通点は『エシディシ』だ。恐らくDIOは事前に静葉の口から聞き知っていたのだろう。彼女の境遇と、敵を。そこにエシディシと風貌似通わす自分が現れたとあれば、我々の関係性にも自ずと察せる。
そこで、二人を出逢わせてみよう。果たして、どうなるか?
大方こんなところだ。あの底意地悪い吸血鬼が晴れ晴れに考えそうな理屈としては。
「つまらん。とっとと消えろ……この負け犬めが」
結局、静葉は見逃すことにした。これでは殺すよりも、まだ生かした方がマシだと判断しての事だ。
サンタナの目的は虐殺ではない。かと言って主達にただ付き従うでもない。
自らの名を知らしめ、『恐怖』を伝搬させる事にある。であるのならば、こんな他愛もない雑魚一人喰ったところで腹などふくれようもないし、このまま逃がし、精々怯えながら残りの生に齧り付いていればいい。
「オレは『サンタナ』だ。この名を出して、精々DIO辺りの強者にでも泣きつけ。……どうでもいいがな」
名乗るという行為にサンタナが見出した意味はとても大きい。しかし今に限っては、辟易と共に反射的に出した、名ばかりの表看板だった。
「………………く、ぅ」
呻き声を小さくあげる静葉は、未だに逃げようとしない。これ程までサンタナ相手に暴の威圧を散らつかされながら、こちらを見上げて生傷を撫でるばかりであった。
とうとう腰まで抜かし、逃走すら行えないか。グズグズする少女の歯切れの悪さには、苛立つばかりであった。
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