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☆魔法少女リリカルなのは総合エロ小説_第102話☆

257槍騎士“悲愴”:2010/02/07(日) 19:48:58 ID:0LrVPdy6
槍騎士“悲愴”
前編


新暦75年、夏。
先進都市クラナガン……ミッドチルダ地上本部と呼ばれる、天を突く塔の最上階にて。
音はない。静寂さ、と言えばいいのか。そこにあったのは一人の男の亡骸と、一体の機人の残骸だった。
胸を貫かれ肺腑と血の池で溺れ死んだ、あるいは友だったのかもしれない男の死体――人間としての原形を留めている。
もう一つ、残骸と称すべき存在は酷い有様だった。

「……これは」

一足遅く辿り着いた女、シグナムという剣士が目にしたのは、バラバラに打ち砕かれた機械と肉片だ。
元々は人の形であったことさえも信じられないような、暴虐の嵐が吹き荒れた後。
それを為したであろう一人の槍騎士は、シグナムの目線を受けながら静かに哀哭していた。

「遅かったな……」
「……中将は?」
「死んだ。殺した機人は俺が壊した」

瞑目。シグナムという武人は瞳を開けると、ただ低い声で告げた。
選択を……せめて誇りだけは守れる死と、責務を背負う生き方を。
疲れ切った虚空を泳ぐ目が、どちらを選択するかなどわかりきっていたのに。

その筈だった。





思えば堕ち続ける人生だった。
物心ついた頃には天涯孤独、家名だけの家、友に裏切られ、大勢の部下を巻き添えに死んだ。
この手から零れ落ちたモノはあまりに多く、願いどおりに為せたことなどない。
“正義”を謳う世界の片隅で、届くはずもない夢を追い求めた果ては、死と呪詛に満ち牢獄じみた境界線。

こう思った。
踏み止まる理由など何処にもない。
不完全な肉体と目的を見失った魂に、何が残っているというのだ。

こうも思う。
踏み越えれば楽になれるはずだ。
背負うべき責務と罪を捨て、冥府の腹の奥底へ二度と振り返ることなく歩き出せばいいのだと。

「俺は……」
「旦那ァ!」
「……」




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