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ジョジョ×東方ロワイアル 第八部

481黄金へ導け紫鏡之蝶 ──『絆』は『夢』 ──:2018/11/26(月) 01:23:52 ID:dCSol15U0
『マエリベリー・ハーン』
【夕方 16:25】C-3 紅魔館 玄関前


「……マエリベリーに付けていた『ブローチ』の反応が地下に移動しました。どうやら作戦は成功したようです、紫さん」
「それは良かった。後は〝マエリベリー〟が蓮子ちゃんを元に戻して私たちと合流すれば撤退。
 さ、鈴仙が帰ってきたら、こんな目に悪い赤赤しい館からはさっさと退散しましょう」


 紫さんと私の肉体はどうやら本当に入れ替わる事が出来ているらしい。今や私の体は『八雲紫』そのもので、不思議な事にあの人の持つ『記憶』すらも私の中にある。それが私の口調や所作を八雲紫の振る舞いとして映るよう、ごく自然に動かしていた。

 その事が、私にとっては少し怖い。

 私と紫さんが肉体を交換した理由──その『表向き』の理由は、DIOを騙す目的。あの人は困惑する私へと、笑みすら交えながら説明した。
 嘘ではない。でも……『本当の理由』が、言葉の裏側には隠されていた。あの人と記憶を共有した私には、それが分かってしまった。

 分かっていながらあの人を行かせたのは、きっと。
 紫さんの抱えた『覚悟』や『想い』が、彼女と同調を遂げた私にも理解出来てしまったから。

 何故あの人が、わざわざ〝マエリベリー〟へ代わったのかも。
 何故あの人が、『夢』の中で『七色の虹』の話を語ったのかも。

 〝八雲紫〟の意思と記憶、力を受け継いだ私には……全部、理解出来る。

 だから私は……今がとても怖い。
 紫さんは先にこの場を離れろと指示した。後から二人で追い付くから、と。
 それは私の安全を思っての事なんでしょう。ここはまだ、敵の陣地内なんだから。

 早く……早く二人に逢いたい。逢って、安心したい。
 未来なんてものは結局、誰にも分からないから。
 もしひどい未来を知ってしまったなら、人はそれを回避しようと躍起になる。
 そうなれば……もっと悲しい結末になるかもしれないのに。
 だから『覚悟』なんて出来ないし、するべきでないと思う。


 そして───だからこそ人は『今』を精一杯に生きようとするに違いないもの。




「……鈴仙が慌てふためきながら帰ってきたわ。DIOの足止めにも成功したようだし、すぐにここを離れるわよ、ジョルノ君」

 見れば、鈴仙さんが涙目でこっちに走ってくる光景を確認できた。
 良かった。私は囮役を引き受け(させられ)た鈴仙さんの無事に心から安堵する。
 ジョルノ君も私と同じように彼女の無事を認め、安心して。
 私へ確認するように、唐突に言った。


「……紫さんは、それでいいのですか?」
「……え?」


 彼が私をじっと見つめる。空気が少し、重くなった。

「いえ……杞憂かもしれませんが、僕はやはり〝マエリベリー〟が心配です。さっき初めて彼女と会話を交わした僕ですらそう思うのですから、貴方はもっと心配なのではないですか? 彼女の事が」
「……マエリベリーの事なら、私は信頼してますので」

 気丈に振る舞う言葉とは裏腹に、心中ではジョルノ君の言葉に大きく揺さぶられていた。
 心配。そんなの、当たり前だ。紫さんは今、たった一人で蓮子と向き合っている。
 あの人は私の『身代わり』になってまで、戦っているのだから。

「信頼というのは……とても重要です。僕自身も貴方のことは信頼してます。しかし、今回ばかりは……貴方の判断に首を傾げています。
 ハッキリ言いますよ。僕は今からでも、地下のマエリベリーの元に向かうつもりです」
「ジョルノ、君……」

 強い意思を持った人だと感じた。とても年下の男の子とは思えないくらい『気高い覚悟』を持つ人だなと。

 彼の言葉を聞いて、私も決心できた。
 ごめんなさい、紫さん。
 私もジョルノ君と一緒。貴方を残して行けません。

「……ふう。分かったわ。共に地下へ降りましょう。私だって二人が心配だもの」
「ありがとうございます。……それとは別件なのですが」

 軽く礼をしたジョルノ君は、すぐに私を訝しむような顔つきへと変わった。


「───紫さん。もしかして〝貴方〟は…………いえ、何でもありません」


 思い詰めた表情を切り替えるようにして、彼は私から視線を逸らした。
 私も何となく、彼が『私の正体に気付いているのかも』とは感じていたけども。
 でもジョルノ君はそれ以上何を言うこともなく、駆け寄ってくる鈴仙さんに労いの言葉を掛けて気付かない『フリ』をしてくれた。


 今は、私もそれでいいと思って。
 紫さんの『フリ』を続けて、クタクタの鈴仙さんを労わってあげた。


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