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ジョジョ×東方ロワイアル 第八部

534夢見るさだめ ◆753g193UYk:2019/03/27(水) 17:26:59 ID:1qUWgLbM0
 
「それが、さっき言った呪いや封印の可能性ね。例えば、宿主の生命力をリソースにして呪術が成り立っていた場合、その生命力が途切れた時点で術も解呪されるわ。だから、広瀬康一の脳内からはなにも検出されなかった。これが一番可能性としては高いように思えるわね」
「その術は……例えば、吸血鬼や幽霊のような種族に対しても、その生命力や能力を制限するかたちで作用しているのかしら」
「むしろ、幻想郷由来の参加者全般にそう作用しているんじゃないかしら。そもそも妖怪なんて、頭や心臓を潰されたって関係ないようなやつらがほとんど。現に私だって、外傷だけで死ぬことは逆に難しいってくらいだしね……この場でさえなければ、の話だけど」

 魔法使いだって生命力に関しては吸血鬼に負けていないとパチュリーは自負している。例え体に深い傷を負おうとも、欠損箇所を魔法で錬成するか、或いは、丸ごと新しい体を作って、そちらに魂を移し替えればいいだけだ。百年単位で遡れば、パチュリーは過去に幾度となくそういった修羅場を潜り抜けている。
 幻想郷に来てからは久しくそういった危機的状況に陥っていないため、パチュリーの体はすっかり埃とカビを含んだ図書館の空気に慣れ、弱体化の一途を辿ってはいるものの、本来であれば、例えあのカーズが相手であろうとも、ああも一方的に無様を晒すような真似はしなかった筈だ。その事実に思い至り、拳に自然と力が入ったところで、パチュリーは再度嘆息し、己を落ち着かせる。

「――話が逸れたわね。ともかく、おそらくこの会場で生きている限り、脳内爆弾から逃れることはできない。でも、この発見は大きな進歩でもあるわ」

 パチュリーは、アルミニウム製のシートを丸めて捨てると、デイバッグから取り出した考察メモの用紙をテーブルに起き、次いで鉛筆に短い呪文をかけた。続くパチュリーの言葉に従って、鉛筆が自動筆記で文字を記してゆく。

「仮に、この呪術が、参加者の一挙手一投足を見張って爆破するものではなく。
 ひとつ、参加者ごとの『強すぎる生命力を制限』すること……
 ふたつ、禁止エリアに入るなどといった『一定条件下で起爆』すること……
 みっつ、参加者が死亡し、その『生命力が途絶えたら解呪される』こと……
 こういった単純命令だけで機能している術式だとしたら、どうかしら」

 眼下のメモ帳には、パチュリーの思惑通り、余計な口語は記録せず、脳内爆弾の仕組みだけが三つ、箇条書きで記されている。夢美はその筆記魔法そのものに瞳を輝かせながらも、活き活きとした様子で手を上げた。

「だから康一くんは既にその呪いが解けていたのね。逆に言うと、この呪術を解呪するような……例えば、死を偽装するようなことができれば、爆弾は解除されるかもしれない!?」
「ええ。可能性としては、それが最も爆弾解除に近い方法じゃないかしら。尤も、蓬莱人や吸血鬼ですら一度で確実に死ぬように設定されているこの場所で、どうやってそんな真似をするのか……というのは大きな問題になってしまうのだけれど……」

 言いかけたところで、パチュリーは思い出したように呟いた。

「そういえば、私はここに来る途中、火焔猫燐と射命丸文の死亡をこの目で確認したわ。だけど、さっきの放送では呼ばれてなかったわよね」
「うん、その名前は聞き覚えないけど……っていうかそれ、パチェの見間違いってだけじゃなくて?」
「馬鹿にしないで。見間違えないわよ、あれは確実に死んでいた」

 茶化すような夢美の視線に対して、パチュリーは双眸を尖らせて断言した。
 柱の男が潜む館に乗り込み、無残にも命を奪われた参加者の死体を、パチュリーはこの目で見せ付けられている。
 柱の男たちがパチュリーを怯えさせる為になんらかの幻を演出したのか、或いは射命丸たちが柱の男たちに対し死んだように偽装したのか、そういう可能性も考えられるが、この件についてはどこまで考えても推測の域を出ない。現時点でのこれ以上の考察は無意味であるように思われた。

「まあ、いいわ。射命丸文と火焔猫燐にもし出会ったら、その真相についても尋ねてみましょう」
「そうね、それがいいわ。けどまあ、なんにせよ、爆弾の仕組みをここまで絞り込めたのは大きいわね、パチェ!」

 考察で表情を固くしていたパチュリーとは真逆、いつも通りの知性を感じぬ薄ら笑みを浮かべた夢美は、すかさずパチュリーに飛び付いた。両腕を首に回し、まるで爆弾が既に解除されたかのようなしゃぎようで飛び跳ねている。パチュリーは夢美を適当にあしらいつつも、今度はその体を引き剥がすことに労力を割くこととなった。


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