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ジョジョ×東方ロワイアル 第八部
379
:
黄金へ導け紫鏡之蝶 ──『絆』は『夢』 ──
:2018/10/04(木) 18:10:08 ID:KBSZFcPc0
「貴様……───」
零れ落ちた一言は、DIOの妖艶な唇からであった。
床を爆ぜらせる程に驚異的なロケットスタートを見せた怪物の容姿に、見覚えがある。
カーズ。
確か、数時間前にここ紅魔館にてディエゴと交戦していた化物の名だ。
翼竜の情報では、特級の危険参加者だと聞いている。
そのカーズと目前の男は、衣裳や空気が大きく似ていた。
(なるほど。奴の送った刺客か偵察といった所か)
他には目もくれず、という程でもないが、この乱入者は戦地に現れると同時、DIOのみを瞳の中心に捉えて真一文字に突っ込んできた。
ターゲットがDIOである事は瞭然である。
「稚拙だな。血の昇った猪とて、もう少し捻りを加えた突進を試みるぞ」
一片の動揺すら漏らさず、ザ・ワールドが敵の突撃を身体で食い止め、続く蹴りの牽制で相手を引き離す。
白蓮の速度の方が余程恐ろしい。彼女と比較すれば、こんな猪同然の獣を止めることなど、時を止めるまでもない。
「───オレは」
わけなく振り払った獣が、両の拳をグッと握って僅かに俯いた。
か細い呟きが、男の口から転がり落ちるように漏れて床へとぶつかる。
「……?」
突如乱入してきたかと思えば、何をブツブツと。
DIOだけでなく、その場の全員が同じように首を傾けた。
振動する男の肌は、何処を根源として噴き出された震えか。
その怪物は、またも爆ぜるように……吼えた。
「オレは……『サンタナ』だッ!!!」
天を仰ぐサンタナの張り裂かれた喉元を震源地として、衝撃波が図書館を揺らした。
そこいらに積もった塵が一斉に吹き荒れ、棚の片隅に積まれたままとされていた古本達がバタバタと音を立てて崩れゆく。
「……〜〜〜っ!?」
倒れ伏した鈴仙、隻腕であったジョルノ以外の全ての人物が、何事かと反射的に両耳を塞ぐ。
キンキンと鳴り止まぬ派手な耳鳴りを見越しての、即興音響兵器。そういう意図を持たせた咆哮ではないらしいことが、サンタナの鬼気迫る表情からは感じ取れる。
マトモな意思疎通くらいは可能なようだ。未だ鼓膜に響く耳から手を離し、DIOは極力、苛立たしい声色を隠しながら会話を試みる。
「そうか……“サンタナ”。それで……貴様は何故、このDIOの前に立つ?」
白蓮相手にも質した内容は、サンタナへも同じ言葉で投げ掛けられた。
尤も、問うまでもない疑問だ。カーズの体のいい駒として使われた、都合の良い番犬。そんな程度の、聞く価値もないつまらん目的だろうなと、DIOは見下すように鼻を鳴らす。
しかし今、不必要なほど高らかに叫ばれた名乗りの意味が掴めない。
親交を深める為の“最低限”の礼儀作法として、DIOは見知らぬ相手にもよく名乗ったりはするが、今現れた暴君の咆哮は、お世辞にも交流を目的とした自己紹介には到底聞こえなかった。
闘いにも作法はある。剣を交える相手への前口上として、堂々名乗りをあげる輩も少なからず居るし、自らのスタンド名を明かして攻撃を仕掛けるスタンド使いもその一環と言っていい。
サンタナはそれらの、所謂『礼節』を重視するようなタイプと同列にはない事が、荒々しい言動や醸す空気から把握し足り得る。
対敵へと名乗る行為、それ自体に彼なりの大きな意義があるのか。
そう仮定するなら、サンタナが此処まで足を運んだのは、勅命なりを受けて馳せ参じたといった受動的な理由だとも単純に断定できない。
DIOはものの一瞬で、サンタナにまつわる事情をそこまで看破してみせた。
彼の人心掌握術が成せた業前という点も大きいが、サンタナの名乗りには、それほどに魂の込められた熱い感情が渦を巻いていたのだ。
『名前』には、ときに不可思議な言霊が宿るものだというのは、白蓮とのやり取りでも分かるようにDIOの持論である。
目の前の『サンタナ』とやらは、その理を理解しながら名乗ったのだろうか。
DIOの思う所では、男のそれは凡そ本能に沿った行為なのだろう。
漠然でありながらも、唯一彼にとっては重大な意図を占めるもの。本質を理解せずとも、遺伝子に残った感情が雄叫びを上げているような興奮状態。
そういった意味ではサンタナとDIOの思想は、真逆のようでいて、根源的な部分は一致していた。
不安定なままに、サンタナはDIOから問われた意味を彼なりに噛み砕き。
うっすらと『自己』を主張する。
「何故、お前の前に立つかだと……?」
「簡単な事だ」
「“それ”が、必要だからだ」
「オレは、オレにとって必要なモノを取り返す為に」
「お前の前へと、立つ───DIO」
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