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ジョジョ×東方ロワイアル 第八部

465黄金へ導け紫鏡之蝶 ──『絆』は『夢』 ──:2018/11/26(月) 01:07:28 ID:dCSol15U0
『〝マエリベリー・ハーン〟』
【夕方 16:24】C-3 紅魔館 地下道


 永い……永い、永い、気の遠くなる程に永い暗闇のトンネル。
 メリーにとっては本当に……永過ぎる闇だったのだろう。
 仲間の力を借り、DIOを嵌めて。上も下も周囲全てが真っ暗闇の『スキマ』の中を通り抜けると、そこもまた闇だった。
 それでも、今までの暗闇とは比較にならない程に明るい。
 地下道に備え付けられた電灯程度の灯りでも、今の彼女にとっては希望の光だ。
 光は、手を伸ばせば届くほど近くにまで迫っている。
 そう思えて、仕方が無い。

 普通である少女にとってはあまりにも絶望的な殺し合いの鐘が鳴って、16時間が経つ。彼女にとっての暗闇は一日にも満たないが、この十数時間の間……これまでの人生で体験したことの無いくらい、深い深淵であったのだ。
 ついさっきまでの『夢』の中でメリーは、とうとう自分すらも見失い掛けた。邪悪の化身が植え付けようとした闇とは、それ程までに底の見えない奈落の闇だった。
 闇から引っ張り上げたのは、メリーを鏡写しに描いた様な女性。
 名を、八雲紫という。

 奈落から、大空へ。
 メリーは空を翔ぶ術を手に入れた。
 しかし少女は、奈落に堕ち続ける『親友』の姿を放ってはおけなかった。

(蓮子は……必ず私が元に戻してみせる。闇の中から引き上げてみせる。そう約束したんだから)

 こんな薄暗い地下道でも、メリーが溺れていた闇に比べれば『天国』みたいなものだ。
 だって、宇佐見蓮子はもう───すぐ目の前にいる。
 これが希望の光でなくて、なんなのか。
 今までとは違う。ここには、蓮子を引き上げる術がある。
 あの夢の中で、八雲紫とマエリベリー・ハーンが〝交叉〟した。
 この奇跡がきっと、闇に閉ざされた蓮子を救い出してくれると信じ。

 少女はとうとう。


「───ここまで、来たわよ。蓮子」


 メリーと蓮子は、真の意味においては未だ再会を果たせていない。目の前に立つ蓮子は、メリーの知る宇佐見蓮子ではないのだから。
 ジョルノ・ジョバァーナと鈴仙の力を借りて、ここまで来ることが出来た。
 DIOに一泡吹かせ、蓮子を分断させる所まで来れた。
 ただの少女であったこの腕には〝八雲〟の力が僅かなりに秘められている。

 ───後はもう、私の力で。


「……メリーもしつこいなあ。せっかくDIO様から目に掛けられてるってのに、馬鹿の一つ覚えみたいに『蓮子蓮子』ってさ。私、いつからメリーの彼女になったワケ?」


 スキマの力で地下道まで叩き落とされた蓮子。その身には怪我一つない。そうなるよう、気を遣って落としたのだから。
 無論、メリーの体にだってかすり傷一つない。お互い万全な状態で、空を堕ちる様に落ちてきた。

「あら。その言葉、そのまま返せるわよ? どこかの誰かさんだって、二言目には『ねえメリー、ねえメリー』って。耳にタコが出来るかと思っちゃった」

 二人っきりのアンダーグラウンド。
 白い帽子の少女は笑い、
 黒い帽子の少女は嗤っていた。

「そりゃあそうよ。私、メリーのこと大好きだもん」
「ありがとう。私も、蓮子のことが好きよ」

 いつもの大学のカフェの、いつものテーブルで冗談を掛け合う、いつもの日常。
 笑い/嗤いながら交わされる二人の言葉のみを捕まえれば、殺劇の舞台には相応しくない会話。

「ふーん? 嬉しいけど女同士でそういう台詞、ちょっとアブなくない?」
「人様の『初めて』を奪っておきながら、今更そんなこと言うの?」
「あはは。アレはさあ、空気っていうか、流れじゃん? もしかしてメリーは嫌だった?」
「嫌に決まってるでしょう。ノーカンよ、あんなの」

 少女達の距離は縮まらない。
 とても近い者同士の会話に見えてその実、二人の距離は星と星の間のように遠い距離。

 それも、これまでの話だ。
 この遠い遠い距離は、これから埋める。
 蓮子から歩み寄ることは決してないだろう。
 然らば、こちら側から一方的に歩み寄ればいいだけの話。

「でもね、蓮子」
「うん」
「───〝マエリベリー・ハーン〟が好きなのは、嘘に塗れた『貴方』じゃない。……秘封倶楽部の頼れるムードメーカー『宇佐見蓮子』なのよ」


 手を取るとは、そういう事なのだから。
 ああ。何だか、今までとは逆だ。今までは蓮子がメリーの腕を掴んでいたのに。


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