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☆魔法少女リリカルなのは総合エロ小説_第116話☆
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キャロ・ル・ルシエはがばりとベッドの中で上体を起こした。
――何て、悪夢。この夢を見るのは、一体幾度目になるのだろう。
数えようとして、それが全く無益な行為であることに気付き、キャロは曲げた両手の指を弛緩させた。
甘やかな過ぎし日の思い出。
そんな優しい一時の夢も、必ず終わりはあの昏い孔に塗り潰されてしまう。
それでも。例え一時の夢だったとしても。
嬉しかった――エリオに逢えて。楽しかった――エリオと一緒に槍が振れて。
どうしようもなく、涙が止まらないぐらい、エリオの全てが懐かしかった。
「……寒い」
キャロはぶるりと身を震わせた。夜明けはまだ遠いようだ。
先程まで背中を包んでいたエリオの温もりは、とうの昔に消え失せている。
キャロは瘧に憑かれたように体を震わせた。
寒い。体を動かして、温めなければいけないようだ。
――久しぶりに、『秘密の特訓』に出かけよう。
バタン、と幽かな音を立てて、隊舎の扉が閉まる。
ずっと寝たふりをして、キャロの行動の一部始終を見つめていた同室のルーテシアは、悲しげに表情を曇らせたが。
……諦めたように、固く瞳を閉じた。自分は何も見なかった、と己自身に言い訳するように。
キャロはストラーダに魔力を注ぎ、一息でスピーアフォルムに変化させた。
眼光鋭く前方の夜闇を睨み、軽やかな動きで虚空に必殺の刺突を繰り出した。
その淀みの無い挙措は、全くの素人が見れば過日のエリオと見紛うかのような腕前だった。
だがしかし、業が進めば進む程、キャロは改めてエリオと己との隔たりを思い知ることになった。
知っている。誰より自分自身が知っている。エリオの槍は、この程度では無かったことを。
こんなものでは、届かない。敵わない。どこをどう見たって、エリオには似ても似つかない。
これでは、エリオがなりたかった騎士になど、なれる筈もない。
そんな焦燥が、より一層キャロの槍に速度を加えていく。
キャロの槍は達人と呼ぶ域にはまだまだ及ばない。過日のエリオの槍には似ても似つかない。
それでも、一芸一能と呼ぶには十分な域に踏み込んだ業だった。
でも、それは矢張り――正道から外れた、どこか歪な業だったのだろう。
キャロは回想する。甘やかな記憶を。エリオと一緒に槍を握った日の昂揚を。
そのほんの僅かな残滓でも感得出来ないかと、固く固くストラーダを握り締めたが――
……掌の中に感じ取れたのは、唯の冷たい鋼の感触のみであった。
少女はただ無言で槍を振るう。その先に救いが来るのか。それとも報いが来るのか。それはまだ、誰も知らぬことであった。
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