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ジョジョ×東方ロワイアル 第八部

630Run,Araki,Run! ◆e9TEVgec3U:2020/07/28(火) 01:20:35 ID:xCgiZT7s0


「これは太田君らしい立派な"菓子折り"じゃぁないか」


箱が開封されれば中には衝撃吸収材に包まれた、謹製だろう目を引く手作りラベルが目を引く赤ワインが一本鎮座していた。
まず目を引くのはロゼワインの様な透き通る綺麗さではなく、これぞ赤ワインと表現したいかの如く外果皮の赤紫の表現の強い色艶。
雪下の薄暗さで行うテイスティングだからとは言え、手に取ってまじまじと見ても透明さも兼ね備えたワインレッドは変わらず。
これ程の色合いならば渋さもたけなわ、フルボディの格をふんだんに味わえるだろうと胸が躍るのを感じずにはいられない。
ビンの下に目線を動かすと、当然と言わんばかりに沈殿した澱がワインとの境界線を見事に引いていて、素人目でも上質な物だと認識出来る。
それも当然か、太田が選んだ酒なのだ。ビール党であろうとも、酒には手を抜かない男だろうという期待が大きい。


「ふむ……やっぱり露天風呂で言っていたように、他者の行動に倣って感情を募らせようというわけかな。
 太田君のようなチャレンジ精神も中々に含蓄がある、そういう姿勢は取り入れていきたいものだね」


「ンフフフ、そう言って戴ければ用意した甲斐があるってもんです」


そう言って太田はハンチング帽に手を掛ける。
いつもの帽子の下にはまたいつものハンチング帽が顔を覗かせ―――その上にはお誂え向きなワイングラスが二つ。
まるで買ってきたばかりと言わんばかりに、クシャクシャになった紙がグラスの中に押し込まれている。
初めからこんな時の為だけに用意したとしか思えない周到さに荒木は口元を手で隠して苦笑い。


「いやいや荒木先生、幾ら僕でも機会が来るまでずっと待つなんてそんな事出来ませんよ。
 これは姫海棠はたてにさっき"ウェザー・リポート"の制限の若干の解除を頼まれてふと思い立ったんです。
 湯に浸かりながらの酒ときたら、次は荒木先生と雪見酒でもご一緒したいなと」


「確かに彼女は彼と同行していたね。ルールに抵触しない限りの主催者としての譲歩、か。全く太田君らしいな。
 しかしわざわざ僕と酒を飲みたいが為だけにそんな提案を了承したのかい?」


「かもしれませんね、彼女に丸め込まれてしまったというのも大きいのですが……
 ま、彼女の記事の次号次々号への期待の前払いでもありますから」


全てに思いを馳せるかの様な表情を浮かべながら、煌々とした声色で語る太田。
その瞳は少年時代の憧憬を見るかのように爛々と輝いているものの、独特の妖光をも放っている。
筋骨とは全くの無縁の様な体をしながらも、その実力や妖しさは荒木に引けを取らない雰囲気を醸し出している。
少なくとも、このゲームに掛ける情熱と酒への情熱という一見して別物の二つを奇妙なレベルで共存させている様は荒木以上のものであった。
楽しむ事を第一条件に多少の円滑な進行を取り払う姿は、さながら彼の目を通して見たジョセフ・ジョースターに近い。
これはあのジョセフも念入りに好かれるわけである。隠しきれない遊び心にもたまには与るべきだろう。


「そこまで言うなら君からの酒の招待、受けないわけにはいかないな。
 太田君のさっきの失態は……水に、いや酒に流そうじゃないか」


「ありがとうございます、荒木先生」


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