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ジョジョ×東方ロワイアル 第八部

484黄金へ導け紫鏡之蝶 ──『絆』は『夢』 ──:2018/11/26(月) 01:26:04 ID:dCSol15U0

















 ひた。


 ひた。




 蝶を追おうとした彼女の…………その背後から。
 つまりは、横たわった蓮子の身体を挟んだ、その向こう側の闇から。
 “それ”は響いてきた。
 
 暗闇に木霊する、雫の落ちる音とでも形容しようか。
 どうしようもない終焉の足音。自らの破滅を予感させる楔(くさび)が、床を嘗めずるように近付いてくる。


 コツ。


 コツ。


 足音は、靴の音色へと変わっていた。
 裸足で闇を踏むようなさっきの音は、錯覚だったらしい。
 この不吉な錯覚を認識した紫は、全てを観念したように……背後へと振り返った。



「女の勘……とでも言いましょうか」



 聴く者によってその声は『聖女』とも『悪女』とも呼べる、しんしんとした柔らかな奏で。
 真っ暗闇の会場でただ一人の観客となってしまった紫にとって、その声がもたらす調律は後者を予期させた。


「何となく……分かってしまうものですの。同じ女である貴方様にも、ご理解頂けるかと。


 ────ねえ。〝八雲紫〟サマ?」


 霍青娥。
 邪仙の忌み名を冠する彼女が、当たり前のようにそこへ立っていた。
 浮かべる笑みは、驚くほど静かに波打っており。
 涼やかな感情の内に渦巻くほんの僅かに混ぜられた『怨恨』に、対面する紫は気付く事が出来ずそのまま会話を続ける。

「……よく、分かったわね。蓮子ですら、“私”だと気付けなかったのに」

 この言葉は戯言だ。
 蓮子は、目の前の親友の姿が嘘っぱちだと気付いていた。

「だから女の勘ですよ。それに……蓮子ちゃんだって、まだまだ子供とはいえ立派な女。本当に貴方が“メリーではない”って気付く事なく逝ってしまわれたのかしらね?」

 “メリー”に扮した八雲紫は、青娥の知った風な疑念に言葉を詰まらせる。
 そんな言葉を、よりによってこの女から聞きたくはない。不快だ。

 宇佐見蓮子は“どうして”最期に笑ってくれたのか。
 それは彼女の優しさだったのだろうという都合の良い解釈が、自分の中にあるのは事実。
 かもしれない。そうに違いない。そんなあやふやな解釈で宇佐見蓮子を“知った気でいる”紫には、彼女を真に測る資格など無いというのに。
 少女の胸に抱えられたまま眠りについた真実は、結局……彼女にしか分からない。
 永久に、分からないのだ。
 それはもう、終わったこと。

 ここにいる紫は、事実はどうあれ結果的に蓮子を騙した事になる。
 たとえそれが、秘封倶楽部を慮った行動だとしても。
 思い遣りから生まれた行動が、巡り回って真実を遠ざけてしまったとしても。

 紫の心からは罪悪感は拭えない。
 そして。
 だからこそ紫には、蓮子を偽り、彼女を看取った責任がある……と、そう感じている。
 本来の“八雲紫”の姿を与え、別行動を促したメリーに対し、すぐにでも伝えるべき言葉は多くある。
 あの子にとって、きっと……とても辛いことになるが、全ての責は紫にある。その事も含め、話さなければならない。
 こうなってしまった以上、メリーが大きく傷付く未来は避けようもない。
 そんな彼女の手を取り、導く者が必要となる。
 当事者である紫自身では、きっとない。恐らくは───


 紫は首を振り、目の前の事象に目を向けた。


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