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ジョジョ×東方ロワイアル 第八部

478黄金へ導け紫鏡之蝶 ──『絆』は『夢』 ──:2018/11/26(月) 01:22:13 ID:dCSol15U0

















「……………………ごめんなさい。本当に……ごめんなさい……蓮子」



 私は、独りになっていた。
 何故、こんなにも涙を流しているのだろう。
 何故、こんなにも謝っているのだろう。
 蓮子を救えなかったから?
 違う。そんなわけがない。
 私の心は、何も失われていない。
 宇佐見蓮子など、所詮は人間の少女。死んだところで心は大して痛まない。

 じゃあ、止めどなく頬を流れるコレは、何処から溢れだしているものなのだろう。
 これは〝私〟の涙なんかじゃない。
 これはマエリベリーの涙に過ぎない。
 友達を喪った哀しみが、あの子の心を通して〝私〟へと流れて来ている。


 ただ、それだけ。
 そうに、違いなかった。


「ごめん、……なさぃ…………蓮子…………っ」


 じゃあ、絶え間なく喉から転がる謝罪は、何処から溢れだしているものなのだろう。
 これは〝私〟自身の言葉だ。
 これは宇佐見蓮子を最期まで偽った負い目から溢れる言葉だ。
 死にゆく少女に〝メリー〟だと偽って嘘を吐いた……〝私〟自身の罪だ。


(私は……一体何故、〝あの娘〟に成りきろうとしていた……?)


 秘封倶楽部の活動は世界の『真実』を解き明かし、『謎』を暴くこと。
 では、蓮子は今際の際にどうしただろう?
 腕の中で眠るこの少女は何を想い、最期の一言を発したのだろうか?
 蓮子は。本当は……気付いていたのかもしれない。


 死にゆく自分へと懸命に声を掛け続ける親友の正体が。
 マエリベリー・ハーンの姿を借りた〝八雲紫〟という偽者。その『真実』に。


 少なくとも蓮子は。目の前の友の姿がメリーではないという事には気付いていたに違いない。
 いつからだろうか? それすら、もう分からなくなってしまった。
 真実に気付いていながら、彼女はその『謎』を無理に暴こうとしなかった。暴くべきでない謎も、この世には在ると理解していたのだろう。
 蓮子は「ありがとう」と、最期にそう言い掛けて……止めた。
 すぐに言い直して、メリーの名をしっかりと呼んで、死んだのだ。

 何が「ありがとう」なのか。
 自分を騙したつもりでいる相手に掛ける言葉ではないというのに。
 その言葉は、何故最後まで紡がれなかったのか。

 八雲紫はずっとメリーに扮してきた。メリーの殻を着たままに、親友である宇佐見蓮子を偽ってきた。
 それは蓮子の視点から見れば、悪趣味な演技以外の何物でもない筈なのに。
 どうして彼女は、気付いてない『フリ』をしたままに、笑いながら逝ったのか。

 ああ。それは凄く簡単な事だ。
 蓮子は、紫の『優しい嘘』がとても嬉しかった。
 紫の演技が悪意や打算などではなく、もう助からないと悟った蓮子へ魅せる、秘封倶楽部という名の『最期の夢』なんだと分かり、心から嬉しく思ったのだ。心優しい嘘に、咄嗟に「ありがとう」と言い掛けてしまい、気付かないフリで誤魔化した。

 何もかも、蓮子の為。紫の嘘は、蓮子を想うが為にあった。
 蓮子もそれを分かっていたから、何も言わず、〝メリー〟の名を呟いて……逝った。

 要は、紫は気遣われたのだ。
 それは蓮子が紫の嘘に対して嬉しく思ったからこそだった。
 優しい嘘を優しい嘘で返すような、意趣返し。
 本当に、とても単純な話。


 出来ることなら……彼女を『本当』のメリーに会わせてあげたかった。
 今はもう、叶わぬ夢だと分かってはいても。


「私はただ……『必要』だからあの娘と入れ替わった。それだけなのにね?
 …………蓮子」


            ◆


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