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ジョジョ×東方ロワイアル 第八部
449
:
黄金へ導け紫鏡之蝶 ──『絆』は『夢』 ──
:2018/11/26(月) 00:45:58 ID:dCSol15U0
仮面が、剥がされた。
対峙するホル・ホースには眼前の吸血鬼がそう映り、慄く以外の全ての行動を丸め込むように封鎖された。
警戒しているのか、DIOはプッチの遺体をこれ以上検分しようとしない。そんな必要など無いと言わんばかりに、男は次の台詞を吐き出した。
「さてホル・ホースよ。お前がとっとと撃たないから、獲物を横取りされてしまったようだな?」
今やDIOは床の死体を一瞥もしない。代わりに見据えるのは、恐怖心を押し殺して打開を探るカウボーイの伏せた双眸だ。
皇帝を具現させる暇すら与えてくれない。DIOはもう、決して隙など見せてくれない。
「お前が聖を撃たなかったのは……『迷い』が生じたゆえだ。だがそれは、お前の未熟には繋がらない。
寧ろ、だ。───素晴らしい。最後の最後、お前の双眸は完全に恐怖を支配していた。殺意に塗れた、躊躇なく人を殺せる者の眼を完成させていた。背後に立つ私からでもよく分かる程に、ね」
爪の垢を煎じて静葉に飲ませたいくらいだ。男はそう続かせ、ジョークでも零すみたいにクク……と肩を震わせ笑った。ゆらりと揺れた黄金の髪が、ホル・ホースには不吉な兆しにも見えた。
ホル・ホースは浅はかな勘違いをしていた事に、ようやっと気付かされた。先の場面で静葉が横から割って入らなければ、蛮勇を振り翳したホル・ホースはきっと背後のDIOを攻撃し、あえなく返り討ちにされていたろう。静葉の行動が、結果的にホル・ホースを救ったのだと。
───そんな甘い夢みたいな、勘違いに。
「お前の実力に素晴らしい才能があるだけに───とても残念だ」
静葉の横槍など、この男の前では関係無かった。
あのとき死ぬか。これから死ぬか。違いなどそれだけで、自身の寿命がほんの僅かに延びたに過ぎない。
ただ、それだけだ。結果は何も変わりはしなかった。
「残念だよホル・ホース。お前が最後に披露した本物の殺意を向ける相手が……『私』でなければ、きっと信頼出来る部下になれたろうに」
変わりはしない。
ホル・ホースが迎える死の結果は、変わりはしなかった。
「私の友を撃った愚挙は水に流してやろうと考えていたのに。君はその『信頼』を裏切った。
本当に残念だが───お前はここで死ぬべきだ、ホル・ホース」
長々と時間を掛けながら全身徐々に氷漬けにされていく悪寒がホル・ホースに取り憑く。指先をピクリとも動かせない一方で、歯だけはカチカチと警鐘のように喧しい音を鳴らし続けていた。皇帝で反撃しなければという、なけなしの戦意すら湧いてくれなかった。
殺し殺されが蔓延る暗夜の世界で生きている以上、いつの日か無惨にくたばる未来が訪れることは承知しているつもりであった。死ぬなど絶対にお断りだと思ってはいるが、もし『その時』が訪れれば、それはそれで結構あっさりした気持ちを迎えながら死ぬのかもなあ……という漠然たる気持ちも何処かにあった。
それでも。あぁ、そうだとしても。
DIOのとある部下が、いつだか彼に語っていたあの言葉が……最後になって理解出来た。
───この人にだけは、殺されたくない───
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