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ジョジョ×東方ロワイアル 第八部

380黄金へ導け紫鏡之蝶 ──『絆』は『夢』 ──:2018/10/04(木) 18:10:59 ID:KBSZFcPc0

 不敵に指をさされながら返された答えは、DIOを十全に納得させる内容には些か足りていない。
 全く曖昧で不躾な返事。理解しろという方が理不尽で、揃えて示すべき言葉が不足し過ぎている。
 向こうには何かしらの理由があるかのような言い回しだが、ハッキリ言ってDIOにはまるで思い当たる節もない。仲間から命令を受けた、とでも言っていれば余程納得出来たというのに。

 それ以上の確たる理由が、サンタナにはあるのだ。
 そしてそれは、既に述べられた。
 これ以上の詮索は、お望みでないらしい。


「……何やら懸命になっているところ悪いが」


 興味は、ある。
 しかし、今は時期が悪い。


「このDIOを名指しで指さしたからには、身の程を叩き込む必要があるようだ」


 ザ・ワールド。
 即座に時を1秒止め、戯け者の侵入者を真横から殴り飛ばした。
 サンタナは突如襲った衝撃を堪えること叶わず、軽い弧を描きながら図書館の壁に激突する。
 派手な光景とは裏腹に、手応えはほぼ無感触。カーズの時と同じで、物理的なダメージは奴の皮膚に吸収されるように虚となって消えた。
 とはいえ効いていない訳でもない筈。白蓮とは真逆で、柔軟な肉体構造が衝撃を散らす緩衝材の役割を担うといった所か。


「身の程ならば、よく理解して来たつもりだ。嫌という程にな」


 口元を吊り上げながら、サンタナは上体を起こした。
 五臓六腑に染み渡る程の衝撃だが、蝿にでも止まられたかのような反応には、流石のDIOも少々青筋が立つ。
 とうに理解してはいたが、この敵は人間ではない。近いところで吸血鬼にも思えたが、それとも少し違う奇妙な存在である。
 今更な話だ。ここには数多くの妖怪が跋扈しているのだから、それを考える行為など『無駄』とも言える。

 予想するに奴は、体面ではスタンドの秘密を暴きに現れた単体偵察の役目。ホイホイと時を止めようものなら、後々の進撃が予想される本隊との戦いに支障をきたす。
 そう慎重になるも、ジョルノと白蓮が既にザ・ワールドの秘密を知っている。奴らがここぞとばかりに一声あげれば、能力などいとも簡単に知れ渡ってしまいかねない。

 少し、面倒な状況だ。
 小さく舌を打ち、DIOがサンタナを鋭く見据える。

「DIO。あのサンタナとやら、恐らく……」

 プッチがDIOの思考と同調するタイミングで、背後より語り掛ける。

「ああ……プッチ。私が出会った『カーズ』や、君の話していた『エシディシ』。その仲間の一人として考えていいだろう」

 人伝いではあるが、聖白蓮や洩矢諏訪子が苦戦しながらも退けた男・エシディシ。ディエゴからも軽く聞いていた特徴を重ね合わせて、目の前のサンタナは十中八九エシディシの一派でもあるだろう。

「白蓮曰く、エシディシは相当の手練であり、何よりその能力が異常極まると聞いている。
 サンタナと名乗る奴も、同等の力量があるかも。……僕も手伝うかい?」
「いや、それには及ばない。それよりもプッチ……」

 白蓮といえば……。そう続けようと首を後方へ回しかけたDIOへ、耳に障るエンジン音が侵入した。

 サンタナに気を取られている隙に、白蓮とジョルノ……それに担がれた鈴仙が、倒れたバイクを起こして跨っていた。
 狙いは、逃走か。
 プッチはすぐさまホワイトスネイクを起動させ、阻止しようと迎撃態勢を取る。

「構わんプッチ。精々、一時的な前線脱却だ。奴らはまだ『目的』を何一つ達成出来ていない」
「……かもしれないが、見逃す理由にはならない」
「無論、奴らは必ず始末するさ。とはいえ……」

 暴獣の如きサンタナが、白蓮らと共同戦線を張るとは考えにくい。
 しかしちょっとした“弾み”で、ザ・ワールドの能力の秘密が白蓮からサンタナへと伝達する可能性は決して無視出来ない。
 その“弾み”は、なるべくなら取り除きたい。であれば、白蓮らとサンタナの分離はこちらとしても都合が良い。

 DIOの無言に込められた含みを察したのか、プッチもそれ以上動かない。
 そうこうする内に三人を乗せたバイクは、重量制限の規定を超過したままに、唸りを上げて出入口の扉を走り抜けた。
 後部に乗せられたジョルノが一瞬振り返り、DIOの視線と交差する。
 まなじりを細めながら彼らの逃走を見届けたDIOは、その後ろ姿がすっかり見えなくなると、肩の力を抜くように観念し、一言だけ呟く。


「プッチ。───奴らは任せた」


 その言葉は、DIOによる『ただ一人の友人』への信頼。
 同じ言葉でも、部下へ与える命令とは一線を画す、プッチにとって絶大なるエネルギーを働かせる言霊。

 神父は何も返さず、ただ一度頷き。
 闇を反射する駆動音を逃さないように、彼らの後をゆっくりと追跡していくのだった。


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