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ジョジョ×東方ロワイアル 第八部

622 ◆e9TEVgec3U:2020/07/28(火) 01:09:30 ID:xCgiZT7s0



雪という物を見て、人は何を想像するだろう?


人肌に重ねただけで滲み、崩れ、黄金を満たさぬ水の一欠片でしか無くなる儚さ。
一面の白い景色から感じる冬の厳しさ。古くから芸術的な価値を以て意匠となってきた叡智。
物というのは不思議な事に、見る側面や人物によって様々に姿を変える。
しかし情景を重ね、趣を撫でる――自然現象の一つであるという事実は易易と改変出来る物ではない。

しかしながら、これが自然現象と呼んで片付けるには異常な空模様だという事はとうに分かりきっていた。
異質な空気の震え。急速な雲の変化。先刻までは雨が降っていた事を示すかの様に木々は雨露をその葉から静かに垂れ流す。
驟雨であったならばすぐ太陽が照らしても良いものを、逆に曇天の空は暗くなるばかり。
"ウェザー・リポート"による人工的な降雪だろうという結論を導き出すのに、そこまで時間を要するものではない。
直接見なくとも、確信出来る程には彼の行動はそれとなく読めるのだ。


降雪模様に包まれた会場の中、蒼白と憂いと苦笑いを帯びた感情のまま空を眺めるその男。
足取りは重いようで軽いようで、見る者によって様々な印象を受け取らせるだろう。
雪に足跡を残しても、すぐには積もって消えてしまいそうな泡沫の存在。
但し一参加者がその光景を見れば、驚く以外の何事も出来ないに違いないだろう程の異端さを纏っている。


その人物はある物語を紡ぎ、とある物語を夢想し、この会場を作り上げた主催者の一端。



即ち、荒木飛呂彦その人であった。



彼の表情に余裕は微塵も無い。
「目の前に雪にタイヤを取られた車が立ち往生しているから上着を汚してでも助けよう」だとか、
「こんな時に雪が降り積もるのはどう見ても異変だから元凶をとっちめてやろう」だとか、
そんな思考が介在出来る程落ち着いていない、ただただ逼迫した状況に追われている様な危うさ。
差し迫った驚異からの逃亡を図って、行く宛もなくただただ彷徨うだけの放浪のその現場。
導きの灯火は存在せず、ただただ当惑と悲嘆と狼狽と恐怖とその他諸々のマイナスな感情がごちゃまぜになっている。
笑っているのか泣いているのかは本人ですら分からない。グチャグチャなままその一歩その一歩を刻んでいく。
出来る事は歩く事だけ。歩けば舗装された道が目の前に現れるかもしれない、という淡い期待。
云わば遭難者である。


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