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ジョジョ×東方ロワイアル 第八部

485黄金へ導け紫鏡之蝶 ──『絆』は『夢』 ──:2018/11/26(月) 01:27:07 ID:dCSol15U0


「……いつから、見ていたの?」
「初めから、ですわ。それはそれは、第三者が踏み入れる雰囲気でないことは瞭然だった故に。少し空気を読んで、敢えてお声は掛けませんでした」


 あれを見られていたという知りたくもなかった事実が、紫の心に更なる不快感を植え付けた。
 邪仙はこう言うが、その実態など、人間が生む最期の欲を観察したいが為、などといった利己的な理由に決まっている。闇の片隅で、心底純真な眼でそれを眺めている青娥の姿を想像すると、途方もない怒りすら湧き出てくる。

 しかし……今の紫には、この性悪な女を潰す力など一切残っていない。
 改めて、思う。
 ここに来たのが〝マエリベリー〟でなく〝私〟で、本当に良かったと。



「───時に紫サマ? 貴方の式神が何処でどうやって死んじゃったか……ご存知ですか?」



 紫の内が抱え始めた不安と、青娥の切り出しは同時だった。
 動揺は決して表に出さず、急な話題の中心に現れた我が式神の姿を紫は追想する。

「藍かしら? それとも橙を言ってるの?」
「んー。ま、ここでは優秀な方の式神ちゃんの事ね。どうせ知らないんでしょ?」

 何故、ここでその名前が邪仙の口から出てくるのか。
 突如として安易に触れられた八雲紫の地雷。その爆弾が爆発するより先に、紫はどうしようもなく嫌な予感が脳裏を掠めた。


 きっとこの先。青娥の口から聞かされる言葉は。
 私にとって、凶兆となる。


「青娥。今、貴方と遊んでる暇は無いの。3数える内に、視界から消えなさい」

 これが虚勢であると、目の前の邪仙は気付いているのだろうか。
 どちらにしろ、コイツは『目的』を果たすまで消えようとしないだろう。

「あーでも。別に貴方の式神がどこで野垂れ死んだのかは、この際どうだってよくってよ」

「3」

「重要なのは……『貴方の式神』である『八雲藍ちゃん』が、とうに舞台から御退場してしまったっていう事実なのよね〜」

「2」

「私としては『ザマーミロおほほ』って感じではあるんですが、それはそれでちょっと消化不良といいますか……煮え切らない気持ちもあるっていうか。死ぬくらいじゃ生温いと思ってるんですよ」


 もう、我慢ならない。

 紫はとうに枯渇している妖力の残りカスを井戸から何とか引き揚げ、目前の道化へと翳した。



「───だから、私の大事な大事な『芳香ちゃん』をバラバラにしてくれちゃったあの女狐への『仕返し』は、主人である貴方が代わりに受けて頂きます」



 零に等しくも、あらん限りの力を放出する瞬間……その言葉が耳に入り。

 愛する従者への侮蔑に怒りを抱いているのは自分ではなく、青娥の方であったと。

 不出来な式神がしでかした行為の因果が星回って、今。己を喰い尽くす禍へと変貌したのだと。

 八雲紫が、それを理解したのは。



 ───青娥の右腕が胸から潜り込み、心臓を引き裂きながら背中まで穿いた、一瞬の後であった。


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