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☆魔法少女リリカルなのは総合エロ小説_第98話☆
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少年は、闘争の場でここまで楽しげに嬉しげに、そして壊れた笑みを浮かべられる者など知らなかった。
「ふふ、良いですねぇ、良いですよあなた。その年でよくそこまで鍛えたものです……久しぶりに楽しめそうですよ♪」
まるでプロムの夜に、最高の美少女とダンスできる少年のような。
まるでクリスマスにサンタさんから最高のオモチャをもらった子供のような。
嬉しくて嬉しくて堪らない、そんな無邪気で毒気のない笑顔を、隻腕の男、ジャック・スパーダは浮かべていた。
ありえない。
それはエリオの常識から考えてありえない事だった。
普通の人は戦いの場でこんな明るい笑みは見せない。
普通の人は命のやり取りの場でこんな嬉しそうに喋らない。
普通の人はこんなに壊れていない。
異常だ。
目の前のこの男は明らかに常軌を逸していた。
人間が人間であるための正常性、正気をどこまでも果てしなく欠いていた。
それを認識し、恐怖と嫌悪が混ざり合った感情がふつふつと心を侵食する。
もし許されるなら逃げ出したいとさえ思う。
だがそれは許されない、少年の心が、そこにある正義感が許さない。
自分が成す事は背を向けて逃げ出す事でなく、相手を打ち倒し、勝利する事だ。
胸中で自身を叱責、幼い騎士は体内のリンカーコアを燃焼させ魔力を搾り出す。
ストラーダの物理保護に五体にかけた身体強化術式へとさらなる魔力を流し込み、強大な敵の膂力へと押し返した。
押されつつあった鍔競り合いを五分の状態へと持ち直す少年の気概に、剣鬼は笑みを喜悦でより深く染める。
と、そんな時だった。
二人が斬り結ぶその場よりいくらか離れた場所で音がした。
爆音ともとれる高出力射撃魔法の射出音、そして人にあらざる獣、恐らくは竜の断末魔に似た叫び。
それがフリードと先ほどの金髪の男の戦闘音だと、エリオが察するのにそう時間はかからなかった。
パートナーの窮地を感じ、少年は思わず狼狽を見せた。
「くっ! キャロッッ!!」
視線を音のした方向へと向け、少女の名を叫ぶ。
が、それは決して闘争の場において、眼前に敵のいる状況でして良い行為ではなかった。
少年の身体から力が僅かに抜けた瞬間、鍔競る刀身に火花と共に凄まじい圧力が生まれる。
今まで感じていた力が嘘のような、超絶の金剛力。
瞬間的に四肢に魔力を流し、燃焼させ、身体強化術式が行使されたのだ。
その力はエリオを、物理保護・デバイス・肉体、それら一切合財をひっくるめて吹き飛ばした。
フワリと感じる無重力的な感覚。
自分が、浮いた、という自覚を得る間もなく、少年の意識が寸断された。
エリオの思考力を奪った正体、それは蹴り。
鍔競りから少年を吹き飛ばし、そのまま流れるように放たれた前蹴りが中空の彼の鳩尾を捉えたのだ。
金属製レガートを装着したブーツ、その爪先が魔力による物理保護を施され、エリオの肉体をバリアジャケットなど無いかの如く蹂躙。
内臓はおろか背筋に埋まる背骨までへし折りそうな力で行われた蹴撃に、少年の意識は霧散した。
意識を失った肉体は宙を数メートル舞い、草と硬い土の上に落ちる。
まだ成長しきらぬエリオの身体が柔らかな草で数回バウンドし、まるで投げ捨てられた人形のように面白いくらい転がった。
その衝撃に意識が戻ったのか、少年は転がる慣性に従って身体を制御、槍を支えに制動をかけた。
ストラーダを杖代わりにエリオはなんとかその場に踏みとどまったが、蹴られた箇所から激痛が全身を駆け巡る。
苦痛に顔をしかめ、血を吐き漏らしながらも少年は強靭な意志でそれを捻じ伏せ、視線を敵に向けた。
瞬間、目の前に長剣の刃が翻った。
「ッッ……」
目の前に切っ先を突きつけられ、エリオは言葉にならない声を零す。
日の光を反射し、銀色に妖しく輝く魔剣の刃。
もし相手にその気があるならば、エリオは瞬きする間に絶命し果てるだろう。
剣を交え、この剣鬼がそれだけの実力を有しているという事は嫌というほど味わった。
息吹を感じるほど間近な“死”の気配。
少年の背筋が、本能的な恐怖により滝のように流れた汗で濡れる。
額に脂汗を浮かべ、表情を強張らせるエリオ。
だが、対する隻腕剣鬼は残念そうなというか、なんともいえない表情で少年を見下ろしていた。
「あぁ〜、もう何してるんですか。せっかく良い戦いだったのに、よそ見して油断するなんて、減点ですよ?」
さながら教え子を優しく叱るように、狂った男はエリオを嗜めた。
明らかにこちらを殺す気だというのに、発露する感情はどこまでも穏やか。
再認識させられる異常な狂気性、壊れた人間の情緒。
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