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ジョジョ×東方ロワイアル 第八部

537夢見るさだめ ◆753g193UYk:2019/03/27(水) 17:31:22 ID:1qUWgLbM0
 
「ほほう、なるほどお……するってェと、おまえはおれがここでアイテム欲しさに身を引くと、そう考えているワケだな。うーむ、実に浅はかな考えだ……放っておいたところでパチュリーは死ぬのになァ」
「浅はかかどうかは、そのデイバッグを確認してから判断してはどうかね」
「ふむ」

 指で顎先をしごいていたエシディシが、左腕をデイバッグへと伸ばし、掴んだ。刹那、キラークイーンの親指が、点火のボタンを押し込んだ。
 同時に、表情ひとつ変えずに吉影が仕組んだ爆弾が軌道した。強烈な爆破音に次いで、食堂内の窓ガラスがびりびりと振動し、爆破の衝撃が風となって一同に吹き付ける。全員が耳を塞ぐ中、吉影だけがスーツのポケットに手を入れたまま、標的となった男が爆煙に包まれる様を見つめていた。

「よ、吉影……あなたッ」
「あの敵は、ここで『排除』する……パチュリーさんの体内にくだらない『爆弾』を埋め込んだ輩もだ。要は『解毒剤』を奪えばいいのだろう? 素直に従う必要はどこにもない。そしてわたしのキラークイーンは……戦おうと思えば、いつでも敵を『始末』することができる」
「なっ……な……っ」

 決然と宣言した吉影を、パチュリーが絶句して見上げている。夢美も、ぬえも、信じ難いものを見るような目で吉影を見つめていた。こういう目で見られることを避けるため、吉影は人前で能力を使うことを避けて来た。
 けれども、今回は例外だ。吉影の居場所をつくろうと働いてくれる『仲間』の命を脅かす者、それはつまるところ、吉影の居場所をも脅かす明確な『敵』であるということだ。排除することに理由は必要ない。

「で、でもあなた……戦うのは嫌いだって」
「ああ、嫌いだとも。しかしこちらが避けて通ろうとしても、向こうは既にパチュリーさんを『標的』としていて……このままでは、およそ十二時間後にきみは殺されてしまうんだろう? ならば……わたしはこれを乗り越えるべき『トラブル』と判断する。違うかね、パチュリーさん」

 こと集団を守ることに関して、吉影は必死だった。
 ともに過ごした隣人さえも信用できないこの殺し合いの場において、打算ありきとはいえ、吉影の素顔を知った上で、なお吉影の居場所を守るために行動してくれる人間のいる集団など、このチーム以外には想像できない。そういう人間がいるだけで、吉影の心の平穏は守られるのだ。それをみすみす利用されて殺されることなど、絶対にあってはならない。
 必ず守り抜いてやる、そういう決意が吉影にはあった。

「安心したまえ……このわたしが乗り越えられなかった『トラブル』なんて一度だってないんだ。きみの命を脅かす『外敵』は必ず『始末』し……夜も眠れないといったような『トラブル』は必ず解決する」

 もうもうと立ち込める爆煙の中で、人影が揺らめいた。特にもがき苦しむ様子でもなく、黒々とした爆煙を掻き分けて、エシディシが一歩を踏み出す。デイバッグを持ち上げたエシディシの左腕の肘から先は、既になくなっていた。
 全員が瞠目する中、吉影だけが、その黒曜石のような瞳に殺意の炎を滾らせて、真正面からエシディシを睨め付けていた。

「うぬぬう……き、きさまあ〜〜……」
「なんだ……ブッ飛んだのは腕だけか。デイバッグに触れたものを、その細胞の隅々まで火薬に変えて爆破してやったつもりだったんだが……運がいいな。もっとも……その運も長くは続かんだろうがね」
「う……うう……」

 唸るように、エシディシが表情を顰めた。

「なんだ、怒るのか? 自慢の腕をブッ飛ばされて……見下していた相手に一矢報いられたことがそんなに気に食わないかね」
「う〜〜……ううう……」
「怒るなら怒るといい……こう見えて、わたしも怒っているんだよ……大切な仲間が利用されたことに……下手をすれば使い捨てられるかも知れないという事実に。わたしは、わたしの『居場所』を奪おうとする者には……いっさい『容赦』できないタチでね」


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