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☆魔法少女リリカルなのは総合エロ小説_第98話☆

811伊達眼鏡と狙撃銃5話 3/13 ◆vyCuygcBYc:2009/05/22(金) 01:02:20 ID:IN5TLEBM
 恐る恐る、ヴァイスは円卓に座るクアットロに視線を戻した。
 小さく首を傾げ、クアットロは再びヴァイスに微笑みかける。ふんわりと柔らかに。見るものを魅了せずにはおかない淑女の笑みで。

「このクッキー、私のお気に入りなんです。焼きたてで香りも良くて、とっても甘くて美味しいの。ヴァイスさんもお一ついかがですか?」

 クッキーの入った小皿を差し出され、ヴァイスは狼狽した。
 夜の彼女を知るだけに、この昼のクアットロの姿が不気味で堪らないのだ。そんなヴァイスの内心を知ってか知らずか、クアットロは上品にクッキーを口に運ぶ。

「うぅん! やっぱり素敵! この香りが堪らないわ〜 紅茶にもバッチリですのよ!」
「……その、アンタはやっぱりソープ・ナンバーズの―――」
 
 おずおずと、目を細めてクッキーを味わうクアットロに声を掛ける。
 瞬間。ぐしゃりとクアットロの繊細な手が固い拳を形作り、指の間からパラパラとクッキーの粉が零れ落ちた。
 彼女はいかにも興が冷めたと言うような面持ちで、流し目をヴァイスに送る。
 開かれた掌は、無惨に砕けたクッキーの残骸がべったりと汚れていた。
 彼女は、それを下品にも舌で舐め上げた。
 蛇の舌のような長く赤い舌が、ぞろりと端整な指を這っていく。冷たい流し目がヴァイスを捉えて離さない。
 ヴァイスは、身じろぎさえ出来なかった。
 指に残った汚れを紙ナプキンで拭き取り、クアットロはヴァイスに優しく微笑んだ。

「折角な素敵なティータイムですもの。無粋なお話は別の機会に致しませんか、『ヴァイスさん』?」
 
 ヴァイスに向き直り、小鳥のように小さく首を傾げる。 
 ―――その時には、もうティアナと親しげに話していた元の彼女に戻っていた。

「すみません、遅くなっちゃいました! あ〜っ、クアットロさん、クッキー全部食べちゃったんですか!?
 楽しみにしてたのに……」
「ごめんなさいね、ティアナさん。言い訳させてもらうと、ヴァイスさんにもクッキーの味をみて貰っていたの。
 ここのクッキーは焼きたてが一番ですものね。ヴァイスさんもとっても気に入ってくれたみたいよ。……ねえ、ヴァイスさん?」
「あ、ああ、香りが良くて、凄く旨いクッキーだったよ! ここのお菓子はどれも旨いのばかりだよな、ははは」
「そうだったんですか! ヴァイスさんも気に入ってくれて嬉しいです! あたしのお勧めは他にはアップルパイと―――」

 再び何でもない談笑に花が咲く。
 ヴァイスは調子良く会話を合わせながらも、机の下で膝が震えるのを止められなかった。
 あの表情は一体何だ?
 クッキーの残骸で汚れた指を舐め上げた時のクアットロの目。あんな貌は夜の姿の時でさえ見たことも無い。
 憎悪でもなければ、今見せている笑顔でもない。―――あの表情は、正しく狂気に類されるものだ。




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