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ジョジョ×東方ロワイアル 第八部

458黄金へ導け紫鏡之蝶 ──『絆』は『夢』 ──:2018/11/26(月) 00:59:46 ID:dCSol15U0
『サンタナ』
【夕方 16:36】C-3 紅魔館 地下大図書館


 サンタナは、非常に不似合いながらも頭を抱えていた。
 格好だけを述べるなら、腕を組んで床に胡座を掻き、深く物思いに耽るポーズであるも、項垂れた頭部から下がる長髪によって男の表情は幕の向こう側に隠れている。
 悩む、という思考の過熱はこれまたサンタナに不似合いの現象だが、近頃はそれにも慣れて適応しつつある。それは彼が一個の『人格』を確立させた何よりの証明に他ならない。齢上では万を越えた生物であるにかかわらず、人間で言うところの幼児期や思春期にあたるパーソナリティ形成時期が、彼にとってようやく訪れたと言える。

 これまでに自分は悩んだ事が無い。
 超生物が抱えるにはあまりに世俗的なその事実に、サンタナは今まさに灯りの見当たらない不安を抱えていた。
 彼は自分の道を既に歩み出している。始めの一歩を踏み出すまでに途方もない年月を掛けてしまったものの、そこを歩む自己に対して後悔は無い。
 狭き道であり、唯一の道。しかし唯一だと思っていた道に、ここに来て『分岐点』が発生した。


 主達に仕えながら個を貫くか。
 離反し、新風を受けてみるか。


 仮にこのまま主の元に戻るルートを取るとする。
 言うまでもなく主は呆れ返るだろう。間違っても、傷付き帰還したサンタナへと労りの言葉など掛けやしない。最悪、怒りを買って首を撥ねられかねない。

 では、DIOの下に付くルートではどうなるか。いや、吸血鬼の家来にまで成り下がるのは幾ら何でも有り得ない。しかしDIO自身が口にしていたように、奴はあくまで『仲間』としてサンタナを欲していた。無論それだってサンタナの矜恃をある程度保たせる為の奴なりの方便であり、そこに大差は無いのかもしれない。
 どうあれ、DIOが未知数の相手である事に変わりはない。従ってDIO側に付くルートを辿った場合、そこからの道程は更なる未知が待ち受けているだろう。
 主達から離反するその行為自体には、然程の抵抗は無い。ワムウほどのお堅い忠義心は、サンタナの中ではとうに形骸化しつつあるゆえに。
 しかしそうなった場合、主の怒りを買うどころではない。彼らは飼い犬に手を噛まれるという侮辱行為を塗りたくられたと憤怒し、本格的にサンタナを狩猟対象に捩じ込むのが目に見えている。

 つまり、所詮は馬鹿な思い上がりなのだ。DIOの側に付くという愚行は。
 じゃあ何故、こうにも悩む自分が居る?


「オレは……一体どうしてしまったのだ?」


 孤独が故にサンタナには今の状況を合理的に判断出来る経験がまだまだ足りていない。合理的とは言ったものの、誰が考えたって主達の元に戻るルートが最も無難な行動なのは彼自身理解している。
 最高の結果を求めるなら、やはりDIO討伐を成すべきだった。そうでなくともスタンド能力の秘を掴むくらいには届かせるべきだった。こうなってはもう後の祭りでしかないが。


「……スタンド能力、か」


 天啓が降りてきた、という程の閃きでもないが。別にわざわざ戦いの中で奴の秘密を探る必要など、全く無いのではないか?
 確かにサンタナ個人の目的を考慮すれば、主の命令以上に重要な到達点とはDIOとの戦いの延長線上にあったものだ。とはいえ命令の完遂をしくじる事は、サンタナの道の終点を意味する。少なくとも『ザ・ワールド』の秘密くらいは、どのような過程であれ探り取るべきだ。

「首とまではいかなくとも、土産のひとつぐらいは絶対条件か……」

 このまま帰還すべきでない。拙い悩みの末にサンタナは、この地での滞在へと方針を切り替えようとする。

 どうにか……どうにかして奴の部下からでも何でもいい。
 『ザ・ワールド』の秘密を探る。現状のオレにおける最善はそれしかない。短時間で、という条件付きでな。



 サンタナは保身に近い理由を強引に編み出し、DIOに近付こうと目論んだが。
 その『真意』は実際の所やや異なる。都合の良い建前で自らの本音をも濁し、許し難い感情からは一先ず目を背けた。


 なんのことは無い。
 サンタナはDIOへと、興味が湧いているのだ。


 愚かな感情など、視界に映らない端へと置き。
 長時間、思考の渦に飲まれていた事実をやっとの事で認識して。
 手元の時計に目をやろうとした、その時。


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