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☆魔法少女リリカルなのは総合エロ小説第100話

274紫炎剣客奇憚 ACT.02 3/4:2009/08/22(土) 23:40:01 ID:XnU56Gvs
 吹き渡る風は強く、天空の雲脚は驚く程速い。穏やかな陽光に反して、空は荒れているとシグナムは見上げた。その晴れ渡る嵐の中、二人の魔導士が火花を散らしていた。
 片方はキャロのパートナーである竜騎士のエリオ。嘗ては部下で、珍しく戦技の手解きをした事もある少年だった。そしてもう片方が問題の……
「疾いが、軽いな」
 正式な魔導士ですらない、小さな影をエリオのアスラーダが捉えた。シグナムにはエリオの目覚しい成長が、手に取るように伝わった。同時に、相手の未熟さも。基礎がまるでできていない、ただスピードがあるだけの剣だった。
 その振るい手は空中でバランスを崩し、手放したアームドデバイスが落下してくる。それはまるで、狙い済ましたかのようにシグナムの足元に突き立った。
「よくぞ一人でここまで……やはり天才、血は争えぬか」
 大地に突き刺さるレイピアを引き抜き、軽く振ってみる。凍れる碧き刀身が僅かに撓って、剣の軌跡を霜が舞った。珍しい氷属性……それも、たった一人の子供が作ったハンドメイドのデバイス。
「カートリッジシステムは……搭載されていないな。やはり土地柄、部品も手に入らぬか」
「お怪我はありませんでしたか? ごめんなさい、それ僕のです」
 ふわりとシグナムの目の前に、一人の少女が舞い降りた。
 腰まで伸びたストレートの髪は紫色で、透ける様な白い肌とのコントラストが眩しい。整った顔立ちはあどけなさが残り、エリオやキャロと同年代に見える。しかし実年齢では、三歳に満たぬ筈……件の《宿業の子》であれば。
「……これは、お前が一人で?」
「は、はい。設計上はもっと色々盛り込める予定だったんですけど、部品が手に入らなくて」
 少女は黄昏色の瞳を輝かせた。その姿は無邪気だが、シグナムには良く知る時空犯罪者を髣髴とさせる。アンダーシャツにキュロットスカートという姿では無く、もし白衣を着ていたら……間違いなく、あの男の面影を誰もが感じ取るだろう。
「名は?」
「エリシオンです。挨拶して、エリシオン。お客様だよ」
「Buon giorno!」
「……デバイズの名ではない、お前の名だ」
「それは、ええと……困ります、あの、知らない人に名乗っちゃいけないって母様が」
 困ったように俯く少女へと、レイピアを……エリシオンを放って返すシグナム。彼女は相手が受け取るより早く、懐よりレヴァンティンを引っ張り出すや、高らかにその名をコールした。
 眩い光が紫炎となって集い、ヴォルケンリッターが一人、剣の騎士シグナムを象った。
「凄い、騎士だ……あ、あのっ」
「この方は騎士シグナム、私と貴方の命の恩人です」
 不意にシグナムの背後で扉が開いて、クアットロが現れた。ショールを羽織るその姿は弱々しいが、毅然とした瞳を眼鏡の奥に輝かせている。
「母様、ではこの方が……」
「名乗りなさい……貴方の真の名を。そして挑みなさい。貴方が目指す『真の騎士』を知るのです」
 それだけ言って咳き込み、クアットロは後から現れたキャロに支えられた。
 シグナムは警戒しつつ背後に寄り添うアギトに目配せし、降下してくるエリオにも無言で視線を放ると。静かにレヴァンティンを構えて少女へと突きつけた。
「僕は……僕はプリジオーネ。プリジオーネ・スカリエッティ」
 初夏の空に雪華が舞い、少女の纏う衣服が弾けて消え失せた。




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