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ジョジョ×東方ロワイアル 第八部

471黄金へ導け紫鏡之蝶 ──『絆』は『夢』 ──:2018/11/26(月) 01:13:11 ID:dCSol15U0

「じゃ、じゃあ早速この『夢』から目覚めて蓮子の所に……!」

 そうと決まれば、と言わんばかりにメリーは浮き足立つ。くしゃくしゃだった表情には希望が灯り、鳥居の向こうまでいざ往かんと駆け出そうとする。しかし紫はそんな彼女を制し、空を仰いで冷静に状況を見つめ直す。

「こらこら待ちなさいな。そうとなれば作戦と事前準備は必要よ」
「作戦、ですか? でもあまり時間が無いんじゃあ……」
「降らぬ先の傘、って用心の言葉があるでしょう? 相手はあのDIOなんだから尚更」

 未だ濡れそぼる紫色の傘をクルクルと弄びながら、辺りに水滴を撒き散らす。思案しているというよりは、単にどう切り出すかを狙っている様な振る舞いだった。
 プランならば既に頭の中にある。こうなる事は初めの内から予感していたが故にプロット自体は完成していたが、それを実行する選択を取るつもりなど紫には無かっただけ。
 罪な女だと。紫は自分をほとほと卑下する。
 だが今はもう決めてしまった。ならば最後まで抗って抗って、メリーの為に動き出そう。

 宇佐見蓮子は、責任を以て自分が救い出す。
 もう決めた事だ。メリーの無垢な笑顔を見ていると、悩んでいた自分が愚かだとすら思えてくる。

 これから話す内容は、メリーにとっては些細な話。
 しかし同時に、心に刻み付けて欲しい戯言でもある。


「───ねえ、マエリベリー。貴方には『夢』はあるかしら?」


 唐突に紫は、傍の少女へと語りかける。
 その質問と同じ内容を、かつてはあの黄金の少年にも問い掛けた。

「夢……?」

 首を傾げる自分と同じ顔の少女に、紫は苦笑しつつ。
 すっかり日も暮れた夜空の向こう。疎らに点灯していく人工の光たちの、もっと上。
 夜景に咲く満開の虹を扇子で指し。御伽噺を朗読するように穏やかな口調で語る。


「貴女は、虹を見るとどんな気持ちになるかしら?
 夢。希望。幸運。
 虹は『転機』の象徴であると同時に、光そのもの。七色には、それぞれ意味があるの」


 紫はあの虹の向こうに希望を見た。
 ここにいるメリーは今、巨悪に立ち向かおうとしている。
 肉の芽などというモノは欠片に過ぎないが、これを浄化し友人を救うという行動は、DIOに立ち向かうという無二の勇気に他ならない。

 だからこそ紫は、少女に敬意を表した。
 だからこそ紫は、少女を手伝いたいと思った。
 そしてきっと。
 そんな健気な少女の『味方』となってくれる者は、自分以外にいる筈だ。
 この少女には、もっと出会うべき正義──喩えるなら、『黄金の精神』を持つ者達が存在する筈だ。

 マエリベリー・ハーンに真に相応しい味方は、私なんかじゃない。
 そんな予感が、紫の奥底で胎動していた。


 スゥ……と、紫は瞳を閉じた。空を指した腕は、そのままに。
 七色の演者達を誘う指揮者のシルエットが、無音の旋律を導き出す紫の指先から重なっていく。
 虚空のステージで煌びやかに舞踏を舞うは、気まぐれな指揮者の愛用する小綺麗な扇子。
 タクトと呼ぶには装飾の過ぎるそれが、始めに示した先の演者は──〝赤〟のトランペット。

「あの美しい虹を御覧なさい」

 夜空に聳える幻想的な七色を、大舞台の楽団に見立てて。
 壇上に佇む紫は、その最も強い光を放つ色から一つ一つを指し示してゆく。
 指揮棒の役割を賜った扇子は、独特のリズムで紫の指先を舞い続ける。
 観客席には、彼女もよく知る少女ただ一人。


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