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ジョジョ×東方ロワイアル 第八部
454
:
黄金へ導け紫鏡之蝶 ──『絆』は『夢』 ──
:2018/11/26(月) 00:54:37 ID:dCSol15U0
「メリー……あの少女は、そんな彼らに比べたらとても幸福だ。私という存在と引き合えたのだから。これを『引力』と言わずしてなんと言う?」
あるいは、DIOはこのようなタチの悪い演説を心から、本気で宣っているのかもしれなかった。無類の前向き思考。自分にとっての吉の因子を無作為に取り込み、都合良く解釈する。
いや、言ってしまえばDIOのそれは、未来に巡り会うべき運命にある事象を彼自身の力で実際に引き寄せているのかも知れない。本当の意味での『引力』が彼に働き掛けているのではないかと、こうして相対する紫は思わずにいられない。
ふざけた話だが、つまるところ彼は強運の男なのだ。だからこそあらゆる物事が彼を中心に回り始めていると言っても過言ではなかった。
その辺りは、どこか霊夢にも相似している。彼女とDIOの持つ『運のメカニズム』は、共通点も多い。
しかし霊夢と違い、DIOはやはり邪悪だ。自己中心的過ぎる道程を踏破した末の結果にて、望む物が手に入れば良い。過程などどうでも良く、無数の骸が積まれようが男は躊躇せずして歩みを止めないだろう。
「私はメリーと共に『天国』へ辿り着く。……もう、お前は要らないな。八雲紫」
外界の人間や社会が腐ろうが、DIOの礎になろうが、紫にとって然したる暗礁とはならない。どうでもいいとまでは言わないが、外は外。中は中で完全差別化出来ているのだから。
紫の危惧する問題とは、男の目指す道の過程に幻想郷への著しい悪影響が発生しかねない可能性だ。
そこに横たわる聖白蓮の亡骸が既に、幻想郷の被害者なのだから。
DIOは次に、メリーをも毒牙に掛けるのだと宣言している。
あれは幻想郷どころか我々の住む宇宙側にも一切関係無い、境界が見えるだけのただの少女。
───けれども、もう一人の私だ。
「貴様にマエリベリーは渡さない。必ず護ってみせます」
八雲紫の宣誓した、その瞬間には。
DIOの口の端は不気味に釣り上がり、そして。
「貴様程度では、このオレには勝てん。今までに誰一人として仲間を護れなかった、貴様ではな」
『世界』が、八雲紫の心臓部を貫いていた。
「───あの娘を護るのは、私ではない」
口の端を釣り上げていたのは、DIOだけではなかった。
胸を穿たれた女が喉奥から吐き出したモノは血ではなく、敵の煽りを否定する希望の言葉。
身体の中心を『世界』にて抉ったDIOは、その感触に圧倒的な違和感を覚え、間を挟むことなく答えに辿り着く。
肉を潜り進む陰惨な触覚が、拳の先から伝わらない。かと言って、十八番のスキマにより肉体に穴を開いて躱したのでもない。
これは。
“この”八雲紫の体は。
「……人形かッ!」
拳大の穴をほじられた紫の体が見る見るうちに変貌し、変色し、物質を変えていった。
木。
不敵に微笑んでいた彼女の表情すらも、無面の木材質へ変わっていく。バキバキに砕かれた木人形は食堂の壁に叩き付けられ、糸が切れたようにへたり込んだ。
それは所謂デッサン人形として使われるような、人のシルエットを形作り簡単な関節を宛てがわれた等身大の木偶人形。
八雲紫に変身能力があったのか? 恐らく否、だ。
DIOは今の今まで、八雲紫の姿と声と性格を与えられたお人形と会話していたという事になる。恐ろしい事に、本人の服装すらも完璧な模倣を可にするコピー人形。
木偶人形をまるで『スタンド』が如く遠隔から操る。
そんな真似が出来る木偶が『あの場』には居た筈だ。
(確かディエゴの報告にあった。『奴』は変身能力を持つ人形を傍に立たせていたという……!)
間違いない。“この”八雲紫の正体は……!
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