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ジョジョ×東方ロワイアル 第八部
343
:
黄金へ導け紫鏡之蝶 ──『絆』は『夢』 ──
:2018/09/14(金) 21:04:21 ID:lQG/D5qE0
(こ、声が……出ない!?)
『声』を円盤化させ、盗られた。
彼女は素知らぬ事だが、プッチはついさっきもDIOの『視力』を一時的に抜き取り、鈴仙の攻撃を無効化させるという奇策を披露している。
右目を潰され、白く透き通るように物柔らかだった声をも失った白蓮は、敵のこの攻撃に潜む意図を察した。
声が出せないという事は、どういう事か。
俗に謂われる『スペルカード』という弾幕攻撃。
幻想郷に住まうあらゆる少女達が好む遊戯に使用される、オリジナル必殺技のようなものだ。
スペルと名の付くからには、呪文またはそれに類する手段を利用して作り上げる弾幕なのだが。
少女達は、そのごっこ遊戯の中でこそ如何にもといった技名を宣言……つまりスペカを唱え多種多様な弾幕を描く。
別名:命名決闘法と定められている以上、スペカの宣言は必要だというルールも確かに存在するが……実の所、弾幕を放つのにその宣言は必ずしも必要とはしない。
あくまでルールの中での取り決めなのだ。命名決闘法の外であれば、わざわざ宣言するまでもなく不意打ちを狙うのも当然ながら自由なのである。
要は、多くの少女達は技を放つのに『声』を発する必要が、実は無い。
が、例外も存在する。
聖白蓮。彼女を幻想郷の人外その他諸々の種族にカテゴライズするならば───『大魔法使い』だ。霧雨魔理沙やパチュリー・ノーレッジといった魔女系統もこれに相当する。
呪文やお経を“読み上げる”行為を起点とし、肉体強化魔法並びに全てのスペカを発動させるスタイルだ。
その彼女の『声』が奪われた。
それはつまり、肉体強化含む全スペカが封印されたも同義───
「───魔法『魔界蝶の妖香』」
縮小された視界の中、白蓮は悠然と敵を見つめ……
───唱えた。
声は、まるで響かない。
誰一人の鼓膜に、掠りともしていない。
けれども、その唇の動きだけは確かに一つのスペカ宣言を成し終え。
物陰に隠れながら彼女を窺っていたプッチには、不思議とそう聞こえた。
プッチの狙いに誤算があるとしたなら。
白蓮の操る『魔人経巻』……誰が呼び始めたのか、通称エア巻物にびっしり記された呪文には、読経の必要が無いという事だ。
その特殊な巻物には、広げるだけで“読み上げた”事とする機能が搭載されていた。白蓮の速攻の秘密とは、まさにこれの恩恵に依る所が大きい。
(あの教典……思った以上に厄介だ! それに私の居場所がバレているのか……!?)
紫色に光る蝶形の弾が所狭しと駆け巡る。その狙いは正確とは言えないが、白蓮がプッチの居場所を凡そ見当付けている事の証明だ。
法力万全の白蓮の五感は鋭い。プッチにとって不運なのは、その五感の内、視覚と聴覚が半ば塞がれている障害が、却って彼女の感覚をより鋭敏に研ぎ澄ませている事だ。
白蓮から見て、右前方の本棚の後ろにプッチは身を隠している。
事実上の即死効果を与える遠隔操作型スタンドを持ちながら、近接超特化型の白蓮の前に本体が身を晒すメリットは皆無。果樹園で交戦した際は作戦上、本体のみで迎え撃っただけだ。
勢いに乗った白蓮に迂闊に近付く愚など有り得ない。教科書通りにプッチはスタンドのみを対峙させるも、彼女は遠距離攻撃すら充分なカードを揃えているらしい。まこと、大魔法使いの称号は伊達じゃない。
それでも、スタンドを持たない白蓮から見ればプッチは脅威だ。スタンドを前に立たせるだけで、大概の弾幕の盾となってくれる。
プッチの隠れる直線軌道上を翔ける蝶弾のみ、ホワイトスネイクが手刀で弾き落とす。こうなってしまっては分が悪いのは白蓮の側であった。
全方位に広がる蝶の弾幕をものともせず、ホワイトスネイクはあっという間に白蓮の元に辿り着いた。
彼女のDISCを確実に獲る為、視界の消失している右側から攻める。ザ・ワールドの拳とは違い、ホワイトスネイクの指は受ければ即・戦闘終了となり得る。
(避け切れない……っ!)
DIOから受けた幾多の攻撃は、彼女の俊敏性を明確に奪う程の鈍痛をその足へ蓄積させていた。
ホワイトスネイクの攻撃を、完全に回避しきれない。
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