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ジョジョ×東方ロワイアル 第八部

1 ◆YF//rpC0lk:2017/12/27(水) 20:28:42 ID:gcTLuMsI0
【このロワについて】
このロワは『ジョジョの奇妙な冒険』及び『東方project』のキャラクターによるバトロワリレー小説企画です。
皆様の参加をお待ちしております。
なお、小説の性質上、あなたの好きなキャラクターが惨たらしい目に遭う可能性が存在します。
また、本企画は荒木飛呂彦先生並びに上海アリス幻楽団様とは一切関係ありません。

過去スレ
第一部
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/otaku/12648/1368853397/
第二部
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/otaku/12648/1379761536/
第三部
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/otaku/12648/1389592550/
第四部
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/otaku/12648/1399696166/
第五部
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/otaku/12648/1409757339/
第六部
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/otaku/12648/1432988807/
第七部
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/otaku/12648/1472817505/

まとめサイト
ttp://www55.atwiki.jp/jojotoho_row/

したらば
ttp://jbbs.shitaraba.net/otaku/16334/

162魔館紅説法:2018/04/11(水) 22:08:23 ID:yKigOAvE0


「君は言ったね。『優勝し妹を蘇らせた後、全ての元凶となった荒木と太田に復讐する』と」
「……妹にあれ程までの残酷さを与え、見せしめにした彼らを私は絶対に許しません」

 踊らされているというのは、理解もしている。
 その上で奴らに一度は頭を下げ、最愛の妹を取り戻す。
 帰ってきた妹の身体を私はぎゅっと抱きしめ、きっといっぱい泣いてしまうかもしれない。
 そうして二人だけの時間を幾分過ごし……私はあの二人に復讐をするつもりだ。
 どんな事をしてでも妹を蘇生させたい。不条理な形で妹を奪った彼らをとても許せない。

 だから。


「その成否はともかく……君のやろうとしている事は何の筋も通らない矛盾の塊で、しかも最後の最後に復讐ときた。その無駄な行為に一体なんの意味がある?」
「矛盾……無駄、ですか」
「そうとも。『無駄』なのだ。奴らを許せないという気持ちは私にも分かる。だがそれなら尚のこと。
 あの主催者にへりくだり、頭を下げて願いを叶えてもらう。そして、用済みとばかりに奴らを始末する。意味不明であるし、私であれば絶対にやらないだろう」
「……それ以外に、私に残された道は無いじゃない!」

 自分でも嫌という程に理解していた矛盾を、DIOはあっさりと突いた。これがただの興味本位や嫌がらせなどではなく、話を進めるのに必要な過程だと分かっていても、静葉は大声を出さずにはいられない。


「それ以上に、妹を蘇生した後に主催に復讐する……私にはその点が、どうにも引っ掛かる」


 組ませた腕をトントンと指で叩きながら、男は難しい顔を作り口を開いた。


「主催への復讐というのは、君にとって都合の良い『口実』…………本当の所は、君は最初から『死ぬ』つもりなのだろう?」


 見抜かれている。私が誰にも打ち明けずにいた、あまりに見苦しい真意を。


「君がどれほど強くなったところで、主催には及ぶべくもない事など子供にだって分かるだろう。ならば初めからそんな妄言など捨て去り、蘇った妹と再び末永い幸福を堪能すればいい───普通はそう考える」


 それが出来ないから。
 そんな選択肢など残っていない事は、とっくに知っているから。


「君がそれをやろうとしないのは『強くなった後の事を最初から考えていない』から───すなわち、主催に歯向かい、返り討ちにあって……壮絶な死を遂げる事それ自体が最後の目的となるからだ」


 不思議と、鼓動は静寂を貫いていた。
 死に誘う毒を着飾られた、静寂である筈の心臓は。
 静かな空間であったから余計に。
 まるで獣の唸り声のように、低く、畝ねって聴こえた。



「ハッキリ言おう。君は自分の犯した罪に耐えきれる人種ではない。
 だからこそ、最後に死のうとしている。背負ってきた自罪や他者の終焉、その全ての怨から逃げ出す為に」



 奥に長く広がった大食堂の、ちょうど中央部の壁に立てられた古めかしい時計台。
 それが鳴らす脈動と、私の胸の脈動が交響を奏でる。

 DIOさんの語った『それ』は、核心でしかなかった。
 私がこのゲームに呼び出されて、最初にあのガンマン達の決闘に巻き込まれた時から───『そいつら』は私に憑きまとって来たんだから。

163魔館紅説法:2018/04/11(水) 22:09:05 ID:yKigOAvE0


「君は何人殺した? 二人? いいや、三人だ。
 既に三人の命を奪った君は、もう後戻りなど出来ないだろう。初めの一人……『グイード・ミスタ』を殺害した時点で、君の魂は呪われているのだから」


 呪い。その言葉はこれ以上ないくらい、今の私の状況に相応しい意味を孕んでいる。


「君は殺人者の汚名を被ることを決意したその瞬間、きっと思ったろう。
 『感情を克服しなければ』『冷徹にならなければ』……とね」


 沈みゆく月天の下、あの鉄塔で寅丸星と交わした会話が遠い記憶のように思えた。
 エシディシを倒すには。ゲームに優勝するには。感情を捨て、死に物狂いで構えなければならない、と。


「口では簡単に吐き出せる。現に君は今まで、それが出来ていた。……『表面上』ではね。だが、秋静葉という人物はそもそもそんな事が出来る少女ではなかった筈だ。
 余程の『悪のカリスマ』でなければ無理なのだ。殺した人間を、まるで食ってきた『パン』の様に扱うなんて事は」


 そんな事は……言われなくても分かっていた。
 他人にはいくら偉そうに論っても、こんな自分なんかが心から非道になりきるなんて幻想は。

 だから。


「だから、君は一刻も早く逃げ出したいと今も考えている。
 現実から。
 罪悪から。
 呪縛から。
 生からも。

 それが秋静葉という神様のベールを剥いだ、正体だ」


 私、秋静葉は死ぬつもりでいた。
 愛する妹を地獄の吹き溜まりから掬い上げ、そしてひとり残したまま。
 ミスタさん。お空さん。寅丸さん。
 そしてこれからも、私が登るべき『崖』に選んでいく人達は……きっと増え続ける。

 ああ、だというのに、あろうことか私は。
 そんな尊いはずの命たちを、このさき永遠に背負っていく罪悪の意識にきっと……耐え切れない。
 非情になりきれない半端者。それだけならまだマシかもしれない。
 奪うだけ奪ったその結果、妹を取り戻して、そして最後に逃げ出す。
 今だって、本当はとても恐ろしい。
 ちょっとでも気を抜いたら、殺した人達の『声』が頭の中に絶えず反響してくるんだから。
 だから、敢えて考えないようにしてたのに。目を背けていたのに。

 強くなった後の事なんてどうでもいいと。
 穣子が帰ってきてくれるのなら、それでいいと。

164魔館紅説法:2018/04/11(水) 22:09:52 ID:yKigOAvE0



「その未来には、妹の幸福はない」



 黙りこくった静葉へと言葉を掛けたのは、DIOではない。後ろで控えていたプッチの方だった。


「妹の為にはなんだってやる。その心意気自体には尊敬するよ。
 だが、自ら死を選ぶような愚かな真似は、残された妹を必ず不幸にさせる。家族が罪を犯すことを喜ぶ者は居ないんだ」

 教戒師らしい、いっぱしの言葉。それを説く神父の瞳は静葉を捉えているようでいて、その背後にいる別の誰かに語り掛けているようにも見えた。

 それは瞳に反射するプッチ自身であり、壮絶な非業の末に自殺を選んだ彼の妹をも含んでいる事を、DIOのみが知る。
 静葉はプッチの言葉の真実を推し量れない。代わりにそれは、過去に対峙したある妖怪の残した言葉へと被る。


 ───『わかった。……わかったわ、アンタは、何もわかっちゃいないってことが。
 私もまだちょっとしかわかっていない……家族が罪を背負うってこと。
 だけど、アンタがこれから何人も殺して、みのりこって子をわざわざ生き返して、
 その子まで悲しい目に合わそうっていうなら、アンタは今すぐここで焼き殺す!』


 あの地獄烏が訴えようとしていた事が、今になって脳を揺さぶる。
 当初穣子には何も伝えず、何も知らせぬまま事を終えようとしていた。
 それでいいと。あの子がそこまで苦しむ必要はないと。
 そんな身勝手な理由で、姉は妹の前から姿を消そうとしていた。
 頭に響く『声』がずっと憑きまとって来るのが、苦しくて苦しくて、心は今にも壊れそうで。
 消え去りたい。そう思うようになってきた。そんな事、絶対に思っちゃいけないのに。

 もしそんな事をすれば、穣子も姉と『同じこと』をやるかもしれない。
 理由も分からず消え去った、唯一人の姉を取り戻す為に。
 罪を重ね、自らも地獄の輪廻に飛び込もうとするのかもしれない。


「静葉。君がこれから戦っていかなければならない相手とは、強力な参加者の数々などではない。主催者でもない。
 乗り越えるべき『崖』とは、君が過去に蹴落としてきた相手そのものだ」
「私が、殺してきた人達……?」
「そう。君が弱者である限り、頭に響く『声』が鳴り止むことはないだろう。殺人をなんとも思わない人種でもない君が、如何にして過去の罪と折り合いを付けるか」
「過去、なんて……でも私、どうすれば」
「君はどうして、わざわざ『自分の手』を汚してまで寅丸星を殺す道を選んだ? それには意味があった筈だ」


 踏み越える、ため……。
 もっともっと多くの敵を屠れば、頭の中の『声』なんか気にならなくなるんじゃないか。そんな観念も、あったかもしれない。
 結果的には『声』は無くなるどころか、増えただけだった。


「過去を乗り越えるとは、生半可な事ではない。先程の『勝利者』の話と矛盾するような事を言うのかもしれないが、過去との繋がりを断ち切る事もまた、人が『勝利者』へと登り詰めるのに必要なステップの一つなのだ」


 DIO曰く『最終的に繁栄出来た者こそ真に勝利する』との弁。
 繁栄とは、過去なくして成り立たない。その過去を断ち切ってしまうのでは、もはやその人間に勝利が訪れる事は未来永劫無いのではないか?

165魔館紅説法:2018/04/11(水) 22:10:47 ID:yKigOAvE0


「断つべきとは、自分にとって『害悪』となる過去……『因縁』の事さ。それさえ乗り越えれば、人は自ずと己の収まるべき地点に到達できる」
「私にとって、害悪となる因縁……」
「間違ってはならないのが、『逃げ出し』てはいけないという事だ。過去から目を背けていては……過去に屈し、『死』へと逃げようとする人間は、永遠の敗北者でしかない」


 DIOの語る内容には、絶対的な信念と説得力が備わっていた。まるでそれは、彼自身に言い聞かせているようにも静葉には思えた。


「私は、そんな敗北者には一寸たりともの興味も無い。君が『勝利者』か『敗北者』のどちらになるのかは……それは君自身がこれから決める事になるだろう」


 DIOが、ゆったりとした動作で椅子を引き、立ち上がった。
 静葉よりも遥かに高い目線の場所から、男は帝王のような光に包まれたその手を差し出す。


「『感動とは人間の中にではなく、人と人の間にあるものだ』……。
 私はこの言葉の『感動』という部分を『引力』という言葉に差し替え、我が人生観とさせて貰っている」

「でも……私は未熟、ですよ」

「愛すべきは、その未熟さだ。未熟さこそが自分の最大の魅力で武器なのだと、胸を張るといい」

「頭の中の『声』すら、満足に振り消せないわ。本音では、誰かを殺す事がとても恐ろしい……!」

「初めて食べた『パン』の味は忘れない。それを美徳だと考えろ。たとえ不様であっても、幸福を求め続けろ。
 君にはこれからすぐにも試練は襲い来る。その時、『立ち向かえる』か『逃げ出してしまう』か……。それが運命を分かつ選択だ」

「独りになるのが怖い! 独りになれば、私は『声』に押し潰されるかもしれない! もしそうなったら、わたしは……わたしは……っ!」

「それでも、もし君が恐怖に竦み、立ち上がれる自信がなくとも……『繁栄』し、『勝利者』になりたいと願い……そして、このDIOに対し何らかの引力を感じたのなら」




「──────その時は、改めて友達になろう。秋静葉」




 私の瞳から流れる雫は、どこを根源としたものなのだろう。DIOの手を取りながら、私は頭の片隅に残った理性で考えていた。

 恐怖でもない。孤独でもない。
 敢えて……敢えてこれを表現するのなら、多分。



 ──────『感動』、なのかもしれない。



▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽

166魔館紅説法:2018/04/11(水) 22:14:15 ID:yKigOAvE0
【C-3 紅魔館 レミリア・スカーレットの寝室/午後】

【秋静葉@東方風神録】
[状態]:顔の左半分に酷い火傷の痕(視覚などは健在。行動には支障ありません)、上着の一部が破かれた、服のところが焼け焦げた、 主催者への恐怖(現在は抑え込んでいる)、エシディシの『死の結婚指輪』を心臓付近に埋め込まれる(2日目の正午に毒で死ぬ)
[装備]:猫草@ジョジョ第4部、宝塔@東方星蓮船、スーパースコープ3D(5/6)@東方心綺楼、石仮面@ジョジョ第1部、フェムトファイバーの組紐(1/2)@東方儚月抄
[道具]:基本支給品×2(寅丸星のもの)、不明支給品@現実(エシディシのもの、確認済み)
[思考・状況]
基本行動方針:穣子を生き返らせる為に戦う。
1:優勝した後、私はどうすれば……?
2:DIOの事をもっと知りたい。
3:エシディシを二日目の正午までに倒し、鼻ピアスの中の解毒剤を奪う。
[備考]
※参戦時期は少なくともダブルスポイラー以降です。
※猫草で真空を作り、ある程度の『炎系』の攻撃は防げます。
※名簿のジョースター一族をおおよそ把握しました。
※プッチ、ディエゴ、青娥と情報交換をしました。


【DIO(ディオ・ブランドー)@第3部 スターダストクルセイダース】
[状態]:左目裂傷、多少ハイ、吸血(紫、霊夢)
[装備]:なし
[道具]:大統領のハンカチ@第7部、基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いに勝ち残り、頂点に立つ。
1:天国への道を目指す。
2:永きに渡るジョースターとの因縁に決着を付ける。
3:神や大妖の強大な魂を3つ集める。
4:プッチらの話を聞く。
5:静葉の『答え』を待ち、利用するだけ利用。
6:ジョルノの反応が近い……?
[備考]
※参戦時期はエジプト・カイロの街中で承太郎と対峙した直後です。
※停止時間は5→8秒前後に成長しました。霊夢の血を吸ったことで更に増えている可能性があります。
※星型のアザの共鳴で、同じアザを持つ者の気配や居場所を大まかに察知出来ます。
※名簿上では「DIO(ディオ・ブランドー)」と表記されています。
※古明地こいし、チルノ、秋静葉の経歴及び地霊殿や命蓮寺の住民、幻想郷についてより深く知りました。
 また幻想郷縁起により、多くの幻想郷の住民について知りました。
※自分の未来、プッチの未来について知りました。ジョジョ第6部参加者に関する詳細な情報も知りました。
※主催者が時間や異世界に干渉する能力を持っている可能性があると推測しています。
※恐竜の情報網により、参加者の『6時まで』の行動をおおよそ把握しました。
※八雲紫、博麗霊夢の血を吸ったことによりジョースターの肉体が少しなじみました。他にも身体への影響が出るかもしれません。
※ジョナサンの星のアザの反応消滅を察していますが、誰のものかまでは分かってません。

167魔館紅説法:2018/04/11(水) 22:14:52 ID:yKigOAvE0
【エンリコ・プッチ@第6部 ストーンオーシャン】
[状態]:全身大打撲、首に切り傷
[装備]:射命丸文の葉団扇@東方風神録
[道具]:不明支給品(0〜1確認済)、基本支給品、要石@東方緋想天(1/3)、ジョナサンの精神DISC
[思考・状況]
基本行動方針:DIOと共に『天国』へ到達する。
1:DIOと話をする。
2:ジョースターの血統とその仲間を必ず始末する。特にジョセフと女(リサリサ)は許さない。
3:主催者の正体や幻想郷について気になる。
[備考]
※参戦時期はGDS刑務所を去り、運命に導かれDIOの息子達と遭遇する直前です。
※緑色の赤ん坊と融合している『ザ・ニュー神父』です。首筋に星型のアザがあります。
 星型のアザの共鳴で、同じアザを持つ者の気配や居場所を大まかに察知出来ます。
※古明地こいしの経歴及び地霊殿や命蓮寺の住民について大まかに知りました。
※主催者が時間に干渉する能力を持っている可能性があると推測しています。
※静葉、ディエゴ、青娥と情報交換をしました。
※名簿のジョースター一族をおおよそ把握しました。


【ディエゴ・ブランドー@第7部 スティール・ボール・ラン】
[状態]:タンデム、体力消費(小)、右目に切り傷、霊撃による外傷、 全身に打撲、左上腕骨・肋骨・仙骨を骨折、首筋に裂傷(微小)、右肩に銃創、 全身の正面に小さな刺し傷(外傷は『オアシス』の能力で止血済み)
[装備]:河童の光学迷彩スーツ(バッテリー100%)@東方風神録
[道具]:幻想郷縁起@東方求聞史紀、通信機能付き陰陽玉@東方地霊殿、ミツバチの巣箱@現実(ミツバチ残り40%)、基本支給品×2
[思考・状況]
基本行動方針:生き残る。過程や方法などどうでもいい。
1:DIOと話をする。
2:幻想郷の連中は徹底してその存在を否定する。
3:ディオ・ブランドー及びその一派を利用。手を組み、最終的に天国への力を奪いたい。
4:同盟者である大統領を利用する。利用価値が無くなれば隙を突いて殺害。
5:主催者達の価値を見定める。場合によっては大統領を出し抜いて優勝するのもアリかもしれない。
6:紅魔館で篭城しながら恐竜を使い、会場中の情報を入手する。大統領にも随時伝えていく。
7:ジャイロ・ツェペリは始末する。
[備考]
※参戦時期はヴァレンタインと共に車両から落下し、線路と車輪の間に挟まれた瞬間です。
※主催者は幻想郷と何らかの関わりがあるのではないかと推測しています。
※幻想郷縁起を読み、幻想郷及び妖怪の情報を知りました。参加者であろう妖怪らについてどこまで詳細に認識しているかは未定です。
※恐竜の情報網により、参加者の『14時まで』の行動をおおよそ把握しました。
※首長竜・プレシオサウルスへの変身能力を得ました。
※光学迷彩スーツのバッテリーは30分前後で切れてしまいます。充電切れになった際は1時間後に再び使用可能になるようです。
※名簿のジョースター一族をおおよそ把握しました。
※プッチ、静葉と情報交換をしました。


▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽

168魔館紅説法:2018/04/11(水) 22:15:20 ID:yKigOAvE0
『霍青娥』
【午後 14:49】C-3 紅魔館 地下階段


 邪仙はメリーと蓮子、ついでにヨーヨーマッを後ろに引き連れて、蝋燭の光に照らされた薄暗い階段を軽やかに登っていた。
 他ならぬDIOに命じられた仕事だ。たとえ小間使いの様に小さな雑用であろうと、彼女は喜んで引き受ける。その内容はというと「メリーと蓮子をここへ連れてきて欲しい」という、本当に些細な仕事だ。

 彼はあの後、感情の高ぶりに涙する静葉へと敢えて部屋で休むよう促した。今の彼女を一人にするというのは本人も言っていた通り、精神的にも少々危うい判断だ。それに一言で素直に応じた静葉の未来も、一体どうなるか楽しみの一つとも言える。
 ともあれ手の空いた青娥は、積もる話も後に、こうしてメリーらと仲良く館の内部を歩き進んでいる。

 DIOがメリーに目を掛けている理由の深い所までは分からない。しかしながらそれは、一般的な人種に近い蓮子を始末せず、わざわざ肉の芽で支配してまで間接的に籠絡しようという企みだ。

「メリーちゃん、だったわよね? それで、『どう』?」
「…………」

 軽快な足踏みと口調の青娥に対し、問い掛けられたメリーは無言で返した。完全に、気力を失った人間の顔。こうして後ろを付いてくるのがやっとという、絶望に包まれた少女のそれである。
 青娥の『どう?』という問いはつまり、『DIO様に従う気になったかしら?』という意を含んだ物だ。うんともすんとも反応しないメリーだったが、それはこれ以上なく摩耗された精神性の現れ。


 もう、限界なのだ。
 彼女は今に、DIOの傀儡となる。その未来が目に見えていた。


(功労者は蓮子ちゃんの激しいアプローチってとこかしらね。ちょっぴり嫉妬しちゃうわねえ)


 内に秘めるジェラシーを熱い視線へと変えて、青娥はメリーの横を歩く蓮子をチラと見る。
 芽の支配を受けた灰色の瞳は、ともすれば青娥以上の忠誠心。DIOが死ねと命令すれば、喜んで死ぬのが今の蓮子なのだ。
 メリーはDIOから逃げられない。それは彼女の親友・宇佐見蓮子が捕えられているからだ。もしもメリーが本格的にDIOの機嫌を損ねる真似をしようものなら、躊躇なく蓮子は殺されるに違いない。
 言うなれば、蓮子というカードそのものが、DIOのメリーに対する切り札。
 その蓮子自身も、懸命にメリーの籠絡に精を出している。こんな状況を平衡に維持できるわけがない。素直に後ろを付いてくるメリーの態度が、彼女の絶対的窮地を如実に表している。

「メリー。私が付いてるからさ、元気出して?」
「…………」

 親友の掛けてあげた、その言葉だけを聞くなら何とも涙誘う気遣いの台詞だ。しかし、それが言葉通りの意味を伴っていないという絶望を、メリーは知っている。
 だから、終始無言で俯いたまま。心の健全な者がその光景を覗いたなら、見ていられないと目を背けるだろうか。


「大丈夫よメリーちゃん。在るが儘を受け入れるなら、きっと貴方にも幸福は訪れるに違いないわ。もっと前向きに物事を考えましょうね」


 親友同士の二人を、青娥は実に楽しげに覗く。
 嬉々を孕んだ豊かな欲を表現する彼女の瞳は、これから起こる事への期待で───子供の様な純粋さを発揮する。



 ───ジョルノ・ジョバァーナ、八雲紫、鈴仙の三名が館に侵入する、僅か10分前の出来事だった。



▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽

169魔館紅説法:2018/04/11(水) 22:15:46 ID:yKigOAvE0
【C-3 紅魔館 地下階段/午後】

【霍青娥@東方神霊廟】
[状態]:タンデム、疲労(小)、全身に唾液での溶解痕あり(傷は深くは無い)、衣装ボロボロ、 右太腿に小さい刺し傷、両掌に切り傷(外傷は『オアシス』の能力で止血済み)、 胴体に打撲、右腕を宮古芳香のものに交換
[装備]:スタンドDISC『オアシス』@ジョジョ第5部
[道具]:オートバイ
[思考・状況]
基本行動方針:気の赴くままに行動する。
1:メリーと蓮子をDIOの元へ連れていく。
2:DIOの王者の風格に魅了。彼の計画を手伝う。
3:会場内のスタンドDISCの収集。ある程度集まったらDIO様にプレゼント♪
4:八雲紫とメリーの関係に興味。
5:あの『相手を本にするスタンド使い』に会うのはもうコリゴリだわ。
6:芳香殺した奴はブッ殺してさしあげます。
[備考]
※参戦時期は神霊廟以降です。
※制限の度合いは後の書き手さんにお任せします。
※DIOに魅入ってしまいましたが、ジョルノのことは(一応)興味を持っています。
※名簿のジョースター一族をおおよそ把握しました。
※プッチ、静葉と情報交換をしました。


【マエリベリー・ハーン@秘封倶楽部】
[状態]:精神消耗、衣服の乱れ、『初めて』を奪われる
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況]
基本行動方針:蓮子と一緒に此処から脱出する。ツェペリさんの『勇気』と『可能性』を信じる生き方を受け継ぐ。
1:蓮子を見捨てない。
2:八雲紫に会いたい。
[備考]
※参戦時期は少なくとも『伊弉諾物質』の後です。
※『境目』が存在するものに対して不安定ながら入り込むことができます。
 その際、夢の世界で体験したことは全て現実の自分に返ってくるようです。
※ツェペリとジョナサン・ジョースター、ロバート・E・O・スピードワゴンの情報を共有しました。
※ツェペリとの時間軸の違いに気づきました。


【宇佐見蓮子@秘封倶楽部】
[状態]:健康、肉の芽の支配、衣服の乱れ、『初めて』を得た
[装備]:アヌビス神@ジョジョ第3部、スタンドDISC「ヨーヨーマッ」@ジョジョ第6部
[道具]:針と糸@現地調達、基本支給品、食糧複数
[思考・状況]
基本行動方針:DIOの命令に従う。
1:メリーをこのまま篭絡する。
[備考]
※参戦時期は少なくとも『卯酉東海道』の後です。
※ジョニィとは、ジャイロの名前(本名にあらず)の情報を共有しました。
※「星を見ただけで今の時間が分かり、月を見ただけで今居る場所が分かる程度の能力」は会場内でも効果を発揮します。
※アヌビス神の支配の上から、DIOの肉の芽の支配が上書きされています。
 現在アヌビス神は『咲夜のナイフ格闘』『止まった時の中で動く』『星の白金のパワーとスピード』『銀の戦車の剣術』を『憶えて』います。

170 ◆qSXL3X4ics:2018/04/11(水) 22:17:03 ID:yKigOAvE0
これで「魔館紅説法」の投下を終了します。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
感想や指摘などありましたらお願いします。

171名無しさん:2018/04/13(金) 01:09:01 ID:9JUn87ig0
投下乙です。

白蓮様の裸…ふぅ、それはそうと白蓮様って黒の下着を着けてたんですね。尼さんだから下着は褌、もしくは…なんというか白い着物的なものだと思ってましたよ

172名無しさん:2018/04/13(金) 02:02:20 ID:.o/0KVwM0
こんなエロい聖職者が許されるのか

173 ◆yvMlJZlK/.:2018/04/13(金) 06:42:35 ID:fozq1zFY0
二次元ではデフォ


DioがDIOに牙を剥く時はいつになるのか
そして坂道を転がり落ちる静葉はどうなるのか

174 ◆qSXL3X4ics:2018/04/14(土) 00:58:59 ID:i/vA2oZY0
博麗霊夢、霧雨魔理沙、空条徐倫、ジョセフ・ジョースター、因幡てゐ
以上5名予約します

175 ◆qSXL3X4ics:2018/04/21(土) 19:05:47 ID:0e5ote3o0
投下します

176Ёngagemənt:2018/04/21(土) 19:06:57 ID:0e5ote3o0



 人間はみずからつくるところのもの以外の何ものでもない。



            ◆

『博麗霊夢』
【午後】E-4 川沿いの道


「はー? 私とジョジョの記事があのバ鴉天狗に?」


 不快と呆れを3:7でブレンドさせた少女の絶妙に微妙な容貌が、横を歩く魔理沙と徐倫に向けて炸裂した。

 生死の境を彷徨う間、霊夢を取り巻く環境は一変したと言っていい。周囲のみならず、彼女自身の内面も大きく変化しつつあるのだが、今求められるのは自分が昏睡中に身の回りで何が起こっていたかだ。
 魔理沙はアテのない仲間探しの道中、此度の霊夢・承太郎救出作戦中に起こった出来事を掻い摘みながら本人へと説明した。
 守矢の分裂やディエゴ・青娥の追撃戦、『悪魔』の奇襲と、詳細に陳列すれば途方もない闘いが随所で勃発していたが、取り敢えず霊夢が反応したのは、人里にて目撃した件の電子看板、そこにデカデカと映された姫海棠はたての新聞の事であった。

「ふざけてる。こっちは本気で死に掛けた上に、実際───ううん。とにかく、あの連中は見付け次第とっちめるリストに入れとかないと」
「連中? その新聞作ったのは、はたて単独っぽいぜ」
「天狗なんて全員ひとまとめよ、ひとまとめ。どーせ黒い天狗の方も似たような黒ーい事やってんのよ、決まってるわ」

 見た目にはいつもの調子の博麗霊夢である。浅はかな同僚の思わぬとばっちりを受けた射命丸文の言い訳模様を頭に浮かべながら、魔理沙は友人のプンプン顔に対しひとまず安堵の気持ちを覚えた。

「んじゃーその、天狗とかいう妖怪は全員とにかくブン殴っときゃいいわけね? 何人いるのか知んないけど」

 徐倫も霊夢の怒気に当てられたのか、有り余った闘気を存分に顔に出し、見付け次第ブン殴るリストの補充を行う。ここに居る三人は、漏れなくはたての花果子念報の餌食となった被害者達だ。記者に悪意はないだろうが、やってる事はあまりにタチが悪過ぎる。

「まあでも、事今回に限ってはアイツの新聞は一応は役に立ったとは思うぜ。その新聞を見たから私と徐倫はお前を助けられたんだから」

 それでも魔理沙だけは、はたてをフォローするような発言を述べておく。あの天狗はお世辞にも善行を行ったなどと褒めようもないが、結果的には霊夢の命だけでも救えたのは紛れもない事実なのだから。

「知るか。下手すりゃ危険人物が大量に押し寄せてくる羽目になったかもしれないんだから」

 そんな魔理沙の懸命な良識も、博麗の巫女には一蹴される運命にあるらしい。
 あの混沌とした戦場は最早人妖の飽和状態であった。神奈子やディアボロに並ぶ名だたる強者が、その新聞に興味を抱いてやってきた可能性も充分にあるのだ。第一にして、あの場の上空にははたて自身がカメラ片手に意気揚々とカシャカシャしていた。トドメに、厄介なウェスを持ち運んで来たのも恐らくあの女だ。
 情状酌量の余地無し。冷静によくよく思い出していくだけで、魔理沙のはたてに対する悪印象は雪だるま式に加算されていく。
 むず痒い顔に歪んでいく魔理沙の心奥を悟った霊夢も、ここぞとばかりに天狗の危険性を説明する。

「天狗は人心掌握と情報操作に長けた種族。そのはたても文ほどの器量じゃないにせよ、平気で場を掻き回そうとする輩よ」

 妖怪の厄介さを、誰よりも身に染みた実体験という形で得ている者こそが、妖怪退治専門家の巫女である。彼女と違い少々人情味のある……悪く言えば甘い性格の魔理沙や、外の世界出身の徐倫へと、霊夢は警告じみた説明で念頭に置かせた。

 元々容赦のない少女だ。霊夢はもしかすれば、このゲームにおいて既に妖怪の一匹や二匹、退治───殺害しているのかも。
 魔理沙は霊夢に対し、随分冷酷な疑問を差し向ける。一般的な友人関係であったならすぐさま破局に向かうその訝しみも、こと霊夢相手ならば有り得ないとも言えない可能性。
 本来の霊夢を知る者であれば、それもむべなるかな。先の天狗評を例に示す通り、彼女は基本的に妖怪を始末する役職であり、彼女自身の性格も決して生温くなどない。

177Ёngagemənt:2018/04/21(土) 19:08:36 ID:0e5ote3o0



「……殺してるわよ、一人だけ」



 魔理沙の疑心を嗅ぎ取ったのか、霊夢が突如としてその言葉を口にした。
 それは魔理沙が心に抱いてしまった下衆な勘ぐりに対し、完璧に答えてくれる解答。何となく予想はしていた為、魔理沙も大きくリアクションを取ることはなかった。
 代わりに立ち止まり、身の丈に合わないその魔女帽に乗っかった雪をぱたぱたと叩き落とす事で、心の動揺を誤魔化した。

「……まだ何も言ってないんだがな」
「アンタの目は口より物を言うのよ」
「こりゃ、参った。流石の勘と言うべきか」

 はは、と普段の奔放な姿が嘘に感じられる力無い笑みを、魔理沙は帽子を被り直しながら零した。
 珍しい事じゃない。むしろコイツの日常そのものじゃないかと、自分の心で問い掛けた疑問への答えを否定せしめる。
 霊夢はただ、いつもの様に妖怪を退治しただけだ。彼女なりの手段で、椀から溢れた水を拭き取るような……在る儘の形を取り戻しただけ。


 ───違う。

 妖怪退治と殺しでは、全く意味が異なる。
 それはひとえに『殺人』の告白。
 幻想郷の形を取っただけに過ぎないこの世界において、妖怪を退治するという出来事は、殺人という名の禁忌を犯す事と同義だ。
 そこに人も、妖も、神も、差別などない。ただ『殺人』という一つの大罪が、歪な鎖の形となって本人の心に深く食い込み絡まるだけ。
 
 『死』に触れる事を恐れる魔理沙ですら、そんな当たり前の不文律などとうに理解出来ている。


「『人間』よ。妖怪ですらない。私は咲夜を殺した」


 再び、危惧する魔理沙の心を見抜くように。
 次第に困惑を肥大させていくその心に、追い打ちを掛けるように。

 霊夢はいつもの表情で。
 淡々と、井戸端で世間話でも始めるみたいに告白した。

 人を。
 十六夜咲夜を、殺したのだと。


「……天狗の新聞には、アイツの元気な姿が写っていたが」
「中身は別人。F・Fっていう、人や妖怪ですらない生き物よ。アイツも行方を眩ましてしまったけど」


 事の流れを見守っていた横の徐倫の眉が吊り上がる。その様子を視界の端に捉えた魔理沙だが、お構い無しに話を続けた。


「説明しろ……つっても無駄か?」
「少なくともアンタに説明する義務は無いわね」
「……レミリアには」
「まだ会えてない。今から捜す」
「そうかい」


 短い会話だが、霊夢の霊夢然とした態度の中に薄らと……彼女と深い関わりを持つ者のみがようやく見える、ほんの僅かな齟齬を感じた。
 何も感じてない訳では無い。霊夢とて鬼や悪魔ではなく、顔見知りに手を掛けてしまった事への罪悪感くらいはあるのではないか。長い付き合いを通してきた魔理沙ですら、そんな人として当然の感情をようやっと霊夢に見出す。
 逆に言えば、それくらいあっさりと、霊夢は咲夜の死を口にしてきたという事になる。

「じゃあ、私からはあんま深く聞かねえよ」

 向こうにも事情はあるのだろう。
 そしてそれはきっと、魔理沙が危惧する類の出来事ではない。霊夢が自らの意思で咲夜を殺すわけなど、無いのだから。
 現に霊夢はレミリアを捜すのだとハッキリ言った。それは主である彼女に対し、判然と負い目を感じているという証左に他ならない。
 どちらにせよ、これは部外者である魔理沙が軽々と侵していい領域ではない。この話題をこれ以上広げるのは、誰かの心が傷付くだけである。


「じゃあもうひとつ訊きたいことがある。あの八雲紫とかいう女は、お前と同じに仲間を殺したのか?」


 ところが、会話をここで有耶無耶にすることは許さないとでも言いたげに険しい顔をした徐倫が、もう一つのデリケートな話題を掘り返した。
 途端に脳へと想起されるのは、またしてもあの厄を呼ぶ天狗の新聞だ。
 確か、内容には紫が猫の隠れ里にて三人を殺害したという旨がデカデカと書き綴られていた。それも疑いようのない証拠写真付きというオマケまで載せられて。
 ともすればその事件は、霊夢以上に不信が募りかねない事態だ。胡散臭さをウリにすれば雲の上までその名を轟かせるであろう八雲紫だが、少なくともあの女が自らゲームに興じるなんて事はまず有り得ないと断言出来る。
 恐竜化の解けた紫には、時間を取って様々な事情聴取でも行おうとしてはいたが、生憎の襲撃三昧によりとうとう訊けず仕舞いで今に至る。
 魔理沙にとってもそれは、先延ばしにするべきでない話題だ。徐倫の厳しい問いに乗っかるように彼女は、無言の圧力を霊夢に向けた。


「知らない。でも、きっとアイツも私と一緒で……誰かの命を奪ったんだと思う」


 柳の如く二人の視線を受け流す霊夢は、立ち止めていた足を再び動かし始める。その小さな背中と共に語られた言葉は少し曖昧ではあったが、どことなく確信のような物を含ませるニュアンスが混じっていた。

178Ёngagemənt:2018/04/21(土) 19:09:37 ID:0e5ote3o0


 霊夢と紫。このゲームが開戦を告げて以来、二人の間に交わされた意志は微々たるモノだ。
 ただ、紫が『あの時』……ほんの一言。
 

 ───『霊夢っ!!助けっ───』


 ディエゴに捩じ伏せられ、支配に蝕まれる刹那。
 聞きたくもなかった台詞と共に、大妖怪は腕を伸ばした。
 思えば最初で最後の会話、の様なものだったのかもしれない。
 あの瞬間に、紫の屈辱と悲哀と悔しさとが、濁流のような猛烈とした勢いで頭の中に注ぎ込まれた。

 同じ『罪』を背負ってしまった同胞。
 霊夢はあろう事か、弱々しい姿の紫に対し同情してしまったのだ。
 「ああ。アンタも、そうなんだ」と。
 息苦しくて仕方なかった心の重みが、ほんの少し軽くなった気がした。
 同じ傷を舐め合うという無様な共感が生まれ、常に掴み所のなかった大妖が隣に座った感覚まで湧いてきて。


「誰からそんな事訊いたの? 本人?」


 大方の予想もつく。けれども霊夢は、その予想を現実に顕現させようと徐倫に問い返した。

「紫も花果子念報に撮られていた。真相は不明だが、アイツは妖夢を殺しちまったらしい。地底ン所の鬼の勇儀と、他に人間の男までまとめてな」

 代わりに答えたのは魔理沙であった。現場写真を撮られている以上、現在の紫の立場はかなり危うい評価に落とされつつある。魔理沙とてそれを根っから信じているわけではないが、本人の様子を見た限りではあながち全くの虚偽でも無かったように思う。


「妖夢を…………そっか」


 淡白な反応しか返さない霊夢は、歩みを止めぬままに表情を見せようとしない。いつだって人を置いて行く霊夢らしいものだが、普段通りのはずの態度には違和感をも感じ取れる。

 魂魄妖夢とは、紫の数少ない友人である西行寺幽々子の持つ、唯一人の従者だ。
 幽々子と妖夢の仲は良かったというか、主従にしては距離感は近いように思えた。主の幽々子が懐きやすい性格をしているせいか、グイグイと身内を愛でる光景は宴会の中においても別段珍しいものでもない。
 そんな、ある意味理想の主従であった妖夢を、紫が殺したという。それは紫と幽々子の間を紡ぐ信頼関係に、どうしようもなく深い溝をヒビ入れかねない特大の爆弾だ。

 霊夢はしきりに咲夜を殺したと言うが、直接的な加害者は魂魄妖夢である。それが如何に本人の意図しない害意であったとしても、事実は変わらない。
 その妖夢が、紫に殺された。無論、真意は正当防衛のようなものだ。
 霊夢は、咲夜を手に掛けたのが妖夢である事も、妖夢と紫の間に起こった出来事も、何の真実も知らずにいる。
 しかし紫はどうだろう。少なくとも彼女は、きっと自ら手を血に染めてしまったんだろうなと、漠然な確信が霊夢の中に浮かんだ。
 そんな禍事を起こした直後とあっては、紫の力の衰弱ぶりにも納得が行く。それを思えば急激に紫への心配が高まっていくのも必然というものだが、霊夢は敢えてその気持ちを無視する。
 だが一方の魔理沙は、そうは行かなかった。彼女は沈痛な面持ちで自分の意見を霊夢に伝える。


「まず紫に会いに行かないか?」
「事前にアイツと待ち合わせでも設定したの?」
「それは…………してないんだが」


 瀕死の霊夢らを預けるだけ預けておいて、肝心の本人は別の急患を請け負いながらとっとと地底に潜って行った。その際に、普通は次の集合地でも伝えるなりして円滑な合流を図ろうとするだろう。その時間的余裕くらいはあった筈だ。
 だというのに紫は何の対処も合図も伝えようとせず、そのままいつもの様にスキマの奥へと引っ込んだ。これが単なる痴呆であればすぐさま賢者の称号を剥奪しなければならない不手際だが、それはきっと間違った認識なのだろう。

「アイツはアイツでやるべき事でもあるんでしょ。私がレミリアに会わなきゃいけない理由があるのと同じに、紫も幽々子に話さなきゃならない事はあるって事よ」
「それまで……アイツは私らとは会わないつもりか?」
「会いたくないのかもね。特に私には」

 本来であればその立場をとっても関係をとっても、互いを気にかけるべきとも言える二人だったが、不思議と霊夢の中には紫に会いたい気持ちが湧かない。少なくとも、今は。
 地に落ちた大妖の、あの顔が痛烈に印象に残ってしまい、出来ることならあのシケたツラだけは二度と見たくないとまで思う。紫も紫で、きっと色々なことにケリを付けなければならない逆境の中だろう。

179Ёngagemənt:2018/04/21(土) 19:11:43 ID:0e5ote3o0


「……『約束』ってのは、神聖なのよ。紫はそれを、軽々しく扱ったりはしない」
「あ?」


 ポツリと生まれた言葉を、発した霊夢自身もグッと噛み締めるように堪能する。瞼の裏に一瞬だけ映ったのは、物悲しい神社の縁側で、満点の星空を眺める男の黒い背中。
 もはや霊夢の中で、その存在は一種のしがらみに等しい。考える程に嫌な気分が募ってくるそれを振り払うように、彼女は大きな紅のリボンと共に頭をぶんと振った。

「別に。紫の奴がアンタに待ち合わせの指示を飛ばさなかったのは、ただ約束を守るつもりがなかったから。それだけ」
「……ま、そういう事にしとくぜ」

 霊夢が覗かせた不審をどう解釈したのか、魔理沙も追求はせずに素直なまま受け止める。どちらにしろ、紫達の到着まで寺で暇を潰すなんてのは魔理沙の性にもあわない。


「で、ジョジョの子供さん」


 唐突に霊夢が振り返り、白のお祓い棒をシャンと振り落としながら徐倫を睨み付ける。話題を変えようという魂胆が見て取れると、睨まれた徐倫は頭を掻きながらに思う。


「あのなあ、私には空条徐倫っつー名前があんのよね」
「……娘のアンタも『ジョジョ』ね。偶然?」
「知るか。あたしの父も『ジョジョ』だなんて呼ばれてる事にはちょっと驚いたけどさ、あたしをその名では呼ぶなよ。特にお前なんかには絶対呼ばれたくない」
「呼ばないわよ。私にとっての『ジョジョ』は承太郎だけ」


 霊夢にとって〝ジョジョ〟の名が持つ意味とは、今や計り知れない。
 あの『霊夢』の中で、一人の少女がじゃれ合うように命名したそのアダ名は、ただのアダ名でありながらも、規律に縛られていた自身の殻を突き破る転機となり得る、これ以上なく神聖な命名行為から生まれた無二の命の様な存在だからだ。
 命名、とは『命』に『名』を付ける儀式を云う。博麗神社の巫女を担う彼女は、職業上その行為自体にはとんと慣れたものであったが、霊夢本人の意思・自我側から他人へと擦り寄ろうとする、所謂『遊び』の延長線上でのアダ名付など初めての事であった。


 〝ジョジョ〟とは、博麗霊夢の『特別』だ。
 星屑の流れる夢を経て少女は、何処にでも在るような当たり前の『特別』を得てしまった。
 その特別たる名と同じ響きを、空条承太郎の他にも幾つか確認している。とは言っても、承太郎と同じ理屈で彼らにも同じジョジョの名が付けられそうだ、という浅い響きでしかないが。
 名簿にはあと、6人程見掛けられる。それがなんだか、死んだ承太郎の代わりの様にも思えてきて、霊夢からしてみればちょっぴり気に食わないのだ。
 今本人が堂々口にしたように、霊夢にとっての〝ジョジョ〟は承太郎のみなのだから。


 その内一人の、空条徐倫。
 曰く、承太郎の娘。彼女を目の前にして霊夢は、どうしても重ね合わせずにはいられない。
 自分を下した、あの男の姿と。


「太田と荒木は私がとっちめる。あんたはあんたで父親の意志を受け継ぎ、同じ目的を遂げるつもりでいる。そう言ったわよね?」
「言ったさ。だからなに? “これまでの無礼は謝るから、これからは仲良くしましょうね”って言いたいワケ?」

 話を振られた徐倫は、あくまでも刺々しい姿勢を崩さない。父を失ったばかりの彼女にとってそれは、致し方ない対応なのかもしれない。まして霊夢は、承太郎を差し置いて一人助かったという事実を当たり前のように話しているのだから。
 少なくとも、徐倫の目からは霊夢がそう見えた。博麗の巫女である自分の命は、承太郎の命よりも遥かに重く尊厳で、蘇生に『選ばれた』という奇跡は当然の賜であるかのように振舞っているようで。

「別に仲良くするのは構わないわよ。ある程度の協力も譲歩も、ここから先は必要になってくるでしょうし」
「おい霊夢。なんだってお前……」
「魔理沙には言ってないわ。そんな事より、主催の二人を倒すって目的が同じなら、これは私とコイツの『勝負』でもあるって事なのよ」

 消え失せた約束。承太郎が手の届かぬ場所へ行ってしまった今、霊夢の中でそれは『主催を倒した者の勝利』という勝負事へと変化している。
 となれば、同じ志を抱く徐倫も霊夢にとっての競争相手。

 霊夢は空条徐倫を通して、最強のスタンド使い〝空条承太郎〟に打ち勝つ気概でいた。
 彼女の力は父よりも遥か格下の他愛ないものだが、その力強い瞳は承太郎と酷似している。故に、同じ〝ジョジョ〟の名を受け継いだ徐倫にだけは負けるわけにはいかない。

180Ёngagemənt:2018/04/21(土) 19:12:26 ID:0e5ote3o0


 承太郎は死んだ。もう、どこにも居ない。
 神聖なる約束を交わしておきながら、勝手に死んで勝ち逃げされた。
 心の何処かで、巫女は思う。
 『特別』たる自分を生かすため、幻想郷が博麗霊夢を選んでしまったのではないか、と。
 かつてとは大きく違い、霊夢は今の己を『普通』だと自覚しつつある兆候が現れている。
 しかし主観ではそう思いたくとも、幻想郷そのものは少女の身勝手な自覚を許そうとはしないのかもしれない。束縛からの巣立ちを阻止するつもりなのかもしれない。

 またはその逆で───『博麗の巫女』というしがらみから解き放つ為に、霊夢のみを生かしたのか。

 そんな事は知りようもない。彼女らの生死に大した意味などなく、ただ霊夢のみが残り、承太郎が弾かれてしまっただけなのかもしれないのだから。
 そもそも霊夢や承太郎をこうまで追い込んだのはDIOやディエゴであり、幻想郷は関係ない。考えるだけ詮無いことなのだろう。
 しかしやはり。俯瞰的に。神の視点で見下ろすのなら……博麗霊夢とは、『特別』なのか。


 空条承太郎。その男は、本人が言う通りにきっと……『普通』の人間だったのかもしれない。
 ちょっと強面で、ちょっとグレていて、ちょっと強過ぎるだけの、普通の高校生だ。
 一方で霊夢は、授かった能力も立場も『特別』。彼女の成す調和・采配一つで、危うい平衡の上に保った世界は容易く穴が開きかねない。
 承太郎と霊夢。どちらを生かすべきかは、誰の目から見ても明らか。言うにも及ばぬ選択肢だ。
 それは幻想郷の者であれば至極当然の意思。承太郎の様に、霊夢の事を『普通』だと言ってくれる様な変わり者でなければ、それがマトモな考え方なのだ。

 もしも……そんな当然で───馬鹿げた基準などで神が霊夢を選んだのであれば。
 そしてもしも、その神とやらがあの『主催』───特に太田順也であったのであれば。

 博麗霊夢は、奴らを絶対に許せない。
 一介の少女から『約束』を奪った奴らを許せない。
 もしその選択自体が幻想郷の意思であったならば───。


 ここまでを考えて、霊夢は思考を押し留めた。
 幻想郷に対して疑惑や否定の観念を浮かべる事など、御法度だ。それは只でさえ際どいバランスの崩壊にすぐさま繋がりかねない。
 既に起こってしまった胸糞悪い奇跡よりも、今は前を向いて歩かなければ。そうでなければ、死ぬまでアイツには勝てないだろうから。


 キッと視線を鋭く変貌させながら、霊夢は目の前の女へとお祓い棒を差し向けた。


「空条徐倫。あんたはジョジョに遠く及ばない。
 あんたにあの男は越えられない。
 だから、この『勝負』は私が勝つわ。今度こそね」


 果たして、これが自分の望んでいた事なのだろうか。
 徐倫との勝負に勝つ事で、間接的に承太郎に勝つ。
 それしか残っていない、『約束』を果たす為のルート。
 自分の目から見ても未熟に見える徐倫の姿を、強引に承太郎へと重ね、契りを果たした気になる自己満足などが……果たして。


「ようやく名前で呼んでくれたと思ったら……大した宣誓だわ。
 父さんを越えるとか、勝負だとか……あたしは正直どうでもいい。でもな」


 イモ臭い下着なんぞを穿いた歳下の小娘。ちょっと達者な技を使えるという程度でこうまでイキられちゃあ、流石の徐倫も何も言わないわけにはいかない。
 面倒臭そうにもう一度頭をボリボリと掻きながら、彼女は物怖じひとつ見せずに一歩前へ出て、言ってやった。


「そんなくだらねー約束なんかにこだわってる時点で、お前は『特別』でも何でもない。チャチな悩みを振り翳して一級気取るお前の正体は、どこにでも居るような『普通』の小娘だって事をあたしが教えてやる。
 その為にチョイと手を組みたいって言うなら、あたしは別になってやってもいいぞ。お前の『仲間』に。
 な? 霊夢“ちゃん”」


 否が応にも承太郎と重ねざるを得ない娘、徐倫。けれども負傷した自分にすら及ばない上で父の意志を継ぐと宣う彼女を、霊夢は気に食わない。
 今、彼女が吐いた言葉にしても大いに気に食わない。よりによって承太郎と同じ言葉を、安い挑発の意味合いでしかない形で吐いてみせた徐倫を。
 霊夢はとても気に食わない。

 徐倫にとっても同じこと。霊夢と父の間に何があったのかは知らないし、もはや興味もない。
 ただ、悟った様なツラで背伸びしながら父を語る霊夢を。血の繋がった自分よりも父を知ったフウな語り草で宣う霊夢を。
 徐倫はとても気に食わない。

181Ёngagemənt:2018/04/21(土) 19:12:59 ID:0e5ote3o0


(…………霊夢)


 この不毛とも呼べる対立を外から静観して見ていた魔理沙は、二人の反目を止めようと思うより先に全く別の感情が生まれつつあった。
 視線の先に居るのは勿論、古馴染みの霊夢だ。実の所魔理沙は、いざこざは兎も角として霊夢の見せるらしくもない物言いに対し、物珍しさと共に頬が緩むような、期待感とも言うべき感情が湧いていた。

 それは、ともすれば霊夢にとって良い兆候なのかもしれない。
 度々喧嘩を売るような言い方には流石に眉をひそめるが、たかだか一つの勝負事にこうまで躍起になれる霊夢など、魔理沙が知る限りでも見たことない。
 そこにはどこか自由で人間らしい博麗霊夢が、一人の少女として自己主張している姿が映し出されている。
 以前までの彼女が不自由で機械的、とまでは言わない。どころか魔理沙の知る霊夢は、誰よりも自由な精神で空を飛び、何よりも自己性を完成させた一個の人間だとすら思っていた。
 その認識が誤りだったとも言わないが、今の霊夢を見ていると、過去の霊夢とは違い別ベクトルに歩み出した『未完成』の少女の様にも思えてくる。
 完成から未完成へと進みゆく霊夢の今が、『衰退』だと一言に断ずる事など魔理沙には出来ない。

 昨日までの霊夢はどうであったか。
 博麗の巫女は悠然と遠い空の上で、いずれは彼女に手を届かせようと懸命に魔法を磨く魔理沙を、嘲笑うように舞うのみだった。
 その視線には、魔理沙の姿など眼中にも無かったと思う。それどころか、いつ見ても何を望み、何処を見ているのかまるで掴めずにいた。本当に同じ人間なのか、たまに疑いたくもなった。


 完成された楽園の巫女・博麗霊夢。その存在が、今では『普通』の少女のような葛藤を持ち、『普通』の少女のように誰かの手を借りようと動き始めている。
 まるで、『普通の魔法使い』を謳う誰かさんの様に。魔理沙は今、以前よりも遥かに霊夢という存在感を近くで感じている。

 正直に言うと、自分から見ても『普通』に近い博麗霊夢を、魔理沙は嬉しく思う。
 同時に、悲しさもあった。
 霊夢の後ろ姿に追い付く為に人生の大部分を費やしただけに、結果は魔理沙が『追い付いた』のでなく、霊夢が地面に『降りてきた』だけであることが。
 どうしようもない差を縮めたのは、魔理沙の努力ではなかった。霊夢個人の葛藤だか気まぐれだか。またはあの承太郎という男の存在が、魔理沙の今までを無かったことにしてしまった。
 不本意な形で叶ってしまった夢は、霧雨魔理沙の『これから』を宙ぶらりんに吊り下げた。たとえこのゲームを破壊し元の幻想郷へと帰れたとして、魔理沙はこれから何を目標にして自分磨きを続けるべきであるのか。

 そんな考えこそ不毛でしかない。今の霊夢をそのような視線で眺めることは、彼女に対して見下げた侮蔑の眼差しで見るに等しい行いだ。

 もしかしたら、霊夢とは今まで通りの関係ではいられなくなるかもしれない。
 思春期の少年少女が誰しも抱える様な、ありふれた悩みかもしれない。しかし、今はこれでいいとも思う。あの霊夢が、自分の力を借りようと手を差し伸べてくれるのであれば。

 それは紛うことなき、魔理沙の本懐なのだから。
 私の魔法は、霊夢に追い付く為ではなく。
 霊夢の手を取る為に磨き上げてきた。
 そう、考えれば良い。その方が、気が楽だ。


「まあまあ。霊夢も徐倫もさ、もう少し穏便に行こうぜ。お前らがギスギスしてちゃあ、板挟みの私が居心地悪いだろ」


 いい加減、この張り詰めた空気を緩めようと魔理沙が間に入ろうとする。霊夢の変化には複雑な思いもあるが、実際問題としてこの不協和音の中で異変解決を図ろうという状況も、魔理沙にとって息苦しいのは事実なのだ。

 静と動の視線が互いを睨みつける中、魔理沙は二人の肩を叩こうと霊夢に近づく。



「う…………ッ!」



 霊夢が突如、平然とした顔を歪め膝を付けたのは、その瞬間であった。



▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽

182Ёngagemənt:2018/04/21(土) 19:13:43 ID:0e5ote3o0
『ジョセフ・ジョースター』
【午後】E-4 川沿いの道


「ずっと思ってたんだがよォ」
「なにをよ」
「キレイだよな」
「えへへ。よく言われるんだけど、改めて言われると照れるなあ」
「いやオメーじゃねーよこのスットコドッコイ!」


 西に傾く太陽の陽射しも、まだらに振り撒かれる雪の傘に遮られ、陽光としての効力は普段の半分にも達していない。先程までの雨天よりかは幾分マシだが、安全な旅順を期待するにはこの雪景色では多少不安である。
 雪の本降りとなれば今より更に動きづらくなる環境となるだろう。そういう意味では、車という足を入手出来たのは幸福に違いない。これが隣の助手席に座る、幸運の兎によるもたらしかは不明だが。
 とはいえノーリスクとはいかない。バギーカーという車種は、基本的にエンジンが騒々しい作りとなっている。こういったバトルロワイヤルの土地で、自らの位置を高々と叫ぶような走行音を常に撒き散らすというのは、乗り込む者にとってはリスクも隣り合わせの乗り物である。

 甲高いエンジン音を鳴らすバギーとは相対的に、車内の空気は些か平穏であった。
 てゐでは身長が届かないし免許も無い、という理由ではないが、車の操縦者は当然の様にジョセフに決まった。彼の操縦する乗り物は決まって大破するというジンクスをてゐが知っていれば、無理にでも自分で操縦していたのかもしれないが。

「俺、日本なんて初めて来たからよォー、こういう異国文化に触れる機会なんて実はあんまねーのよ。ルンルン♪」
「それ言うなら私だってそーよ」

 縦横無尽にハンドルを切りながら、ジョセフの首はそれと連動するかのように右へ左へ、病院へ連れられてきた猫の様な慌ただしさで曲がりくねる。物珍しい日本の田舎風景を堪能しているのだ。
 子供の様な興味欲を宿す瞳を横目に、てゐは真逆の反応を貼り付けた仏頂面で適当な返事を返した。
 彼女からすれば自分の住む土地なのだから、外を走る光景など別段珍しくも何ともない。どちらかと言えば、今自分達を乗せて走るこのスタイリッシュな鉄の馬の方に興味が湧く。猛る騒音に目を瞑れば、もとい耳を塞げば、馬を走らせるより余程速いスピードの自動車という発明は画期的と讃えても良い。

「凄い発明だよね、この自動車って奴は。姫様あたりが見たらキャッキャしながら乗り回しそう」

 永遠亭の誇る蓬莱山輝夜となれば、風流かつ上品雅で美妙たるお姫様で通っており、あながちそのイメージも間違ってはいない。
 が、意外とあの方は雅俗混交というか、時に俗っぽい戯れをやられる。受け入れるべきは寛大に受容し、楽しむべきは大いに満悦するのが、かの月姫の真髄なのだ。最近になっては特にその傾向が強い。

「お前んとこで一番エラいお姫さんか? それってやっぱ美人なの?」
「あー美人も美人。アンタみたいなマッチョが百人居たって釣り合わないお姫様だよ」

 後頭部をシートに埋め込みながらてゐは、自らの主人である輝夜に思いを馳せる。彼女は今頃お師匠様と再会を果たしている頃だろうから、我らが月の二大戦力がようやく揃ったというわけだ。
 そこに自分なんかが介入する隙間など、残されているかすら怪しい。てゐですらそうなのだから、相棒を担うジョセフなど論外。こんな下品で破廉恥でマッチョで図体のデカい女好きがあの美女二人を毒牙にかけようとあれば、きっと即座に返り討ちにされるに違いない。
 詐欺師は詐欺師同士、こうしてコツコツ地道な道程を歩んでいけばいいのだ。その為にこうして今、優秀なる巫女や魔法使いをパーティに加えようと奔走しているのだから。

 渦中の輝夜がゲーム開始早々、ポテチピザコーラの三種の神器を腹に収めるに飽き足らず、あまりに無情な6時間を少年ジャンプと共に過ごした後にマイカーを事故に遭わせた事実は、勿論てゐの耳には入っていない。こればかりは知らぬが仏という言葉が相応しい。

183Ёngagemənt:2018/04/21(土) 19:15:06 ID:0e5ote3o0



「…………ん!?」



 そこへジョセフの目が唐突に丸まった。
 すわ敵襲か。てゐは早速シートの下に体を沈めて丸め、身を隠しながら運転席のジョセフに声を荒げる。


「ど、どうしたジョジョ! 敵!? 敵ならそのまま轢き殺せッ! この雪がきっと私らの犯行の跡を掻き消して……」
「アホ。ありゃあ多分……敵じゃねえ」


 冷静に前方を見つめるジョセフは、じっと首の後ろをさすった。さっきから、妙に首元が疼くのだ。
 確か、人間の里にて悪徳神父と出会った時にも朧気に生じた感覚だ。だが目の前にいる集団───三人の少女(一人はかなりタッパがあるが)の中に神父の姿はない。

 その内の二人は随分と分かりやすい服装だ。仲間を探すにあたり、事前にてゐから訊いていた『紅白の巫女服』と『白黒の魔女服』の容姿と合致する。


「見付けたぜ。出てこい、てゐ。あいつらがそうか?」


 頭上から被せられた一声に、てゐのウサギ耳がぴょこんと跳ねてフロントガラスに映る。
 そっと顔だけを覗かせ、彼女は求めていた希望の星の姿をそこに認知した。


 ───が、少し様子がおかしい。



「…………霊夢?」



 見間違いでないならば、てゐの瞳に映る光景は息苦しそうに膝を突く“あの”博麗霊夢と、心配そうに彼女を介抱しようとする霧雨魔理沙。
 衰弱する霊夢とはまた珍しいが、問題なのは如何にしてあの博麗の巫女をそこまで追い詰めたのかという過程と、その恐るべき相手だ。異変解決のエキスパートとして真っ先に名前の挙がる驍勇無双の二人を目前にするも、ここに来ててゐの胸中に不安が過ぎる。

「おいおいおい」

 なんだか、想像していた図と違う。
 てゐは決して巫女や魔法使いと仲良しこよしだった訳でもないが、あの有名な二人に泣きつけば邪険にされこそすれ、何だかんだ同行ぐらいは許されるだろうという怠慢の気持ちはあった。

 今てゐの眼前にあるのは、率先して悪者をバッタバッタと薙ぎ払う一騎当千巫女の姿ではない。
 『普通』たる魔法使いの魔理沙の方がまだ動けそうだと断ぜられる程に、弱りきった博麗霊夢の姿。

「なーんか、あちらさんも色々大変みたいね」
「バカ、なに呑気なこと言ってんのさ。とにかく、事情を聞くよ」

 他人事な台詞を吐く相棒をよそにして、てゐはやや焦り気味にドアを開けて外に飛び出した。見た所では霊夢の外観には目立つ外傷は無さそうだが、歩くのも辛そうであれば一先ず後部座席をベッド代わりにでも使わせて恩の一つも売っておかなければ。
 薄く積もり始める雪の絨毯に足跡を付けた瞬間、相手集団の中で唯一てゐの見知らぬ女が構えながら警告を発してきた。その瞳に宿るのは、当然警戒心である。


「ヘイ! そこで止まりなアンタ達」
「あ、いやいや私らは怪しいモンじゃなくってさ。そこの紅白と白黒の二人とは大親友の……」
「……永遠亭んトコの、悪戯兎か……」
「おい霊夢、まだ動くなって!」


 てゐの来襲を虚ろな瞳で認識した霊夢は、ゆらりと立ち上がると右手のお祓い棒を思い切り向けて構えた。警戒を崩さないその姿勢は、流石の熟練者だという片鱗だけは見て取れる。しかし実態は、弱者のてゐであってもほんの一押しで頭から倒れそうな程にヨロヨロと危なっかしい、タチの悪い風邪でも患ったかのような有様である。

184Ёngagemənt:2018/04/21(土) 19:15:32 ID:0e5ote3o0

「確か、因幡てゐ……だっけ。正直アンタはそこそこ怪しいモンリストに名を連ねた奴だと記憶してるんだけど、何しに来たの?」
「いや、何しに来たって言うか……それより霊夢こそどうしたのさ? 随分青い顔になっちゃってるよ、今のあなた」

 衰弱しようがそこは凄腕の巫女様。悪徳と名高い竹林のイナバと見るや、煙たがっていることがすぐに分かるニュアンスを第一声に混ぜてきた。普段の行いを考えると自業自得とも思うが、出来る限り穏便な接触を望むてゐにとっては心外である。
 交渉事は得意という自負もあるが、考えてみれば霊夢から良い印象を持たれないのも当然だ。気は進まないが、ここは同じネゴシエーションを得意とする頼りの相棒に任せよう。

「ジョジョ! ここはアンタに任せたよ!」
「あぁん? 俺かよ……お前の知り合いだろうに」

 エンジンを掛けたままてれてれと出てきたジョセフは、強引に握らされたバトンを嫌そうな表情で受け持つ。

「ジョジョ……?」
「あー? ったく、コイツもジョジョってワケ?」

 てゐが発した『ジョジョ』の言葉に、霊夢と徐倫が同時に反応を示した。二人が共鳴して吐いた小さな溜息には、あまり歓迎しないようなムードが漂っている。
 よく分からない所から溜息など吐かれた対応にもめげず、ジョセフはなるべくこの空気を換気する為に明るいムードを作りながら馴れ馴れしく声を掛けた。

「へ〜いカノジョ達ィ! 俺のチビの相棒が失礼したな」
「誰がチビだこの巨木」
「うっせ! とにかく、俺もコイツも別にアンタらに危害を加えようって気はぜーんぜん無いのよン! そこの嬢ちゃんも何だか気分悪そうだし、取り敢えず車ん中で話さない? お外寒いしさァー」

 身振り手振りで害意の無さと、ついでに軽薄な印象をこれでもかと植え付けようと努力するジョセフを見て、霊夢といえど毒気が抜かれたか。胡散臭げな視線はそのままに、威嚇の代わりであるお祓い棒を無言で下ろした。
 同じ様に警戒心を剥き出しにして構えていた徐倫も、頭を抱えながらやれやれと首を振る。

「お二人さんの意見を聞くぜ」

 比較的温厚な立場で成り行きを見ていた魔理沙も、肩をすくませながら仲間の二人へと聞いた。

「ま。いーんじゃないの? このデカブツも『ジョジョ』って所が気に入らないけど」
「賛成かしらね。あたしの首の『アザ』もコイツを『ジョースター』だと認めてるみたいだし。……ムカつくことに」

 霊夢も徐倫も、ジョセフらを認める一因として共に挙げた根拠は、この男が『ジョジョ』であるらしいと理解したからだ。
 そうとはつゆ知らず、ジョセフは自らの交渉術が上手くいったものと信じきり、バギーカーの後部ドアを鼻歌交じりに開きながら、三人の個性豊かな女性を招き入れるのだった。

            ◆

185Ёngagemənt:2018/04/21(土) 19:15:59 ID:0e5ote3o0

 ズキズキと疼く胸を押さえながら霊夢は、ギリと歯ぎしりを鳴らす。傷が開いた訳では無いが、そもそも死の淵を彷徨い、奇跡的な蘇生を遂げたばかりなのだ。
 まだまだ、すぐには動ける身体とは言い難い。情けないことだが、こうしてバギーカーの後部座席を占領し横になる事で、一刻も早く体力の復活を祈るしか出来ない。

「……にしても、アンタ」
「ジョセフ・ジョースターだ。ジョジョって呼んでくれよな」
「ジョセフね。アンタ、妙な術使うのね」

 横になる霊夢の身体へと波紋を継続して流すジョセフ。狭い車内に身長190越えの大男が足を曲げてじっとしているというのだから、狭苦しくて仕方ないのはご愛嬌だ。
 彼は霊夢がマトモに動ける身体ではないと知るや、得意の波紋を以て彼女の集中治療に専念した。霊夢がジョルノから受けた治療はあくまで応急処置のものであり、本格的に体力が戻るまではこうして波紋を流すことで回復を早めようという目論見だ。
 ちなみに運転は徐倫に任せている。助手席にてゐ、後部座席に霊夢を寝かし、少し窮屈にジョセフが横から波紋を流す。魔理沙は荷台でその様を眺めているといった図だ。

「霊夢がここまでやられるなんて……相手は大怪獣かなんか?」
「トカゲ人間よ。それと吸血鬼」
「そいつらが紅魔館ってとこに居るんだな?」

 さんざ頼りになる人間だと、てゐはジョセフに前もって評価していたが……あろうことか霊夢は、紅魔館にて完膚なきまでに叩きのめされ今に至るらしい。本人の口からそれを聞かされたてゐは青い顔で縮こまる。ジョセフも臆する事こそ無かったが、表情には一層緊張が漂っている。

「空条承太郎って奴はDIOのヤローにやられたのか」

 波紋を込める掌に、僅かな怒気が混ざる。ジョセフは承太郎をさっぱりと知らないが、何故だか彼の死という事実を聞いた瞬間、言葉に出来ない感情が湧いてきた。
 赤の他人とは思えない。そんな男が、かつて祖父のジョナサン・ジョースターを葬った吸血鬼DIOに殺された。ジョセフがDIOを恨む理由がまた一つ加算される。チルノやこいしの件もある。やはり奴はこのまま放っておくわけにはいかない、柱の男に並ぶ超危険人物だ。


「……空条承太郎は、あたしの父さんだった」


 慣れない車を運転しながら、前方の徐倫が唐突に語った。


「何だって?」
「ねえアンタ。本当にアンタが、ジョセフ・ジョースターなの?」
「どういう意味だそりゃあ」
「……別に。ちょっと、気になっただけよ」

 徐倫はジョセフ・ジョースターを知っている。自分の父親の母親の、そのまた父親。つまりは曽祖父にあたる人物の筈だ。通常、ここまで離れていればその人柄なども含め、疎遠。精々が名前を知っている程度だ。
 とはいえ目の前に居るジョセフは随分と若々しい。事前に魔理沙とも考察を添えていた事だが、時代のズレがもたらした奇跡を今、徐倫は実感しているのだろう。
 それも父の死がなければ、もう少しゆっくり堪能できていた奇跡だ。ジョセフは果たして、承太郎が自身の子孫だと知っていての憤りを生んでいるのか。

 徐倫にそれを確認しようという意思は、今のところ湧かない。

186Ёngagemənt:2018/04/21(土) 19:16:45 ID:0e5ote3o0


「で、どこ行くんだよ。その『リスト』って奴が本物なら、値千金の情報じゃんか」

 荷台に座る魔理沙が霊夢目掛けて声を掛ける。そこには、波紋治療を受けながら難しい顔をする霊夢と、右手に持たれた一枚の地図があった。
 ジョセフとてゐが手に入れた、主催からの参加者位置情報を記した物である。片手でくしゃと支えられた地図の中には、膨大な量の氏名が所狭しとぎゅう詰めに書かれていた。

「これ、死者の名前まで載っけてあるのがある意味面倒ね。第二回放送後に死んだ奴と今も生きてる奴の区別がつかない」

 太田はジョセフの願いに完璧に応え、生者死者問わずあらゆる人妖の現在地を包み隠さず伝えてきた。そこから時間も幾分か経っているので、現時点での各参加者の正確な位置と生死までは流石に分からない。
 霊夢は波紋マッサージの快感を存分に受けながら、リストとひたすら睨めっこを続ける。言うまでもなく、このリストからもたらされる情報がこの一団の次なる目的地を決める。これからの命運を握った情報とまで言っても良いのだ。

「……西に聖達が居る。そう遠くない位置ね。
 ってアンタ、変なとこまさぐったらここから突き落とすわよ」
「あのね、俺は別にお子ちゃまには興味ないの。妙な言い掛かりはよしてくれよな」

 難癖を付けられたジョセフは仕返しとばかりに霊夢へと子供扱いし、自らの無実を示す。運転中の徐倫が笑った気がした。

「それにジョナサン・ジョースターってのも一緒ね。この人にも協力、頼めないかしら」
「あ、俺それ賛成。会ってみたかったんだよな、生きてるおじいちゃんに」

 頼りになるだろう聖白蓮と一緒の位置に、ジョースター家の男もいる。霊夢はそこに目を付けた。
 承太郎の話した内容では、ジョナサンとは彼の祖先である。このゲームに何人か放り込まれているジョースター家という存在を、霊夢自身いち早くよく知る必要がある。

 故に、舵を切る方向は取り敢えず西とした。
 この近くに月の連中もいるようだが、彼女らは既にジョセフやてゐ達が合流済みだった。何らかの意図あって別れたようだから、わざわざまた会いに行くというのも不毛な話である。


「ん? 霊夢、近くに早苗の奴とか、お前がさっき言ってた花京院とかいう奴も居るぞ。そいつらには会わなくていいのか?」
「却下。二人は仲間に欲しいけど、よりによって一番面倒臭い『迷いの竹林』に居る」

 目敏く魔理沙が発見した早苗や花京院らのポイントを、霊夢は即座に却下した。バギーカーであんな無数の竹薮の中を捜索するというのはいかにも無謀であり、下手すればこちらが迷い込む。
 しかしその心配は無用だと、ここで自らの役目を主張するてゐが我こそはと言わんばかりに手を挙げた。

「あ、はいはーい! 私、竹林なら庭みたいなもんでーす」
「おばか。幾らアンタの庭でも、あんな広大な迷路から何処にいるかも分からない二人をピンポイントで捜し出すには時間が掛かりすぎるでしょ」

 我が存在意義を秒で封殺されたてゐは、見る見るうちに悲しげな顔を作ってそのまま引っ込んだ。その様子を見かねた魔理沙が、霊夢に向けて最終確認を取る。


「じゃ、早苗達は……どうすんの?」
「放置。どーせアイツらも勝手に迷ってんのよ」


 こうして五人を乗せた正義の集団は、西方向にハンドルを切ったのだった。


▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽

187Ёngagemənt:2018/04/21(土) 19:17:13 ID:0e5ote3o0
【E-4 川沿いの道/午後】

【霧雨魔理沙@東方 その他】
[状態]:体力消耗(小)、全身に裂傷と軽度の火傷
[装備]:スタンドDISC「ハーヴェスト」@ジョジョ第4部、ダイナマイト(6/12)、一夜のクシナダ(60cc/180cc)、竹ボウキ、ゾンビ馬(残り10%)
[道具]:基本支給品×8(水を少量消費、2つだけ別の紙に入っています)、双眼鏡、500S&Wマグナム弾(9発)、催涙スプレー、音響爆弾(残1/3)、
    スタンドDISC『キャッチ・ザ・レインボー』@ジョジョ第7部、不明支給品@現代×1(洩矢諏訪子に支給されたもの)、ミニ八卦炉 (付喪神化、エネルギー切れ)
[思考・状況]
基本行動方針:異変解決。会場から脱出し主催者をぶっ倒す。
1:車で西に。白蓮らと合流。
2:徐倫と信頼が生まれた。『ホウキ』のことは許しているわけではないが、それ以上に思い詰めている。
4:何故か解らないけど、太田順也に奇妙な懐かしさを感じる。
[備考]
※参戦時期は神霊廟以降です。
※徐倫と情報交換をし、彼女の知り合いやスタンドの概念について知りました。どこまで情報を得たかは後の書き手さんにお任せします。
※アリスの家の「竹ボウキ@現実」を回収しました。愛用の箒ほどではありませんがタンデム程度なら可能。やっぱり魔理沙の箒ではないことに気付いていません。
※人間の里の電子掲示板ではたての新聞記事第四誌までを読みました。
※二人は参加者と主催者の能力に関して、以下の仮説を立てました。
・荒木と太田は世界を自在に行き来し、時間を自由に操作できる何らかの力を持っているのではないか
・参加者たちは全く別の世界、時間軸から拉致されているのではないか
・自分の知っている人物が自分の知る人物ではないかもしれない
・自分を知っているはずの人物が自分を知らないかもしれない
・過去に敵対していて後に和解した人物が居たとして、その人物が和解した後じゃないかもしれない


【空条徐倫@ジョジョ第6部 ストーンオーシャン】
[状態]:体力消耗(中)、全身火傷(軽量)、右腕に『JOLYNE』の切り傷、脇腹を少し欠損(縫合済み)
[装備]:ダブルデリンジャー(0/2)@現実
[道具]:基本支給品(水を少量消費)、軽トラック(燃料70%、荷台の幌はボロボロ)
[思考・状況]
基本行動方針:プッチ神父とDIOを倒し、主催者も打倒する。
1:父さんの意志を受け継ぐのは、この私だ!
2:車で西に。白蓮と合流。
3:FFと会いたい。だが、敵であった時や記憶を取り戻した後だったら……。
4:しかし、どうしてスタンドDISCが支給品になっているんだ…?
[備考]
※参戦時期はプッチ神父を追ってケープ・カナベラルに向かう車中で居眠りしている時です。
※霧雨魔理沙と情報を交換し、彼女の知り合いや幻想郷について知りました。どこまで情報を得たかは後の書き手さんにお任せします。
※ウェス・ブルーマリンを完全に敵と認識しましたが、生命を奪おうとまでは思ってません。
※人間の里の電子掲示板ではたての新聞記事第四誌までを読みました。

188Ёngagemənt:2018/04/21(土) 19:17:55 ID:0e5ote3o0
【ジョセフ・ジョースター@第2部 戦闘潮流】
[状態]:胸部と背中の銃創箇所に火傷(完全止血&手当済み)、てゐの幸運
[装備]:アリスの魔法人形×3、金属バット、焼夷手榴弾×1、マント
[道具]:基本支給品×3(ジョセフ、橙、シュトロハイム)、毛糸玉、綿、植物油、果物ナイフ(人形に装備)、小麦粉、香霖堂の銭×12、スタンドDISC「サバイバー」、賽子×3、青チケット
[思考・状況]
基本行動方針:相棒と共に異変を解決する。
1:車で西に。白蓮と合流。
2:カーズから爆弾解除の手段を探る。
3:こいしもチルノも救えなかった・・・・・・俺に出来るのは、DIOとプッチもブッ飛ばすしかねぇッ!
4:シーザーの仇も取りたい。そいつもブッ飛ばすッ!
[備考]
※参戦時期はカーズを溶岩に突っ込んだ所です。
※東方家から毛糸玉、綿、植物油、果物ナイフなど、様々な日用品を調達しました。この他にもまだ色々くすねているかもしれません。
※因幡てゐから最大限の祝福を受けました。
※真昼の時間帯における全参加者の現在地を把握しました。


【因幡てゐ@東方永夜抄】
[状態]:黄金の精神
[装備]:閃光手榴弾×1、焼夷手榴弾×1、スタンドDISC「ドラゴンズ・ドリーム」、マント
[道具]:ジャンクスタンドDISCセット1、基本支給品×2(てゐ、霖之助)、コンビニで手に入る物品少量、マジックペン、トランプセット、赤チケット
[思考・状況]
基本行動方針:相棒と共に異変を解決する。
1:車で西に。白蓮と合流。
2:柱の男は素直にジョジョに任せよう、私には無理だ。
[備考]
※参戦時期は少なくとも星蓮船終了以降です(バイクの件はあくまで噂)
※制限の度合いは後の書き手さんにお任せします。
※蓬莱の薬には永琳がつけた目盛りがあります。
※真昼の時間帯における全参加者の現在地を把握しました。

189Ёngagemənt:2018/04/21(土) 19:18:41 ID:0e5ote3o0
▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽

 私は時折運転の振動で揺らされる頭の片隅で、ぼんやりと考えに耽っていた。

 『博麗の巫女』という名の役職・運命(さだめ)を自然と受け入れてきたように思える今までは、実の所なんの自由はなく、知らず知らずの内に私は空へ落ち続けていたのかもしれない。
 自らがこの閉鎖された幻想社会によって状況付けられ、その中で否応なく一つの立場を取らざるを得ない運命。自由の名を賜っておきながら、そこに本当の自由は無いのではないか。

 あの夢の中で、ジョジョの言葉はそういう矛盾を私に堂々突き付けてきた。


 真の『博麗霊夢』とは、何者にも心を縛られず。
 また、何物にも足を絡まれてはならない。
 在りの儘。赤裸々の心で、空を舞う。
 博麗の巫女だから、幻想郷を救う。異変を解決する。
 そうではなく、私が、私自身が、救いたいから。
 大好きなこの土地を。ここに住む皆を。私が助けたいから、助けなくちゃあならない。
 真に大切なのは、その意思なんだ。それを気付かせてくれたのは、図らずもジョジョだった。

 でも今は、まだ『半分』。
 私の心はきっと、未だに囚われている。
 ジョジョっていう重力に。あの『霊夢』の中に。
 アイツに負けたくない。勝ちたい。そんなありふれた渇きが、現在の博麗霊夢を動かす原動力。

 一方で、こんな未練タラタラの心持ちじゃあ本当の自由とは言えないのも確か。


(まだだ……わたし、まだ『自由』に翔べない)


 真の自由。私が本当の意味で空を翔べるようになれるのは。
 それは───ジョジョとの『約束』を果たせた時。
 大事なのは勝ち負けじゃない。いや、それも大事だけど。
 約束っていうのは、その人と自分を絆ぐ、見えない絆。繋がりのこと。言い方を変えるなら、それは自分と相手を縛ってしまう言霊にもなってしまう。
 今の私を縛る相手は、ジョジョだけ。アイツの言葉が私を『幻想郷』という社会から……自由と規律の矛盾から解放したんだ。
 それでも、半分に過ぎない。もう半分の重力は、私自身の力で解き放たなければ意味が無い。
 自覚的に自らの立場を決定し、その上で幻想郷を救わなければ私個人の自由は生まれない。
 どんな結果が待ってようと、約束を果たしたその瞬間こそが……私が再び自由に空を翔ぶ時。



「───見てなさいよ。太田に、荒木」



 ズキズキと痛む傷を押さえつけながら、私は誰の耳にも聴こえない呟きを零した。
 前方の助手席に座るてゐの耳が僅かに反応したのは、気のせいだと思っておく。

 そういえば……てゐの挙動や言動についても若干の違和感がある。彼女とは別に仲良しでもなんでもない仲だったけど、以前よりもずっと……なんと言うか、吹っ切れてるような。

 『変わった』、のかもしれない。てゐも。
 何があったのかは分からないし、近いうちに訊くべきだけども。
 きっと、隣のジョセフが大いに関係してるんでしょうね。


「……ふん」


 ジョセフ・ジョースター。通称〝ジョジョ〟。
 彼が……いえ、彼らがこの幻想郷に何をもたらしているか。
 判然としないままの頭で、私はどうでも良さげに考えながら───目を閉じた。


▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽

190Ёngagemənt:2018/04/21(土) 19:19:31 ID:0e5ote3o0
【博麗霊夢@東方 その他】
[状態]:体力消費(大)、霊力消費(大)、胴体裂傷(傷痕のみ)、波紋治療中
[装備]:いつもの巫女装束(裂け目あり)、モップの柄、妖器「お祓い棒」@東方輝針城
[道具]:基本支給品、自作のお札(現地調達)×たくさん(半分消費)、アヌビス神の鞘、缶ビール×8、
    不明支給品(現実に存在する物品、確認済み)、廃洋館及びジョースター邸で役立ちそうなものを回収している可能性があります。
[思考・状況]
基本行動方針:この異変を、殺し合いゲームの破壊によって解決する。
1:有力な対主催者たちと合流して、協力を得る。
2:1の後、殲滅すべし、DIO一味!! 
3:フー・ファイターズを創造主から解放させてやりたい。
4:『聖なる遺体』を回収し、大統領に届ける。今のところ、大統領は一応信用する。
5:出来ればレミリアに会いたい。
6:大統領のハンカチを回収し、大統領に届ける。
7:徐倫がジョジョの意志を本当に受け継いだというなら、私は……
[備考]
※参戦時期は東方神霊廟以降です。
※太田順也が幻想郷の創造者であることに気付いています。
※空条承太郎の仲間についての情報を得ました。また、第2部以前の人物の情報も得ましたが、どの程度の情報を得たかは不明です。
※白いネグリジェとまな板は、廃洋館の一室に放置しました。
※フー・ファイターズから『スタンドDISC』、『ホワイトスネイク』、6部キャラクターの情報を得ました。
※ファニー・ヴァレンタインから、ジョニィ、ジャイロ、リンゴォ、ディエゴの情報を得ました。
※自分は普通なんだという自覚を得ました。

191 ◆qSXL3X4ics:2018/04/21(土) 19:20:39 ID:0e5ote3o0
これで「Ёngagemənt」の投下を終了します。
ここまで読んで下さりありがとうございます。
感想や指摘などあればお願いします。

192名無しさん:2018/04/21(土) 21:53:13 ID:LFy6.r3w0
投下乙カレーかつ良リレー!!
……(オホンエホン

やー、面白い!!!
ジョセフとてゐの掛け合いがいい味を出していて思わずニヤリとさせられましたね!!
冒頭のワンフレーズから始まり、今回のストーリーの主軸になっている霊夢の心象や葛藤、その周囲のキャラクターの人間模様の描写が、椽大の筆の如く細やかに著されている素晴らしいお話でした!!

193名無しさん:2018/04/21(土) 23:59:20 ID:IsichJBw0
「敵ならそのまま轢き殺せッ! この雪がきっと私らの犯行の跡を掻き消して……」

てゐのクソッタレ発言嫌いじゃない、むしろフェイバリット!
霊夢さん、自由とはなんぞやを考えてしまうことが自由じゃないアレ
みたいなドツボに嵌まってる感じがしていいね
どんな結論出すか楽しみです

194 ◆qSXL3X4ics:2018/04/28(土) 00:06:11 ID:Lo/XvNNg0
蓬莱山輝夜、リンゴォ・ロードアゲイン、西行寺幽々子、稗田阿求、八意永琳、ジャイロ・ツェペリ、射命丸文

以上7名予約します

195 ◆at2S1Rtf4A:2018/05/01(火) 11:00:05 ID:6DKdCX9M0
花京院典明、東風谷早苗、藤原妹紅の3人を予約します

196 ◆qSXL3X4ics:2018/05/03(木) 23:28:25 ID:Q95e2Upc0
すみません、延長します

197名無しさん:2018/05/06(日) 01:46:37 ID:gceemde20
不束者ながら支援絵を書かせて戴きましたのでここに投げさせて貰います。
諸作である177話の他に、身勝手ながら ◆qSXL3X4ics氏の作品である183話のもありますが何卒。

ttp://iup.2ch-library.com/i/i1906510-1525538267.jpg
ttp://iup.2ch-library.com/i/i1906512-1525538345.jpg

198 ◆e9TEVgec3U:2018/05/06(日) 01:47:30 ID:gceemde20
酉が抜けておりました。
つまらない事かもしれませんが一応……。

199名無しさん:2018/05/06(日) 13:03:58 ID:ZnXWGtT20
描き込みの量半端ないな…
味のある絵でかっこいいぜ

200名無しさん:2018/05/06(日) 22:00:45 ID:2jeaZBu.0
絵心が有るってのは羨ましいです

201 ◆at2S1Rtf4A:2018/05/08(火) 23:49:00 ID:Rz7t2Z9I0
予約を延長します

202 ◆qSXL3X4ics:2018/05/12(土) 14:13:01 ID:1f6mgKSE0
すいません、予約を破棄します

203 ◆at2S1Rtf4A:2018/05/15(火) 20:08:40 ID:Nvm8Ac3Q0
予約破棄します

204今浪隆博:2018/06/16(土) 09:13:14 ID:b3dqn8920
新参 まとめ読み完

205名無しさん:2018/06/16(土) 23:48:19 ID:sb5Qha4k0
>>204
一々ageるこのクソッタレは30ページブチ抜きオラオララッシュ喰らって、どうぞ

206名無しさん:2018/06/18(月) 14:36:01 ID:n4Ns1.p60
新参らしいし、ゴールドエクスペリエンス・レクイエムで勘弁したれよ…

207 ◆EPyDv9DKJs:2018/06/25(月) 18:33:24 ID:axZCrXNA0
ゲリラ投下です

208 ◆EPyDv9DKJs:2018/06/25(月) 18:34:49 ID:axZCrXNA0
 サンタナが出陣の準備を整えてすぐさま紅魔館へと向かい、訪れた静寂。
 僅かな時間で特に進展したことはなく、静寂の中でカーズが沈黙を破る。

「では、サンタナがいない間の我らの方針を決めようと思うが、その前にだ。」

 外出はできないが、地下の通路は様々な場所へとつながっており、
 此処に留まっていても、パチュリーと合流するのは第四回放送の時。
 日数ですら瞬き程度の時間と称するカーズ達も、今回ばかりは話が別だ。
 漠然と時間が過ぎるのを待つ場合ではない。合理的主義であるカーズなら当然の考え。
 次なる方針を決めようと話を始めるも、その前に一つの疑問の解決が必要だった。

 本来ならばサンタナにも話を聞いてもらうべきだったが、
 DIOの闘いに集中するところに余計な考えを与えるべきではないと判断した。
 そうでなくても些末な内容であり、サンタナがいても何か変わるかとは思えないものだ。
 わざわざ引き留めてまで聞かせることでもない。

 ・・・・・・DISCについては別だったのだが、過ぎた以上仕方ないと割り切った。

「エシディシが相手にしたのは火車と言ったな。
 となれば、こいしの言う火焔猫燐と見ていいだろう。」


 カーズが問うのは、先の一方的な蹂躙。
 誰一人として傷を負わせることができなかった、四つの柱。
 生還したのはパチュリー・ノーレッジただ一人のモンスターハウス。 
 そのパチュリーでさえ指輪と言う、時限爆弾をつけてのお帰りだ。
 柱の男にとっては大したことではない。鬱陶しい羽虫を落とす行為を、
 いちいち気に留める程彼らは短い生を生きているわけではない。
 しかし、その落とした羽虫が気がかりなのだ。

「おう。こいしにも様をつけてたし、間違いはねえな。」

「ワムウの相手は風を操ると言ったところから、射命丸文だろうな。」

 こいしの情報で得た幻想郷の住人の容姿、能力。
 燐と文も(後者は断片だが)どちらも情報と一致しているので、間違いはない。
 ホル・ホースは情報がなく、特に気に留めるところはないのでそのまま話が進む。

「ではなぜ、その二人が放送で呼ばれてないのか、だ。」

 ワムウとサンタナの闘いを優先抜きにしても、正直死者などどうでもいい。
 ジョースターの一人や、シュトロハイムなど見知った相手や気がかりな相手はいれども、
 所詮十二時間を生きることができなかった脆弱な存在。心底どうでもいいレベルだ。
 しかし、死んでいたはずの存在が呼ばれてないとなれば、少々引っかかることがある。
 エシディシが相手にしたのはぐずぐずの肉塊に溶解し、ワムウに至っては捕食した。
 誰がどう見ても全員死亡している。燐の死体なら死体もまだミュージックルームに残っている。

「俺も同じことを思っていた。
 似たような奴がいる・・・・・・にしても、
 格好、能力、種族が同じ。同じ家計ならともかく、
 火車の奴の家族でも血がつながってない連中だからな。」

 こいしが嘘をついていたのであれば話が別だが、
 ほかの持っていた情報はちゃんと一致している。
 身内を庇う為の嘘・・・・・・と言うわけでもない。
 ワムウが最初に出会った同じ身内の空の情報は一致しており、
 他の幻想郷に関する情報もまた断片で曖昧なものもあるが、いずれも外れてはない。

「念のため確認するか。悪いがワムウ、死体を持ってきてくれるか?」

 もしかしたら、あの状態で生きているのかと思い、ワムウへと確認を仰ぐ。
 確認だけなら持ってこなくてもいいが、どうせなので腹の足しにでもしておく算段だ。

「畏まりました、エシディシ様。」

 智がないわけではないが、頭脳においては二人を超えてるとはいいがたい。
 自分がいたとて主の役には立てないのと、主の命令もあってワムウは動く。
 ワムウが離れている間も、二人の考察は進む。

「個人的な感情を抱いてるようでもなかった。
 こいしの情報は紛れもない本物と断定できる。
 では放送で呼ばれなかったのは、どういうことか。」

 記憶した死者を名簿から線で引いてみるが、
 やはり燐と文の名前が呼ばれていない。
 柱の男の記憶力で間違えるはずはなく、
 文と燐は死亡していない可能性が浮上する。

209 ◆EPyDv9DKJs:2018/06/25(月) 18:36:24 ID:axZCrXNA0
「荒木達が把握してない、あるいは誤認ってのはどうだ?」

「こいしの死亡はカウントされた。
 と言うことは、此処も監視下におけるはずだ。
 荒木が何らかの事情があったとして確認を怠るとも思えん。」

 『荒木には勝てない、だから殺し合うしかない』と言う信用。
 その信用を失えば、殺し合いをするのが不毛となりかねなくなる。
 殺し合いを停滞させたくないならば、より一層慎重に扱うべきところだ。
 抜け穴がある主催者では、反抗されても何らおかしくないのだから。

「となれば、スタンドか?」

 スタンドの知識こそ得てきた彼らだが、それでもまだにわかだ。
 そういう影武者を作る能力もありうるという結論に至るのは早い。

「可能性は高いだろうな。」

「エシディシ様、お持ちしました。」

 話し込んでると、ワムウが無残な死体を抱えて戻ってくる。
 肉塊と化した燐の死体をエシディシは受け取り、それを取り込む。
 触れてからも生きている様子はなく、捕食もすんなりと終わってしまう。

「ふ〜〜〜〜〜む、これが妖怪か。
 ちょいと人間よりは多いってところだな。」

 人間でも波紋使いでも吸血鬼でもない、妖怪の栄養。
 エシディシは食玩の中身を期待する子供のように何かを期待するも、
 特に思っていたほどの結果ではなく、少々落胆してしまう。
 食事など触れるだけでできる呼吸同然の行為ではあるのだが、
 妖怪と言う貴重な存在を頂ける機会に、期待しすぎた故に落胆も大きい。

「間違いなく死んでいるな。
 誤認の可能性も否定できないが、
 スタンド能力のほうがまだありえそうだな。」
 
「誰かの人格や能力を他者に投影し、影武者を作る能力、
 或いは当人の姿を模倣して、使役する能力・・・・・・か?」

 ほかにもいくつか出てきそうではあるだが、
 とりあえずパッと思いついたのはこの二つになる。
 前者は死者の順番が早かったものから挙げられることで、
 偶然にもこいしの後の死者が丁度三人と言うことから仮説にできた。
 先ほど戦ったのがヴァニラ、トリッシュ、ディアボロの三人なら間違いではないし、
 肉体の操作も可能なら、こいしの情報のヴァニラ・アイスの容姿が一致しないのも頷ける。

 後者もコピーであれば、死者として判定されないのも妥当なことだ。
 いうなればディエゴの使役する恐竜みたいなものであり、
 それが参加者ではない判定をされていれば妥当な話である。

 ・・・・・・正解は並行世界の同じ人達を影武者として大統領が放ったという、
 若干当たっているような推測ではあるものの、
 こんな変則的な答えに至れる人は、そうはいないだろう。

「仮説とは言え、我らすら模倣できる可能性のある存在。
 仮想敵よりも目先の敵を優先するべきだが、警戒はしておけ。」

 もしも自分たちがコピーされたのならば。
 戦うのには一苦労するのは間違いはない。
 サンタナも未完成ながら流法を手にした今、
 一族の誰が模倣されても難敵になるだろう。

「一先ずこの話は終わりだ。
 それで、次に行動の方針だが・・・・・・」

「ああ、カーズ。行動方針についてなんだが、ちょいといいか?」

「どうした?」

「さっきは気が変わったと言ったが、俺も紅魔館に行ってもいいか?
 いや、俺でなくてもカーズやワムウでも、誰でも構わないんだがな。」

 気が変わったと言って舌の根も乾く前に、またもや向かうとの宣言。
 サンタナが負けると思うから行くとか、そういうのではないらしい。
 自分を含めた誰でも構わないという注釈により、少々答えに詰まる。

「サンタナが向かった場所へ何がしたい、エシディシ。」

 誰でも構わないとなれば私情と言うわけではないと思うが、それは違う。
 誰でもいいならば、注釈せずに最初からそういえばいいだけのことだ。
 わざわざ自分から率先して行きたいと言うことは、
 自分でなければならない理由があるということに繋がる、

「何、ちょいと思ったことがあってな───」





「サンタナが着く前にDIOがすでに斃されていた場合、どうするんだ?」

「・・・・・・確かに失念していたな。」

210 ◆EPyDv9DKJs:2018/06/25(月) 18:39:38 ID:axZCrXNA0

 エシディシに言われるまで、考えていなかった。
 パチュリーとの第四回放送で此処で合流をする際は、
 不在の際は(一方的で理不尽とは言え)ちゃんと考えていたが、
 サンタナの成長を見たからなのかは不明だが、完全に蚊帳の外だった。
 放送では今のところDIOは死亡してないようではあるが、
 決闘の間に何らかの理由で死亡に至っていた場合はどうするか。
 DIOを倒せるような参加者が他にいてもおかしくはないだろう。
 すでにカーズは吸血鬼に辛酸をなめさせられ、エシディシも見逃す形とは言え指を喰われた。
 ワムウも逃げざるを得ない状況に追い込まれたりで、下克上は十分にあり得る。
 カーズからすれば、DIOは倒されればそれで構わなかった。
 合理的主義な彼である以上、貰える益はなんだって貰う。
 しかし、サンタナにとっては別。彼はDIOを倒さなければ、
 自分たちに認められるためのチャンスすら与えられないのだから。

「奴は躍起になった今騙るとは思えんが、
 もしもDIOが斃されていたのなら、
 その斃した奴を調べる必要があるだろう?
 あいつは成長したとてまだ頭の回転は鈍い。
 誰か一人ぐらいついて行くべきだと思ったんだが、
 俺はさっき気が変わったと言った手前で気が引ける。
 お前らが行かないと言うであれば、俺が行くつもりだ。」

 言うことに一理はあるのだが、それにしては妙だ
 エシディシは今までサンタナに肩入れや贔屓はしてない。
 いかに流法と言う新たな可能性を見出したとしても、
 遣いに行かせた息子が心配で様子を窺う親のような過保護ではない。

「・・・・・・一理はあるが、本音はなんだ。」

 『行ってみたい』という好奇心が出ている表情は
 ジョセフと戦うのを楽しみにしていた時のようで、
 それが建前なのは目に見えており、なんとなく察してはいたが、問い質してみる。
 種も仕掛けもわかる手品を見るような心境で。

「DIOとやらか、そいつを斃した奴がいれば見てみたい、それだけだ。」

 予想通りの回答で、やれやれと少し呆れ気味に首を横に振るカーズ。
 彼らからすれば吸血鬼など、ピザトーストやステーキのような存在だ。
 その吸血鬼がカーズを追い詰めたとなれば、興味を抱くのも頷ける。
 敗北を喫したカーズにとっては、その考えは複雑なものなのだが。

「まあ、これは半分冗談としてだ。 
 紅魔館とは大層でかい館らしいじゃあないか。
 なら、書庫の一つや二つあると俺は見込んでいる。」

 幻想郷でも特に名のある場所ならば、情報も多くあるはずだ。
 多くの参加者がそう思うも、強敵の存在に忌避することが多いところを、
 彼らにとっては苦ではなく、むしろ強敵の枠に分類される。
 忌避せず、ガンガン突き進むものだ。

「何かしらの情報収集には向いているだろう。
 サンタナはDIO以外は任せちゃあいない。
 参加者の首以外に持ち帰るとも思えんからな。」

 決闘の直前に書物を漁りこそしたし、
 先ほど情報交換もしたものの、それでもまだまだだ。
 エシディシの言葉はもっともで、本を持ち帰ってくるのも、
 集めた情報をペラペラと喋るサンタナのイメージは余りできない。
 何より、一世一代の大勝負と言ってもいいチャンスで躍動した今、
 それ以外において眼中にあるのかすら怪しくなっている。

「となれば、ワムウは選択肢としては除外されるな。
 何らかの戦闘で巻き添えになる可能性のほうが高い。」

 神砂嵐は柱だろうと容易に崩壊させる砂嵐の小宇宙。
 そんなもの使われては、いくら紅魔館がこの洋館よりも広くとも、
 場所によっては書庫をまるごと吹き飛ばしかねない。

「で、カーズと俺になるわけだが、
 カーズは紅魔館以外に行く場所はあるか?」

211 ◆EPyDv9DKJs:2018/06/25(月) 18:40:49 ID:axZCrXNA0
 何が何でも行きたいと言う、露骨に見えるエシディシの本音。
 特に自分やワムウを優先する理由もないため別に構わないのだが、
 それはそれとして、残った二人の行動方針をどうするかだ。

「永遠亭だな。正確には、傍の『スペースシャトル』とやらが何か気になる。
 模型と言うのだから大したものはなさそうだが、調べてみる必要はあるだろう。」

 地図上に明記された場所は名前だけでおおよそは理解できたが、
 ただ一つ想像すらできないのが、スペースシャトルの模型。
 多くの参加者にとっては何かは分かっているものなので気にも留めないが、
 カーズ達の場合は話が別だ。

 スペースシャトルは千九百七十年に設計、および製造が始まった。
 カーズ達が眠りから目覚め、波紋戦士と戦ったのは千九百三十八年。
 数十年も未来の話である以上、カーズ達はそれを知る術はない。
 スペースシャトルについての情報を、彼らは一切把握できてないのだ。
 名前から宇宙関係だと関連付けるが、あくまで関連付けたものであって、
 構造自体は全く予想できず、ゆえに興味がある。

「紅魔館へ向かうという行動については構わんが、
 行きでも帰りでも構わん、近くのジョースター邸にも寄ってもらう。」

「ジョースター邸か、確かに寄る必要はあるか。」

 ジョジョと呼ばれる参加者を中心とした存在。
 もしかしたら、何か手がかりがあるかもしれない。
 或いは、それに気づいた参加者を狙った行動も取れる。
 位置的にも紅魔館に近く、さほど時間も取られない場所だ。

「ワムウは東の命蓮寺へと向かってもらう。
 幻想郷でも名のある場所ならば、何かしらあるやもしれぬ。」

「畏まりました。」

 主の命と言うのは当然として、ワムウには異論はない。
 ジョセフ、魔理沙、徐倫。三名の行方のあてはない現状、
 特に異議を申し立てることもないからだ。
 これはついでに近いが、こいしが関わっていた場所でもあり、
 わずかながらに命蓮寺への興味もあったりする。

「カーズは永遠亭、ワムウは命蓮寺、俺はジョースター邸と紅魔館。
 綺麗に三方向に分かれているな・・・・・・戻る時間帯はどうする?」

「どこも我らならば戦いがあろうと往復数時間だ。
 仮に、このエリアが禁止エリアに指定される前にも到着はするだろう。
 この場に戻り、誰かがいなければ、向かうと決めた場所を調べに行けばいい。」

「サンタナには俺から伝えておこう。では───」

「待てエシディシ。」

 意見も方針も概ね終わった。
 ならばいる意味はなく、動き出そうとするも今度はカーズが止めに入る。
 まだ何かあるのかと思い振り向くと同時にカーズの方から飛んでくる円盤、
 大したスピードもなければ攻撃目的でもないので、簡単に受け止める。

「スタンドをろくに見ていないのはお前だけだ。
 知るよりも身に着けるほうが理解が早いだろう。
 使い方は頭に円盤を突っ込めば勝手に入る。」

 先ほどパチュリーから強奪したディスク。
 此方もサンタナとワムウの決闘で保留としていたものだ。

「それについては、このスタンドの能力次第だ。
 俺の力に劣るようなスタンドなら、持っても仕方ねえしな。
 例えば肉体を変化させるとか、炎を操るとかじゃあ役に立たない。」

 そんな風に辛口な意見を言うものの、
 実際のところは楽しみでもあったりする。
 ホル・ホースのときのちらりとしか見てないスタンド。
 殆ど口伝でしか理解を得てない未知なる力とは何なのか。
 そんな期待は、DISCを頭に挿し込んだ瞬間に終わりを告げる。

「ん?」

「どうした。」

「こいつ、スタンドDISCじゃあないぞ。」

「何?」

 カーズはスタンドDISCと思っていたが、
 パチュリーがスタンドDISCとは一言も言ってない。
 記憶DISCと言うもう一つのパターンがあることを知らず、
 DISCはすべてスタンドDISCだとばかりにカーズは思っていた。
 フラッシュバックの如く出てくる記憶で普通なら混乱するが、
 そこは闇の一族。整理など必要もなく容易く内容を把握してしまう。
 ついでなのでと、情報の共有に二人にもこのディスクを挿し込む。

「スタンドは得られなかったが、収穫はあるな。」

212 ◆EPyDv9DKJs:2018/06/25(月) 18:41:25 ID:axZCrXNA0
 大した情報と言うわけではないものの、
 徐倫やウェザー、そしてこいしから聞いてたとは言えプッチ神父。
 いくらか得られるものはあったので、悪くはない。(エルメェスもあるけど。)
 それが今後役に立つかどうかは別として。

「さて、必要なものは終わりだな。行くぞ。」

 別に大して相談する内容でもなければ、
 必要な情報は記憶DISCがすべて語った。
 今度こそ、ここに留まる必要はどこにもない。

「カーズ様、エシディシ様。僭越ながらご武運を。」

「ワムウも油断・・・・・・は、しねえか。」

「一番不安なのはエシディシだ。
 別行動をとった途端に死ぬんじゃあないぞ。」

 赤石を探すため三人ともバラバラに行動する直前が、
 カーズにとっては最期に見たエシディシの姿だ。
 情報収集のために散り散りになる今は、それと重なって僅かながらに不安を感じていた。

「合理的主義のお前が俺の心配とは珍しいな。」

「今はこうして三人、いや四人揃っているが、
 このカーズとっては全員が過去の存在になっている。
 多少は気がかりになってもおかしくはないだろう。」

「ま、気を付けておくかねぇ。
 例のスタンド使いの可能性もあるしな。」

「ワムウ、お前もだ。戦中の死は戦士として誉だろうが、生還を重視してもらうぞ。」

「カーズ様のご命令とあらば。」

「では・・・・・・往くぞ!」

 地下道にて三つの柱は散り散りとなって目的地へ向かう。
 熱風の後ろから駆ける狂人は西へとその熱を更に送り込む。
 強者との戦い、再戦を望みし武人は東へと疾走する。
 頂点に君臨せし、邪人にして魔王は南へと行進を始めた。



 このバトルロワイヤルに闇の一族と言う災厄はばらまかれた。

【D-3 地下/真昼】

【カーズ@第2部 戦闘潮流】
[状態]:胴体・両足に波紋傷複数(小)、シーザーの右腕を移植(いずれ馴染む)、再生中
[装備]:狙撃銃の予備弾薬(5発)
[道具]:基本支給品×2、三八式騎兵銃(1/5)@現実、三八式騎兵銃の予備弾薬×7、F・Fの記憶DISC(最終版) 、幻想郷に関する本
[思考・状況]
基本行動方針:仲間達と共に生き残る。最終的に荒木と太田を始末したい。
1:永遠亭へ向かい、スペースシャトルを確認したい。
2:幻想郷への嫌悪感。
3:DIOは自分が手を下すにせよ他人を差し向けるにせよ、必ず始末する。
4:この空間及び主催者に関しての情報を集める。パチュリーとは『第四回放送』時に廃洋館で会い、情報を手に入れる予定。
5:『他者に変化させる、或いは模倣するスタンド』の可能性に警戒。(仮説程度)
[備考]
※参戦時期はワムウが風になった直後です。
※ナズーリンとタルカスのデイパックはカーズに回収されました。
※ディエゴの恐竜の監視に気づきました。
※ワムウとの時間軸のズレに気付き、荒木飛呂彦、太田順也のいずれかが『時空間に干渉する能力』を備えていると推測しました。
 またその能力によって平行世界への干渉も可能とすることも推測しました。
※シーザーの死体を補食しました。
※ワムウにタルカスの基本支給品を渡しました。
※古明地こいしが知る限りの情報を聞き出しました。また、彼女の支給品を回収しました。
※ワムウ、エシディシ、サンタナと情報を共有しました。
※「主催者は何らかの意図をもって『ジョジョ』と『幻想郷』を引き合わせており、そこにバトル・ロワイアルの真相がある」と推測しました。
※「幻想郷の住人が参加者として呼び寄せられているのは進化を齎すためであり、ジョジョに関わる者達はその当て馬である」という可能性を推測しました。
※主催の頭部爆発の能力に『条件を満たさなければ爆破できないのでは』という仮説を立てました。

213 ◆EPyDv9DKJs:2018/06/25(月) 18:43:34 ID:axZCrXNA0

【エシディシ@ジョジョの奇妙な冒険 第2部 戦闘潮流】
[状態]:上半身の大部分に火傷(小)、左腕に火傷(小)、再生中(捕食により加速)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品(元はナズーリンのもの)
[思考・状況]
基本行動方針:カーズらと共に生き残る。
1:西の紅魔館へ情報収集。行きか帰り、どちらかでジョースター邸にも向かう。
2:1のついでに、DIOか、或いは斃した奴を拝む。サンタナを見守るつもりはないが、観戦はしてみたい。
3:神々や蓬莱人、妖怪などの幻想郷の存在に興味。
4:静葉との再戦がちょっとだけ楽しみだが、レミリアへの再戦欲の方が強い。
5:地下室の台座のことが少しばかり気になる。
6:『他者に変化させる、或いは模倣するスタンド』の可能性に警戒。(仮説程度)
[備考]
※参戦時期はロギンス殺害後、ジョセフと相対する直前です。
※ガソリンの引火に巻き込まれ、基本支給品一式が焼失しました。
 地図や名簿に関しては『柱の男の高い知能』によって詳細に記憶しています。
※レミリアに左親指と人指し指が喰われましたが、地霊殿死体置き場の死体で補充しました。
※カーズからナズーリンの基本支給品を譲渡されました。
※カーズ、ワムウ、サンタナと情報を共有しました。
※ジョナサン・ジョースター以降の名簿が『ジョジョ』という名を持つ者によって区切られていることに気付きました。
※主催の頭部爆発の能力に『条件を満たさなければ爆破できないのでは』という仮説を立てました。
※幻想郷の鬼についての記述を読みました。
※並行世界の火焔猫燐を捕食したことで回復速度が増しましたが、
 死体なので人より多い程度で、期待するほどの回復は見込めません
 (『一万と二千年の孤独』より。ただ、個人差で上下するかも。)





(報告する程のことでもないから黙っていたが・・・・・・いつの間に消えた?)

 東へ疾走するワムウにも、一つだけ気がかりがあった。
 それはエシディシに頼まれて死体を持ち運ぶときのことだ。
 射命丸文の片翼は、捕食せずにおいていたはず。
 だが、いつの間にか片翼がどこかへと行ってしまったのだ。
 死体ならともかく、消えたのは死んだ存在の片翼。
 そんなどうでもいいことを報告できるはずがなく
 ワムウは従者として、指示に従った。

(死者に挙がってないのと関連している、のだろうか。)

 放送で呼ばれなかったのと消えた片翼、
 何か理由があるのかと思うが、考えるのをやめる。
 もしかしたら、サンタナが出立の準備で捕食したのかもしれないし、
 神砂嵐の余波で吹き飛んだ可能性だってある。考えるだけ無駄だ。
 それに生きていたとしても、背中を見せて逃げた臆病者に過ぎない。
 ワムウにとっては大した相手ではなく、歩みを強めた。

【ワムウ@第2部 戦闘潮流】
[状態]:疲労(中)、身体の前面に大きな打撃痕、
[装備]:なし
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:掟を貫き、他の柱の男達と『ゲーム』を破壊する。
1:東の命蓮寺へと情報収集。好敵手足りうる存在がいれば戦う。
2:空条徐倫(ジョリーンと認識)と霧雨魔理沙(マリサと認識)と再戦を果たす。
3:ジョセフに会って再戦を果たす。
4:『他者に変化させる、或いは模倣するスタンド』の可能性に警戒。(仮説程度)
[備考]
※参戦時期はジョセフの心臓にリングを入れた後〜エシディシ死亡前です。
※カーズよりタルカスの基本支給品を受け取りました。
※スタンドに関する知識をカーズの知る範囲で把握しました。
※未来で自らが死ぬことを知りました。詳しい経緯は聞いていません。
※カーズ、エシディシ、サンタナと情報を共有しました。
※射命丸文の死体を補食しました。


※今回追加の三人共通事項
・F・Fの記憶DISCで六部の登場人物、スタンドをある程度把握しました。

・『他者に変化させる、或いは模倣するスタンド』の可能性に警戒してます。
 ただし、仮説の域を出ていないため現時点ではさほど気にしません。

・大統領が並行世界の射命丸文の片翼を回収したことには気づいていません。

※廃洋館エントランスホールが半壊しています。
※ミュージックルームに頭のつぶれたホル・ホースの死体が放置されていましたが、
 それを出立の前にサンタナが捕食したかどうかは後続の書き手にお任せします。

214 ◆EPyDv9DKJs:2018/06/25(月) 18:44:03 ID:axZCrXNA0
以上で『災はばらまかれた』の投下を終了します

215名無しさん:2018/06/26(火) 09:46:59 ID:wvexZlFo0
ヒャッハー久々の投下だー!
現状全く持って綻びの見えない三人の柱(サンタナもいるけど。)が各々それぞれが別方向に散らばる展開!
情報収集にエシディシは納得だけど、本来なら宇宙に放逐されてるカーズ様がスペースシャトル見に行くというのは何と言うか…w
ワムウの方は戦士としての勘からか細かい違和感も嗅ぎ付けてるようで、相変わらず恐ろしや…。

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217 ◆wPq1t6zm4Q:2018/06/28(木) 20:48:34 ID:jhUisMm20
カーズが竹林で迷って、考えるのをやめるフラグですね、これは。
というか、私もエシディシを紅魔館に向かわせようと思っていたんで、同じ展開に笑ってしまいました。

というわけで、その余勢をかって私もゲリラ投下します。

218太田がやって来る ◆BYQTTBZ5rg:2018/06/28(木) 20:49:41 ID:jhUisMm20
荒木は勢いよく自分の部屋に転がり込むと、急いで扉を閉めて鍵をかけた。
そして扉が開かないことを入念に確認すると、彼はベッドの端に腰掛け、やっとのことで安堵の息をこぼした。

太田の大胆なアプローチは、荒木をしても全く予想できないことだったのだ。
太田のあられもない姿は、面食らうなんてものじゃない。
そんなかわいい言葉で表現できないほどの驚愕と絶望が、荒木の心を一瞬にして支配してしまったのだった。

「し、しかし、太田君はちゃんと異性と結婚していたはずだが……」

荒木は額に浮かんだ冷たい汗を拭いながら、事実を確認するかのように重く呟いた。
だけど次の瞬間、それが同性愛の否定にはならないことに気がつき、荒木は顔をいっそう蒼くした。
世間一般の非難の目から免れるために、一種のカムフラージュとして異性と結婚する人もいるのだ。

だが、問題はそこではない、と荒木は危機感を更に募らせた。
カムフラージュで騙す相手が世間ではなく、他にいたのでないか、と。
そしてその相手とは――。

答えを思い浮かべた荒木の背筋にはゾクゾクと悪寒が走り、身体全体にゾワッと鳥肌が立った。
元はといえば、この催しを持ちかけてきたのは太田であったことを思い出し、余計に重たくなった頭を荒木は抱え込んだ。
もし太田の結婚が荒木を騙すための策の内の一つだったら、一体彼はどれほど遠大で壮大で雄大な計画を立てていたのだろうか。

途端に荒木の目には部屋の扉が頼りなく見えてきた。太田の手にかかれば、薄板一枚の扉など、あってなきのごとしだ。
勿論、普通に戦えば、荒木も太田に負けるつもりはない。寧ろ、優勢に事を進める自信すらある。
でも、それは普通であれば、だ。
中年の男が裸になって、満面の笑みを浮かべながらやって来るとなると、さしもの荒木も冷静に対処できる自信はなかった。

バタンと音を立てて、荒木は部屋から飛び出ると、目に入ったトイレに急いで入り込み、勢いよく扉を閉めて鍵をかけた。
ふぅー、と荒木は便座に座り、安堵の息を吐く。だけど次の瞬間、彼は声を大にして、盛大に慌てふためいた。

「いやッ!! だからッッ!! こんな薄い扉じゃ意味がないって話だろッッ!!」

自分が予想以上に動揺していることに気がついた荒木は努めて深呼吸を繰り返し、息を整え始めた。
そうして何とか気持ちを落ち着けることに成功した荒木の頭の中にまず浮かんだのが、
バトルロワイヤルを全てうっちゃって、この場から逃げ出すというものだった。

でも、荒木はすぐに首を横に振って、その考えを追い払った。
この段階まできて、物語の結末を見ずに終わらせるというのは、あまりにもったいないことに気がついたのだ。

かといって、いたずらにこの場にとどまっていたら、遠からず太田との肉体的な邂逅を得ることにもなってしまう。
だとしたら、一体どこに行くのが正解か。しばらくして、その答えを天啓のように導き出した荒木は、思わず笑ってしまった。

「おいおい、あそこにはまだ生き残りがいっぱいるぞ。あんなところに行って、僕は一体どうするというんだ」

荒木は懸命になって自制を促した。あそこに足を向けるなんて、事の根幹を揺るがすかのような行為だ。
間違っても、許されることではない。だけど、どうにも荒木は込み上げる笑いを抑えることができなかった。

219 ◆BYQTTBZ5rg:2018/06/28(木) 20:50:24 ID:jhUisMm20
短いですが、以上です。

220<削除>:<削除>
<削除>

221 ◆qSXL3X4ics:2018/07/24(火) 20:50:41 ID:FVEn55QA0
非常に間が開き申し訳ありません。
唐突ですがゲリラ投下です。

222また来年も、お月様の下で。:2018/07/24(火) 21:02:27 ID:FVEn55QA0
『リンゴォ・ロードアゲイン』
【午後】D-4 レストラン・トラサルディー 厨房


 男は柄になく戸惑った。

 孤高に生きてきた自分がよりによって、たかだか女子数人の視線に音をあげ、料理などを賄う羽目になったことに対して───ではない。
 確かに、飯を拵える役割を半ば強制的に押し付けられた事へは、若干小癪に感じてはいる。自分は過去、輝夜へと敗北を喫したのは事実であるし、決闘の立会いを務めてもらったのも借りと言えば借りではある。
 だが断じて彼女への召使いに志願した訳でもなく、ここから先もしも輝夜が言いたい放題やりたい放題やろうものなら、躊躇わず袂を分かつつもりでいる。
 それでもリンゴォは確かに言った。「飯を作ってくる」と、渋々ではあるが、そう発言した。つまり、そのことに関しては既にどうこう言うつもりもなく、自分の中で了承済みの事案でしかない。

 男が戸惑った理由は、そんな終わってしまった話題にはない。
 目の前。眼前に広がる未知なる空間に、戸惑いを隠せずにはいられないというのが、現状の彼を襲う目下の問題だ。


「……随分、小綺麗な厨房だ」


 ツツーと、男は銀面に光るキッチンシンクの縁を指でなぞらえながら、独り言を呟いた。
 蛇口を捻る。これで水が止められていたとなるとお笑い草だが、残念ながら想像以上の勢いを放出しながら冷水が湧いて現れた。
 右を見ても左を見ても、ついぞ見たことないような設備・機械類。これには流石のリンゴォも閉口した。

 彼は孤高のガンマン。生涯孤独の男だった。
 当然とも言えるが、口にする食事は大抵彼自ら作るものが多く、それ故に料理自体は慣れたものである。が、このような近代的な設備を取り入れた厨房に入るのは生まれて初めてであった。
 レストラン・トラサルディーはコックがイタリアの人間という事もあり、店内も極力本場の雰囲気を再現した、所謂本格派の店である。とはいえここの料理は、最新鋭の設備に頼り切った、つまり物頼りの料理を出したりはしない。
 あくまで店長が生涯賭して磨き上げた究極の技術体系を料理に反映させた、完全実力派のレストランである。すなわち厨房に備えた設備自体は実際のところ、大した物ではないと言えた。
 それでも世間の狭いリンゴォにとって見ればそれらは、全てが未来の技術進化が生んだ賜物。彼は普段レストランやバーに赴くことはあっても、裏の厨房内に入る用事などない。それが余計に、この場が未知の領域だという空気を、一歩踏み入れた瞬間に肌へと鋭敏に伝えてくれた。
 勿論、リンゴォの住処にもこんな立派な備えなどあるわけもなく。


「これは……『冷蔵庫』という奴か」


 狭い厨房内の真奥。壁に埋まるようにしてドッシリ構えた銀色の巨大な箱を、物珍しそうに眺める。
 リンゴォの住む19世紀末の時代には、既に冷蔵庫は開発されている。しかし家庭用に広く普及したのはそれより少し後で、只でさえ裕福な暮らしとは言えない彼の環境に冷蔵庫など登場する筈もなく、こうして現物を目にするのは初めてのことであった。


「……寒いな。確かにこれならば、肉や魚の保存も容易に行えるだろう。大した発明だ」


 取っ手を握り、恐る恐ると言った感じで扉を開いた彼の目に飛び込んだ光景は、様々な素材が放つ鮮やかな光彩と、初めて体験する電気冷蔵庫の肌を刺すような冷気。
 リンゴォもこれには素直に賞賛を覚える。利便のみを追求し、物の本質を見失いがちになっている近年の大衆発明品に対してはどちらかといえば否定的な彼だが、食の保存に一喜一憂せざるを得なかった環境に住まうのも事実。
 これ一台で冬の蓄えもグンと楽になるのであれば、健康さを損なうリスクも格段に減る。

223また来年も、お月様の下で。:2018/07/24(火) 21:03:28 ID:FVEn55QA0


「こっちの丸い……箱のような機械は何だろうか」


 感動も程々に、次に男は横の引き出しに備わった白い丸型の機械に目を付けた。冷蔵庫と違い、こちらは少し難関だ。
 何やら大小様々なボタンがこれみよがしにくっ付いている。それらの中から適当に一つ、押してみると。


「! ……これは米、か。既に炊き上がっているようだが」


 勢いよく開いた箱の上部に現れたのは、今炊き上がったばかりのように神々しい光を放つ純の白米。まるで僕らを食べてくださいと言わんばかりの充分な水気と風味が、これでもかと主張していた。
 イタリアは欧州一の米どころであり、料理ごとに最適な種類の米を使い分ける。とりわけ有名なのはリゾットだが、米を小型のパスタと同様に扱うことも多く、デザートにも用いられていた。ここのレストランの主人も相当にこだわりのある気質なのだということが、幾つにも並んだ炊飯器から察せるというもの。


「なるほど。奴らなりに最低限のお膳立てはしてある、ということらしい」


 熱く湯気立つ炊飯器をそっと閉め、男は主催の二人に対しそんな感想を漏らした。勿論彼にはギャグを言った自覚などない。
 素材は充分。これで幾らでも栄養満点な料理を作って、これからの長い戦いに備えてほしい、というメッセージのつもりなのか。
 まあ、奴らの真意についてはこの際どうだって良い。


「……やると言ったのだからな。オレも半端な仕事をやるつもりは無い」


 謎のやる気をふつふつと見せつつあるリンゴォの目に、ふと壁際に貼られたメモ書き……注意事項のような紙が映る。

『ここでは石鹸で手を洗いなサイ!!』

 このレストランの店長か誰かの書置きだろうか。まさかコイツも主催からのメッセージという訳ではあるまい。
 そして来る者を試すように静かに鎮座する、レンガの如き大きな石鹸。厨房のしきたりには明るくないリンゴォも、細菌が起こし得る衛星面での危険性は理解しているつもりだ。まして振る舞う立場を任されたのでは尚更。
 黙々と手に、指の隙間に、腕まで泡を良くにじませて。


「───よし。……始めるとしよう」


 スタートラインを走り出した。
 お誂え向きに壁に掛かった、純白のエプロンを着付けて。


▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽

224また来年も、お月様の下で。:2018/07/24(火) 21:05:10 ID:FVEn55QA0
『八意永琳』
【午後】D-4 レストラン・トラサルディー 


 心なしか、肩が重く感じた。ドロドロに溶かした鉛が少しずつ少しずつ身に注入されていくような、意識を揺らす困憊が堆積していくのが自覚できる。
 自分は疲れた顔をしてないだろうか。時間は随分遅れてしまったが、永遠亭の住民との待ち合わせは目と鼻の先に構えていた。
 太田から伝えられた参加者の現在地を見るに、輝夜は既に到着していると予想できる。

 輝夜さえ。彼女さえ無事であるなら、肩の荷はすっかり下りる。それは他の何を置いても第一に確認すべき事柄で、永琳の全てを決定付ける超重要な転機になる。
 そして恐らく、輝夜は九割九分無事だろう。店内に入ればきっと、いつもの彼女の華々しく屈託ない笑顔が満面に咲き誇り、長い着物の裾を引っ張りながら駆け寄ってくる。
 待ち望んでいた未来。だというのに、何故だか永琳の中には、主である輝夜に対してどこか恐れを抱いていた。

 あってはならない憂い。明確な知覚すら出来ているか怪しい、針先のように小さな……漠然とした不安。恐れ。
 永遠亭という家で共に過ごしてきた鈴仙。てゐ。記憶の中の二人の姿が、ふとした時にぼやけてしまう。過去の遺物だとでもいうかのように、ノイズを混じらせ歪んでしまう。
 私の知らないところで『変化』を起こし、成長してしまう。それだけなら良い。歓迎すべき事柄だ。

 『恐れ』とは。
 変化を受け入れ成長を始めた彼女らが、無変の儘に時を止めた私を置いてどこか遠くの地へ行ってしまう。
 そんな遠くない未来の幻視の事である。
 遠い昔、同胞である月の使者を殺害した永琳。そんな自分には全く相応しくない平凡な女々しさを、驚きつつも自覚する。


「輝夜…………」


 木製のドアノブに手を掛け力を込める前に、ポツリと呟いた。
 自分の中にある輝夜の表情と、これから出逢う輝夜の表情に『ズレ』が生じてはならない。願わくば、そうあって欲しいと祈りを込めて。


 チリンチリンと、来店を知らせる玄関の鈴が鳴り響いた。





「永琳!」
「! ……姫」


 店内に二卓しかないテーブル。その奥側の卓に座った三人の人物の内一人。
 蓬莱山輝夜のなんら変わりない姿が、永琳のよく知る笑顔と共に映り、こちらへ駆け寄ろうとしていた。

 一瞬の安堵の後、永琳は───



「動かないで。……立たなくていい。そのままゆっくり、椅子に座り直しなさい」



 水で濡らした刃物のように冷たく輝く瞳を向け、牽制した。
 右手には、銃口こそ向いていないものの、拳銃が下げられている。


「ちょ、永琳!?」
「姫は私の後ろに。“すぐに終わりますので”、それまで辛抱を」


 月の賢者・八意永琳。
 彼女は店内に踏み入り、輝夜と───幽々子、阿求の姿を認識するや、隼をも凌駕する速度ですぐさま輝夜を保護。自らの背後に隠した。
 敵意を添えた視線を、目の前の彼女ら……主に西行寺幽々子へと放つ。この亡霊姫がピクリとでも動けば、その手に握った拳銃が容易に火を噴くだろう。

 この場の誰もが永琳の迫力に押され、彼女のそんな無言の警告を受け取った。


「……不躾ね。挨拶のひとつも無かったわ」


 幽々子は中途半端に浮かせた腰をゆっくり椅子に戻しながら、慎重に言葉を選んだ。
 永琳とは元々、幽々子からすれば微妙なラインだったのだ。“白”か“黒”かの、見極めが。

 もしも“黒”なら……ジャイロの到着がまだの今、阿求を庇いながらの闘いとなりかねない。迂闊だった。


「貴方達とは二度目ね。そういえば幽々子さん……私の作ってあげた『ホットミルク』のお味、如何でしたか?」


 輝夜の盾のまま、永琳は幽々子との対峙を維持する。挑発のような台詞までも織り交ぜながら、相手の出方を待った。
 それ次第では、本当にすぐさまの攻撃を仕掛けかねない態勢。導火線に火が点くかどうかは、幽々子の対応次第。


「二度と忘れられない味になりそうよ。
 つまり永琳……貴方は、私達を殺す気なのね?」


 じわりと、幽々子の手に汗が滲む。永琳が輝夜を庇うと同じに、幽々子もまた無力な阿求を庇っている。庇われた本人達は駆け巡る展開の早さに足を絡まれ、青い顔で完全に硬直していた。


「……『貴方は』? 哀しい誤解があるようだけど、それは寧ろ逆なのでは?」
「逆?」


 永琳の発した意味不明な返答に、幽々子はその細く肌白い首を傾げる。相手の理解が及んでない事を察した永琳は要らぬ波紋を呼ばない為、やれやれと自らの台詞に補佐を加えて説明した。


「この店に入ってすぐ、私は最悪の可能性を考慮したのよ。ちょっと、貴方達と輝夜の距離が近すぎたように見えたから」
「最悪ですって? 今がまさに、その最悪の可能性に足を半歩入れた修羅場だと私は思うのだけど」
「貴方達に、輝夜が『人質』にされるっていう危惧よ」

225また来年も、お月様の下で。:2018/07/24(火) 21:07:26 ID:FVEn55QA0
 人質。物騒な単語が飛び出したものだと、幽々子は虚を突かれる。その上、これまた意味不明だ。そんなことをする理由が何処にある?
 これ以上ないくらい、幽々子の表情に無数の疑問符が浮かぶ。そんな彼女に一筋の答えを導き出す役目を担ったのは、意外な事に背後の阿求であった。


「あ」
「どうかしたの? 阿求」
「あ、いや……そう言えば幽々子さん、さっき永琳さんへ思い切り攻撃してたような」


 恐る恐るといった仕草で、阿求は自分を守ってくれている幽々子へと痛い一撃を言い放つ。
 確かに阿求の記憶では、幽々子の美しい弾幕が永琳へと華麗に炸裂していたような気がする。ついさっきの事だ。
 幽々子も顎に指を当て、ほんの少しの逡巡の末に「あっ」と小さな声を漏らし、思い当たる節へと辿り着く。


「…………いや、それは阿求の記憶違いじゃないかしら」


 まさかの言い訳。阿求の幽々子に対する目顔までもが細く、刺々しく変貌していく。身内から食い逃げ犯でも出た時のような情けない失望が、その瞳にはバッチリと含まれていた。


「いま、『あっ』って言いませんでしたか?」
「そう? それも多分、記憶違いじゃないかしら」
「幽々子さん。今更説明するのも馬鹿馬鹿しいですが、私は一度見た光景は忘れないのですよ?」
「…………えっ、と」


 あれ? 何故だか私だけが急に悪者っぽい空気になってない?
 サトリ妖怪でなくとも幽々子のそんな心の声が目に見えるような、あからさまな狼狽だった。


「私から見れば、幽々子さん。貴方も充分“黒”に見えるわよ?」
「ぐ……う、うぅ……っ」


 永琳の駄目押しに、いよいよ幽々子の後がなくなる。この場で唯一の味方である阿求の応援なき今、ここは白玉楼御殿の当主である西行寺嬢の力の見せ所である。
 額に浮かんだ冷や汗を拭い、ひと呼吸置いた幽々子は懸命に自らの無実を説かんと、身振り手振りで自己弁護を開始した。


「おほん。……お恥ずかしながら、あの時の私は随分と取り乱していたみたいね。そんな醜態を見せるまでに至った経緯は、貴方にも既にお話したと思うわ」


 最初の放送で妖夢の死を、そしてそれを起こした者が友人の紫らしい事を知った時から、幽々子に起こったパニックは見てはいられないものであった。
 亡霊のようにフラフラと歩き回った末、永遠亭に辿り着き。そこには既に八意永琳がおり、彼女の見せた優しげな空気や言葉に寄せられ、全てを吐いてしまったのだ。
 それだけに終わらず、問題はここからだ。度重なる疲労もあって凡そ信頼しかけていた永琳は、何食わぬ顔で一服を盛ってきた。幽々子の暴走に拍車をかけるトドメを起こしたのは、胡乱である記憶が正しければ永琳の側からである。


「確かに、私の用意したミルクには薬を盛っていた。それは認めましょう」
「でしょ? でしょ!? さあ阿求。悪いのはどっちかしら?」


 勝訴の気配を嗅ぎとった幽々子は、何故か阿求へとジャッジを任せた。腰に手まで当てて、気持ちふんぞり返っているように見える。
 変な所で子供なお人だ。阿求は口には出さなかったが、せめて腫れ上がった顔でそんな感想を精一杯に表現した。


「とはいえ、私は別に誰彼構わず……そんな後先考えずに貴方を眠らせたわけじゃないわ」


 ところが、流石に月の賢者はこういった口論の鉄火場でも手強いらしく。幽々子の、一見まともに聞こえる一丁前の証言は、間髪入れずに異議が申し立てられることとなる。

226また来年も、お月様の下で。:2018/07/24(火) 21:09:00 ID:FVEn55QA0


「正直言って、貴方の状態は物凄く危険だった。周囲にとっては、という意味で」


 ぴしり。そんな乾いた音がどこからともなく響いた。
 幽々子が一番突かれたくないと思っていたウィークポイントだ。少しでも隙を見せれば、この女は盲点を容赦なく攻めてくる。まこと敵には回したくない曲者だと、洋服の袖でも噛み千切りたい気持ちをやっとの思いで抑えながら永琳の言い分を受け続ける。


「貴方をあのまま野放しにしていたら、きっと死人が出る。私がそう判断したのは、果たして早計かしら」
「う、うぅ……で、でも…………でも…………」


 普段の西行寺幽々子が見る影もない。彼女は今や完璧に言い負かされ、孤立の存在として小さくなっている。
 こんな場面を従者である半霊剣士が目撃すれば、さぞや大事にされて一生の恥になっていたのは間違いない。


「そっちの……阿求さんだったわね。貴方に全て押し付けてしまったのは申し訳なく思ってるわ。
 こっちとしても急いでいたから。だから貴方が生きて、こうしてまた会えた事自体は安心してるの。あの時はごめんなさいね」
「え……あ、いえいえこちらこそ」


 場の主導権を掌握している永琳も、阿求に対しては素直に頭を下げる。こうなっては阿求とて、無遠慮に怒りなど向けられない。そもそもあの件に関しては、幽々子の非が大きいというのが客観的に見た現実だ。


「今の私には貴方達───特に幽々子の危険性が判断付かなかった。そういう理由で、“万が一”を考えずにはいられない」
「だから、輝夜さんと一緒に居る私達が彼女を『人質』にでも取って、何かしらの優位性を得ようとしていた、とまで思考に及んだのですね」


 すっかり花弁を散らした桜のような幽々子に代わって、阿求が音頭を取る。
 なるほど、永琳の説明に不自然さは一見見当たらず、正当性はあちら側に味方している。今でこそこうして何ともなく接している幽々子だが、彼女が陥っていたかつての状態は笑い事では済まされない。
 一歩間違えれば、阿求とて殺されていたかもしれないのだから。顔面を犠牲に彼女の友愛を得られたのであれば、安い出費というものだ。


「それでも、眠った幽々子さんを禁止エリアに放置するというのは……ちょっとやりすぎなのでは、とも思いますが」
「疑わしきは罰せず。そんな平和ボケした裁定は、地上の罪深き無知らが安全圏で喚くだけの、欺瞞に満ちた似非言葉。
 それを人は『偽善』と呼ぶわ。この世界では特に、そういう半端者から故意・過失関係なく人を殺めてしまう。決まって厄介なのは、彼らは無自覚の罪を犯した後に口を揃えて吐き捨てるの。
 『自分は、ただ恐ろしかっただけ』ってね。体を捨てた保身に走ればもう、破滅への道は免れない」


 一理ある、と阿求は思う。
 事実、幽々子の陥った状況を見ればどのような猛者であろうと慄然とする。彼女が『死を操る亡霊嬢』だと知る者なら尚更。想定よりも遥かに甚大な被害が出ていてもなんの不思議もない。

 疑わしきは爆する、と。眠りについた幽々子を禁止エリアに置いたのは、彼女がこれから齎し得る悲劇を事前に防ぐ意図も多少なりとあった。
 永琳の取った行動に倫理性は欠けていたが、論理性は存在した。彼女らしい、とも阿求は理解を得る。


「えと……幽々子? なにか、ちょっと話が違ってない?」


 今まで口を閉ざし、永琳の背に押しやられていた輝夜がひょこっと顔を覗かせ疑問を呈す。
 彼女の疑惑も尤もだ。なにせ輝夜は、幽々子が永琳に殺されかけたのだという事柄を一方的に、端的にしか伝えられていない。
 そこに虚偽は無かろうが、事の背景には幽々子自身の無法な振る舞い、暴走行為が根源にあったのだという。そしてその裏背景を、幽々子は黙秘していた。自身のどうしようもない失態を隠蔽し、永琳を言外に悪と囃し立てた。

 それは幽々子の、言うなればいつも通りの遊び心の延長線だ。本人には悪意も無ければ永琳側への怒りも然程無い。だが、受け取った側の輝夜は従者の素行を想像以上に重く見た。ここを蔑ろにしてしまえば、両勢に不和が生じかねないと予測を立てたのだ。
 永琳が幽々子にやった行いは決して褒められるものでもないが、己の立場を悪くしない為、全ての事情を開示しなかった幽々子にも責はある。
 まして半端に伝えられた真実は巡り回って、不本意とはいえあの蓬莱山輝夜の頭を床へと下げさせた。

 話が違う。星空に浮かぶ満月の様な丸みを帯びた輝夜の瞳は、そんな言葉を含んで汗だくの幽々子へと突き刺さる。
 程なくして輝夜は、兼ねてより疑問に思っていた光景を阿求へと投げ掛けた。


「ねえ、阿求」
「は、はい……っ」


 その目はひどく据わっている。ここからの問答は、言葉遊びでは済まされない。
 ゴクリと、唾を飲む音が阿求の喉元から響いた。

227また来年も、お月様の下で。:2018/07/24(火) 21:10:48 ID:FVEn55QA0


「ねえ、阿求」
「は、はい……っ」


 その目はひどく据わっている。ここからの問答は、言葉遊びでは済まされない。
 ゴクリと、唾を飲む音が阿求の喉元から響いた。


「その『顔』、誰にやられたの?」


 疑惑の矛先は、阿求の腫れた顔面に向けられた。
 しまった。阿求は既に先程、この生傷が永琳による暴行だという偽りを述べている。正確にはそれは、幽々子に促された戯言の様なものであったが。


「ねえ、本当の事を言って欲しいの。永琳が果たしてそんな、粗末な暴力を振るうような人だとは私にはずっと思えなかった」


 一度答えた筈の問い掛けを、再び問われる。すなわちそれは、返した答えを確実に疑われているという勘繰りに他ならない。
 これに限っては阿求に非はない。幽々子の茶目っ気が起こした飛び火。それが今、思わぬ形で阿求に降り掛かっているだけ。


「…………この顔の傷を付けたのは───幽々子さん、です」


 予想通りの返答。輝夜は小さな怒りが湧いた。
 嘘を吐かれた事へもそうだが、それ以上に“幽々子が仲間に対して手を下した”という事実に。
 共に行動する上で見逃せる道理が無い幽々子の危険性を、彼女らは黙っていた。黙秘していながら、さながら悪者は永琳であり被害者こそが自分達であるかのように話したのだから。

 土下座という恥辱を背負い、額を擦ろうとしたは自らの選択だ。幽々子らの方から強制したのでは決してなく、寧ろ行為を取り下げたのは向こう側である。

 そこまでしなくてもいい。
 我々が望むのはあくまで対話であり、穏健な協定だ。
 そんな生易しい本音も、幽々子や阿求の頭にはあったろう。
 輝夜は彼女らの根にある慈心や甘さを好意的に捉えていた。だから誠心誠意謝罪し、頭まで下げたのに。


 これでは、馬鹿を見たのはこっちではないか。



(……少し、話が見えてきたわね)


 輝夜の投げた問答を傍から聞きながら永琳は、得心がいったとばかりに心中頷く。
 大方、目の前の阿求のいたいけな童顔をああも腫らした下手人は私の仕業だと、適当ほざいた。そんな所だろう。
 阿求と最後に会った時点ではまだ傷一つなかったのだから、その時の状況を顧みれば真相など容易に導き出せる。
 なるほど。私は彼女らにとって都合の良い展開に持っていけるよう、あること無いこと創造された。罪を押し付けられたのだ。
 そして恐らく、従者の不始末は主である輝夜へと責任が問われる。何かしらのケジメを付けさせられる、といった形で。

 果たしてそれは、何か。
 親愛する主にはとても不相応な、泥土を払った跡。
 穢れを知らぬ両の掌と、世に二つと生まれないだろう流麗の黒髪に僅か混ざったそれらを、永琳は目敏く発見する。


 意図して遠ざけられていた真実。月の英傑は瞬きをほんの二度ほど繰り返された数秒の間に、難なく其処へ到達した。
 瞬間、次に湧くは怒り。握り締めた左手を固く震わせるような、静かな怒り。
 取るに足らぬ些細な罪を押し付けられた事自体は、致し方ないと割り切れることも出来る。元より永琳も、幽々子に対してやった行為は確実に“黒”といえるのだから。

 しかし、輝夜。
 最も大切に思う彼女に、よりにもよって頭を付けさせるとは。
 これだけは、見逃せない。
 そして、もしも。
 もしも永琳の予想した事実が……輝夜を跪かせるなどという、在ってはならない黒歴史であったのなら。

 自分の知る『蓬莱山輝夜』は、果たしてそんな薄汚い行為を人目の前で行うだろうか?

 やりはしない。
 少なくとも“永琳の知る”輝夜であれば、行わない。
 意にも介さず、とまではいかないが、欲深な地上の民の戯言だと、いつも通り華麗に受け流していただろう。
 輝夜は別に高飛車でもプライドが高いという訳でもないが、地上民と月の民の間に聳え立つ格差が絶対的だという自覚は持っている。穢い相手の目線の更に下方にまで、わざわざ自分から降りていく御方でもない。

 では、無理矢理?
 それもきっと、正しくない。
 目前の二人。幽々子と阿求の人間性は、僅かに触れ合ってきた永琳でさえも、片鱗以上には理解出来ている。
 彼女らは無理強いはしない。輝夜の頭を強引に床に付けさせるなどという野蛮は行わない人種というのは察せる。

228また来年も、お月様の下で。:2018/07/24(火) 21:14:12 ID:FVEn55QA0

 となればもう、一つしかない。
 自らの意思で以て、輝夜は低頭平身に跪いた。
 それはどれほどに恐ろしい事だろう。永琳は胸中の怒りとは裏腹に、元々冷たかった血相を更に青ざめさせる。

 輝夜をそこまでに追い詰めたのは、誰だ。
 膝を付ける他ないとまで、選択肢を失わせたのは誰だ。

 それは敢えて不修多羅な真相を隠していた西行寺幽々子であり。
 同罪でしかない他力本願の象徴、稗田阿求であり。

 そして軽率な判断でその状況を作り上げてしまった一因、八意永琳自身である。


(馬鹿……! 私は一体、何を焦っていた……!?)


 実験に扱う対象として幽々子を選んだのは、些かな軽はずみと言える。
 これまでの流れで永琳は、幽々子を半危険人物だと言外に非難してきた。その通りなのだが、最初に永遠亭で邂逅を遂げた時点での幽々子は、狂乱というよりも消沈と示した方が近い。
 友を信じられず自暴自棄とはなっていたが、少なくとも客間に座らせまともな話をかろうじて交わせる程度には、落ち着きを取り戻していたのだ。
 それを踏まえてなお、彼女に一服を盛った。謀るデメリットを考慮して、このような事態が起こり得ることも覚悟してなお、最終的に幽々子を『実験動物』として扱った。

 結局の所それは、焦っていたのだろう。
 これは永琳の失敗だ。彼女の起こした通常考えられない、あまりに軽率なミスなのだ。
 巡り巡ってその代償を払ったのは、輝夜だったというだけの話。

 前代未聞、だ。

 心臓を直接握られたかのような、抗い難い苦痛が永琳を襲った。
 “あの”輝夜が、“自ら”土下座を選んだという事実。
 これはもう、永琳の知る輝夜とは僅かに。そして決定的に逸れている。


(……いえ。逆、ね)


 本来を辿るルートを逸れているのは、輝夜ではない。鈴仙でも、てゐでもない。
 永琳。八意永琳のみが、針が歩みだした世界に置いていかれていた。
 恐れていたことが起き始めている。全ては太田順也の一計だろう。


 彼女はとうとう自覚した。
 永遠亭という家族の輪から、自分の存在のみがぽっかりと穴を開けているような孤独感。
 どうあっても取り戻せない『失われた時間』が、この胸に渦巻き、永久の呪いに絡め取られている。

 私の知らない『鈴仙』が。
 私の知らない『てゐ』が。
 私の知らない『輝夜』が。
 不変のままで在りたいと願うあの『家』から。
 そっと、巣立っていくのだ。
 空白の後に残るは、私のみ。
 永遠亭に自分が知るモノなど、刻と心を凍てつかせた私というもぬけの殻だけ。


 永琳はこの期に及んで、『永遠』へと畏怖を抱き始めた。
 永遠の孤独。蓬莱人が真に恐れる、究極の苦痛であった。
 かつて蓬莱人へ身を落とすという大罪を犯した、輝夜。
 永琳は、彼女を救う為に。そして唯一の理解者となって隣に居続ける為に、自らも蓬莱の薬を飲んだ。
 蓬莱人の理解者と成れる存在は、同じ蓬莱人だけだから。
 それを信じて永琳は、あまりに途方もない『幸福』を望んだ。
 永遠の先に転がっているような、輪郭のぼけた幻想の幸せを。

229また来年も、お月様の下で。:2018/07/24(火) 21:14:53 ID:FVEn55QA0


 ここに居る輝夜は。いや、ここに居る輝夜“も”。
 永琳の知らない『未来』より呼ばれた、蓬莱山輝夜なのだろう。
 鈴仙やてゐの前例からすればそれは、『永遠』を歩き終えた世界線の輝夜と考えられる。
 そうでなければ高貴なる輝夜が、地上の民などに跪くわけがないのだから。
 では、この輝夜はこの先どのような選択を取っていくのか。
 自分の知らない輝夜。それだけで永琳は、身を掻き毟りたくなる巨大な不安感に苛まれる。


 もしも彼女までが私の傍を離れるという選択を取るなら、私は──────。








「──────この通りよ」


 暗礁に乗り上げかけた永琳の思考を、静かに遮った声があった。
 白玉楼当主・西行寺幽々子の明白な謝罪である。


「ゆ、幽々子さん!」
「私の暴走が、そもそもの始まりだもの。阿求を傷付けたのも、永琳を傷付けたのも、輝夜に辱めを与えたのも、全て私のせい。これが真実よ」


 今や立場は完全に逆転している。高貴である身分を顧みず、トレードマークである天冠を装飾した帽子をも取り払い、普段のおっとりとした気質はそこには無い。
 おどおどと慌てふためていた阿求も、彼女に倣ってすぐに頭を下げる。腫れ上がったその顔はとても見られたものではないが、幽々子一人に責任を負わせようとする恥知らずに勝る赤っ恥なども無いだろう。


「申し訳ありませんでした。ご察しの通り、幽々子さんはつい先程まで正気にはなかった───つまり、少々タガの外れた暴走状態のようなものでした」


 稗田家九代目当主・稗田阿求。少女の身でありながらも人里においては随一に位が高い彼女は、幽々子の隣で同じく頭を下げ続けた。
 今や戸惑われずに口から漏れていく言葉は、恩人でもある幽々子の心証が悪くなる一方の真実だ。何を今更、と思われようが、偽らぬことが今の彼女らに出来る最大の罪滅ぼしであった。


「本来なら率先してお伝えすべきこの事実を隠蔽してしまっただけでなく、正当性の様なモノを振り翳し、笠に着て、永琳さんを不当に咎めてしまいました。
 挙句、輝夜さんにまで辛い気持ちをさせてしまった。恥ずべくは、全て我々の怠慢。稗田の女として、不徳の致す所……この場を借りて詫びを入れさせて頂きます」


 今度こそは、二人共誠心誠意を込めた。幽々子も阿求も、先程同じように頭を下げた輝夜も、皆が皆、高位の生まれである。
 温室育ちの箱入り娘が揃いも揃って頭を垂れる。元より、受け継いだ肩書きに意味など無いのだ。このバトルロワイヤルにおいては。
 秩序も体裁も無法の下に埋もれたこんな世界で、肩書きやら主従やらを持ち出して何になるというのか。
 それでも彼女達は、最も大事な物だけは捨てたりしない。名実とは、誠実さだ。生まれながらに受け継いだ誇りを敢えて下げることで、切り拓ける道もあると信じて。

 何が正しいか。正しくないか。
 何が大切か。大切でないか。
 輝夜は永琳を大切に想うからこそ、頭を下げたのであり。
 幽々子も阿求も、虚飾なき誠意の下に頭を下げている。


「う…………む、むぅ〜」


 こうなっては素直に怒れないのは、輝夜の方だ。
 幽々子らが真実を述べず、結果本来の正しい過程を経ずに輝夜の頭を下げさせたのは、確かに憤りも感じている。
 とは言ったものの、幽々子にしろ阿求にしろ胸に一物あっての虚言ではなかった事など、彼女らの懸命な謝罪を見れば分かる。
 不幸なすれ違いが連続して起こってしまった。言ってしまえばその程度の些事、だとも言える。
 永琳にも頭を下げさせると先程約束した手前だったが、少し状況が複雑化してしまった。ここから更に永琳にまで謝罪を行わせるとなると、どうにもチグハグな事になる。

 元々人当たりの良い輝夜としては、やはり許してあげたいと思う。それは当事者でもある永琳次第になるが、果たして彼女はどう思っているか。
 輝夜は信頼を寄せる従者の次なる言葉を待つ事とした。汚れ役の烙印を押されかけた永琳こそに、全ての決定権があるのだから。

230また来年も、お月様の下で。:2018/07/24(火) 21:16:02 ID:FVEn55QA0



「───もういいわ。頭を上げて下さい」



 賢者の答えは予想よりも早く、あっさりと告げられた。
 言葉通りに二人は、ゆっくりと頭を上げる。


「一つだけ、確認しておきたいの」
「何でも。今度こそ、偽りは申しません」


 永琳の矛先には、幽々子である。
 目線と立場の違いか、どうしたって永琳の言葉は高圧的にも聴こえる。それを受けてなお、幽々子の瞳は真っ直ぐだった。


「幽々子さん。貴方は、もう『大丈夫』なのね?
 何があろうと周囲の人間は傷付けない。それだけは誓えるのね?」


 幽々子は既に、永琳と阿求に手を上げているという払拭できない過去がある。
 もし仮に彼女が輝夜を傷付けようものなら、今度は仮死状態で済ませるつもりは永琳にはない。


「誓えるわ。私は友達を、そして友達を信じる自分を信じているもの」


 フゥ、と永琳は小さく息を吐いた。その言葉さえ聞けるなら、ひとまず話は丸く収まるのだろう。
 怒りは簡単に消えるものではない。しかしそれは、己の失敗を他人に押し付ける事と同義でもある。

 永琳が真に苛立っている相手は、誰と問われれば……己自身なのだから。


「───私も、貴方に対して大変な事をしたというのは事実よ。こんな謝罪で帳消しにしてなどとは言えないけど、やり過ぎたわ。御免なさい」


 頭を下げないわけには行かない。彼女らにここまでさせておいて、自分だけがのうのうと偉そうに言える立場でないのも認めよう。
 輝夜の顔を立てる意味でも、これ以上不要ないざこざを起こしては呆れられるばかりだ。
 なればこそ、ここで初めて永琳の謝罪にも結果が生まれ出る。

 信頼を寄せる従者の物珍しい謝罪を見て、輝夜も安心を覚えた。
 根付いたわだかまりが全て、後腐れなく消化された訳では無い。何もかもが納得済みという訳でも無い。


(でもまあ、きっとこれでいいのよ)


 人間関係に一喜一憂するようなキャラでもないのだ、自分は元々。
 為せば成る。為さねば成らぬ、何事も。
 故に輝夜は、取り敢えずは胸を撫で下ろし、一歩歩み寄れた実感を噛み締めながら、にへらと笑みを零した。


 そして、輝夜の問題はここからなのだ。
 対等な関係をどうにか築き上げたというのがここまでならば。
 ここからは、輝夜自身の課題を解決に持っていかなければならない分野の話となる。

231また来年も、お月様の下で。:2018/07/24(火) 21:16:35 ID:FVEn55QA0



 するとそこに、狙い済ましたかのような丁度のタイミングで男は現れた。


「オレはこの幻想郷という土地をよく知らない。だからオレの認識が間違っていたのなら申し訳ないのだが」


 出来上がった料理を載せた二つのトレンチを、その両手に添えながら。


「───レストランとは、メシを食う場所だ。幻想郷は違うのか?」


 無愛想で、特徴的な髭。こんな素っ気のなさそうな男がレストランに居れば、それだけで飯が不味くもなりそうだ。
 リンゴォ・ロードアゲイン。男は物腰だけは丁重に、身近な丸テーブルの上へとトレンチを置きながら喋くる。


「邪魔になるかとも思い、少し様子を見ていたのだがな。頃合いを見て割り込ませてもらった。食事が冷めるばかりだと、良いことなど無い」


 女四人の空間では、少々異質であった。彼をより異質足らしめんとするは無論、卓に置かれた手料理だろう。男はどう見てもキッチンに向かうような風貌には見えない。


「オレは貧困の出だ。女手一つで育ててくれた母からは『食事には常に感謝の心を抱きなさい』と教えこまれた。
 お前らもそのうち子を育む女ならば、出された器の前ではしたなく争う様なみっともない真似は控えた方がいい」


 正論である。輝夜も永琳も、幽々子も阿求も、何を言えばいいのか言葉を探しあぐねている、といった様子だ。
 とは言っても、話は概ね解決の方向へ向かっていた流れだ。ここらで何かを口に入れるには、ベストタイミングの切り口だったに違いない。


 そうだ。ここはレストラン。熱々の料理を前にこれ以上足を棒にしていては、作ってくれた彼にも申し訳が立たない。積もる話もあるだろうが、ひとまずはテーブルに着くべきだ。

 リンゴォは一人、少女達からは離れたテーブルに椅子を寄せると、自身の食事をそこに置き……




「頂きます」




 軽く両掌を合わせ、料理を黙々と口へ運び始めた。




▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽

232また来年も、お月様の下で。:2018/07/24(火) 21:17:15 ID:FVEn55QA0
『ジャイロ・ツェペリ』
【午後】D-4 レストラン・トラサルディー


 二頭の馬を表に繋ぎ、集合の場としているレストランへやや警戒混じりに入ると、既に顔ぶれは揃っていた。
 ジャイロと文は、肩や帽子に掛かった雪を玄関で軽く落とし、室内に充満した胃を刺激するイイ匂いに思わず顔が綻んだ。


「あややや。お食事中でしたか」
「お、『チリ』か。レース中にジョニィとよく作ったぜ」


 文が上着を脱ぎながら、一風変わった食事風景を目に入れる。時刻としては少し遅めの昼食だったが、いい加減何か口に入れないと戦えるものも戦えない。
 見れば、メンバーの中にしっかりと八意永琳も混ざっている。どうやら円滑な合流は果たせたらしく、和気あいあいとまではいかないにしても、滞りのない交流が成されているのはこの会食を眺めれば理解出来た。
 実際には一波乱起こった出会い頭であったが、共に顔を合わせ卓を囲んでいる様子を見るに、危惧するような事態は起こってないのだろうと文もジャイロも安堵する。

「結構な大所帯ね」

 朱色のスープを口にしながら、永琳が顔色一つ変えずに言った。ジャイロと文の二名も程なくここへ到着するというのは食事中既に聞いた事柄だ。故に、この来客には何の驚くこともない。

「新聞屋さんとツェペリの分もあるわよ。こっちのテーブルはもういっぱいいっぱいだから、二人はそっちで食べてね」

 真鍮器の上でふんだんに盛られた赤い豆を掬いながら輝夜が言う。首を軽く回した方向には先客であるリンゴォの姿があった。
 「げっ……」とジャイロの顔に、あからさまに嫌そうな色が浮かんだ。よりによってこの男と卓を共にするなど、それだけで美味いメシの質も下がりかねない。

「まさかだよな。まさかこの料理、お前が作ったの?」
「……」

 目を丸くしながらのジャイロの問い掛けにも、リンゴォはただスプーンを口に運ぶのみで見向きもしない。

 リンゴォが黙々と掬っている朱色の料理は、ジャイロが一目で判別できたようにアメリカの国民食とまで言える代表的な豆料理で、正式な名称を『チリコンカーン』としている。
 旧メキシコのカウボーイが起源とされているその料理は、今日ではアメリカ国内の至る家庭やレストランでも広く愛される食事の一つ。
 牛肉と玉ねぎを炒め、トマト、チリパウダー、ピントビーンズを加えて煮込み、更に唐辛子や香辛料を混ぜたチリソースで味付けをした物が、目の前の真鍮の器に盛り付けられた代物の正体だ。
 チリのレシピは多岐に渡り、料理する家庭それぞれに特別なレシピが存在すると言ってもいい。ジャイロはレース中、傾き始める夕陽の下での野外キャンプでこれをよく作ったものだ。
 「また豆料理かい? ジャイロ、ぼくはもう飽きたよ」と何様目線で不満を垂らすジョニィは、その口癖とは裏腹に随分と美味そうにチリを胃に掻き込んでいた。

 そんなレースの最中にある他愛のない日常が、ついさっきの事のように思い出される。今はもう戻らぬ想い出を、よりによって決闘まで交わしたこの男の手料理によって想起させられるとは。

「意外だなリンゴォ。いや、そうでもねぇか。常日頃から修行を求めるお前の事だ、健康管理の作法としてマトモな料理くれぇ作れなきゃな」
「……しつこいぞジャイロ・ツェペリ。食うつもりがないのなら馬にでも食わせてこい。別にお前の為に作ったわけではないのだからな」
「あ、はいはーい! 私、これ食べてみたいです! 外の世界の料理なんて滅多に食べられませんからねえ」

 ニヤニヤと鬱陶しい視線を授けるばかりのジャイロとは対照的に、まるで子供──少女そのものの笑顔を向けたのは射命丸文だ。
 彼女はジャイロを差し置き、すかさず席について手を合わせた。どうも腹を空かせたから、というより異国の料理を食レポしたいが為に目を輝かせているような、形式的な態勢を感じるが。
 天狗の超スピードが果たして食事にも適用されるかは知らないが、早速ハキハキと箸を進める文を見ていれば必然、こちらの胃を突く刺激も肥大化していくもの。
 かつての敵と正面向き合いながら飯を食すというのも筆舌に尽くし難しそうだが、流石に食事のひとつでも取らねばキツい時間帯である。
 仕方ないと一言零しながら、ジャイロは観念した様子で席に着いた。

「うわ、むさっ。私、あっちのテーブルに移ろうかしら」

 既に器の半分を虚無とさせた文が、失礼なことを言いながら輝夜らのテーブルを羨ましそうに眺める。彼女のすぐ横では、いい歳した大の男二人が妙な距離感で頬を動かしているのだからさもありなん。

233また来年も、お月様の下で。:2018/07/24(火) 21:19:45 ID:FVEn55QA0


「って、あら? ホル・ホースは?」


 美女の集うテーブル側から輝夜が、若干の違和感を口にした。そう言えばホル・ホースの姿がさっきからなく、あのカウボーイまでがジャイロ達の空間に入れば流石に文が不憫だと思った次第だ。

「ホル・ホースさんとは別れました。彼には彼の、やるべき事があるらしいですので」

 チリの芳醇なソースを炊けたご飯にうっとり掛けながら、文はキッパリ言い切った。その言葉の中に感じ取れる一抹の清々しさは、彼女と彼の間に後を引かないサバサバした決別があったのだと輝夜にも予想させる。
 ホル・ホースの人材も面白そうではあっただけに、輝夜の中に若干の無念さが残る。だが輝夜の興味欲に勝るものは、現在のところ食欲である。蓬莱人と言えど腹はしっかり減るのだ。ポテチとピザとコーラのコンボを経験した身で言うのも何だが。



「───で、そろそろ話を進めたいのだけど」



 和やかに向かいつつあるムードを斬り伏せるかの如く、永琳が唐突に口を開く。
 元を辿ればこの集合は、永琳が永遠亭住民を呼び寄せ明確な方針を提示させる為に催したグループである。レストランを集合地としたのも決して昼食を楽しむ為ではないし、更に言えばここまで人を呼ぶつもりもなかった。

「そうね。色々話しときたい事もあるし……永琳、お願いするわね?」

 永琳の意図を察した輝夜も、彼女に倣ってひとまず食事を中断した。
 八意永琳とは実質的に永遠亭を取りまとめる代表人物だ。輝夜も鈴仙もてゐも、基本的には永琳の助言や命令に従ってきた。立場の上では蓬莱山輝夜が最上であるが、部下のイナバ達まで含めればそれなりの組織力を持つ永遠亭の中核と呼べる人物は完全に永琳である。
 当然、位が上である輝夜とて第一に信頼するは永琳の判断。専ら頭を動かす役割なのは優秀な参謀であり、姫の仕事はと言えばここ一番の事態での鶴の一声くらいである。もっとも、その“ここ一番”というのが実際には中々来なかったりするが。


「まずは、各々の情報を整理しましょうか。このゲームが始まって半日以上……きっと様々な体験を過ごした事でしょう。手始めに姫から宜しいですか?」
「え゛っ」


 進行を司る永琳の振りに、尻尾を踏まれた兎のようなダミ声で返す輝夜。至極当然の内容を当たり前に訊かれた彼女が動揺した理由はひとつしかない。

(どうしよう……とても言えないわ。「私はまず初めの6時間を漫画見て過ごしました」なんて)

 マイペースな性格とはいえ、流石に人並みの羞恥心程度は持ち合わせる彼女は、神経を疑うこのロクでもないスタートダッシュについてどう言い訳すべきかを猛烈な勢いで考える。
 必然生まれる、数瞬の沈黙。周囲の視線が一斉に輝夜へと飛ぶ。本人は至って真面目に異変解決を望んでいただけに、真実をありのままに話すというのは自らのイメージを損ねる。それはもう、壊滅的に。

「…………まあ、姫は後からでもいいでしょう。では、幽々子さんからどうかしら?」

 唸る輝夜の様子に何か察するものでもあったのか。永琳は意を汲み取る為、ひとまず輝夜は後回しにする。
 永琳が選んだ相手は幽々子だ。彼女には図らずも頭を下げさせた経歴もあり、少々複雑な因果を築いてしまっている。
 故に、食事中も幽々子・阿求らと永琳・輝夜らはどこか壁を感じていた。過去のわだかまりも双方の謝罪で水に流すとし、表面層では手を取り合った様に見えている。
 しかし人の感情とはまことに厄介で、心の深層においては未だ両者打ち解けるはずもなく。
 無意識下にあるかもしれなかったが、永琳の幽々子を指名する視線や言葉の奥には、極微小な毒が混ざっていたのかもしれない。

「構わないわよ。私はゲーム最初から殆どの時間、阿求と一緒だったから彼女の分もついでに話しておくわね。あまり食事中に聞かせるような内容でもないけど」

234また来年も、お月様の下で。:2018/07/24(火) 21:21:55 ID:FVEn55QA0

 幽々子の攻略していた器が丁度空となり、三杯目のおかわりへ突入するかどうかというタイミングで、彼女は取り敢えず箸を置いた。
 今度こそ全て、幽々子は一から十までを全開に開示した。自らの未熟な心の持ちようが仇となり、永琳含む傍に居る者を不用に傷付けたこと。幽々子自身は殆ど素知らぬ、邪仙らの襲撃戦については阿求も補足を加えつつ。
 その結果、癒えぬ痛みを背負わされたことも。

「……私、食事なんかしていていいんでしょうか。こうしてる間にもメリーの身に恐ろしいことが起こってるような気がして……」

 阿求が下を向き、本音を吐く。ジャイロも予想していた事だが、メリー救出の優先度は直ちに急を要するものでは無いとはいえ、あれからかなりの時間が経過しているのも事実。
 敵の拠点地に見当がついていない事に加え、幽々子に起こったゴタゴタもあったので、メリー奪還作戦についてはまるで進行の兆しが見えていないというのが現実だった。


「───貴方達は、これからどうしたいの?」


 阿求の悲痛な様子を見て永琳も訊ねる。
 その問いは彼女の表情を見かねて口に出したという気遣いよりかは、あくまで話を前に進めたいが為に急かしたのだというような。大した情など含まない冷たさを感じる声色だった。

「メリーを助けるわ。ポルナレフともすぐに合流して、一度態勢を整えてから」

 永琳の問いに代わりに答えたのは幽々子。対する者に淀みを読み取らせない、極めて前向きな瞳を宿しながら。


「あ、そういや花京院の奴を忘れてた」
「あ、そういえば早苗さんも」


 ポルナレフの名が出たことで連想されたのか。ジャイロと阿求が太陽の畑にて休ませていた男女の名を連ねた。

「カキョーイン?」

 キョトンとしながら幽々子は、聞き慣れぬ名前を復唱する。早苗というのは山の巫女の東風谷早苗であろうが、花京院という名前は幽々子は知らない。彼と彼女がジャイロ達の前へ隕石の如く降って現れたのは、幽々子脱却後であったのだから当然だ。
 その過程をジャイロが軽く説明し、超凶悪スタンド『ノトーリアス・B・I・G』を撃退した功労者に花京院と早苗の名が挙げられる。当然最後のトドメというオイシイ役回りを買って出たのはこのオレだという華々しい終幕までを、鼻高々で。


「要は、仲間を集めてそのメリーを救出する。そういう方針でいいわけね」


 多少脱線しつつあった話題のレールを、永琳の一言で本筋に戻す。
 彼らの目的は消え去った幽々子の捜索。それが完了した今、ポルナレフや花京院、東風谷早苗といった面々を再集結させ、奪われたメリーを奪還しに向かう。それを永琳も今一度確認すると、ジャイロは淀みなく肯定した。

 はて。そんな重要な任務を控えていながら、じゃあ何故彼らはこの自分にわざわざ接触しようとしたのだろうか。永琳は抱いて当然の疑問を口にすると、今度は阿求がそれへと返答する。
 曰く、幽々子を完全に見失った地点は永遠亭からである。もしもその時、その場所に由縁ある人物が共に居た場合、その人物こそが幽々子の生死を握っている可能性が少なからずあった。
 阿求の推測では、その人こそが八意永琳なのではないかというもの。更に、月の天才永琳であればおかしくなった幽々子を実験体として扱い、禁止エリアに連れ込む程度はしかねないといったズバリな推理が炸裂したのだ。(流石にその部分までをこの場では口が裂けても言えなかったが)


「じゃあ幽々子とも会えた今、こうして共に食卓を囲む意味など無いんではなくて?」
「いえ、永琳さんに会いに来たのは幽々子さん絡みの目的だけではありません」


 永琳の疑問にも阿求はすかさず回答を用意した。何の為に二人して頭を下げたのか、当然ながらそこにも理由はある。
 多少なり、下心のような気持ちがあったのは認めるしかない。

「此度の異変解決に必要な知識……それを拝借したく、私共は貴方の元を訪ねたというのもあります」
「……なるほどね。まあ、そんなとこだろうとは思ってたけど」
「おこがましい態度なのは重々承知しております。ついては、まず一番の問題点である脳の中の『爆弾』……これを外さない事には何の進歩も見出せないと存じますが」

 核心とも言うべき難題を、阿求は物怖じひとつ見せず問い質してみせる。永琳とリンゴォを除く全員の空気に僅かな緊張が走った。
 人体については参加者の誰よりも抜きん出た知識と、扱いに長けた技量を秘める薬師だと名高い賢女である。不死をも屠る未知なる呪いとあれど、月の叡智であれば解除までは行かなくとも、糸口くらい掴めていても不思議ではない。

235また来年も、お月様の下で。:2018/07/24(火) 21:22:32 ID:FVEn55QA0

「……当然、件の爆弾については現在、全力で調査している最中よ。解除法について宛がなくも、ない」
「ほ、本当ですかっ!」

 真鍮のスプーンがカチンと鳴った。思わずその身を乗り出した阿求の表情は、腫れ上がっていながらも晴れ上がる。

「肉体を一度捨てる。調査中ゆえに確実な手段とはとても断言出来ないのだけど……私はそれを考えているわ」
「肉体を……捨てる?」

 大雑把かつ大胆な説明に、阿求含む全員が首を傾げた。生き残る為の方法として提示された爆弾解除法がそれでは、逆に死ねと言ってるようなものではないのか。

「死ぬのよ。肉体的な死……擬似的なモノではあるけど、あの主催を誤魔化すには一度死体を経ての偽装工作を連ねる必要があると私は考えている」
「オイオイオイ。言ってる意味はよく分からねーが、そりゃ後々蘇生出来る前提っつー絶対条件があんだろ? 大丈夫なのかよ、そこんトコ」

 胡散臭そうな視線を隠そうともしないジャイロは、予想斜め上の解答に不安を露わにする。一度死ぬ、と実に平坦な口調で説明された所で、あまりに漠然としている説明だ。
 ジャイロもこれで医者。同じ医業としての役職同士、八意永琳という女とは出来るだけ足並みを揃え、爆弾解除の手助けを行えるようにはしていきたい。
 が、彼女の言う『死』というのがどのラインかにもよる。幻想郷特有の呪術的な概念が差し込まれれば、そこに外界の医者の出番は途端に消え去る。

「より『大丈夫』へと近づく為に、今は積み重ねの段階よ。これに限っては、石橋を叩き過ぎるなんて事はない」

 不満げなジャイロにも、永琳はあくまで慎重策を辿っての結果を出すのだと。わざわざ積み重ねなどという無難な言葉を選んだのは、幽々子の手前『実験』という単語を使うのに躊躇が生じたからだろうか。

「肉体を一度捨てる、と言いましたね。それは例えば……尸解する、と考えても良いのでしょうか?」

 ほら出た。早速オレには意味不明の言葉が飛び出したぞ。
 阿求の発言にジャイロは心中で毒づき、子供のように不貞腐れる。予想通り、永琳の目指す爆弾解除に一般的な医療技術はお呼びでないらしい。

「考え方としてはそういう方向性でしょうね。現段階ではまだ何も言えないけど、魂を弄る必要も出てきたかしら」

 尸解(しかい)とは一般に、仙術を心得た者が肉体を残して一度死に、魂魄だけ抜け出る術をいう。つまり砕いて言えば、高度な死んだフリである。
 人が仙人へと至る比較的下位の手段であり、この方法で仙人と成った者は『尸解仙』と類される。幻想郷においてこれに属する仙人は、阿求の知る限りでは豊聡耳神子、物部布都、霍青娥あたりだ。
 当たり前であるが、口で言うほど容易な手段ではない。仙術の心得など皆無の阿求並びにこの場の全員が「さあ尸解を始めましょう」と手を叩かれてすぐに成功できる訳がないのだ。
 永琳とて仙術についてなど流石に門外漢だろう。教えを乞うべきは仙人本人からである事が望ましいが、頼りになるチームリーダー的存在だった神子も居ない。
 物部布都は参加者に居ない以上、頼みの綱はよりによって青娥のみを残す所となったが、神子を殺害したその張本人こそがあの邪仙である。当然、恥を捨てて懇願するという選択は、如何な一度頭を下げた阿求や幽々子であってもまず有り得ない。そもそもジャイロがキレる。
 永琳はどのような手段を用いて肉体を切り離すと言うのだろうか。

「一度死ぬ……って、少なくとも蓬莱人や亡霊である皆さんが言うのでは、説得力があるのか無いのか分かりませんねえ」

 食器をぺろりと空にせしめた文が、周囲の面々を見回しながら言った。蓬莱人は本来、死から最も遠大な対極に立つ種族であり、亡霊の幽々子に至っては実際に一度死んだ身ですらある。
 そんな異彩を放つ集団が、仮初とはいえ死に躍起にならざるを得ないというのでは、千年を生きる長命の文をして皮肉というか、タチの悪い頓智物語のような話だ。

236また来年も、お月様の下で。:2018/07/24(火) 21:23:48 ID:FVEn55QA0


(……亡霊?)


 文がサラッと述べた、あまりに取り留めのない単語。危うく流しかけたそれを、永琳の思考のみが拾った。
 視線から言って、文の“亡霊”という言葉は幽々子その人に当て嵌る台詞だろう。
 瞬時に導き出される、しかし永琳にとってはあまりに今更ながらの新事実。

 西行寺幽々子とは───亡霊である。

 それはきっと、周知の事実。脈動を産み、己が意思で行動する彼女を一目見て「幽霊だ」などと想像を働かせる無礼者は居ないだろう。
 だが永琳は。永琳にだけは分からなかった。そうだと知り得る機会が今までに来なかったからだ。
 思い起こせば確かに、初対面の邂逅においてこの幽々子の様子は尋常とは言えず、死人のようだと感想を浮かべたのも記憶には新しい。
 が、まさか本当に死人そのものだとは思わなかった。情けない事だが、気付けなかった。これは致命的とまでは言わずとも、大きな見落としだ。
 例えば……普段の幻想郷であれば、幽々子の振る舞う雰囲気を一目見れば自ずと察せたかもしれない。通常の人間や妖怪共とは一風変わった、現世の者との境を違える異次元的な空気を肌で感じ取れたろう。
 そもそも亡霊とは幽霊と違い、傍目には人間との区別も付かない。西行寺幽々子を素知らぬ者であれば、少々ネジの緩い良家のお嬢様か何かと勘違いしても全くおかしくないのだ。

 永琳は我が右腕を掲げ、天井の照明に照らしてみせた。心臓から絶えず送られる血脈は、生の証明。不死人である肉体も、これを絶たれれば呆気なく朽ち果てると主催はぬかしていた。
 それもこれも、このバトルロワイヤルの環境があってこそ。永琳と同じに幽々子だって今この時、亡霊という名の殻を剥がされ、人間並みの脆き肉体へと封じ込められているに過ぎない。
 つまりは永琳が幽々子を亡霊だと見抜けなかった理由の一つに、現在の我々の肉体には如何なる呪術かによって改変が加えられているというものがあった。
 単に爆破の施しが与えられてるだけではなく、いわゆる制限といった根本的な改変だ。
 幽々子を亡霊としたクラスのままにゲームへ参加させていれば、成仏以外の方法で殺しようがない。死んでいるのだから。
 どちらかと言えば、今の彼女は人間寄りに構築された肉体の筈であり、永琳本人も自己再生機能は何とか保持されているとはいえ、恐らく“死ねる”身体なのだ。


(それにしては彼女……気のせいか『活力』に満ちている気もするのよね)


 いつの間にか四杯目のおかわりをも完食し終えた幽々子の食べっぷりを見ながら、しかし決してその食べ盛りの様子を比喩して『活力』などと表現した訳ではない永琳が、静かに眉をひそめる。
 何となくだが、幽々子からは微弱な生命力を感じる。不可視のオーラとでも言おうか。彼女本人とはまた別の根元を源にした、出所不明のエネルギー。
 初めて出会った時点では全く感じ取れなかった、漲るような力。今ではそれが、本当に僅かな電磁波ほどの微小さで感じられるような。
 この『生命力』とも呼べる感覚の発生が、永琳が幽々子を亡霊だと見抜けなかった理由の二つ目だ。死人に生命力等という言葉は、如何にも似つかわしくない。
 とはいえこれはあくまで永琳の誤差レベルの体感であり、そもそも西行寺幽々子とはそういった存在なのかもしれない。彼女とは殆ど初対面の永琳に、その僅かな差異を証明できる術はない。


(…………いや、待って。亡霊、って事は)


 埃ほどの極小から生まれた違和感は、永琳に天啓をもたらした。


「───魂は」
「ん?」
「魂は、貴方の専門分野の筈よね? 幽々子さん」


 餅は餅屋。都合良く目の前には、魂の扱いにかけては永琳の上をゆく存在が腰掛けているではないか。
 ここで永琳は、幽々子が亡霊であるという事実をあたかも既知であったかのように問い掛ける。自分が周囲よりも遥か過去から呼ばれた不憫な参加者だと、知らせる必要など無い。

「専門も専門。むしろ魂そのものの存在が、この私なのよ」
「訊きたいことがあるわ」
「私に答えられる事であれば、なんなりと」
「幽々子さん。貴方は、例えば他人の魂が見えるのかしら?」

 投げ掛けた問いは、常人であれば軽く鼻を鳴らされる程度には素っ頓狂な内容。無論、この場にそういった常人が紛れ込んでいる事などあろう筈もなく。
 誰しもが、その会話に今更リアクションを挟むことなく、じっと聞き入っていた。


「見えるわよ。普通に」


 さも堂々と幽々子が答える。永琳もそれを予期していたらしく、ならばと次の質問を即座に放つ。

237また来年も、お月様の下で。:2018/07/24(火) 21:25:40 ID:FVEn55QA0

「じゃあ、今は? 貴方から見て、今私達全員の魂はどう見えるの? 通常通りかしら」

 言われて幽々子は、穢れなど一切知らぬ愛くるしいその唇を少しの間閉じ、ゆっくりと全員を見渡した。
 僅かばかりの無言の中、割って入る言葉が漏らされた。射命丸文の、ハッとした音声である。

「あっ、それ私も訊きたいと思ってたんですよ」

 片手を挙げ、発言権を我がものとした新聞記者が場を借りて質問に同調した。
 遡ること数時間も前。あのモンスターハウスで古明地こいしの遺体を発見した際のやり取りが、文の口から軽く説明される。
 要点を述べると、本来死体と会話できる筈の火焔猫燐の力が、ここでは一切通じなかったのだという。こいしの遺体からは反応が完全に無かったのだ。
 これを単に主催からお燐への制限による結果か、それとも参加者の肉体及び魂へと何らかの手が入っているのか。その区別がつかないといった次第だ。お燐はこいしの遺体に対し「完全に空っぽ」だと心苦しく漏らしていた。


「成程ね。……まず、亡霊の立場である私からは確実な事が一つ、言えるわ」


 一通り文の話を聞き終えた幽々子は、ふむと唸った後に至極真面目な表情を作り、ハッキリと言葉に出した。


「少なくとも現在の所は、ここに居る全員漏れなく『魂』が見えているわ。みんな健康的な色艶だから安心してね」


 魂には一人一人の形状があり、色彩がある。
 生きている人間のそれを、本来は見通すことなど出来やしない。
 だが例外も存在する。亡霊や死神といった、『境界のあちら側』に属した者達だ。幻想郷には、そういった特性の人物も幾らか居たりする。

「私自身は……あの時、ツェペリの最期には立ち会えなかった。でもあの人を弔うシーンには目を覚ましていたから……確かに彼の遺体には、魂はもちろん、残り香すら無かった」

 語る幽々子の顔に影が曇る。命の恩人、と言うには亡霊が表現するにはおかしなものだが、とにかくウィル・A・ツェペリは幽々子の命の恩人である。
 その男の誇りある最期に幽々子は立ち会えていない。神子の最期の場にも弔えたのはジャイロのみだし、後は精々が男の世界による『決闘』でのジャイロ、ホル・ホースの死だが、あのコンマを動く刹那の狭間で魂の確認など不可能であったし、すぐさま時が戻されたのだから最早確認不能に等しかった。

 つまり幽々子は誰かの死に直接立ち会った事実上の経験など、この会場においてはない。肉体から魂魄が剥がれた瞬間は一つとして目撃していないのだった。

 通常、生物が死ぬと魂が肉体から剥がれる。よく「天に昇る」などと比喩されるが、実際には死んだ魂魄は河を渡ったり、冥界や地獄に連れられる。
 幽々子の様な亡霊といった類は成仏出来ずにそのまま顕界に留まるのだが、ひとまずその魂は肉体からは剥がれ落ち、浮遊・徘徊を始めたり地縛霊としてその土地に居着いたりする。
 このバトルロワイヤルが特殊な状況下とはいえ、全ての参加者は一旦死亡すれば魂は通常通り抜け落ちる、という裏付けを幽々子本人はまだ取れていない。
 文の言うお燐が肉体は空っぽだと言ったり、実際にツェペリの肉体はもぬけの殻だったのだから、十中八九そうなるのだろうが。

「永琳ったら何が言いたいの?」

 要領を得ない問答に、輝夜がいい加減ヤキモキして本命を急かした。幽々子の能力の程を訊いて、永琳は一体何をしたいのか。

「再度確認するけど、幽々子さん。貴方はこの場の全員をもう一度見回して、本当に『通常通り』の魂が見える?」

 不要な程に確認を取る永琳。この質問が、幽々子のこの能力が、永琳の目的に如何なる形かで関わってくるのだ。本人の真面目な表情を見やれば、その程度の事情などすぐに察せるというもの。
 幽々子はもう一度周囲を見回し、今度はやや緊張気味に首肯。『通常通り』の意味する所はよく分からないが、見た目ここに居る者達の魂は、幽々子が普段日常で見るような魂とそう変わらないように思える。

「見える、けど」
「目を凝らしてみても? 以前と全く変わりない、ありのままの魂かしら?」
「ねえ、永琳。通常通りの魂と言っても、そもそも魂には一つとして同じモノはないわ。
 ここに居る皆の魂だってそれぞれ違う形や色をしている。貴方は何をもって、魂の違和感などを知りたがってるの?」

 こうまでくどく訊かれるのは、何やら自分の能力が疑われている気になって。
 つい、幽々子の口調に苛立ちが混ざり始める。

「そうね。じゃあ、少し違う方向から訊いてみましょう」

 死を操る亡霊姫へと相対し、芥ほどの萎縮も躊躇いも生じず、気後れなく永琳は言い直した。

238また来年も、お月様の下で。:2018/07/24(火) 21:27:45 ID:FVEn55QA0


「ほんの少しでもその魂に『違和感』……つまりこのゲーム以前とは異なる箇所が見て取れると自信満々に断言出来る程、貴方と親密な関係にある人物はこの場に居る?」


 幽々子の口が閉ざされた。彼女の言わんとしてる疑問視の意味を理解し、その上で正答を手繰り寄せる為への逡巡が生じる。

 魂とは───その者の気質を映し出す服である。
 幽々子の性質は、日常的にその『服』という第二の容姿を可視するといったもので、これは幽体である彼女ならではの特技と言ってもいい。
 そしてその魂なる服は、実際の服飾と違って基本的には唐突に変化したりはしない。
 永琳の言う『魂の違和感』とは、その人間の気質を飾るいつもの服が、今日──つまりこのゲーム中に限っては様子が違わないか、という疑問を含んでいるのだ。
 幽々子は隣に座る阿求をもう一度覗く。この娘とは以前にも会ったことがあるし、当然ながら魂が変化しているなどという異質な事態は見られない。

 永琳は言った。微細な魂の変化に気付ける程に親密な者が、この場に居るかと。
 新顔のジャイロ達外の人間は勿論、阿求や新聞屋、永琳や輝夜という存在は、幽々子にとって親密だったとは言えない。
 西行寺幽々子とは、どちらかと言えば出不精だ。大抵の雑事・使いは従者の妖夢に任せているし、住処の白玉楼そのものが俗世からは大きく離れた、この世ならざる幻想的な場所である。
 従って幽々子の交友関係とは、お世辞にも広く深くとは言い難い。どう見栄を張ったとして、新密度筆頭の魂魄妖夢、八雲紫の二人が一番に出てきて、後はその他大勢という悲惨な二極化となってしまう。

 毎日同じ服を着ているような相手の、ほんの些細な変化。今日はリボンの色がいつもより派手だとか、石鹸の香りが少し爽やかだとか、その程度の差異。
 永琳が先程からしつこく訊いているのは、この僅かな魂の変化の違いに気付けるような親しい間柄がここに居るか、或いは心当たりがあるかという内容である。
 流石と言うべきか、魂の支配者である幽々子をして永琳には敬服せざるを得ない。肉体でなく魂そのものを弄られている可能性へ至るに終わらず、その立証と手段をこうもあっさり提唱できる、発想の飛躍。頭脳面にかけては何者よりも一歩二歩抜きん出る参加者はやはり八意永琳だろう。

 期待の眼差しというには程遠い彼女の眼を受け、幽々子は答え辛そうに返答した。


「…………居ない、わ。少なくとも、此処には」


 漏れ出たトーンが著しく低い理由は、既にこの世にもあの世にも居ない最愛の従者の影が幽々子の脳裏を過ぎった事にある。
 問う側の永琳とて、その程度の心遣いに気が回らなかったとは思えない。幽々子が妖夢を喪った事実により激しい愁傷を経たことは、永遠亭での一件からとうに知れたことであるのだから。
 それを分かって質問するという事は、求められる返答にそれだけの重要性が含まれる可能性がある事に他ならない。
 そしてゆっくりと聞かされる幽々子の期待外れの答えに、永琳は落胆も苛立ちも見せずに短い言葉を放った。


「そう」


 とだけ。


「……一人、心当たりは居るわ。もしも参加者全員の魂そのものに手が加えられたとして。そしてその改変という名の『糸のほつれ』が、どれほどに小さな歪を服の上に生んだとしても。
 『彼女』であれば、私には……私だけには、分かるかもしれない。そんな人が」


 妖夢とは自分なりに決別を果たしたつもりだ。然らば残る相手は一人しかいない。
 幽々子にとって最も大切な友であり。
 幽々子にとって最も大切な家族を奪ってしまったのかもしれない、そんな悲縁を結んでしまった相手。


「紫に会うわ」


 会いたい、ではなく、会う。一言であったが、強い決起の意思を秘めた台詞だった。
 元より幽々子はそのつもりである。出会わなければならない理由が増えたことは、彼女の意思をより強固にさせた。

 純真に求めていたものは言葉でなく、幻想を現へと変える意志なのだと。
 永琳が薄く微笑んだ理由が、幽々子の瞳の中に在った。


            ◆

239また来年も、お月様の下で。:2018/07/24(火) 21:30:03 ID:FVEn55QA0


「阿求。この通信媒体には私との連絡手段……『電話番号』が既に記されている。もし八雲紫の現在地が分かったなら連絡するから、手元から離さないでね」


 そう言って永琳は、阿求の支給品『スマートフォン』を本人の手に返す。阿求の所持品に小型通信機器がある事を永琳が知ったと見るや、殆ど一方的に奪われ、何やら弄られて戻されたのだった。
 その片手間ついでに腫れ上がった阿求の顔面を手持ちの救急道具で治療しているのも、流石にその惨状を見兼ねての厚意である。
 抗議の声を上げようにも、外界の精密機械にはとんと無知である自分にその資格はないと悟った阿求は、諦めて永遠亭印の薬品の恩恵を授かりながら別の疑問を投げかける。

「永琳さんはこれからどちらへ?」
「爆弾解除の手掛かり集めついでに……ちょっと『寄り道』をね」

 それきり彼女の口から台詞の続きは出てこない。どうやら『寄り道』についてはこれ以上の詮索は無駄らしい。
 それは同時に、阿求らに対して「付いて来なくていい」と言外に制しているようなものだった。

「貴方達にはメリーを救い出すって使命があるんでしょ? だったらまず、何よりそれを優先させるべき」

 正論を盾にし、加勢は無用だという姿勢をあくまで崩さない。
 それは自身の力を過信してか。阿求らの力など信頼に値しないか。
 きっとそのどちらでもないのだろうなと、説かれた阿求は内心思う。


(一人に、なりたいのかな)


 漠然と、今の永琳に対しそんな気持ちが湧き上がる。
 根拠などまるでありはしないが、彼女の薄氷のような表情を眺めて、ふと思ってしまっただけ。


「姫。……少し、宜しいでしょうか?」


 阿求の治療を終え間もなく、従者は月姫へと声を掛けた。その物静かな雰囲気は二人だけでの会話を望んでいるようだと、輝夜はすぐに察する。

「ええ、もちろん」

 一瞬、永琳が卓のリンゴォを横目に入れた気がする。その理由も、輝夜には何となく分かってしまう。
 今までずっと、同じ刻を歩んできた家族なのだから。




 そうして二人は誰に声掛けるまでもなく、静かにレストランを出た。どこか重苦しい雰囲気を背負う月の民の二人が出ていった事で、部屋にはちょっとした解放感が生まれる。


「んじゃ、ちっとポルナレフの奴と、あの緑女緑男を呼んでくるわ。文、お前も付いて来い」


 その空気感を狙ってか、ジャイロが自分の荷を整理しながら文へと声掛けた。
 彼らの最優先はメリーの救出。否応にでも戦闘になるだろう事を予想して、こちらも相応の戦力を補強しなければならない。
 ひとまず足のない幽々子や阿求らはここへ残し、ジャイロと文が馬を使って迷える子羊達を連れてくることには誰も反対しなかった。(リンゴォを残すことに対してはジャイロも大いに不満げであったが)

「あの山の巫女さんですか。彼女、というか守矢神社は悪い意味で新聞一面の常連ですので、果たして頼りになるやら」

 幻想郷において天狗社会と守矢神社の両組織は持ちつ持たれつの関係である筈だが。本人の居ない所で相手を褒めるか貶すか、射命丸文はどちらかと言えばその後者の特性だ。
 従ってノトーリアス・B・I・Gに一矢報いた早苗の活躍を目にしていない文は、息をするように彼女を小馬鹿にする。
 良くも悪くも普段の射命丸文と言える。出会った時より若干、憑き物が取れた印象を阿求も感じる。やはりジャイロとの邂逅により、彼女に新たな道が拓かれたのだろう。

 そしてそれは、文だけではない。
 ここに立つ幽々子も。リンゴォですら。
 未知との交わりによって、自分だけが歩める光の道を見出したのだ。


(じゃあ、私の道って……何処にあるのかしらね)


 無力。周囲がそれを言葉にせずとも、本人だけが痛切に噛み締める我が身の力の無さ。
 阿求は、混迷の中から未だ抜け出せない。
 帰る場所。或いは至れる処。悩めば悩む程に、阿求にはそのどちらの道すらも見つけられない。

 しかし。そうであっても。
 彼女が西行寺幽々子を正気へと導いた、という紛れもない事実がある限り……誰一人として阿求を不要とは思わないだろう。

 今わかっているのは、メリーを助け出す為の唯一なる頼みの綱。道と呼ぶにもおこがましい、暗闇の細道のみだった。


▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽

240また来年も、お月様の下で。:2018/07/24(火) 21:30:52 ID:FVEn55QA0
【D-4 レストラン・トラサルディー/午後】

【稗田阿求@東方求聞史紀】
[状態]:全身打撲、顔がパンパン
[装備]:なし
[道具]:スマートフォン、生命探知機、エイジャの残りカス、稗田阿求の手記、基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いはしたくない。
1:レストラン内でジャイロ達の帰宅を待つ。
2:メリーを追わなきゃ…!
3:主催に抗えるかは解らないが、それでも自分が出来る限りやれることを頑張りたい。
4:手記に名前を付けたい。
[備考]
※参戦時期は『東方求聞口授』の三者会談以降です。
※はたての新聞を読みました。
※今の自分の在り方に自信を持ちました。
※西行寺幽々子の攻撃のタイミングを掴みました。
※八意永琳の『電話番号』を知りました。


【西行寺幽々子@東方妖々夢】
[状態]:満腹
[装備]:白楼剣
[道具]:なし
[思考・状況]
基本行動方針:妖夢が誇れる主である為に異変を解決する。
1:レストラン内でジャイロ達の帰宅を待つ。
2:紫に会う。その際、彼女の『魂』に変容がないかも調べる。
[備考]
※参戦時期は神霊廟以降です。
※『死を操る程度の能力』について彼女なりに調べていました。
※波紋の力が継承されたかどうかは後の書き手の方に任せます。
※左腕に負った傷は治りましたが、何らかの後遺症が残るかもしれません。
※稗田阿求が自らの友達であることを認めました。
※友達を信じることに、微塵の迷いもありません。


【ジャイロ・ツェペリ@第7部 スティール・ボール・ラン】
[状態]:身体の数箇所に酸による火傷(永琳により治療済み)、右手人差し指と中指の欠損、左手欠損
[装備]:ナズーリンのペンデュラム、ヴァルキリー、月の鋼球×2
[道具]:太陽の花、基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:主催者を倒す。
1:文に『技術』を叩き込み、面倒を見る。
2:花京院や早苗、ポルナレフと合流し、レストランへ戻る。
3:メリーの救出。
4:青娥をブッ飛ばし神子の仇はとる。バックにDioか大統領?
5:DIOは必ずブッ倒す。ツェペリのおっさんとジョニィの仇だ。
6:博麗の巫女らを探し出す。
7:あれが……の回転?
[備考]
※参戦時期はSBR19巻、ジョニィと秘密を共有した直後です。
※豊聡耳神子と博麗霊夢、八坂神奈子、聖白蓮、霍青娥の情報を共有しました。
※はたての新聞を読みました。
※未完成ながら『騎兵の回転』に成功しました。

241また来年も、お月様の下で。:2018/07/24(火) 21:31:32 ID:FVEn55QA0
【射命丸文@東方風神録】
[状態]:鈴奈庵衣装、漆黒の意思、少し晴れやかな気分、胸に銃痕(浅い)、片翼、牙(タスク)Act.1に覚醒
[装備]:スローダンサー
[道具]:基本支給品(ホル・ホース)、スレッジハンマー
[思考・状況]
基本行動方針:ゼロに向かって“生きたい”。マイナスを帳消しにしたい。
1:ジャイロについてゆき、黄金の回転を習得する。
2:遺体を奪い返して揃え、失った『誇り』を取り戻したい。
3:花京院や早苗、ポルナレフと合流し、レストランへ戻る。
4:姫海棠はたての記事を読む。今のところ軽蔑する要素しかない。
5:柱の男は要警戒。ヴァレンタインは殺す。
6:なりゆき上、DIOも倒さなければならない……。
[備考]
※参戦時期は東方神霊廟以降です。
※文、ジョニィから呼び出された場所と時代、および参加者の情報を得ています。
※参加者は幻想郷の者とジョースター家に縁のある者で構成されていると考えています。
※ジョニィから大統領の能力の概要、SBRレースでやってきた行いについて断片的に聞いています。
※右の翼を失いました。現在は左の翼だけなので、思うように飛行も出来ません。しかし、腐っても鴉天狗。慣れればそれなりに使い物にはなるかもしれません。
※鈴奈庵衣装に着替えました。元から着ていたブラウスとスカートはD-5に捨てました。


【リンゴォ・ロードアゲイン@第7部 スティール・ボール・ラン】
[状態]:左腕に銃創(処置済み)、胴体に打撲
[装備]:一八七四年製コルト(5/6)
[道具]:コルトの予備弾薬(13発)、基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:『生長』するために生きる。
1:自身の生長の範囲内で輝夜に協力する。
[備考]
※幻想郷について大まかに知りました。
※永琳から『第二回放送前後にレストラン・トラサルディーで待つ』という輝夜、鈴仙、てゐに向けた伝言を託されました。
※男の世界の呪いから脱しました。それに応じてスタンドや銃の扱いにマイナスを受けるかもしれません。

242また来年も、お月様の下で。:2018/07/24(火) 21:32:13 ID:FVEn55QA0
▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽


 輝夜と永琳がレストランの外に足を運ぶと、先程よりも更にしんしんとした小雪が視界を覆い始めていた。同時に二人の間に漂う空気も、幾分かは緩和する。


「……リンゴォには聞かれたくない話ね」


 開口一番、輝夜は永琳の憂心を当ててみせた。リンゴォが既に永琳と出会い、一悶着あった話はとっくに知っている。
 となれば永琳の側から見て、リンゴォという男がどういう人間なのかは彼女も深く理解しているだろう。
 故に、面倒を避けるため密談を選ぶ。

「ご明察。私が今から『姫海棠はたて』に会いに行く事を知れば、彼なら確実に同行を強制してくるでしょうから」

 姫海棠はたて。確かリンゴォの決闘を新聞によって侮辱したとかいう、傍迷惑な鴉天狗の名だったか。
 彼女が今現在どこでシャッターを翳しているかは知る由もないが、会いに行くとなればリンゴォも必ず付いてくるに決まってる。

「その天狗とやらはウド……鈴仙によると『念写』の能力を持つと、断片ながら聞かされている。これを活かさない手はないからね」
「あら、脅迫でもするの?」
「まさか。あくまで『友好的』に協力を仰ぐつもりよ」

 その薄っぺらい笑いが輝夜の耳朶を打つように響き渡る。ご愁傷様……と、心の中でせめてもの同情を掛けながら。
 はたての行いはともかく、彼女のその能力は確かにこういった限定的な会場においては魅力的だ。永琳ではないが、これを活かさない手はない。
 はたてを上手く使えば、メリーの行方は容易に知れるかもしれない。しかし、永琳がそれのみを目的に天狗へ会いに行くとは輝夜にはどうしても思えない。

「で、本音は?」
「何のことでしょう?」
「とぼけちゃって。メリー捜索の為に永琳も一肌脱ごう!って、まさかそんな慈善事業100%で動かないでしょ?」
「輝夜には隠し事出来ないわねぇ」
「普段からしまくってるくせに」

 二人きりで居ることに建前を必要としなくなったのか。彼女たちの間には、『彼女のたちの空気』がいつの間にか流れ始めている。
 永遠亭ではよく見られる、素の二人であった。

「まあ悪いようにはしないわ、天狗にも。あくまで寄り道だしね」
「そう? 永琳がそれでいいなら、私に異論はないけど」

 いつもの、蓬莱山輝夜のいつもの笑顔だ。
 あははとほんの少しだけ笑い、そして会話は途切れた。
 途切れたその会話に、永琳は僅か違和感を覚えた。

 その違和感が思わず顔に出るかという間際を狙ったように、輝夜が言葉を差し込む。


「不思議に思った? 『私がどうして妹紅の居場所を突き止めてくるように頼んでこないんだろう』って」


 ハッとする。虚を突かれたのは永琳の方であった。


「確かにその天狗なら妹紅の現在地も分かるかもしれないわね。私も本音ってやつを言うとね、貴方にはそれを突き止めて欲しかった。
 妹紅の今居る場所はどこか、ってね」


 永琳も当然、輝夜がそれを知りたがっている事には気付いていた。だからはたて捜索の際、妹紅の現在地を調べて欲しいという催促が来るだろうと予想していたが。
 実際には、輝夜からその『お願い』は飛んでこなかった。
 いや、その理由については永琳も瞬時に感じ取ってしまう。だから動揺したのは、永琳の方なのだ。


 あろうことか輝夜は、永琳に気を遣っているのではないかと。


 輝夜がリンゴォと共に居る理由。少し考えれば、永琳には見当がつく。
 認めたくない。輝夜には選んで欲しくなかった選択肢が。

243また来年も、お月様の下で。:2018/07/24(火) 21:34:10 ID:FVEn55QA0


「……ああなってしまった妹紅を『理解』する為に、死ぬつもりなのね。貴方は」
「うん」


 藤原妹紅が陥った悲劇については、永琳もよく知っている。
 トリガーが引かれた一因に、永琳自身が関わっている事も両者は承知なのだから。

「私を……恨まないの? 私は既に……妹紅に会ってるわ。今の彼女には記憶が無い。というより破壊されている」

 恨まれたって不思議ではない。妹紅を『あんな風』に変えたのは永琳のせいでもある。
 輝夜はしかし、即答した。

「恨むですって? 永琳には感謝したいくらいよ。
 これで“やっと”……止まっていたアイツの針を先へと進める事が出来るんだもの。他ならぬ“私”の手によってね」

 輝夜の言う“やっと”という言葉については、今の永琳には理解出来ずにいる。
 以前より互いに殺し合う関係であった輝夜と妹紅。永遠に停滞していたその関係性を、先に進めるというのであれば。

 それは一体、どのような過程を経て。


「永遠に止まった刻を先へと進めるには、針を一度戻さなければならない。
 それを教えてくれたのは他ならぬ永琳と……リンゴォよ」
「じゃあ、尚更妹紅の居場所を知りたいんじゃなくて?」
「そうなんだけどね。貴方、どうもあまりそれを望んでないみたいだから」


 あっけらかんと言い放った輝夜の言葉は、今の永琳にとってあまりに鋭い棘であった。
 リンゴォとの同行も、一度死を経て妹紅と同調する事も、輝夜のその行動は永琳にとって当然忌むべき行動とも言える。リスクの高すぎる行為なのだから。

 それを見透かされていたという事実だけではない。
 恐らく輝夜は、何となく分かっていたのだろう。



「今の永琳と私……なんだか壁を感じてるから。ちょっぴりだけど、ね」



 違う。
 それは断じて、有り得ないこと。あってはならないこと。
 そう思いたくとも。否定したくとも。
 輝夜の口からそれが出てしまった現実に、永琳は打ちひしがれてしまう。

244また来年も、お月様の下で。:2018/07/24(火) 21:34:48 ID:FVEn55QA0


「……ごめん永琳。私、気付かない内に貴方を傷付けてるかもしれないわ」
「………………貴方のせいじゃ、ないの。これは、私自身の問題、だから」


 気を遣わせてしまった。傍目には通常どおり振る舞えていると、過信してしまっていたかもしれない。
 自分の現在に、途方もない難題がのしかかっているのだと、輝夜に気付かれてしまっていたのだ。
 太田から受け取った参加者現在地リストを通じ、輝夜とリンゴォが同行している事を知ったその瞬間から、こんな未来がやってくる予感はしていた。
 輝夜は今、死に体である妹紅の存在へと自ら歩み寄ろうとしている。必要なのはリンゴォの能力。
 そんな可能性が、僅かに。


 鈴仙、てゐに続いてとうとう輝夜まで。
 彼女までもが、永遠の明けたどこかへと。
 不明瞭な未来へと、足を駆け出していたのだから。
 起こってしまったその未来は、今や永琳個人のエゴで引き留めていい歩みではなく。
 そして厄介な事にその難題は、時間が解決してくれる類の問題でもないのだ。
 凍り付いた時の中で四肢を絡め取られているのは、永琳だけなのだから。
 唯一出来る足掻きといえば、巣立っていく家族達の背中をその匣の中から眺めること。それくらいだった。

 永琳には翔けだす為の羽も、駆けだす為の足さえも与えられていない。
 鈴仙もてゐも、永琳には引き留めることが出来なかった。
 最も大事にしている輝夜の瞳の中には、今や“あの”妹紅が広く占めている。
 永遠亭の家族の誰も彼もが、永琳の助けを真には必要としていないのではないか。
 地の底から溢れ出る被害妄想のような。子供のようなくだらない感情が、脳裏に渦巻く。
 僅かながらも直感的に、輝夜本人からそれを見抜かれた事実も、輪をかけて惨めな気持ちを上塗りしていく。


「前に永琳から言われた言葉があるの。
 『輝夜は自分のやりたい事だけをやりなさい』って」


 言葉を詰まらせた永琳をどう思ったか。唐突に輝夜は話題を切り替えた。
 その言葉ですら、永琳にはとんと記憶が無い。自分の知らない『未来』の永琳が、輝夜へと語ったのだろう。
 自分の知らない自分の言葉を認めるというチグハグさは、我が事ながら苛立ちを覚える。だが今は、感情など抑えて輝夜の話を聞くことしか出来ない。

「『やりたい事』と『やらなきゃいけない事』って全然違うと思う。
 今は『やらなきゃいけない事』を優先するけど、全部終わったら私だって『やりたい事』、やるつもりよ」

 やらなきゃいけない事、というのは妹紅を指しているのだろう。
 やりたい事、というのは月の頭脳を以てしても見当がつかない。あてが多すぎて。

「永琳もね、自分の『やりたい事』くらい見つけて欲しいの。私なんかが上から目線で言う台詞じゃないのも理解してるけど。
 義務感や使命感で動く事が殆どだったもんね。『昔』の永琳って」

 殊更な程に強調された『昔』。それはつまり、『今』の永琳を示している。
 言葉の裏に含まれた情が、尚も永琳の心を揺れ動かす。


 ただ。


「これだけは心に刻んでおいて。
 私はこの先も、何があってもずっと、永琳の味方で在り続けるって」


 嗚呼。刻の溝が生んだすれ違いがどれだけ深くとも。
 変化を認め。地上に足を付けようと、額を付けようと。
 結局の所、このお嬢様の曇りひとつ無いスマイルは永遠に変わらず在り続けるのだ。
 この天空に浮かぶ、不変の月みたいに。


「───私も同じ気持ちよ。輝夜」


 どうやら自分には、救いがまだあるらしい。
 兼ねてより『コレ』は渡すまいと、秘を通すつもりであったが。

245また来年も、お月様の下で。:2018/07/24(火) 21:35:14 ID:FVEn55QA0


「輝夜。手、出しなさい」
「……? はい」


 気が変わった。今の私などより、『コレ』が必要な人物は他にいるようだから。


「───蓬莱の薬」
「おまじないよ。この薬が貴方の『やらなきゃいけない事』を手伝ってくれる……っていう、願いを込めて」


 人々の祈りを乗せて宇宙を流れる綺羅星のように。
 この呪われた薬もまた、人々の手を移り渡ってきた。
 絶対禁断の秘薬。使うも使わぬも、良しも悪しきも、全ては使い手次第。

 こんなにも純白の笑顔を向けられる輝夜なら。
 きっとこの呪いすらも、誰かを笑顔にしてあげられる力へと変える。


(私じゃあ、お役御免ね)


 自嘲の言葉を飲み込み、永琳は愛しき姫君に背を向ける。輝夜の決意を留める愚行は、もう出来そうにない。
 あの時、妹紅を殺しておくべきだったかもしれないと、悔恨を浮かべる気力すらどうでも良くなった。

 誰であっても毒気を抜かれてしまうのだ。うちのわんぱく姫の笑顔には。


「えーりん! 全部終わったら……私たち、あの『家』で待ってるからね! 絶対来なさいよっ!」


 溌剌な、穢れなき言葉が永琳の背中を押し出す。
 『全部』で、『私たち』で、『あの家』ときた。輝夜は未だに全てが上手くいくハッピーエンドを信じてるらしい。
 永琳の苦悩を知ってか知らずか。
 いや、それは恐らく知った上で。永琳を信じている上で、彼女は自らの足で歩み始めている。自らの羽で羽ばたこうとしている。
 巣立ちを終えても、また同じ家に舞い戻ってくるツバメの一緒で。永遠亭の家族が再びあの家へと集う奇跡を、なんの疑いもせずに信じ切っているのだ。


(あの子達を信じていなかったのは私の方……か)


 親心、という奴なのだろう。
 何のことはない。ただ自分が、信じ抜くことを放棄していただけ。
 今までが過保護すぎたのか。少し距離を置くことも、大事なのかもしれない。

 後はもう、自分の問題。
 永遠の呪いから抜け出す試練。太田順也から与えられたこの難題に、どう向き合っていくかだ。


 重なりゆく新雪の層に自らの歩いた証を残しながら、八意永琳は見送る家族の前から再び姿を消した。


▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽

246また来年も、お月様の下で。:2018/07/24(火) 21:36:26 ID:FVEn55QA0
【D-4 レストラン・トラサルディー/午後】

【八意永琳@東方永夜抄】
[状態]:精神的疲労(中)
[装備]:ミスタの拳銃(5/6)、携帯電話、雨傘、タオル
[道具]:ミスタの拳銃予備弾薬(残り15発)、DIOのノート、永琳の実験メモ、幽谷響子とアリス・マーガトロイドの死体、
永遠亭で回収した医療道具、基本支給品×4(永琳、芳香、幽々子、藍)、カメラの予備フィルム5パック、シュトロハイムの鉄製右腕
[思考・状況]
基本行動方針:輝夜、ウドンゲ、てゐと一応自分自身の生還と、主催の能力の奪取。 他参加者の生命やゲームの早期破壊は優先しない。表面上は穏健な対主催を装う。
1:姫海棠はたてに接触し、主催者との繋がりを探る。
2:頃合いを見て阿求らに連絡。八雲紫の現在地を伝える。
3:しばらく経ったら、ウドンゲに謝る。
4:全てが終わったら、家へと帰る。
[備考]
※参戦時期は永夜異変中、自機組対面前です。
※シュトロハイムからジョセフ、シーザー、リサリサ、スピードワゴン、柱の男達の情報を得ました。
※『現在の』幻想郷の仕組みについて、鈴仙から大まかな説明を受けました。鈴仙との時間軸のズレを把握しました
※制限は掛けられていますが、その度合いは不明です。
※『広瀬康一の家』、『太田順也の携帯電話』『稗田阿求のスマートフォン』の電話番号を知りました。
※DIOのノートにより、DIOの人柄、目的、能力などを大まかに知りました。現在読み進めている途中です。
※『妹紅と芳香の写真』が、『妹紅の写真』、『芳香の写真』の二組に破かれ会場のどこかに飛んでいきました。
※リンゴォから大まかにスタンドの事は聞きました。
※真昼の時間帯における全参加者の現在地を把握しました。

○永琳の実験メモ
 禁止エリアに赴き、実験動物(モルモット)を放置。
 →その後、モルモットは回収。レストラン・トラサルディーへ向かう。
 →放送を迎えた後、その内容に応じてその後の対応を考える。
 →仲間と今後の行動を話し合い、問題が出たらその都度、適応に処理していく。
 →はたてへの連絡。主催者と通じているかどうかを何とか聞き出す。
 →主催が参加者の動向を見張る方法を見極めても見極めなくても、それに応じてこちらも細心の注意を払いながら行動。
 →『魂を取り出す方法』の調査(DIOと接触?)
 →爆弾の無効化。


【蓬莱山輝夜@東方永夜抄】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:A.FのM.M号、蓬莱の薬、基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:皆と協力して異変を解決する。妹紅を救う。
1:妹紅と同じ『死』を体験する。
2:勝者の権限一回分余ったけど、どうしよう?
3:全てが終わったら、家へと帰る。
[備考]
※第一回放送及びリンゴォからの情報を入手しました。
※A.FのM.M号にあった食料の1/3は輝夜が消費しました。
※A.FのM.M号の鏡の部分にヒビが入っています。
※支給された少年ジャンプは全て読破しました。
※黄金期の少年ジャンプ一年分はC-5 竹林に山積みとなっています。
※干渉できる時間は、現実時間に換算して5秒前後です。
※生きることとは、足掻くことだという考えに到達しました。

247 ◆qSXL3X4ics:2018/07/24(火) 21:38:44 ID:FVEn55QA0
『また来年も、お月様の下で。』の投下を終了します。
長期の投下怠慢に、重ねてお詫びします。
これからは一生懸命どんどん書いていきます。

248名無しさん:2018/07/28(土) 11:47:58 ID:pW1yH24w0
投下乙
涙腺に来たよ
家族ってええね

249名無しさん:2018/07/29(日) 16:15:56 ID:ONcPiDmk0
今どうなってんの?

250名無しさん:2018/07/30(月) 20:21:17 ID:cbr.L70Y0
意味不明な質問はやめろ

251 ◆qSXL3X4ics:2018/08/05(日) 00:29:37 ID:cY0d2li.0
DIO、ディエゴ・ブランドー、霍青娥、エンリコ・プッチ、秋静葉、宇佐見蓮子、マエリベリー・ハーン、ジョルノ・ジョバァーナ、八雲紫、鈴仙・優曇華院・イナバ、聖白蓮、ホル・ホース、サンタナ
以上13名予約します

252名無しさん:2018/08/05(日) 14:08:03 ID:jHHqAgW20
大人数予約だ、これは楽しみ

とうとう紅魔館での激しいぶつかり合いが始まるのか

253名無しさん:2018/08/06(月) 07:09:25 ID:1mXWp1k20
紅魔館はバルカン半島か何かか…w

今までのフラグの総大成みたいになりそうで楽しみです

254 ◆BYQTTBZ5rg:2018/08/07(火) 21:19:07 ID:RZLygPnQ0
すごいメンバーの予約だ。
それじゃあ、私も応援する感じでジョセフ、てゐ、霊夢、マリサ、じょりん、さとり、こころ、ジョナサンを予約します。
まあ、応援になるかは知りませんが

255#:2018/08/07(火) 22:14:34 ID:COAl9aEY0
紅魔館頑張れ超頑張れ
ガワさえ残ってれば君の勝ちっ

256 ◆BYQTTBZ5rg:2018/08/08(水) 21:18:11 ID:rvT5jfdE0
サクッと書けたので投下します

257Who・Fighters ◆BYQTTBZ5rg:2018/08/08(水) 21:19:34 ID:rvT5jfdE0
聖白蓮は一人で紅魔館がある北東に行った。

ジョセフたち一行を迎えたのは、そんな焦眉の急を告げる古明地さとりの言葉だった。
霊夢はたちまち怒りを露にして、文句を口にする。


「ああ!! もう何なのよ!! みんな好き勝手に行動して!! 少しは周りのことを考えなさいよね!! これだから異変を起こす奴は嫌なのよ!!
とにかく!! こうなった以上、私たちもグズグズはしていられないわ!! ジョセフ!! 私たちも聖の後を追うわよ!!」

「お、おう」

霊夢の剣幕に押されて、ジョセフは思わず頷いてしまう。だけど、彼の足がバギーカーのアクセルを踏むことはなかった。
何故なら、そこにはジョセフの祖父がいるのだ。しかも、何故かその祖父であるジョナサンは先程の会話に加わるどころか
ピクリとも動かないときている。愛する祖母エリナのためにも、ジョセフはジョナサンをそのままにしておくなどできなかった。

「おい、その、おじいちゃん……なのか? とにかく、その眠りこけているガタイのいいニイチャンは、どうしたんだよ?
怪我でもしているのか? さっきから全然動いてねーぞ」

ジョセフは背中から届く霊夢の声を無視して、バギーカーを降り、ジョナサンの下に駆け寄る。
だけど、さとりからの説明を受ける前に、ジョセフは「なんじゃ、こりゃあ!!」と叫び声を上げてしまった。

ジョナサンの体温が驚くほど低かったのである。更に様子を窺ってみれば、彼の呼吸は浅く、脈拍も低くなっている。
死んでいないと安堵などしていられなかった。ジョナサンの肉体は、生から段々と遠ざかかり、
今にも死の淵に飛び込もうとしているように思えたのだから。

ジョセフはとりあえず身体を温めてやろうと、自分が着ていたマントをすぐにジョナサンの身体に被せた。
だけど、それでジョナサンの冷たい身体が熱を持つわけでもない。ジョセフは藁にもすがる思いでバギーカーの方に振り返り、仲間に助けを求めた。

「おい!! 何か身体を温めるやつはねえか!?」

「おっと、ここは私の出番か?」

ジョセフの問いに、魔理沙が帽子のつばを指先で押し上げながら、すばやく答えた。大胆不敵。帽子の下にあるそんな笑みだ。
そして彼女は自信満々にバギーカーから降り、ジョセフの下に歩み寄ると、早速自らの自信の理由を皆に知らしめた。
何と魔理沙が持っていたミニ八卦炉を降り積もった雪の上に置くと、そこから春のような温かい風が吹き出たのである。
瞬く間に地面にあった雪は解けていき、その熱はジョナサンと、その周りにいたものたちへと伝わっていった。

258Who・Fighters ◆BYQTTBZ5rg:2018/08/08(水) 21:21:08 ID:rvT5jfdE0
「おめ〜〜、こんな便利なもんがあるんだったら、もっと先に言えよ。俺がどれだけ寒い思いをしてバギーカーを運転していたと思ってんだ」

ジョセフは顔一杯に怒りと後悔とやるせなさを募らせて、口を開いた。

「おお、すまん。でも雪の中、こんな薄着でいる私に何の声もかけてこなかったんだから、そこらへんはおあいこってやつだぜ」

「全然寒そうな素振りを見せてなかった奴に、どんな声をかけろって?」


ジョセフの文句に魔理沙は白い歯を見せて二カッと笑った。それを見て、ジョセフは続けて出そうになる言葉を飲み込んだ。
魔理沙には、どんな嫌味や文句も無意味であると悟ったのだ。ジョセフは意識を切り替えて、改めてジョナサンに目を向けることにした。

「体温は戻ってきた。だけど、依然と息は弱い。パッと見、大きな怪我をしているわけでもなさそうだが、病気か?
おい、さとりっつったか? 何でおじいちゃんは、こんな死体みてえに眠りこけているんだ?」

「おじいちゃん?」ジョナサンの若い見た目とは縁の遠い呼び名に、さとりは首を傾げて訊ねた。

「あ〜、いや、そこらへんはスルーしてくれ」

説明するのが面倒臭いと思ったジョセフは、ぞんざいな言葉を投げつけて、さとりに答えを促す。
多少いぶかしむ思いもあったが、さとりも大した問題ではないだろうと判断し、ジョナサンに何が起きたのかを説明しだした。

「プッチ神父だとお!?」

さとりの話の中にあった名前にジョセフは思わず激高した。彼の名はこの殺し合いの場所に送られて間もない頃に戦った人間のものだ。
その時の敵が回りまわって、自らの祖父を襲う。因縁めいたものをジョセフは感じずにいられなかった。
しかし、その不吉な名前に反応する、もう一人の女性がそこにはいた。

「おい、そこのおチビちゃん、今なんつった!? ひょっとしてプッチ神父と言ったか!?」

徐倫はバギーカーから勢いよく飛び降りると、ズカズカとさとりの前までやって来た。
彼女の眼差しには、宿敵から遠い場所にあっても尚、絶えることのない怒りの炎が煌々と灯されている。
さとりはそんな徐倫に薪をくべるかもしれない話の内容を口にすることに抵抗を感じたが、
ジョナサンの状態を思えば、その遠慮は見事に排されることになった。

259Who・Fighters ◆BYQTTBZ5rg:2018/08/08(水) 21:22:15 ID:rvT5jfdE0
「プッチッッ!!」

果樹園小屋の周辺での経緯、そしてジョナサンを襲ったスタンドのことを聞き終えた徐倫は歯軋りさえして、その名前を叫んだ。
ジョセフも同様の怒りを覚えたが、ジョナサンの生命が危ぶまれている手前、それは後まわしにせざるを得ない。

「徐倫!! プッチの野郎のことを知っているなら、おじいちゃんがどういった状態か分かるよな!? どうすれば助かる!?」

「奪われたDISCを元に戻せば助かるわ……」

徐倫は答えは簡単とばかりに確かな口調で返事をした。しかし、その台詞は尻すぼみとなってしまった。
DISCを持っている肝心のプッチ神父の所在など徐倫たちには分からないのだ。更にはジョナサンの容態は段々と悪くなっていっている。
助かるという言葉は、気休めにもならなかった。

「その肉体には生きようとする意志が欠けているのよ。だから、このままだと衰弱していく一方なの」

徐倫はかつてスピードワゴン財団の職員に受けた説明を交えて、自らの父親がDISCを奪われて陥った時の状態のことを
落ちこんでいるジョセフに聞かせてやった。その内容は暗く、良い展望もないように思えたが、一つの違和感にジョセフは気がついた。

「あ〜、一つ質問なんだけど、何で徐倫の父親の承太郎はDISCを奪われた状態で長生きできたんだ?
お前の話じゃあ、DISCを取り戻すのに結構な時間がかかったそうじゃねえか」

「一つにはスピードワゴン財団の看護があったから。そしてもう一つには、スタンドDISCは割かし早く取り戻せたのよ。
それで仮死状態からは何とか抜け出せて、父さんは目を覚ましたというわけ。まあ、それでも色々と問題があったけどね」

「というとことは、だ」ジョセフはにんまりと徐倫に笑顔を向けた。「スタンドDISCがありゃあ、とりあえずは目を覚ますわけだな?」

「まあ、そうだけど、それが何?」

「じゃじゃじゃ〜ん」

と、ジョセフはデイパックからスタンドDISCを取り出した。そしてジョナサンに生命の息吹を与えてやるべく、早速ジョセフは寝ている彼の頭を持ち上げた。

「ちょっと待てええ!!」猛烈に嫌な予感を覚えた徐倫は殺し合いの会場全体に響き渡るほどの怒号でもってジョセフを止めた。「そのDISCは使うんじゃねえええーーーーッッ!!!」

徐倫はジョセフの手にあったDISCを殴りつけるようにして叩き落した。これで一安心。徐倫はホッと胸を撫で下ろす。
しかし、ジョセフの手から離れたDISCは、まるで吸い込まれるように、まるでそこにあるのが当然といったように
ジョナサンの頭にぶつかり、すんなりとその中に入っていった。

「あ」

「あ」

ジョセフと徐倫の口からマヌケな声が漏れる。そしてそれと同時に、ジョナサンの目がパチリと開いた。

260Who・Fighters ◆BYQTTBZ5rg:2018/08/08(水) 21:22:49 ID:rvT5jfdE0
【B-5 果樹園小屋 跡地/午後】

【ジョセフ・ジョースター@第2部 戦闘潮流】
[状態]:胸部と背中の銃創箇所に火傷(完全止血&手当済み)、てゐの幸運
[装備]:アリスの魔法人形×3、金属バット、焼夷手榴弾×1、マント
[道具]:基本支給品×3(ジョセフ、橙、シュトロハイム)、毛糸玉、綿、植物油、果物ナイフ(人形に装備)、小麦粉、香霖堂の銭×12、賽子×3、青チケット
[思考・状況]
基本行動方針:相棒と共に異変を解決する。
1:???
2:カーズから爆弾解除の手段を探る。
3:こいしもチルノも救えなかった・・・・・・俺に出来るのは、DIOとプッチもブッ飛ばすしかねぇッ!
4:シーザーの仇も取りたい。そいつもブッ飛ばすッ!
[備考]
※参戦時期はカーズを溶岩に突っ込んだ所です。
※東方家から毛糸玉、綿、植物油、果物ナイフなど、様々な日用品を調達しました。この他にもまだ色々くすねているかもしれません。
※因幡てゐから最大限の祝福を受けました。
※真昼の時間帯における全参加者の現在地を把握しました。


【空条徐倫@ジョジョ第6部 ストーンオーシャン】
[状態]:体力消耗(中)、全身火傷(軽量)、右腕に『JOLYNE』の切り傷、脇腹を少し欠損(縫合済み)
[装備]:ダブルデリンジャー(0/2)@現実
[道具]:基本支給品(水を少量消費)、軽トラック(燃料70%、荷台の幌はボロボロ)
[思考・状況]
基本行動方針:プッチ神父とDIOを倒し、主催者も打倒する。
1:???
2:FFと会いたい。だが、敵であった時や記憶を取り戻した後だったら……。
3:しかし、どうしてスタンドDISCが支給品になっているんだ…?
[備考]
※参戦時期はプッチ神父を追ってケープ・カナベラルに向かう車中で居眠りしている時です。
※霧雨魔理沙と情報を交換し、彼女の知り合いや幻想郷について知りました。どこまで情報を得たかは後の書き手さんにお任せします。
※ウェス・ブルーマリンを完全に敵と認識しましたが、生命を奪おうとまでは思ってません。
※人間の里の電子掲示板ではたての新聞記事第四誌までを読みました。

261Who・Fighters ◆BYQTTBZ5rg:2018/08/08(水) 21:23:29 ID:rvT5jfdE0
【霧雨魔理沙@東方 その他】
[状態]:体力消耗(小)、全身に裂傷と軽度の火傷
[装備]:スタンドDISC「ハーヴェスト」@ジョジョ第4部、ダイナマイト(6/12)、一夜のクシナダ(60cc/180cc)、竹ボウキ、ゾンビ馬(残り10%)
[道具]:基本支給品×8(水を少量消費、2つだけ別の紙に入っています)、双眼鏡、500S&Wマグナム弾(9発)、催涙スプレー、音響爆弾(残1/3)、
    スタンドDISC『キャッチ・ザ・レインボー』@ジョジョ第7部、不明支給品@現代×1(洩矢諏訪子に支給されたもの)、ミニ八卦炉 (付喪神化、エネルギー切れ)
[思考・状況]
基本行動方針:異変解決。会場から脱出し主催者をぶっ倒す。
1:???
2:徐倫と信頼が生まれた。『ホウキ』のことは許しているわけではないが、それ以上に思い詰めている。
4:何故か解らないけど、太田順也に奇妙な懐かしさを感じる。
[備考]
※参戦時期は神霊廟以降です。
※徐倫と情報交換をし、彼女の知り合いやスタンドの概念について知りました。どこまで情報を得たかは後の書き手さんにお任せします。
※アリスの家の「竹ボウキ@現実」を回収しました。愛用の箒ほどではありませんがタンデム程度なら可能。やっぱり魔理沙の箒ではないことに気付いていません。
※人間の里の電子掲示板ではたての新聞記事第四誌までを読みました。
※二人は参加者と主催者の能力に関して、以下の仮説を立てました。
荒木と太田は世界を自在に行き来し、時間を自由に操作できる何らかの力を持っているのではないか
参加者たちは全く別の世界、時間軸から拉致されているのではないか
自分の知っている人物が自分の知る人物ではないかもしれない
自分を知っているはずの人物が自分を知らないかもしれない
過去に敵対していて後に和解した人物が居たとして、その人物が和解した後じゃないかもしれない


【博麗霊夢@東方 その他】
[状態]:体力消費(大)、霊力消費(大)、胴体裂傷(傷痕のみ)、波紋治療中
[装備]:いつもの巫女装束(裂け目あり)、モップの柄、妖器「お祓い棒」@東方輝針城
[道具]:基本支給品、自作のお札(現地調達)×たくさん(半分消費)、アヌビス神の鞘、缶ビール×8、
    不明支給品(現実に存在する物品、確認済み)、廃洋館及びジョースター邸で役立ちそうなものを回収している可能性があります。
[思考・状況]
基本行動方針:この異変を、殺し合いゲームの破壊によって解決する。
1:???
2:有力な対主催者たちと合流して、協力を得る。
3:2の後、殲滅すべし、DIO一味!! 
4:フー・ファイターズを創造主から解放させてやりたい。
5:『聖なる遺体』とハンカチを回収し、大統領に届ける。今のところ、大統領は一応信用する。
6:出来ればレミリアに会いたい。
7:徐倫がジョジョの意志を本当に受け継いだというなら、私は……
[備考]
※参戦時期は東方神霊廟以降です。
※太田順也が幻想郷の創造者であることに気付いています。
※空条承太郎の仲間についての情報を得ました。また、第2部以前の人物の情報も得ましたが、どの程度の情報を得たかは不明です。
※白いネグリジェとまな板は、廃洋館の一室に放置しました。
※フー・ファイターズから『スタンドDISC』、『ホワイトスネイク』、6部キャラクターの情報を得ました。
※ファニー・ヴァレンタインから、ジョニィ、ジャイロ、リンゴォ、ディエゴの情報を得ました。
※自分は普通なんだという自覚を得ました。


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