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☆魔法少女リリカルなのは総合エロ小説_第98話☆

810伊達眼鏡と狙撃銃5話 2/13 ◆vyCuygcBYc:2009/05/22(金) 01:01:28 ID:IN5TLEBM
「クアットロさん、紹介します! こちらが、あたしの……その、彼氏のヴァイス・グランセニックさんです!」

 幸福感溢れる満面の笑みを浮かべて、ティアナはその男をクアットロに紹介した。
 馴染みの喫茶店での昼の一時、クアットロにとってのささやかな幸福の時間は硝子のように砕けて消えた。
 『初対面のティアナのカレシ』は、やや青ざめた顔を引き攣らせながら、ぎこちない会釈をした。

「……ハジメマシテ」

 ヴァイスが内心の動揺を隠そうと必死なのは明白だったが、その道に長けたクアットロはあくまで平静を装った。
 昼の彼女としての淑女の気品を欠かさぬよう、柔らかく微笑んでたおやかに一礼する。

「初めまして、ヴァイスさん。私、クアットロと申します。
 お噂はかねがねティアナさんから伺っておりました。お会いできて光栄ですわ」

 陽の下のクアットロは、夜の彼女とはまるで別人のようだった。
 瀟洒な細い眼鏡と青いイヤリング。ベージュのルージュを薄く引いて、理知的で落ち着いた大人の女性の風貌を輝かせている。
 そこに、丸眼鏡をかけ、隈取濃いメイクで深紅の唇を歪める夜の彼女の形相は想像さえ出来ない。
 ヴァイスは戸惑っていた。本当に、これがあのソープ・ナンバーズのクアットロと同一人物なのだろうか?
 そんな心の動きを見て取ったのか、クアットロは眼鏡を僅かに押し上げ、ヴァイスに微笑みかける。

「折角こうしてお会いできたのですから、是非ヴァイスさんのお話を伺いたいですわ。
 ……ティアナさんとのお話を、たっぷり、色々と―――」

 決してティアナには見えない角度で、クアットロの視線がヴァイスの瞳を射抜いた。
 どす黒く塗りつぶされた、呪い殺さんばかりの憎悪の視線。
 ヴァイスは身震いをする。間違い無い。この視線、この憎悪はこの女のものだ。
 あのソープランドの雌の体臭が立ち込める、薄暗い部屋で見たのとまるで同じ瞳だ。
 自分を蔑み、見下し、嫌悪し、嘲笑し、憎悪する。この瞳こそ、クアットロというこの女本来の瞳だ。あの夜の姿こそ、この女の本性だ。
 それが何故、こんな昼の世界で何処ぞのキャリアウーマンのような小奇麗な格好で、アフタヌーンティーを楽しんでいるのか?
 それも、ティアナと一緒に。

「ね、綺麗な人でしょう、ヴァイスさん! 今までクアットロさんには色んな相談に乗ってもらってたんですよ」

 ティアナは零れんばかりの笑みで、クアットロにたなごころを向ける。
 ―――そういえば、最近新しい年上の友人ができて、よく相談に乗ってもらっているというような話を、ティアナから聞いていた気がする。
 ぼんやりと、ヴァイスは朧げにティアナとの会話を回想してみた。ヴァイスは、ティアナとの会話の内容など殆ど覚えてはいない。
 ヴァイスが必要としているのは、ティアナの無条件の好意だけだ。ティアナの嗜好や人格などに興味は欠片も無いからだ。
 二人の会話は、常にティアナが楽しげに話題をふり、ヴァイスは持ち前の話術でそれに調子を合わせるだけだった。
 それでも、二人の会話は常に噛み合っていた。
 それだけで、ヴァイスは満足だったからだ。
 そうとは知らぬ、ティアナは幸せだったからだ。
 ティアナは腕を大きく広げ、花のような笑顔で全身から至福を振り撒きながら、二人にこれまでの経緯を滔々と語る。
 普段と変わらぬ笑顔のまま、クアットロはこの事態の原因を究明しようとその話に耳を傾けてた。
 普段より僅かに険しい表情のヴァイスは、この場をどう繕おうか思案し、上の空でその話を聞き流していた。

「……―――それじゃ、あたし、少しお手洗いに行ってきますね!」

 何時の間にか、話は終わっていたらしい。ティアナはオレンジジュースを飲み干すと、軽い足取りで席を立った。
 ヴァイスはその背中へ手を伸ばすが、引き止める為の良い言葉が浮かばない。ティアナの蜂蜜色の髪が靡いて消えていく。
 見知らぬ喫茶店の円卓で、ヴァイスはクアットロと二人取り残された。孤島にでも置き去りにされたような気分だった。




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