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ジョジョ×東方ロワイアル 第八部

470黄金へ導け紫鏡之蝶 ──『絆』は『夢』 ──:2018/11/26(月) 01:12:27 ID:dCSol15U0

 八雲紫は正義の味方などではない。人間を食い物にし、利用する妖怪だ。
 慈善事業で人助けなど、気まぐれが起こらない限りやりはしない。ましてや件の少女はメリーの親友とはいえ、幻想郷とは無関係な外の世界の人間だ。
 とはいえ紫も、鬼や悪魔ではない。鬼は紫の友人にもいたし、悪魔は館を不在にして好き勝手に暴れているだろうが。余裕があるのなら、メリーの親友というのだ、助けに奔走するくらい請け負ってやる。
 問題は、その余裕が無いことにある。
 こちらの戦力はメリーを省いても三人。対するDIO一派の全勢力は不明。先の予測が出来ない危険な賭け。それにメリーを巻き込むのだけは、したくなかった。

「紫さん……! お願い、します。私がここから逃げたら、DIOはきっと蓮子を……」

 深々と頭を下げるメリーの姿に、紫の罪悪感がはち切れそうな程に膨らむ。
 こんな冷酷で心が軋むような宣告、やりたくてやってる訳ではない。

 紫は平常心を偽る裏で、かつてない『選択』に迫られていた。

「どうかお願いします! 私一人じゃあ、蓮子を救えない! 誰かの助けが必要なんです!」

 垂れ下げ続けるメリーの顎先から、雫が落ちた。
 その懸命な姿を無視してでもメリーを連れ出す権利が、自分如きに有るのだろうか。
 誰にだって有りはしない。少女の操縦桿を好き勝手に握り強制する権利など、この世の誰にも。


「……それほどまでに、蓮子の事が大事?」


 やがて、紫が言い放った。
 眼差しはあくまで冷たいままで、出来るだけ低い声色を作り上げて。


「大好きな、友達です」


 返ってきた言葉は、紫の『選択』を決定付けるに充分な答えだ。
 この決定は、幻想的の未来すらも左右しかねない重大な分岐点。
 もし『しくじれば』……八雲紫はそこで死ぬ公算が高いのだから。
 そして、そうなってしまえば。目の前で頭を垂れる少女にとっても……その人生を大きく変えてしまいかねない、選択。


(……やっぱり、こうなってしまうのね)


 誰にも聴こえない声量で呟かれた、彼女の言葉。
 その中身が示す通り、紫は心中の何処かで『こうなる事』を予想していたのかも知れない。
 予想、というよりは、予感。
 それはともすれば、夢の中でメリーと出逢うよりも前から感じていた漠然な予感。
 いつからだろう。
 ジョルノへと夢を語った、あの時から?
 メリーからのSOSを朧気ながらキャッチした、あの時から?
 それとも。この会場に運ばれ、目を醒まして初めに見た……あの鮮明な星空に浮かぶ七つの星。
 ───彼らを見上げた時から?


 予感とは曖昧だ。
 それがたとえ、自分の中に確固として渦巻くモノであっても。


「───負けたわ。貴方のその、純粋な気持ちに」


 かくして八雲紫は、『選択』の末に舵を切った。
 メリーの涙を見なかった事にして前へ進めるほど、紫は強い女性ではない。

「……え」
「なんて顔をしているの。『蓮子を助けてあげる』って言ったのよ」

 涙と鼻水でグシャグシャに汚れる寸前の顔を、メリーはグンと勢いよく上げた。
 可愛げのある少女を見て、紫は対照的に笑ってみせた。誰もが心を射止められるような、美しく朗らかな笑顔で。

「ほ、ホントですか!?」
「あら。嘘であって欲しいの?」
「い、いえそんなっ! あの! あ、ありが……」
「お礼はいいの。私は貴方で、貴方は私なんだから。
 私は私の為に、貴方を助けるようなものよ。だからお礼はナシ。いい?」
「わ、分かりました……?」

 人を惑わすような理屈でまた丸め込められ、メリーは袖で顔を拭いながら了承する。


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