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ジョジョ×東方ロワイアル 第八部

448黄金へ導け紫鏡之蝶 ──『絆』は『夢』 ──:2018/11/26(月) 00:45:03 ID:dCSol15U0


「なるほど。つまりそれが、君の『答え』という訳だね。秋静葉」
「…………は、……い……、」


 誰にも理解出来なくていい。
 静葉の中でのみ、この儀式には絶対的な意味があるのだから。

 少女の腕の中で、白蓮を殺した『武器』がにゃあと鳴いた。
 この奇妙な生物に、『奪う』という行為の意味は理解出来なくていい。
 静葉の中でのみ、殺しを遂げた事実が渦巻いていれば良いのだから。

 理解出来なくていい。理解出来なくていい。理解出来なくていい。
 誰も私を理解出来なくていいし、する必要なんかない。
 私は『必要』だから殺した。誰だって良かった。
 他者の骸を足元に積み上げる、それ自体に意味があるのだから。
 私は今、泣いているのだろうか?
 どうしてなのかな。もう、『四人目』だというのに。
 前の三人は平気だった……いや、一人目の時は、同じように泣いていたと思う。
 あの時と同じだ。初めて明確な意思で、誰かを殺したあの時と。
 忘れてなんかいない。その時の『恐怖』は。
 ……いや、それも違う。
 『忘れよう』としていた。その時の恐怖を。
 感情を忘れて、ひたすらに目的だけを見据えていた。
 DIOに会って、その行為が『逃げ』だと気付かされた。
 そして、諭された。強引に思い出された。


 私は『弱い』のだと。
 そして、その自覚を忘れるなと。


「頭の中の『声』は、どうなったかね?」
「…………消えません。どころか、一つ増えました」


 だろうな、と。予想していた静葉の返答に、DIOは感慨無さげな反応で終えた。
 裏腹に、彼の心中では少女の『戦い』へと万雷の拍手を送っていた。単なる殺人鬼ならば嫌という程に見飽きた。今までの機械的な静葉であれば、その道へと進み抜け……半ばにして倒れていたろう。
 無論、今の『本来』の秋静葉であれば、更なる苦境が待ち構えている事はもはや確定事項だ。それを受け入れ、弱き己を認め、その上で逃げずして、再びこのDIOの前へと姿を見せた。

 己を誤魔化さずに、正面から受け止めた。
 何よりその勇気ある行動を称賛すべきだと、DIOは本当に嬉しく思う。

「君は神の身でありながら『聖女』を殺した。この先もっと辛い運命が、君を様々に悪辣な方法で試すだろう」
「…………理解、して、います」

 未だ息荒くするか弱き少女は、私の望むがままの答えを示してくれた。
 彼女には伸び代がある。ここに来てようやくスタートラインに立てたと言えた。
 これより先の荒野を駆けるのは、彼女の足だ。私はそのきっかけを与えたに過ぎん。

「鳥は飛び立つ時、向かい風に向かって飛ぶのだという。追い風を待っていてはチャンスなど掴めん。君は君自身が握る操縦桿で、空を翔ぶのだ」
「わたし、自身の…………」

 死ぬかもしれないという恐怖。
 害されるのは嫌だという拒絶。
 手を血で染める行為への忌避。
 今の秋静葉には、負の三拍子が揃っている。
 弱者には当然備わるべき気持ちを、誤魔化さず、捻じ曲げず。
 本来の秋静葉が持つ弱さ/強さだからこそ、私は傍に置きたいと真に思う。


「改めて───友達になろう。秋静葉」
「私なんかで……良ければ、是非とも……」


 優しく差し出された腕に、静葉は縋るようにして応えた。
 少女が男の前で涙を流すのと、腕を取るのは、共に二度目となる。一度目とは大きく異なる意味を擁したアーチは、『声』にうなされ続ける静葉の頭の中を熱く蕩けさせた。まるで麻薬だ。
 先程までとは別の意味で焦点が合わさらない少女の瞳目掛けて、腕を解いた男は新たに投げ掛ける。

「実はね、静葉。君に会わせてみたい人物が館の地下図書館に居る。彼は、君の境遇と少し似ているかもしれない男だ。興味があるならば……話してみても良いかもしれない」

 危険な生物、とは敢えて警告せずに伝えた。折角手駒に加えた良質な『仲間』が、早くも壊される可能性を危惧しつつも。
 しかし奴──サンタナは、静葉など問題にならない程に強力な人材。故になるべく懐に迎えたいが、手網を握るのは困難な暴れ馬に違いない。
 そこで、まずは静葉を遣わせ様子見だ。奴はどうやらこの自分に対し、ある種の嫌悪を抱いている様子なのは明らかだからだ。静葉が喰われた所でさほどのダメージとはならないが、奴を本格的に敵へと回すデメリットは静葉のロスを優に超える勘定と判断する。

「君とは……多少の『縁』もある筈だ。きっと有意義な時間を過ごせると思う」

 騙すような物言いとなったのは少々気が引けるが、物は言いようといった言葉もある。
 果たして静葉は、DIOの言葉を疑いもせずに歩み出した。その後ろ姿をしばらく眺めていると、途端に男はホル・ホースへ向き直り、先とは打って変わった禍々しさを添えた笑みを浮かべて喋くる。


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