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ジョジョ×東方ロワイアル 第八部

385黄金へ導け紫鏡之蝶 ──『絆』は『夢』 ──:2018/10/04(木) 18:18:38 ID:KBSZFcPc0


「自分の事しか信じられないってのは、物語の悪役が吐くようなアウトロー台詞よ。
 だとしたらメリーの足は、どうしてこんな所まで来たのかしら? たった一人で」


 それ、は……。


「“宇佐見蓮子(わたし)”を助ける為よね?
 ねえメリー。
 私は……『敵』?
 私は……『偽者』かな?」


 紡ぎ出すべき言霊が、喉から出ていこうとしない。
 いま、否定したばかりの『この蓮子』は。
 疑いようもなく、私の知っている『宇佐見蓮子』だから。
 朱に交われば赤くなる、なんて話ではない。いくら邪心を植え付けられようと、心を支配されようと。
 その体は、確かに私の親友のモノなのだ。
 彼女が『偽者』であったら、どれだけ救われただろう。


「うん。そうよねメリー。
 私は偽者でも作り物でもない。
 貴方の大切な親友……宇佐見蓮子なのよ。
 『この世界に真実は自分独り』だなんて……そんな哀しいこと、言わないで」


 私を惑わす甘い蜜が、耳の中からとろとろと流し込まれて。
 蜘蛛の毒を混ぜられた熱い蜜は、次第に私の全身を麻痺させながら血液と共に循環していった。


「思い出してメリー。貴方は他に頼る相手が居ないから、自暴自棄になって周りを排除しているだけ。
 だから、自分だけしか信じられない。
 だから、私の手を払い除けて殻に閉じ篭ろうとする。
 だから、蛹のまま。
 だから、一人じゃ何も出来ない。
 だから、『秘封倶楽部』って幻想にいつまでも縋り付く」


 背に絡んでいた蓮子は、いつの間にか私の目の前に移動し、黒墨を流し込んだような瞳を真っ直ぐに向けていた。
 見たくもなかった親友の、あられもない姿が否応に映り込む。
 四肢を蜘蛛糸に絡み取られている私はどうする事も出来ず、せめてギュッと瞼を固く閉じた。


「“勇気”……? 貴方のそれは、破れかぶれの末に振り撒く蛮勇なだけ。
 “可能性”……? 一つに狭められたけもの道は、可能性とは呼べない」


 真っ暗闇な視界の中、雨に濡れた両頬にそっと添えられる、暖かな指の感触。
 蓮子の添えた指は、私の冷えきった心を暖かく染め上げた。
 母が産まれた我が子を抱きしめるような、愛に満ち満ちた命の熱に……私は。


「もっかい訊くわね、メリー。
 “貴方は本当に、自らの意思で此処へ来たの?”」


 わ、たし……は…………


「違う。貴方は、そう思わされているだけ。
 本当は、喚ばれたに過ぎない。
 どんどんと削り取られた“可能性”っていう道が、
 最終的にたった一つにまで崩されて。
 貴方は、その道を“選ばざるを得なくなった”……
 それが、私たちがいる……この『世界』よ」


 私が、“思わされて”いる……?
 私が……“喚ばれた”……。

 それは───


「誰、に……?」


 孤独の世界に、私は途端に恐怖した。
 独りでいる事に、耐えられなくなって。

 頬の温もりが、愛おしく感じて。

 私はついに……、


 ───瞼を、開けた。


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