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【Fate】アースセル「真なる聖杯を手に入れろ」【避難所】

2 ◆XFKJOt0a3Y:2014/03/02(日) 00:18:48 ID:lveRSLdE


そんなわけ避難所立てました。


避難所あってもなにしよう?

3 ◆XFKJOt0a3Y:2014/03/02(日) 00:44:23 ID:lveRSLdE


折角だし、色々お浚い


Q1.アースセルとは
  21世紀以降に、建造されたと思われる巨大な建造物。正式名所「アースセル・オートマトン」
  建造物と評するが、実体は存在しない。仮想化技術を使用したプラットフォームとなっている
  建造された目的は不明であるが、その演算処理と容量から「人類の自動書記」と評される
  一説によれば、月にあるとされる巨大なオーパーツを模倣した…とのこと

Q2.アースセルで、何をしているのか
  永遠と繰り返される聖杯戦争。アースセルの中枢区画(GRIGORI)の演算能力を使用して
  仮想空間を作り出し、20世紀に行われたとされる【聖杯戦争】を作り出している。
  永遠と繰り返される聖杯戦争。しかし、その結末はどれも異なっている。
  知りたい―――その聖杯戦争の中で…どの世界が【最強】であるのかと

Q3.アースセルの聖杯戦争で勝利したら?
  新たな世界を作り出す

Q4.参加資格は?
  不問。誰も彼もが1つの世界を奪うために殺し合う

Q5.アースセルを造りだしたのは誰?
  不明。一説によれば、様々な分野の人間が集まったとのこと


―――アースセルより、秘匿情報のウイルス(閲覧者)を検知しました

―――ウイルス(閲覧者)の霊子ネットワークの解析完了

―――ウイルス(閲覧者)を駆除しました

4 ◆XFKJOt0a3Y:2014/03/02(日) 01:21:23 ID:lveRSLdE


Q6.アースセルの聖杯戦争って何?
 アースセルの聖杯戦争には、予選、本選の二種類が存在する・
 予選:アースセルオートマトンが用意した聖杯戦争の模倣空間
     時代背景を選択して、その時代に存在したNPCマスターと対戦して勝利する

 本選:GRIGORIへのアクセス権を入手し、アクセス権を得た参加者との一騎討ちとなる
     本選に勝利することで、アースセルオートマトンの管理権を掌握する


Q7.今までの予選通過者は?
  37人

Q8.今までの予選勝利者は?
  0人

―――アースセルより、秘匿情報のウイルス(閲覧者)を検知しました

―――ウイルス(閲覧者)の霊子ネットワークの解析完了

―――ウイルス(閲覧者)を駆除しました

5普通の名無しさん:2014/03/02(日) 02:03:10 ID:s/oSjwaQ
立て乙です
>避難所あってもなにしよう?
上記のおさらいのような、普段スレが動いてるとやらないようなことを散発的に行う感じがよろしいのではないでしょうか。

6普通の名無しさん:2014/03/02(日) 09:48:42 ID:mM8RZa2I
ここで初めて興味を持っても、ログがHTMLに依存してる以上あそこが復旧しないと見られない
だから歴代貴方についてハイライト的なやつが欲しいかなぁ
人数多いしざっくばらんでも十分だと思う

7普通の名無しさん:2014/03/02(日) 09:56:03 ID:mM8RZa2I
もし書き溜めてるならちょっとした外伝とかSSとかもアリではないかと

8普通の名無しさん:2014/03/02(日) 11:25:52 ID:wuDTl9fo
座談会とかでもいいや

9普通の名無しさん:2014/03/02(日) 12:22:25 ID:uMBqutLU
座談会はみたいな
あ、愉悦は座っててください

10普通の名無しさん:2014/03/02(日) 12:30:29 ID:TrwgOlnQ
愉悦ちゃんが口元バッテンマークのマスクを付けて大人しくしてるぞ。

一体、なにをやらかすつもりなんだ・・・。

11普通の名無しさん:2014/03/02(日) 12:37:59 ID:mM8RZa2I
愉悦が何かやらかすと、恐竜先輩がおもむろに某欠片男に連絡するところを見て愉悦が土下座する構図

12普通の名無しさん:2014/03/02(日) 12:41:59 ID:wuDTl9fo
愉悦ならヴラドのマントに隠れて震えてるよ

13普通の名無しさん:2014/03/02(日) 13:20:44 ID:uMBqutLU
>>11
そういや欠片男はアパートから去っていったのかね?
まあ愉悦にはセイヴァ―だけで対処可能だと思うけど

14普通の名無しさん:2014/03/02(日) 14:51:19 ID:iCS63qYA
サーバー復活したでー!

15普通の名無しさん:2014/03/02(日) 15:09:46 ID:wuDTl9fo
マジかよ!?やったぜ

16普通の名無しさん:2014/03/02(日) 15:19:41 ID:mM8RZa2I
_人人 人人人_
> 突然の復活 <
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y ̄

ここどうしよう……

17普通の名無しさん:2014/03/02(日) 15:22:18 ID:wuDTl9fo
パー速の雑談使い終わったらここに移動でいいんじゃないかな?どうだろ

18普通の名無しさん:2014/03/02(日) 15:24:53 ID:Lqw0Jfzo
ここは文字通り 避難所にしといたら?また墜ちることになったらこっちで時間つぶせばいいし

19 ◆XFKJOt0a3Y:2014/03/03(月) 21:25:59 ID:zD0DN5Bo
本日はここで終了します


お疲れ様でした

20 ◆XFKJOt0a3Y:2014/04/03(木) 01:33:24 ID:2kqX8p46


もーいいーかーい?

21 ◆XFKJOt0a3Y:2014/05/11(日) 04:00:50 ID:zTEvNGHM

┏━━━━━━━━━━━━━━━┓
  ≪クラス≫:アーチャー
┣━━━━━━━━━━━━━━━╋━━━━━━━━━┳━━━━━━━━━━━━━┓
  【真名】:エミヤ               【コスト】:20      【属性】:中立・中庸
┣━━━━━━━┳━━━━━━━╋━━━━━━━┳━┻━━━━━┳━━━━━━━╋━━━━━━━┓
  【筋力】:D(20)   【耐久】:E(10)   【敏捷】:C(30)   【魔力】:C(30)  【幸運】:D(20)   【宝具】:E〜A++
┣━━━━━━━┻━━━━━━━┻━━━━━━━┻━━━━━━━┻━━━━━━━┻━━━━━━━┫
  【特徴】:反英霊(人間)       令呪:弓弓(決勝進出ボーナスにより令呪回復)    【信頼度】:絆
┣━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┫
             ノ| r‐‐‐‐‐‐≠´/
            / !| /      /` ‐‐---=彡
           /   ./             メ、
            /                      \
        ヽ |                   -=、
           ∧ |   / /   , r ' ヽ         ヽ
           ∧ ヽ |:/ , r '       t=、-==- 、  ヽ \
          l _ヽ,r'       , '  ヽ - 、   l  ̄
          ∨      _,,厶斗-    ミ r‐ 、   |
           =-.、   -‐弋戈.ノ       r  Y .ト、
           ヽヒカ             }‐'  〉 |
            `.ノ               __ .イ :|
                、                 / |  ト、.:|
              ヽ -= =‐        .イ .|/リ ヽl
              ム  -      / /    |
               ム          |   ,イ三|___
                 ー 、<    レ.-=ニニニ==-'ヽ
                    {   rニニニニニ>'゙: :: : : : : :ヽ-.、
                 r=|ト+--+==.!ニr: : : : : : : : : : : : : 〉: : `≧= 、
                  |: :||       |ニ|: : : : : : ; ; - '.゙.´.: : : : : : : : : :
               , r. . :l: :イ      |ニト-. ' ゙ ´: : : : : : : : : : : : : : : : :
           ,≦ : : : : : :.:.人     人/: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ::
      . . : :≦´.:: : : : : : :./マニ`ニア´ rニ.|: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :
   r≦:.:: : : : : : : : : : : : : :.八  `==゙´ /ニ=|: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :
   | : : : : : : : : : : : : : : : :/ニム    /二ニ|: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :
┣━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┫
 【クラススキル】
 ◆対魔翌力:D
  魔除けアミュレット程度の効果
  効果:敵魔術スキル:1/2半減

 ◆単独行動:C
  マスターからの魔翌力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
  ランクCならば、マスターを失っても一日間現界可能。
  効果:マスターからの魔翌力供給or貯蔵魔翌力が0になっても1日だけ行動可能

【保有スキル】
 ◆千里眼:C 効果:クリティカルで狙撃判定に移行
  純粋な視力の良さ。遠距離視や動体視力の向上
  
 ◆魔術:C− 効果:魔道具の鑑定が可能
  得意な魔術は不明だがオーソドックスな術を取得している

 ◆心眼(真):B 効果:1度だけ失敗を成功にする
  修行・鍛錬において養われた戦闘を有利に進めるための洞察力。

┣━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┫

 【宝具】
 ◆『無限の剣製』
   効果:『無限の剣製』:4ターンの間 補正:+1 敵補正:-1 失敗を成功に反転
   ※クリティカル以上で宝具:『永久に届かぬ王の剣』発動

┣━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┫

22 ◆XFKJOt0a3Y:2014/05/18(日) 02:36:52 ID:2K2GBsuI

テスト

1日目:コミュパート


提督「大分片付いたな…」

貴方は、ガラクタ置場と化した執務室を秘書官の不知火と共に掃除をする

そうして数時間後、ようやく執務可能な程度には片付けることが出来た

                  __
            _    ´  --  ̄   、
        ア⌒Y/    /      \  `\
    . ´   /  /  /   {
.   , ./   :|  ./i{                    、
  /' /    乂.' ∨       ,        |         /
  ,     // ./       ∧       | ト        ∨ /
       /  ′/  /    .′ \       l├ヘ       ∨ /
  i    /   i ./ / ./  __  -― 丶     , |  ’       ∨  その分、執務が滞ってしまいました
  |      l/ ∧ ′   :|′       、  ./ .リ ___, i  :| }!
 .乂  {    ! .' ‘|     |____   ヽ/ r匕:「 }Ⅳ   :|     提督<<まぁ、それは後々追いかければいい
     \  l∧  |     i{ 匕n「 `   /   t_り  ∧   !
      ̄  |{  、|    ヾ 乂り           i     ,     では、提督。次の指示をお願いします
            、   八           丶     圦  ′
            \   \               八} /
             \、 (⌒\      _   ,  |/
             /^\> .     ´
             / / ∧ト . ≧s。. __ イ                  _
                {Ⅳ  `  .__ | ∧             r 、 ( \
                _.′        /V  ∨        { ∨r\  ` 、
              / \        ./ r〈  ‘、          ,  圦   ー }
             /: : : : \     .′∧ノ\ 〉≧s。.__   〉  Y>―‐ }
          . ィ(: : : : : : : : : 丶  i ∨ }ト、 \ : : :,  \ /  {_    |
      . ―一   ∨: : : : : : : : : :`弌./ { }|∧∨ }: : ∧   〈     { ̄ ̄ }
       .′        ∨ : : : : : : : : : : / 〈_,/:! }__ノ: : : :∧   /ヽ /  ̄ ̄ノ}
     :{  ̄  、    ∨ : : : : : : : : : \  j  ‘ ∨: : : :∧ {,八} {    / ./
     :{     \.  ∨ : : : : : : : : : : ≧〈   N: : : : : : }/ 〈__> ´  /
               ∨ : : : : : : : : : : : } \ |: 「 ̄ ̄ :|         ∧
       ∧           }: : : : : : : : : : : : :\/∨: |: : : : : :|       /} \
      ∧           丶 : : : : : : : : : : : : : 〈:O: ー―:|       /  /
.        ∧            、 : : : : : : : : : : : :‘,: : : :/⌒ヽ      ∠_ /|
         、          \: : : : : : : : : :_.。s≦ ̄ ∧  、  /      |
         ', \      / ̄、 }: : : : : : : : 〈     ′   >イ{        |
           ′     /     \: : : : :> ^∨     {    /  圦      ノ
            ',     /        }r  ´     ∨     .イ    \   /
         ′ /^\       ′      〉、   / ′      ̄
          、__ . イ\             . <:| \. イ: : ′
               ∨: \      . イ: : : : :|: : : :!: : {
               }: : : : \__. イ: : :l : : : : : | : : : :|: :∧ /
               }: : : : : : : : : : : : : l : : : : : | : : : :|: : : ∨ /


提督の会話安価
何を話そう?
↓1

23 ◆XFKJOt0a3Y:2014/05/18(日) 02:37:11 ID:2K2GBsuI

互いに自己紹介

24 ◆XFKJOt0a3Y:2014/05/18(日) 02:40:57 ID:2K2GBsuI
>>23 選択:自己紹介


提督「さて、大分遅れたが自己紹介をしようか」

提督「私が、この鎭守府を任された提督だ、よろしく頼む」

貴方は、朗らかな笑顔と共に挨拶をした

秘書艦の不知火は眉1つ動かさずに返答した

不知火「陽炎型三番艦、不知火です。ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いします」

まるで、事務的な挨拶である

だが、お互いのことを知る良いきっかけになっただろう


直後コンマ:不知火感情判定
1に近いほど無関心
9に近いほど信頼度上昇

25 ◆XFKJOt0a3Y:2014/05/18(日) 02:41:10 ID:2K2GBsuI


26 ◆XFKJOt0a3Y:2014/05/18(日) 02:47:29 ID:2K2GBsuI
>>25 判定:0 結果:特殊判定

不知火「………」

ただ、ふとした違和感を貴方は感じた

何故だろうか、不知火はずっと自分を凝視する

提督「私の顔に何か?」

貴方の言葉に我に返ったのか、不知火が目を離す

何かに戸惑っているような、そんな不安さを感じた

不知火「…提督に質問があります」

不知火「不知火のような粗忽者が、提督のお役にたてるのでしょうか?」

不知火「不知火は、自分が足手纏いになるのが…怖いのです」


提督「そんなことで不安を感じていたのか」

提督「私もまだ、新米提督で粗忽者だ」

提督「私の方こそ、不知火の足を引っ張るのではと二の足を踏んでいるよ」

不知火「そ…そんなことは…!」

提督「だからだ、不知火」

提督「粗忽者同士、互いに協力し合い、この鎭守府を誰もが認める程に立派にしよう」

不知火「…はい」


不知火信頼度急上昇

27 ◆XFKJOt0a3Y:2014/05/18(日) 03:50:25 ID:2K2GBsuI


1日目:開発

貴方は工廠へ向かう

工廠では、手のひらサイズの人間型の何かがせわしなく働いている

提督「これが、最高機密の一つか…」

工廠と人型の何か…妖精の存在に貴方は驚きを隠せない

妖精…正確な解析は出来ていないが、

彼女たちの存在が無ければ艦娘の運用は不可能だ

提督「今、話しかけてもいいかい?」

妖精は貴方に敬礼をして頷いた

提督「ここで、兵器の開発・艦娘の建造が出来るんだね?」

妖精「」コクコク

提督「とりあえず、兵器の開発を頼んでもいいかな?」

妖精たちは頷いた後、一斉に作業を開始する


直後コンマ:開発判定
9に近いほどレア度の高い装備

28 ◆XFKJOt0a3Y:2014/05/18(日) 03:50:36 ID:2K2GBsuI
はい

29 ◆XFKJOt0a3Y:2014/05/18(日) 03:52:28 ID:2K2GBsuI
>>28 判定:6 結果:成功

開発された装備を選択してください

1.12,7mm主砲
2.15.3mm副砲
3.61cm魚雷
↓1

30 ◆XFKJOt0a3Y:2014/05/18(日) 03:52:38 ID:2K2GBsuI



31 ◆XFKJOt0a3Y:2014/05/18(日) 03:54:24 ID:2K2GBsuI
>>30 選択:1


貴方は、妖精が開発した武器に目を見張る

こんな短期間で兵器を開発するとは…

貴方は、妖精に感謝の言葉を伝えると

妖精たちは照れながら敬礼で返した

妖精とは、協力的にならないといけない

貴方は、そう感じとった

32 ◆XFKJOt0a3Y:2014/05/18(日) 14:02:28 ID:2K2GBsuI

12.7mm主砲を不知火に装備します。

不知火の装備
1.12.7mm主砲
2.12.7mm主砲

1日目:建造


貴方は建造を試みることにした

開発資材はこれだけだろう

貴方は妖精に開発資材を提供した

提督「これで、出来るかい?」

妖精は頷いた


直後コンマ:建造判定
1に近いほど失敗
9に近いほどレア艦建造

33 ◆XFKJOt0a3Y:2014/05/18(日) 14:02:42 ID:2K2GBsuI
こい!

34 ◆XFKJOt0a3Y:2014/05/18(日) 14:03:04 ID:2K2GBsuI
>>33 失敗

成功するまでそい

35 ◆XFKJOt0a3Y:2014/05/18(日) 14:07:34 ID:2K2GBsuI
>>34 10の位で勘定

>>33 判定:2 結果:失敗


貴方は建造した結果を確認する

しかし、妖精が落ち込んでいるのを見るに、失敗したのだろう

貴方は指の腹で妖精の頭を撫でる

提督「落ち込まない、落ち込まない」

妖精は手に力を込めて、振り回す

次こそは成功させます!と言っているように見えた


>>34 判定:0 結果:ホロ艦建造


妖精が仁王立ちをしている

まるで、勝ち誇っているようだ

不知火「どうやら、強力な艦船が建造されたみたいです」


艦船選択(まずは数字を選択してください)
1.駆逐艦〜重巡洋艦まで自由安価
2.戦艦(更にコンマ判定)
3.潜水艦(自由安価)
↓1

36 ◆XFKJOt0a3Y:2014/05/18(日) 14:07:55 ID:2K2GBsuI



37 ◆XFKJOt0a3Y:2014/05/18(日) 14:10:23 ID:2K2GBsuI
>>36 選択:1 結果:駆逐艦〜重巡洋艦まで自由安価


建造した艦船を選択してください
自由安価
↓1

38 ◆XFKJOt0a3Y:2014/05/18(日) 14:10:37 ID:2K2GBsuI

あまつかぜ

39 ◆XFKJOt0a3Y:2014/05/18(日) 14:38:59 ID:2K2GBsuI
>>38 選択:天津風


建造完了を告げるブザーが鳴り響く

貴方は、胸を弾ませながら、待ちわびる

工廠の扉が開き、新たな艦娘が貴方の前に顕れる


???「いい風来てる? 次世代型駆逐艦のプロトタイプ!」

天津風「あたし、天津風の出番ね」

白く長い髪を靡かせて貴方の前に現れた艦娘

どうやら、駆逐艦のようだが、性能は驚くほどに高い

なんと言っても他の追随を許さない回避性能だ

天津風は貴方を一瞥した後、工廠の周りを眺める

天津風「ふーん、あんまり整ってないのね、ここ」

天津風「まぁ良いわ、私が活躍してもっと大きくしてあげるから!」


天津風から差し延ばされた手を貴方は握り返した

40 ◆XFKJOt0a3Y:2014/05/18(日) 15:23:58 ID:2K2GBsuI
1日目:出撃


貴方は、不知火と天津風を連れて出撃する

天津風「うーん!潮風は気持ちいいわ」

天津風ははしゃぎながら水上を航行する

不知火「そろそろ、偵察隊が敵を発見した海域に進入します」

不知火は、貴方の傍で目を光らせる

そして…

不知火「敵艦を発見しました」


今、貴方の初めての海戦が始まる…

ステータスを表示します
自艦隊:不知火*1 天津風*1
不知火ステータス:HP16 火力:+2 雷装:+1 回避:+0 対空:+1 運:0 索敵:0
天津風ステータス:HP18 火力:+1 雷装:+1 回避:+3 対空:+1 運:0 索敵:0

敵艦隊:駆逐イ級*1
敵ステータス:HP18 火力:0 雷装:+1 回避:0 対空:0 運:0 索敵:0


戦闘説明
昼戦では、砲雷撃戦を行います
コンマ:1-4は失敗
コンマ:5以上から成功
コンマ5以上の場合、火力補正を付けます
補正なしコンマ9以上の場合、クリティカル*2
補正ありコンマ9以上の場合、クリティカル*1.5
自力コンマ0の場合は、特殊判定とします


回避に補正値がある場合、敵砲戦に-補正を付けます
索敵に補正値がある場合、自砲戦に+補正を付けます

艦船にはサイズ補正が発生します。
駆逐VS駆逐の場合、サイズ補正なし
駆逐VS軽巡の場合、サイズ補正+1
駆逐VS重巡の場合、サイズ補正*1.5
駆逐VS戦艦の場合、サイズ補正*2
※空母・雷巡による先制攻撃は入手後、説明します


夜戦
夜戦時は、火力と雷撃の補正を付与します
また、クリティカルの使用が変更されます
補正なしコンマ9以上の場合、クリティカル*3
補正ありコンマ9以上の場合、クリティカル*2
※回避と索敵は変わりません

41 ◆XFKJOt0a3Y:2014/05/18(日) 16:59:12 ID:2K2GBsuI


直後コンマ:天津風砲撃判定
5以上で命中

42 ◆XFKJOt0a3Y:2014/05/18(日) 16:59:30 ID:2K2GBsuI
そおい

43 ◆XFKJOt0a3Y:2014/05/18(日) 17:03:18 ID:2K2GBsuI
>>42 判定:0 結果:特殊判定

クリティカルヒット!:(10+1)*3=33のダメージ

駆逐イ級 撃沈

天津風「逃がさないわ!」

天津風の連装砲から放たれた砲弾が敵駆逐艦を破壊する

一撃で機関部に命中したのか、爆破炎上する

天津風「あら、いいじゃない!」

一撃で沈めたことで天津風はご機嫌のようだ


※特殊判定により資材(レア)*1 資材*2を取得しました

44 ◆awHRzQ0C/g:2014/05/21(水) 04:24:11 ID:j0c4pcCs
ぬいぬい!
クーデレ!
戦艦並みの眼光!
スパッツ!!

45 ◆XFKJOt0a3Y:2014/05/21(水) 20:06:03 ID:SjXA7U9M


秘密の練習場がバレテーラ

┌───┬───┬───┬───┬───┐
│      │      │      │      │      │
│      │      │      │      │      │
└───┴───┴───┴───┴───┘

46 ◆XFKJOt0a3Y:2014/05/21(水) 20:12:26 ID:SjXA7U9M

領域を表す図

結構いい感じ?

┌───┬───┬───┬───┬───┐
│      │      │      │      │      │
│      │      │      │      │      │
├───┴───┴───┴───┴───┤
│      │      │      │      │      │
│      │      │      │      │      │
├───┴───┴───┴───┴───┤
│      │      │      │      │      │
│      │      │      │      │      │
├───┴───┴───┴───┴───┤
│      │      │      │      │      │
│      │      │      │      │      │
├───┴───┴───┴───┴───┤
│      │      │      │      │      │
│      │      │      │      │      │
└───┴───┴───┴───┴───┘

47 ◆XFKJOt0a3Y:2014/05/21(水) 20:48:32 ID:SjXA7U9M


数字を足してみた

┌───┬───┬───┬───┬───┐
│      │      │      │      │      │
│  A1. │  A2. │  A3. │  A4. │  A5. │
├───┴───┴───┴───┴───┤
│      │      │      │      │      │
│  B1. │  B2. │  B3. │  B4. │  B5. │
├───┴───┴───┴───┴───┤
│      │      │      │      │      │
│  C1 .│  C2 │  C3. │  C4. │  C5 │
├───┴───┴───┴───┴───┤
│      │      │      │      │      │
│  D1. │  D2. │  D3. │  D4. │  D5. │
├───┴───┴───┴───┴───┤
│      │      │      │      │      │
│  E1 . . |  E2   │  E3 . . |  E4   │  E5 . . |
└───┴───┴───┴───┴───┘

48 ◆XFKJOt0a3Y:2014/05/21(水) 22:57:40 ID:SjXA7U9M

AAEditer使ってもズレるのかー…

VIPとAAEditerの文字コードが解れば解決するのかな?

49 ◆XFKJOt0a3Y:2014/05/24(土) 02:11:14 ID:mhRWjz3w
┌───┬───┬───┬───┬───┐
│      │      │      │      │      │
│  A1. │  A2. │  A3. │  A4. │  A5. │
├───┴───┴───┴───┴───┤
│      │      │      │      │      │
│  B1. │  B2. │  B3. │  B4. │  B5. │
├───┴───┴───┴───┴───┤
│      │      │      │      │      │
│  C1 .│  C2 │  C3. │  C4. │  C5 │
├───┴───┴───┴───┴───┤
│      │      │      │      │      │
│  D1. │  D2. │  D3. │  D4. │  D5. │
├───┴───┴───┴───┴───┤
│      │      │      │      │      │
│ E1  |  E1  |  E1  |  E1  |  E1  |
└───┴───┴───┴───┴───┘

50 ◆XFKJOt0a3Y:2014/05/24(土) 04:29:16 ID:mhRWjz3w
┌───┬───┬───┬───┬───┐
│      │      │      │      │      │
│ A1  |  A2  |  A3  |  A4  |  A5  |
├───┴───┴───┴───┴───┤
│      │      │      │      │      │
│ B1   |  B2  |  B3   |  B4  |  B5  |
├───┴───┴───┴───┴───┤
│      │      │      │      │      │
│ C1  |  C2  |  C3  |  C4  |  C5  |
├───┴───┴───┴───┴───┤
│      │      │      │      │      │
│ D1  |  D2  |  D3  |  D4  |  D5  |
├───┴───┴───┴───┴───┤
│      │      │      │      │      │
│ E1  |  E2  |  E3  |  E4  |  E5  |
└───┴───┴───┴───┴───┘

51 ◆XFKJOt0a3Y:2014/05/24(土) 05:43:30 ID:mhRWjz3w
┌───┬───┬───┬───┬───┐
│      │      │      │      │      │
│ A1  |  A2  |  A3  |  A4  |  A5  |
├───┴───┴───┴───┴───┤
│      │      │      │      │      │
│ B1   |  B2  |  B3   |  B4  |  B5  |
├───┴───┴───┴───┴───┤
│      │      │      │      │      │
│  C1  |  C2   |  C3  |  C4  |  C5  |
├───┴───┴───┴───┴───┤
│      │      │      │      │      │
│ D1  |  D2  |  D3  |  D4  |  D5  |
├───┴───┴───┴───┴───┤
│      │      │      │      │      │
│ E1  |  E2  |  E3  |  E4  |  E5  |
└───┴───┴───┴───┴───┘

52 ◆XFKJOt0a3Y:2014/05/24(土) 05:44:47 ID:mhRWjz3w
┌───┬───┬───┬───┬───┐
│      │      │      │      │      │
│ A1  |  A2  |  A3  |  A4  |  A5  |
├───┴───┴───┴───┴───┤
│      │      │      │      │      │
│ B1   |  B2  |  B3   |  B4  |  B5  |
├───┴───┴───┴───┴───┤
│      │      │      │      │      │
│  C1  |  C2   |  C3   |  C4   |  C5   |
├───┴───┴───┴───┴───┤
│      │      │      │      │      │
│ D1  |  D2  |  D3  |  D4  |  D5  |
├───┴───┴───┴───┴───┤
│      │      │      │      │      │
│ E1  |  E2  |  E3  |  E4  |  E5  |
└───┴───┴───┴───┴───┘

53 ◆XFKJOt0a3Y:2014/05/24(土) 05:46:35 ID:mhRWjz3w
┌───┬───┬───┬───┬───┐
│      │      │      │      │      │
│ A1  |  A2  |  A3  |  A4  |  A5  |
├───┴───┴───┴───┴───┤
│      │      │      │      │      │
│ B1   |  B2  |  B3   |  B4.  |  B5   |
├───┴───┴───┴───┴───┤
│      │      │      │      │      │
│  C1  |  C2   |  C3   |  C4   |  C5   |
├───┴───┴───┴───┴───┤
│      │      │      │      │      │
│  D1  | .D2  |  D3   |  D4   |  D5   |
├───┴───┴───┴───┴───┤
│      │      │      │      │      │
│ E1  |  E2  |  E3  |  E4  |  E5  |
└───┴───┴───┴───┴───┘

54普通の名無しさん:2014/05/24(土) 11:19:58 ID:vV6DmyNE
┌───┬───┬───┬───┬───┐
│      │      │      │      │      │
│  A1 |  A2 |  A3  |   A4 |  A5  |
├───┴───┴───┴───┴───┤
│      │      │      │      │      │
│  B1 |  B2 |  B3 |  B4 |  B5 |
├───┴───┴───┴───┴───┤
│      │      │      │      │      │
│  C1  |  C2   |  C3   |  C4   |  C5   |
├───┴───┴───┴───┴───┤
│      │      │      │      │      │
│  D1 |  D2 |  D3 |  D4 |  D5 |
├───┴───┴───┴───┴───┤
│      │      │      │      │      │
│ E1   |  E2  |  E3  |  E4  |  E5  |
└───┴───┴───┴───┴───┘

罫線さえ揃っていればいいのなら全角半角混ぜちゃうとか

55 ◆XFKJOt0a3Y:2014/05/25(日) 17:37:24 ID:T5K4axcE


うおおまじっすか

こんな綺麗にできるのかー…

56普通の名無しさん:2014/05/25(日) 17:59:38 ID:FoXlJQoY
┌───┬───┬───┬───┬───┐
│      │      │      │      │      │
│  A1 |  A2 │  A3 │  A4 │  A5 │
├───┴───┴───┴───┴───┤
│      │      │      │      │      │
│  B1 │  B2 │  B3 │  B4 │  B5 │
├───┴───┴───┴───┴───┤
│      │      │      │      │      │
│  C1  |   C2 |  C3  |  C4  |  C5  |
├───┴───┴───┴───┴───┤
│      │      │      │      │      │
│  D1 │  D2 │  D3 │  D4 │  D5 │
├───┴───┴───┴───┴───┤
│      │      │      │      │      │
|  E1  |  E2  |  E3  |  E4  │  E5  |
└───┴───┴───┴───┴───┘

こっちの方が数字揃って見えるかな

57普通の名無しさん:2014/05/25(日) 18:04:19 ID:FoXlJQoY
┌───┬───┬───┬───┬───┐
│      │      │      │      │      │
│  A1 |  A2 │  A3 │  A4 │  A5 │
├───┴───┴───┴───┴───┤
│      │      │      │      │      │
│  B1 │  B2 │  B3 │  B4 │  B5 │
├───┴───┴───┴───┴───┤
│      │      │      │      │      │
│  C1  |   C2 |  C3  |  C4  |  C5  |
├───┴───┴───┴───┴───┤
│      │      │      │      │      │
│  D1 │  D2 │  D3 │  D4 │  D5 │
├───┴───┴───┴───┴───┤
│      │      │      │      │      │
|  E1  |  E2  |   E3 |  E4  |   E5 |
└───┴───┴───┴───┴───┘

何度もすみません、これで最後

58 ◆XFKJOt0a3Y:2014/06/02(月) 22:22:34 ID:Dwnieayc
                                           ...|   (. (,  ,r' 、 ´ ̄      `' ゙i_\               
     ______、__  ,  -=… ー  、 ))                .|    >  -ー      ゛'ア ‐- \.`l '、              
     |\_____≧>          ヽソ                 |   `          ゛'     ン、,   ゛'゙i.\                
     }:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/ / /        ` 、               | ,r'  ハ  .   `  、  \ ‐-  ,. ゙iV             
      }:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/ ./ /    /    i  ヽ              .| '   !   '. \ ‐ .,_  \  \ '., ,. ッ゙i' ,             
      .{:.:.:.:.:.:.:.:.:.:l ./  {    //   ハ ',               ..| ' .イ ! ゙i   ' 、\゛'-ー\. \' ゙i ,  ',r' ノ 〉               
      r=__;,;=- ":./   レ´,, ’V"メ ノ/ .ノ | ;  |              | ソ !  ゙i \  \゛>テ;:fハ\゙i ,゙il   \.lゝ              
     =」/:.:.:.:.:.:.:ノ    /仆乍ミ(/ ノ.ノ--l ノ | .!             ..|  (,,ト ゙iト, \ ゙i  ー´   ` )!\ ゙i   \i ` 、         
  /⌒:.:.:.:.:.:.:.:./    /  乂うォ   " f=ミ,レ,' ノノ ,            .|  、イ  !ソ)  ゛'       7二!,r'.゙i.゙i'、 '\'., '}            
./  /.:.:.:.:.:.:.//   人  ´`     {うjj //〈 j ヽ           .. | ,r' l.  !冫        ア二二マ T、 ゙i',_\ ゙i )           
| .// ',:.:.:.://  /.八ヘ         ,¨`l ~ トJ   ',           ..| ( !.  ト   =‐  ィ.,_)ニニマ_|_,r'_'l  ゙i.}             
|´ .| /}:.:.:´  ./ |ノ:.:.:.t ..、   −−  .ノ  .|U    。          ..| !、!.,  (,. \     )、-=ニ二二二二゙i   'l            
   レ  |/ { ./  ノ }:.:.:.}_   .        }   リ\   ¨^ゝ         ..|   (,!、. ゙i.'., \ /{二二二二二マ<77777777777777ィ,    
       V    /=イ ー--=z:'    ノ|  .ノ   }  / ゙ ,         .|    \ ' )-ー,r'三lニニニマ‐ハ,゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i   
          _ `´-<      ',---= ノ ノ 、   ,<            |      'l.!、-=二二!_マ゛=ニ∧゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i}  .
        , '      ’ 、ー liヽ  |"   ` 、   ヽ   丶       ..|       l二二 _-ニィ.,゛∧,゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i'!   
       /         \ /!!!iii:ト |  、   |\   。    、    ..|     、 ‐、ー-==ニ二二二{,゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙iV   
.       {           . V ヾミi」 ゙  , x,   |  ⌒《;ヘ     ,   ..|   /゙i>-=ニ二ニ=- .,_゛''-ニ゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙iV    
            y、   ≠⌒ミ丶 y "彡¨"ヽ,{   |i  ',   _,, -=-ァ |  ハ,゙iッニニニニニニニイ, '-゙i゙i゙il゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙iイr  .
       }    { !  // T゙ ` - .._}}´   ||. }T   |i   , 彡- ¨´  }....|  l゙iム二二二二二ニニニマ .ムィ, ゛'l゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i'l  .
       ,    ,  ,ノ/   |l     ,    .|l. , レ --・、  \___ノ .|  ム二二二二二二二二マ .ム二二'l゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i

59普通の名無しさん:2014/07/02(水) 14:37:13 ID:AnlFQkcA
彼等は、その生涯を一つの暗殺の為に消費する集団。
 その生涯の殆どを殺す技術の為に使い。
 その生涯の一瞬だけで、彼等の価値は失う。

 今日はその暗殺者がこの地にやってくる。

 聖杯戦争でアサシンを呼んだというのに、我が父は心配性だ。
 しかし無理もあるまい。実質アサシンは、遠坂時臣の指示下にあるのだから。
 そんな事を思いながら、礼拝堂にて暗殺者を待つ。

 礼拝堂の扉が開き、小さな足が踏み込まれる。

麗羅「こんにちは。山の上からやってきました。虚木麗羅です」

 そうして、現れた黒い少女は、なんと馬鹿げたことか。

 ―――私の娘と変わらぬ歳の少女であった。

 その少女の黒い瞳に、言峰の姿が映る。
 黒い瞳は、まるで言峰綺礼を呑み込むかのように捉えていた。

          ◇

 冬木市の藤村組の前に、衛宮切嗣と衛宮士郎はいた。

切嗣「すいません。士郎の事をしばらくお願いします」

 衛宮切嗣は組長である藤村雷画に頭を下げる。

大河「いえいえ、構いませんよ! 士郎もうちの家族みたいなものですから!」

 そう答えるのは雷河の孫娘である大河である。

切嗣「ありがとう、大河ちゃん。僕たちも安心して病院に行けるよ」

大河「それ程でも〜! ……でもですね、切嗣さん」

 花の様に笑っていた大河が、真面目な顔付で語りだす。

大河「私達は士郎を預かるのは構わないんです。けど、本当に士郎を連れていけないんですか?」

大河「折角の妹が生まれるのに」

 そう言って、車に乗っている妊婦のアイリスフィールを見る。
 そのお腹には赤ん坊が宿っている。

 切嗣は自分達が病院に行っている間、養子の士郎を頼みたいと頼んでいるのだ。
 これは前から話していたことなのだが、出産程度なら士郎も連れていけないかと、大河は思っているのだ。

切嗣「それに関しては、本当にすまないと思っている」

切嗣「でも、アイリは体が弱くてね。これから忙しくなるし、士郎の世話も出来そうにないんだ」

大河「そうなんですか……」

 しょぼん、と落ち込む大河。

士郎「爺さんは安心して行って来いよ。家を俺が守っておくから!」

 幼いながらも胸を張って拳を握る。

切嗣「士郎が守ってくれるなら安心だ。僕たちも安心して病院に行けるよ」

 士郎の頭を撫で、車の運転席に乗る切嗣。

切嗣「それじゃあ、後はよろしくお願いします」

大河「任せて下さい!」

 藤村組の面々が礼をして切嗣とアイリを送る。
 士郎も手を振って自分達を送り出してくれた。
 切嗣はそれをみると、車を発進させた。

アイリ「……幸せね。切嗣」

 送り出してくれる人たちを眺めながら、後ろにいるアイリが呟く。

切嗣「ああ、僕たちは幸せだよアイリ」

切嗣「この幸せは、いつまでも続くんだ」

 アイリスフィールは聖杯だ。
 サーヴァントが脱落していくたび聖杯として機能し、人としての機能を失ってしまう。
 つまり、アイリが聖杯としての機能が働くたび、お腹にいる赤ん坊の命が危険にさらされるという事だ。

 妻の為、息子の為、娘の為に、事前に聖杯戦争を潰そうとしていた切嗣。
 その努力は実らず、聖杯戦争は開始されてしまった。

 これから始まる聖杯戦争は、できるだけ長期にわたってサーヴァントと渡り合わなければならないという、辛い条件が付きまとう。
 しかし、衛宮切嗣はそれでも構わない。

 どれだけ苦難が待ち受けていようと、それが家族の幸せの為なのならば、彼は越えて見せる。
 既に衛宮切嗣は、万を切り捨て一を救う『家族の味方』なのだから――――。

          ◇

 始めに言っておこう。
 この物語に救いは無い。
 最後に笑うのは、赤い瞳を宿す黒い少女と目覚めた神父。

 これは、大義の物語。

60 ◆K7pqbvuGjs:2014/07/02(水) 14:44:12 ID:AnlFQkcA
前に愉悦三次創作書くとか戯言言っていた者です。
オリジナル設定が多くなってきて、自重してましたが、最近スレが賑わなくて、プロローグを投下してみた。
反省はしてるし後悔もしてる。
好評ならまた投下したいなと思ったり。

P.S.
ちなみに黒い瞳は誤字にあらず。
後で赤くするからいいんだよ!

61 ◆K7pqbvuGjs:2014/07/06(日) 22:00:14 ID:nQJjkgfE
 言峰璃正は早速山猫である虚木玲羅に仕事を与えた。

 聖杯戦争の参加者を暗殺せよという、あまりにも単純で至難な仕事を。

 それには条件が付いていた。


 第一に、その存在を遠坂時臣に知られてはいけない。
 第二に、遠坂時臣と言峰綺礼を傷つけてはいけない。
 第三に、聖杯であるアインツベルンの守り手を言峰教会に連れて来い。
 第四に、魔術師殺しの暗殺を重要事項と考えよ。
 第五に、言峰璃正と言峰綺礼の命令は絶対である。


 条件を聞いて、虚木麗羅はコクコクと頷く。

 その姿を見て、綺礼はその少女が心配でたまらなかった。

 それも無理はあるまい。何せ四歳に満たないと思われる幼い少女だ。


 しかし、綺礼が心配しているのはそれだけではない。


 虚木麗羅は、あまりにも無機質なのだ。

 花を見ても笑みを浮かべず、蝶を見ても追いかけようともしない。

 その点だけで見れば、虚木麗羅は自分と変わらない人間だ。

 暗殺者の里では、自分の様な人間が暗殺者に適しているとでも言うのか。

 綺礼にはそれが不思議で堪らなかった。

62 ◆K7pqbvuGjs:2014/07/06(日) 22:01:41 ID:nQJjkgfE

 虚木麗羅はアサシンたちが情報を集めるまで、言峰教会で隠す事となった。

 アサシンの一人にアーチャーを暗殺してくるように命じ(実際はアサシンが落ちたと思わせるための茶番)、虚木麗羅の元へ向かう。


 何でも、暇つぶしの相手になってほしいのだとか。


 綺礼は虚木麗羅のいる部屋の扉を開いて中に入る。

 部屋にはベッドで寝転ぶ虚木麗羅が待っていた。

 それを一瞥すると、綺礼は溜息を吐く。

綺礼「暇つぶしの相手とは……貴様それでも暗殺者か」

麗羅「つまらなくて死んじゃいそうなの」

 虚ろな目で答える少女に、綺礼は戸惑いを覚える。

 彼女の黒い目は、どこまでも深い闇を連想させるのだ。

 山の上の一族というのは、ここまで人間性というモノが無いのか。

綺礼「暇なら聖書でも与えるが?」

 しかし、相手は子供であると同時に暗殺者だ。

 丁重に扱わなくてもいいだろうと、懐から聖書を取り出す。

麗羅「四歳の子供が、文字が読めると思う?」

綺礼「…………それもそうだな」

 それにしては随分と大人びていると思う。

 いや、ただ形式的な物事を真似ているとでもいうのか。

 それすらも、言峰綺礼には理解することができなかった。

63 ◆K7pqbvuGjs:2014/07/06(日) 22:03:27 ID:nQJjkgfE


麗羅「綺礼君は何で聖杯を自分の手にしようと思わないの? アサシンのマスターなんでしょ?」

 質問を投げかけてくる虚木麗羅。

綺礼「生憎、私には叶えようと思う願いが無くてな。聖杯など必要ないのだ」

綺礼「故に、我が師の為にこの聖杯戦争に参加している」

 本当は、それだけではない。

 だがそれは、別に言わずとも良いだろうと綺礼は考えた。

 自分に似通った点があるとはいえ、暗殺者である前に子供。

 そんなモノに自分の苦悩が理解できるとは思えない。

麗羅「その師のお願いってなに?」

綺礼「魔術師であるお前には関係のないことだ。 私は忙しい身でな、今日はこの辺にしておこう」

 そう言い放ち部屋から出ようとする綺礼。

 が、扉が開かない。

 確かにドアノブは反応しているのだが、引く事が出来ない。

 立てつけが悪いのかと思い、力づくで引っ張る。

 鈍い音を立てて、ドアノブだけが取れてしまった。

 仕方がない、ぶち破るかと思っていた所。

麗羅「酷いわ綺礼君。レディ相手に素っ気ない」

 突如、声が自分の下から麗羅の声がした。

綺礼「……どういうことだ」

 麗羅の姿を見ようとする前に、飛び退いて戦闘態勢を整える。

 この時、言峰綺礼という男は驚いていた。

 ――――なぜこの少女は、自分が気付かずにあそこまで近づいたのか?

 言峰綺礼という男は、かつて数多の戦場を潜り抜けていた。

 故に、人の気配というモノには敏感だ。

 だというのに、虚木麗羅が自分の足元にいたにも拘らず、声がするまで気が付かなかったのだ。

 そして、扉が開かなかったのは彼女が押さえていたからだろう。

 単純な力比べで、言峰綺礼という男が四歳の少女に負けるのは、初めてであった。

 恐らく、これが暗殺者たる彼女の力の一端なのだ。

 扉の下で首を傾げている少女を見ながら、綺礼は恐れながらも安心した。

 自分が虚木麗羅の依頼する者で良かったと。

 これが戦場でこの少女と敵対していたら、間違いなく死んでいた。

64 ◆K7pqbvuGjs:2014/07/06(日) 22:06:13 ID:nQJjkgfE

麗羅「そんなに怖がらなくてもいいじゃない。綺礼君ったら怖がりね」

 虚ろな目で、綺礼の目をの目を覗き込む。
 まるで自分を見通す様な黒い瞳に、戸惑いを覚える。

綺礼「……貴様は本当に子供なのか? それとも、山の上の一族は皆こういった者なのか」

麗羅「子供よ? 将来に夢を持つ子供。表情筋は生まれつき」

綺礼「消耗品である暗殺者だというのに、将来に夢を持つだと?」

 麗羅の言葉を鼻で笑いとばす綺礼。

綺礼「下らん、この仕事が終われば貴様は死ぬ運命にある。 だというのに、お前は何を望むというのか?」

 その言葉に、麗羅はいとも簡単に返す。

麗羅「さあ?」

 ただし、疑問形でだ。

綺礼「何だ。自分の事も分からないのか」

麗羅「それは綺礼君も同じでしょ?」

 麗羅は黒い瞳で、まるで魔眼の力でも持っているかのように引き込んでくる。
 吸い込まれてしまいそうな瞳に、綺礼は懸命に眼を逸らす。

綺礼「……一体何のことかわからんな」

麗羅「願いが無いって言ったのは綺礼君でしょ? それとも、別の何かを悩んでいたりするの?」

綺礼「どちらにせよ、お前には関係のないことだ」

 壊れた扉を力づくで外し、部屋から出ようとする綺礼。

麗羅「お願い、見つかるといいね」

 麗羅はそう声をかけたが、綺礼は構わずアサシン達の元へ向かった。

 アーチャーに殺されるようにと、躍らせる為に。

65 ◆K7pqbvuGjs:2014/07/06(日) 22:09:33 ID:nQJjkgfE

――――

―――――――――――

――――――――――――――――――

 ある日の夜、アサシンがアーチャーによって脱落した。

 使い魔によってその光景をみたマスター達は、誰もがそう思った。

 それをまず知ったのは衛宮切嗣。

 夜の道を走り抜けながら、焦っていた。

切嗣「……まさか、もうサーヴァントが一騎落ちてしまうだなんて」

セイバー「落ち着いてください切嗣。まだアイリスフィールに負担はありません。まだお腹の赤ん坊は大丈夫でしょう」

 落ち込んでいる切嗣に、助手席にいるセイバーが慰めの言葉をかける。

 彼女の真名はアルトリア。ブリテンの伝説の英雄・アーサー王その人である。

 そんな英雄が女だとは驚いた切嗣だが、今はそうもいっていられない。

 騎士王なら人情もあると思い、こちらの状況をざっと話した。

 この聖杯戦争を勝ち抜くつもりはあるが、子供が生まれる前にサーヴァントが脱落するとますい、という事を正直に話した。

 自分の娘の為の行動と聞き、この騎士王様は納得してくれたようだ。

セイバー「切嗣、ライダーとキャスターを除けば、他のマスターの拠点は掴めているのですね?」

切嗣「ああ。その二つ陣営がどこにいるか、僕には見当もつかない」

セイバー「……赤子が生まれるまで、停戦をしてもらうように教会に相談してみてはどうでしょう?」

切嗣「いいや無理だね。魔術師っていうのは、僕たちの赤ん坊の命なんざどうとも思わない。それに教会は信用ならないよ。何せ、言峰綺礼がいるからね」

 言峰綺礼や他のマスターの資料をセイバーに渡し、切嗣は溜息を吐く。

切嗣「こいつは誰よりも激しい生き方ばかりを選んできたくせに、この男の人生には、ただの一度も『情熱』がない」

切嗣「こいつは――――きっと、危険なヤツだ」

切嗣「アサシンを失ったからといって、きっと他に何か手があるに違いない。教会で保護してもらうなんて、全くとんだ安全地帯を見つけたもんだ」

切嗣「監督役を殺そうとするヤツがいない限り、奴の安全は保障されたも当然だと言える」

 ここまで居場所も目的も予測できているというのに、殺すことが出来ないのはもどかしいにも程がある。

 いままでのやり方が出来ないとは分かっていたが、まさかここまでとは思わなかった。

セイバー「なるほど。では、赤子が誕生するまで、他のサーヴァントの戦闘する最中に割り込まなければならないという事ですね」

 難しい顔をして、セイバーは資料を読んでいく。

切嗣「ああ、更に生かさず殺さず。……出来るかい?」

セイバー「……流石に難しいでしょうね。しかし、相手も序盤は引き際を理解しているはず」

セイバー「そう考えると……相手にもよりますが、おそらく一週間は何とかなるかと」

切嗣「……一週間か」

 それはキツイ。
 アイリの出産予定日は二週間後だ。
 ここまでマスターが揃えばそうなってしまうのもおかしくはない。

 帝王切開を視野に入れるべきか。
 しかし、それは不味い。
 聖杯であるアイリに手を加えるのは、母体にあまりにも危険すぎるのだ。
 この戦いが始まってしまった今、止めることは叶わない。
 アイリが聖杯になってしまうのなら、そのアイリを元に戻せるのも聖杯だけ。
 そういった意味でも、そんな危ない橋を渡ることは出来ない。

切嗣「でも、まずは――――」

 目的地に着き、セイバーと切嗣は車からに降りる。



切嗣「――――あのサーヴァントを何とかしなければ」


.

66 ◆K7pqbvuGjs:2014/07/06(日) 22:11:47 ID:nQJjkgfE


 ――――その地で待っていたのは、二本の槍を携えたサーヴァントであった。


 槍を持っているという事は、ランサーで違いないだろう。

ランサー「――――よくぞ来た。 今日一日、街を練り歩いて過ごしたモノの、どいつもこいつも穴倉を決め込むばかり」

ランサー「俺の誘いに応じた猛者は、お前だけだ。その闘気、セイバーとお見受けしたが如何に?」

 恐らく、セイバーに対し言ったのだろう。

 だが切嗣は、セイバーの前に出てランサーに問いかける。

切嗣「君、一人かい? マスターはどこにいるのかな?少し、君のマスターとお話がしたいんだけどね」

ランサー「……俺はそこにいる者と話している。割り込まないでもらいたい」

切嗣「それはすまないことをした」

切嗣「けど、君が僕のサーヴァントに用があるように、僕も君のマスターに用があるんだ」

切嗣「君はそんな事を言うんだから、そのマスターも穴倉を決め込んでるわけじゃないと思うんだけどね」

ランサー「話すと思うか?」

 ランサーの言い分はもっともだ。

 敵にこちらの情報を教える等、デメリットでしかない。

切嗣「なるほど。さぞ名高い騎士とお見受けしたが、どうやら外れらしい」

切嗣「正々堂々と公正な手段を取れないなんて、よっぽど蛮族に近い英霊だ」

切嗣「ん? こういう時は、反英霊って言った方がいいのかな、セイバー?」

セイバー「……マスター、私のクラス名を晒してどうするのです」

切嗣「相手は予想がついている様だし、構わないだろう」

切嗣「それに、君がその程度の事を知られただけで、負ける英霊だとは思っていないよ」

セイバー「――――ええ、そうですね」

 少し不機嫌になってしまったなら、 褒めれば/飴 を与えれば いい。

 何ともまあ扱いやすいサーヴァントだ。

ランサー「――――その程度の挑発に、俺が乗ると思っているのか?」

 微かに怒りの感情が籠った声で、槍を切嗣に向けるランサーと思わしきサーヴァント。

切嗣「いやいやすまない。騎士ってそういうモノかと思っていたんだ」

切嗣「人を殺して胸を張るなんて、バカここに極まり、といった所じゃないか」

 ハ、と鼻で笑いながら、やれやれと肩を落とす切嗣。

セイバー「……切嗣、私は分かっていますが、それは全ての英霊を敵に回す発言なので、注意してください」

切嗣「ああ、すまないね。気を付けるよ」

 敵を煽り、冷静な判断を出来るだけ削ろうという魂胆なのだろう、とセイバーは考えている。

 それはそれで事実ではあるが、紛れもない切嗣の本心だ。

 切嗣がセイバーにそんな事を言わないのは、何の得にもならないからである。

セイバー「ともかく、あのサーヴァントは私にお任せを。切嗣は姿の見せないマスターに警戒してください」

切嗣「くれぐれも、あのサーヴァントは落とすなよ。セイバー」

セイバー「承知の上です。しかし切嗣、貴方も出来れば話し合いで解決していただきたい」

セイバー「流石に同じ相手に何度も武器を交えると、こちらの手も予測されてしまう」

切嗣「そうだね」

 できればマスターをねじ伏せて、令呪でランサーに停戦を強制させたい。

 戦いから離れた自分では、些か無理があるかもしれないが。

 舞弥からの情報から目を通せば、相手は生粋の魔術師なので、簡単にねじ伏せられるだろう。

 ……いきなりそんな手段で出ては、他のマスターに警戒されてしまうので、まずは話し合いの交渉にした方がいいかもしれないが。

.

67 ◆K7pqbvuGjs:2014/07/06(日) 22:12:53 ID:nQJjkgfE

 切嗣は詠唱を二つ呟くと、素早い動きで姿を消した。

 あまりにも突然で素早い動きだったので、ランサーは反応に遅れてしまった。

ランサー「先程の会話を聞けば、お前たちは俺を倒さずにマスターを狙う、そう言っているのか?」

 槍使いのサーヴァントの問いかけに、セイバーは苦い笑みを見せる。

 先程の発言からすれば、そう聞こえるだろう。

セイバー「色々と誤解をしていそうだが、まず初めに言っておく。この聖杯戦争の停戦を提案しに来ただけだ」

ランサー「残念だが、それは約束出来ん。我が主は武功を望んでいるからな」

セイバー「……そうか」

 残念そうに顔を伏せるセイバー。

セイバー「ならば――――動けなくなる程度に斬り伏せてくれよう」

ランサー「やれるものならやってみろ。――――セイバーのサーヴァントよ!」



 ――――一本の剣と、二本の槍が、今交わる。


.

68 ◆K7pqbvuGjs:2014/07/06(日) 22:16:41 ID:nQJjkgfE
今日はここまで。
というか、ここから先の展開は原作と大体同じです。
セイバーが手に致命傷を負って、ライダーが勧誘にやってきて、後はなんかごっちゃごちゃ。

ただし、原作切嗣の役割は全部舞弥がやってる。超頑張ってる。
アイリさんにはお城にて、護衛とお世話担当のホムンクルスがいるから大丈夫。

69 ◆K7pqbvuGjs:2014/07/08(火) 23:22:43 ID:YeNr5gUc

 数時間後の、更に夜遅くの事。

ハサン「ランサーと交戦したセイバーは、左手に言えない傷を負いました」

ハサン「恐らくは、ランサーの宝具の効果だと思われます」

ハサン「そのまま戦闘が続行されようとしたが、ライダーの介入によって戦闘は中断」

ハサン「その時、ライダーがかの征服王イスカンダルであると本人が明言しました」

ハサン「ライダーの呼びかけによりアーチャーとバーサーカーも集結しますが、些細な争いが起きました」

ハサン「その後の負傷は、誰もが大したことが無い模様です」

 それは、ハサンを通して綺礼たちは伝えられた全ての情報。
 正確にいえば、アサシンは脱落してはいなかった。
 アサシンの宝具で、ハサンは個ではなく群になることが出来るのだ、
 生前の多重人格を原典とした宝具「妄想幻像(ザバーニーヤ)」によって、複数の個体として活動できる。

麗羅「ハサンの宝具って、マスターの居場所さえわかれば全員殺せるんじゃないの?」

 誰もが思うであろうことを、泰山の麻婆豆腐を食べながら麗羅は呟いた。

綺礼「私は聖杯を求めていないから、そこまでして勝ちを取りに行こうとは思わん」

綺礼「それに他のサーヴァントも無能ではない。そうそうマスターの寝首はかかせてはくれんだろう」

 同じく泰山の麻婆豆腐を食べながら、ハフハフと口に麻婆豆腐運びながら綺礼は答える。


 何故泰山の麻婆豆腐を教会で食べているのかと聞かれれば、無論食したいからだ。

 教会に保護されているという建前の為、出前を取ってみた。


 二人は食べ終わると、皿を言峰教会の玄関前に置いて部屋に戻る。

 綺礼は初めて出前を取ったのだが、素晴らしいと感心していた。

 頼んだらすぐにやってくる。食べたら後で皿を回収しに来るときた。

 そのサービス精神は、聖職者である自分も学ぶべき点があるだろう。

麗羅「綺礼君綺礼君、お話の続きをしない?」

 食べ終わると、麗羅が口を開く。

 普段は無口な少女なのだが、時折子供の様に質問をしてくる。

 ……ああ、そういえば子供だった。

綺礼「聖杯戦争の事か? 私には左程興味が無いと言っているだろう」

麗羅「でもさっき、王様と一緒にお話してたでしょ?」

 王様という言葉に、綺礼は目を見開いた。

綺礼「……麗羅、貴様はどの王様の事を言っている?」

麗羅「もちろん、英雄王の事だよ。綺礼君」

綺礼「あれを聞いていたのか……」

 はあ、とため息を吐く綺礼。

 この麗羅が言っていることは事実だ。

 自分の魔術の師である時臣のサーヴァント、アーチャーである英雄王。

 その会話を、この少女に聞かれてしまったのだ。

綺礼「別に、愉悦だのなんだの言われただけに過ぎん。気に止める事は無いだろう」

麗羅「ああ、そうなの」

 ただ話題に上げただけなのか、麗羅はつまらなそうに返した。

麗羅「まあ綺礼君の愉しみが分かったら、私に教えてよ」

綺礼「別にそれは構わないが、貴様はどうするつもりだ?マスターの情報が着々と手に入っているが?」

麗羅「私もただの暗殺者だし、貴方達が命ずれば今すぐにでも行くけど?」

 黒い瞳で綺礼を見つめる麗羅。

綺礼「……そうか。いつお前を動かすかは、考えておこう」

 なれたように、綺礼は目をそらした。

.

70 ◆K7pqbvuGjs:2014/07/08(火) 23:25:21 ID:YeNr5gUc

 その頃、アインツベルン城にて、衛宮切嗣は頭を抱えていた。

セイバー「……すいません、切嗣」

切嗣「いや、一夜を乗り切った。それだけでも十分助かる。ありがとう、セイバー」

 まさか、こんな呪いを持つサーヴァントがいるとは思わなかった。

 ランサーと戦い続けていれば見事撃破し、呪いも解くことができるであろう。

 しかし、それはサーヴァントが一騎落ちるという事になる。


 それを衛宮切嗣は望まない。

 アイリに負担が、大きくなり、人間としての機能が失っていく。

 既に一騎落ちているのだ。これ以上は何としてでも阻止しなくてはならない。

 正直あの場面で真名を名乗るバカなライダーが出てきてくれて助かった。

 こちらの戦闘力が格段に落ちてしまったが、サーヴァントが落ちてしまうよりは良いだろう。

セイバー「ランサーとは同盟が組めそうにはありませんね。ランサー自身は協力してくれそうですが……」

切嗣「ああ、あのマスターの性格は典型的な魔術師のソレだ。アイリやイリヤの事なんて、気にも留めないだろうね」

セイバー「……ライダーの傘下に入るかどうかはともかく、同盟はした方がよかったかもしれません」

切嗣「ああ、多少は正直あの時は時間が欲しかったね」

 聖杯を譲る気はさらさらないが、同盟を結んでおけば二騎落ちることを阻止できる。

 カリスマのあるライダーの事だ。きっとアイリ達の事を考慮してくれることだろう。

 あのマスターはへっぴり腰だし振り回されているので、有って無いに等しい存在だ。

 ……そんなマスターだが、居場所が未だに割り出せないのは褒めるべき点だろう。

セイバー「……申し訳ありませんでしたマスター」

 そう考えていたら、セイバーが落ち込んでいた。

 アホ毛までシュンと萎れてしまっている。

セイバー「アイリスフィールの事を考えればあそこで同盟を組んでおくのが得策」

セイバー「ましてや私は負傷の身。もっと考えて行動をするべきでした……!」

 一生の不覚と言わんばかりにその場に崩れ落ちるセイバー。

 侍ではなく騎士であるセイバーだが、このままでは切腹しそうだ。

切嗣「いや、何もセイバーが悪いってわけじゃない」

切嗣「君の戦いにおいての判断は的確だし、ライダーのマスターは師の聖遺物を盗むような奴だ」

切嗣「信頼における相手とは言えないし、よかったんじゃないかな」

 士郎を引き取って育ててきたためか、落ち込んでいる様を見ると励ます癖が付いてきてしまった。

 対応が子供に対するお父さんになってしまうのは仕方がないと言える。

.

71 ◆K7pqbvuGjs:2014/07/08(火) 23:29:54 ID:YeNr5gUc

 そこで切嗣、何かを思い出し、袋を取り出す。

切嗣「そうだ。ハンバーガーを買ってきたんだ。食べるかい?」

 袋の中からは、香ばしいジャンクフードのにおいが漏れ出てきた。

 セイバーは、口元をおさえながら切嗣を睨みつける。

セイバー「切嗣、私が食べ物で釣られるとでも思っているのですか?」

セイバー「ましてやそのような雑な料理で私のご機嫌取りとは、腹立たしいにも程がある!」

セイバー「私の機嫌を取りたいなら『ガー』ではなく『グ』を持ってきなさい!」

 色々と矛盾しているセイバーの発言。

切嗣「がーん! セイバーまでそんな事を言うのか!」

切嗣「士郎にはジャンクフードを食べてはいけないと言われ、アイリには口に合わないと言われる始末……!」

切嗣「味方は舞弥だけなのか! いいじゃないかジャンクフード!」

切嗣「まずは照り焼きバーガーを一度食すんだ! 話はそれからだ!」

セイバー「く! 私はそんな誘惑には負けません! ざ、雑な料理など、おいしいわけがない!」

 実はセイバーが手傷を負った後、二人の前にキャスターが訪ねて来たのだが。

 今の二人の前では些細な事であった。

          ◇

アイリ「あらあら、二人とも元気ね」

 その会話を隣の部屋でクスクスと笑っているのはアイリスフィールである。

舞弥「ええ、全くです」

 それに同意するのは舞弥。

 在り方の違いで険悪な仲になってしまわないかと一度は心配したりもしたが、それも杞憂の様だった。

アイリ「お腹の赤ちゃんは、ジャンクフードが好きだと良いわね」

舞弥「マダム、かといってジャンクフードをたくさん分け与えてはいけませんよ。栄養バランスが偏ってしまいますから」

アイリ「もちろん。ちょっと切嗣がかわいそうだから、味方が一人くらいいた方がいいんじゃないかって、思っただけ」

舞弥「そうですか」

 二人は切嗣とセイバーの会話を聞きながら、楽しく談笑に耽る……はずだった。

          ◇

 ハンバーガー戦争の結果、うまいけど雑すぎる! というセイバーの前に、衛宮切嗣は敗北した。

 何がどう敗北したとか、深いことを考えてはいけない。

切嗣「……それは置いておいてだ。 一番の問題はキャスターだ」

 こんな茶番をしている暇ではなかった。

 ランサーや他の英霊たちが集り、帰宅の途中ジ・ルド・レイという英霊の妄言に付き合わされたのだ。

セイバー「ええ、私をジャンヌという英霊と間違えていたようですね。……臣下に間違えられるとは、ジャンヌという英霊も報われない」

切嗣「いや、むしろ報われないのは君の方だよセイバー。ジャンヌという英雄は実在するが、僕から言わせてみれば、あれはチアリーダーみたいなものだ」

切嗣「君みたいに前線では戦っていない、フランスの英雄だよ」

セイバー「そうなのですか?」

切嗣「まあ、最期には変な責任を負わされて、民衆の前で焼かれた女の子だけどね」

 切嗣のジャンヌの知識はその程度だ。

セイバー「……成程。ならあのキャスターの変貌ぶりも分かるような気がする」

 ふむふむと頷くセイバー。

切嗣「あのキャスターはジル・ド・レェと名乗っていたな」

切嗣「ブラフにしては随分マイナーな英雄だし、君への執着ぶりから見ても本当の事だろう」

切嗣「よくやったセイバー。いい情報が手に入ったぞ」

セイバー「別段、私が何かをしたわけでもありませんが……この時ばかりは自分が女だという事に感謝するとしましょう」

 その時、部屋の扉が開き、舞弥が入ってきた。


舞弥「マダムから報告です」

切嗣「どうした?」



舞弥「――――キャスターが、こちらに向かって来ているとの事です」


.

72 ◆K7pqbvuGjs:2014/07/08(火) 23:36:24 ID:YeNr5gUc

 すぐさま重火器を手に取り、戦場に立つ男の顔になる切嗣。

切嗣「行くぞセイバー」

セイバー「対応のほうはどうしましょう?」

切嗣「生け捕りがいいが……あれだとまともな精神を持っちゃいない」

切嗣「追い払うだけでも構わないが、最悪殺してもいい」

セイバー「わかりました」

 鎧を身に纏い、セイバーは立ち上がる。

 そこにはもう、先ほどのような空気はなかった。

          ◇

 セイバーがキャスターと交戦している頃。

 綺礼も同じくアインツベルンの森にやってきていた。

麗羅「……早速お仕事ね」

 正確には、アインツベルンの森を走る綺礼と麗羅だ。

 麗羅は寒いといって、フード付きの黒いコートを着て来ている。

 四歳児には大きなもので、手は出ておらず、足もようやく見えるといった物だ。

綺礼「私と衛宮切嗣の邪魔をさせぬよう、この辺りにいるマスターを殺して来い」

麗羅「うん、いいよ。綺礼君は自分の答えを教えてもらいなよ」

 そういうと麗羅は姿を消していた。。

 恐らく、キャスターの方に行ったのだろう。

綺礼「……さて、一人くらいは落としてくれよ?」

 綺麗は溜息を吐くと、森の中を疾走していった。

          ◇

 ケイネス・エルメロイ・アーチボルトは、アインツベルンの森の中を歩いていた。

 彼は時計塔の優秀な魔術師であり、ランサーのマスターだ。

 自分の経歴に『戦歴』という『箔』をつけるためにこの聖杯戦争に馳せは参じた魔術師でもある。


 彼はこう考えた。

 魔術師たちに恐れられている『魔術師殺し』を倒したとなれば、自分の『箔』もさぞ良いものになるであろう。

 その為、『魔術師殺し』の拠点たるアインツベルンの城までやってきたのだ。

 ……別段、自分の婚約者に尻を叩かれてわけでは決してあるまい。

「た、助けて」

 震える少女の声がした。

 振り向けば、黒いコートに身を包んだ少女が、こちらに走り寄ってくる。

 その少女に対してケイネスは優しく囁いた。

ケイネス「――――Scalp≪斬≫」

 自分のすぐさま水銀が展開され、少女に切りかかる。



 どうせ魔術師殺しが罠にでもと仕掛けた子供だろう。

 なら、排除しておいた方が得策だ。


 だが、思いもよらない出来事が起きた。

 水銀が襲い掛かるよりも早く、ケイネスの前に現れたのだ。

ケイネス「――――な!?」

 ケイネスが反応するよりも早く、まだ残っている水銀が少女を打倒すべく襲い掛かった。

 そう、ケイネスの水銀――『月霊髄液ヴォールメン・ハイドラグラム』は自動で術者を守る、一級品の魔術礼装なのだ。

 ――――何だかよくわからんが、これで終わりだ!

 ケイネスが勝利を確信したその時。

 少女が手を振るい水銀があっけなく弾け飛んだ。

麗羅「――――脆い」

 この礼装にはケイネス自身知りえない幾つか弱点があった。

 その一つが、瞬間的に水銀の圧力を超えるだけの威力がある攻撃を撃ち込まれてしまえば、簡単に突破されてしまうという事であった。


 勿論、少女がそんな事を知る由もない。

 ただ単に、少女は己の技と力で振り払ったに過ぎないのだから。

ケイネス「―――がハァ!?」

 そのまま、首根っこを掴み、時速300キロで近くの木に頭を叩きつける。

 この時、ケイネス・エルメロイ・アーチボルトの命は絶たれた。

 麗羅はケイネスを投げ捨て、助走をつけて思いきりその頭を踏み潰す。

麗羅「つまらない」

 だが、それで器《心》が満たされる事は無い。


 里で縊り殺した暗殺者でもまだ足りない。

 この程度の魔術師を殺しても、まだ足りない。

 無機質な少女は、人を殺しても殺シテもコロしてモ――――

麗羅「――――ハ」

 虚木麗羅は、無意識に息を吐く。

 自分に溜まった毒を吐くように。


 決して満たされる事はない。


 自分が満たされるモノ。

 自分が探し求めるモノ。

 それは、どこにあるのだろう。


 今考えても答えは出ない。


.

73 ◆K7pqbvuGjs:2014/07/08(火) 23:38:31 ID:YeNr5gUc

 ともかくランサーのマスターは落としたのだ。

 これで一つ、一騎落ちることになる。

 固有に持っている魔力で、ランサーは暫くこの世に残っているだろう。

 しかし、ランサーは騎士道精神溢れた英霊だと聞く。

 キャスターとの戦いですぐに魔力を消耗し、落ちる事は確実だ。

 そう、算段を付けていた時だった。


 そして、何の前触れもなく、麗羅の手の甲に熱い感覚が走った。

麗羅「……何、これ?」

 もしやあの液体に何かやられたかと思い、袖をまくって手の甲を見る。

 手の甲に赤い紋様――――令呪が刻まれていた。

 それを綺礼によって教えられていた麗羅は、あんぐりと口を開ける。

麗羅「……私に、令呪?」

 これは、ランサーと契約しろと言う天啓か?

 自分の願いも、求めるモノも分からない麗羅には、過ぎた代物だ。

 今なら綺礼君の気持ちが理解できるかも、と一人頷いた。


 しかし妙だ。

 自分は戦う者ではあっても、魔術を行使するものではない。

麗羅「これ、どうするべきかな」

 麗羅は首を傾げながら、元来た道を走り出した。

          ◇

キャスター「ジャンヌ、次こそは、次こそは――――!」

 そういって、キャスターは海魔を引き連れ、アインツベルンの城から去っていく。

 危ない所だった。ランサーがやってきてくれなかったら、もっと過酷な状況に陥っていただろう。

セイバー「……ランサー、助かった」

ランサー「いや、騎士として当然のことを――――な!?」

 突如、ランサーが驚愕したような表情を浮かべた。

セイバー「どうした、ランサー?」

ランサー「ああ……、我が主との繋がりが、今切れたのだ」

 その言葉を聞き、セイバーは少しすまなそうな顔を浮かべる。

セイバー「……すまない、ランサー。恐らくそれは私のマスターの仕業に違いない」

 そんなセイバーに、ランサーは笑みを浮かべる。

ランサー「仕方がない。これは戦争なのだ。勝ち残る者もいれば、敗北し散る者もいる」

ランサー「きっと、我が主も正々堂々と戦い、戦場の花として散って行ったのだろう」

ランサー「ああ、だがしかし! 俺は主の為に何もできはしなかった……!」

ランサー「無念! ディル・ムッド、一生の不覚!」

 言えない。

 アインツベルンの城にありとあらゆるトラップをマスターが使っているだろうことを。

 恐らくはそれに引っかかって死んだなんて。

 これから去って散り行くランサーには言えない。

セイバー「……貴公もそろそろ消えてしまうのだろう」

 言いながら剣を構える。

セイバー「これも騎士の情けだ。現世から去る前に、一手お相手しようか?」

 そういうと、今度はランサーが気まずそうな顔を浮かべる。

ランサー「……その件だが、何というべきだろうか」

 腕を組み悩むランサー。

ランサー「私にはマスターが二人いるようなものでな……。令呪が消えただけの様なもので、魔力供給は十分に出来ているのだ」

 それを聞いてセイバーは驚愕した。

 まさかマスターが二人もいるという変則的な契約方法があったとは、アインツベルンに関わるセイバーでも知らなかった。

セイバー「それはよかったというべきか……いや、まずそれを私に教えてよかったのか?」

ランサー「セイバー、お前にはその手の傷や真名の事もある」

ランサー「何、この程度で俺は負けはしない。ソウラ様とこれからについて話すさ」

 そうか、とセイバーは頷き、ランサーに背を向ける。

セイバー「嫌な予感がする。次に相見えた時に、決着をつけよう」

ランサー「ああ、それまでは達者でな」

 セイバーは魔力放出スキルを使ったのか、すさまじい速さで森を駆け抜けていく。

ランサー「……主の遺体をソウラ様に届けなくては」

 ランサーは亡くなった主を思い、森の中を走り抜けていった。

.

74 ◆K7pqbvuGjs:2014/07/08(火) 23:43:10 ID:YeNr5gUc

 麗羅が颯爽と綺礼の元に戻れば、綺礼が妊婦に黒鍵を向けている所だった。

 その足元には黒い中国拳法でもしそうな服装の女性が倒れていた。

 どちらも気絶している様だ。

麗羅「……何をしているの。綺礼君? 殺せばいいじゃない」

 麗羅がいたことに気が付き、震えながら振り向く綺礼。

綺礼「私は聖職者だ。――――祝福すべき命を、殺すことは出来ない」

麗羅「バカみたい」

 この男は何を言っているのだろうか?
 お笑いにしてはレベルが低すぎる。
 無意識に笑う事ができない麗華にも分かる事だった。
 空っぽの自分が言うのもなんだが、ちょっとどうかしているんじゃないだろうか。

麗羅「それって確か聖杯の守り手……」

麗羅「確かお人形? 気絶しているうちに殺しちゃいなよ」

麗羅「私がそれを言峰教会に持って行かないといけないのは綺礼君も知ってるでしょ?」

麗羅「お仕事の一つに、聖杯の確保ってヤツがあるの」

 麗羅は妊婦であるアイリスフィールに手を伸ばす。

 その手は凶器に他ならない。

 その手は首をいともたやすく潰し。

 その手は心の臓から流れる気を乱し。

 その手は頭蓋骨を陥没させる――――!

綺礼「その女を殺すな!」

 綺礼が麗羅を声で抑止する。

 仕事の条件の一つに、言峰綺礼の命令は絶対と言っておいたのが幸いだった。

麗羅「……綺礼君がそういうなら、止してあげる。暗殺者は雇い主の命令には絶対だものね」

 表情を変えることなく、麗羅はその手を引いた。

 虚ろな黒い目で、綺礼の目を覗く。

 まるで、自分に答えを求めているようで――――。


 その時女のアサシンが顔を出した。

アサシン「セイバーと衛宮切嗣がこちらに向かってきています。ここは撤退をした方がいいかと」

 アサシンの言葉を聞くと、綺礼はアイリを捨て元来た道を走り出す。

 その後を追いかけてきながら、麗羅が問いかける。

麗羅「あれ? 今は衛宮切嗣に答えを聞かなくてもいいの?」

綺礼「今はまだ早い」

麗羅「じゃあ、なんでここに来たの?」

綺礼「――――」

 言えない。

 言えはしない。

 まさか衛宮切嗣に理解者がいたなんて、口が裂けても言えない。

 いや、そんなことがあってはならない。

 衛宮切嗣は孤独でなければならないのだ。

 言峰綺礼は、自分の心を整理するためにも教会へと走って行った。

.

75 ◆K7pqbvuGjs:2014/07/08(火) 23:46:05 ID:YeNr5gUc

セイバー「アイリスフィール!」

 セイバーが倒れているアイリスフィールに走り寄る。

 意識を確認するより、まずは体がどうなっているか調べなくてはならない。

 体に傷は無い。刺された跡もない。首が絞められた跡があるが、呼吸はしている。

 そしてなにより、赤ん坊が元気よくお腹を蹴っていた。

アイリ「……セイバー、ありがとうね」

 体を隅々さわっていると、意識を取り戻したらしく体を起こす。

セイバー「アイリスフィール。まだ体を起こしていけません。傷が無いとはいえ、首を絞められているのですから」

アイリ「いいえ、大丈夫よ。貴方のお蔭で元気が出たわ」

 セイバーの手を借り、起き上がり舞弥の元へ歩み寄るアイリ。

 治癒魔術で、舞弥の傷の手当てをするアイリ。

切嗣「アイリ! 舞弥! セイバー!」

 機銃を片手に、ロングコートを翻して切嗣が走り寄ってくる。

切嗣「アイリ! 体は大丈夫なのかい!? おなかの赤ちゃんは無事か!?」

切嗣「うわあー!? 舞弥、舞弥ー!! その刺し傷はどうした!」

切嗣「まさか言峰綺礼か……ッ! 許さん!!」

 いい大人が慌てているのを見て、クスリと笑う女性三人。

舞弥「切嗣、私なら大丈夫です」

アイリ「激しい運動は出来なさそうだけどねー。てぃ」

舞弥「あ痛ぁ!?」

セイバー「アイリスフィール! 傷口を叩くのはやめてあげてください!」

切嗣「大丈夫なのか!? 本当に二人とも大丈夫なのか!?」

 アインツベルンの森は喧騒を響かせながら、夜を過ぎていった。

          ◇

 朝日が昇る仲、二つの影が森を歩く。

 切嗣は舞弥を背負い、セイバーはアイリスフィールを抱いてアインツベルンの城へと戻っていた。

 アイリは既に寝てしまっている。

 セイバーは、キャスターを撃退し、ランサーのマスターが死んだこと。

 そしてそのマスターが二人いることを話した。

切嗣「何? ランサーのマスターが死んだだって?」

 セイバーの言葉が信じられず、思わず聞き返す切嗣。

セイバー「なんと、切嗣ではないのですか?」

切嗣「ああ、そもそもランサーのマスターは城にすら来ていない」

切嗣「変則契約の件もいいとして、これはおかしいな」

舞弥「切嗣……これを」

 その言葉を聞いていた舞弥が、ポケットからある物を取り出す。

切嗣「……テープレコーダー? それがどうしたのかい舞弥?」

舞弥「はい、以前士郎君から頂いたものです。『爺さんすぐもの壊しちゃうから、舞弥さんに上げる』と」

切嗣「……そういえば、最近買って失くしたヤツだ。それ」

 父の顔が無くしょぼくれる切嗣。

 切嗣の起源は『切り嗣ぐ』。それゆえに物を壊しやすかったり、片付けが苦手だったする。

 士郎は切嗣の起源の事は知らないが、そういう人物だと理解はしていたのだろう。

セイバー「それで、その記録媒体機器がどうしたのです?」

舞弥「いえ、大したことは無いでしょうが、念のため言峰綺礼との交戦時から今まで録音していました」

舞弥「私達が気を失っている間に、何かあるかもしれません」

切嗣「……でかしたぞ舞弥。この戦争が終わったら、士郎も褒めておかないといけないな」

 城に帰ると、アイリスフィールをベットに寝かせ、早速テープレコーダーを聞くことにする。

 随分と音割れなどが激しいが、大体の会話を聞き取ることができた。

 それは十分すぎる成果だった。

 まるで、抑止力が正体を暴けと言わんばかりの情報。

 美味しい情報がありすぎた。

切嗣「暗殺者……アサシンか」

 アイリが部屋にいない事をいいことに、タバコを吸う切嗣。

切嗣「言峰綺礼の声と、女子供の声が二つ……間違いない。この二人の声はアサシンのモノだ」

セイバー「つまり、アサシンは複数の個体になれる宝具を持っているという事ですね」

 セイバーは知力と直感を使い、彼女なりに推理して見せる。

 勘違いをしているというのに、大筋があっているのがシャレにならない。

切嗣「ああ、そういう事になる。でかしたぞ。舞弥」

 切嗣の賛辞に、照れる舞弥

切嗣「さて、それじゃあこれを、有効活用しようか」

 そう言いながら、衛宮切嗣は不敵な笑みを浮かべた。

.

76 ◆K7pqbvuGjs:2014/07/08(火) 23:51:18 ID:YeNr5gUc

 鶏が鳴く頃、礼拝堂には言峰親子と、衛宮切嗣、そしてセイバーがいた。

 件のテープレコーダーを聞かせ、勝ち誇った笑みを浮かべる。

切嗣「――――と言うわけで。言峰綺礼を聖杯戦争から排除していただきたい」

 唖然とする言峰璃正。

 呆然とする言峰綺礼。

璃正「そ、それがアサシンの声と何故決めつけるのですかな?」

切嗣「おや、まだしらばっくれる? 神父さまも、いいご趣味をしてらっしゃるなあ」

 不敵な笑みを浮かべながら、切嗣はテープレコーダーをしまう。

切嗣「このテープの人物が、自分を暗殺者と名乗っているんですよ?」

切嗣「それとも何かい? 貴方達は神に誓えるとでもいうのかな?」

切嗣「アサシンが群になれる宝具を持たず、尚且つ言峰綺礼は現在マスターではなく、尚且つ録音されている物にアサシンの声が入っていないと」

切嗣「お前達はそう神に誓えるのか?」

 切嗣の言葉に、二人はギリギリと首を絞められて行く感覚に陥る。

 彼の推測は間違った物であり、正しい物だからだ。

 どう否定しても、教会の不正が暴かれてしまう。

 それに何よりも、二人は立派な聖職者だ。神に嘘を吐けはしない。

 どうする?

切嗣「嘘を吐いていないのなら、神にそう誓ってみせてくれ」

切嗣「献身的な神父様たちなら、出来る筈だろう?」

切嗣「それとも……教会は暗殺者でも雇って、これまた違う方向で不正行為をしていたと?」

切嗣「そんなわけない筈だ。何せ、貴方達は監督役」

切嗣「不正なんて働いたら、この聖杯戦争はルール無用のモノとなり、聖堂教会の面目もがた落ちだ」

切嗣「これが魔術協会にばれたら、君たちは聖堂協会に然るべき処分をされるだろう」

切嗣「聖堂協会からは新しい監督役でも来るんだろうが。僕にはよくわからないな」

 煙草を吸いながら、衛宮切嗣は聖杯戦争の監督役に追求する。

 当てずっぽうに近い暴論だというのに、的を射ているから侮れない。

 聖堂教会からは特に罰はないだろうが、面目の為にも辞退されるのは違いない。

 それに、時臣には何かしらのペナルティが課せられるだろう。

 どうする?

切嗣「嘘を吐いていないのなら、早く誓って見せてくれないか?」

切嗣「さあ、さあ。さあ――――!」

 どうすればいい――――!?

 葛藤する言峰親子。

 そんな二人を見て、切嗣は璃正の肩にポンと手を乗せた。

切嗣「……別に、嘘を吐いているのなら、わざわざ神に誓う必要は無いんだ」

切嗣「誰だって、悪いことをする時がある。それを許すのが、神様っていう都合のいい存在なんだろう?」

 璃正の耳元に、そっと囁く切嗣。

 それを見て、歯ぎしりを立てる綺礼。

 拳を痛いほどに握りしめ、爪が食い込み血が溢れだす。

切嗣「僕だって鬼じゃない。情も人並みにある」

 ――――情? 笑わせる。

 ――――お前のそれは悪鬼そのものではないか。


 そう睨み付けながら、衛宮切嗣を睨み付ける。

 どうやら、契約書らしい。

 書かれている内容は、こうだ。

 一つ、言峰綺礼を聖杯戦争から排除すること。
 二つ、アサシンを全員令呪を持って自害させること。
 三つ、聖杯戦争を二週間停戦すること。

璃正「な、何だと……!」

 その内容の出鱈目さに、思わず頭を抱える璃正。
 対して衛宮切嗣は以下の通りの事柄を守ると記してある。

 一つ、衛宮切嗣が所持しているテープレコーダーは教会に渡す。
 
二つ、教会の不正を衛宮切嗣は誰にも話さない。

 衛宮切嗣はこの二つだけ。

璃正「……う、ぬぬぬぬぬッ!」

 しかし、しかしだ。

 それは教会の神父たる璃正にとっては、十分すぎる契約。

 かなりの痛手となるが、教会の本部にこれが知られれば大変な事になる。

 聖杯戦争は解体され、自分達親子は処されるだろう。

 自分はまだいい。だが、息子が処されるのはあってはならない。

 最悪、遠坂時臣が聖杯を掴めなくなってしまう事態にも陥るだろう――――!



.

77 ◆K7pqbvuGjs:2014/07/08(火) 23:54:40 ID:YeNr5gUc

 そんな璃正をみて、首をかしげる切嗣。

切嗣「契約したくない? じゃあこのレコーダーを他のマスターに聞かせて回ろう」

切嗣「聖堂教会にもこのレコーダーを送っておこうかな」

切嗣「心配ないさ。君たちが神様に嘘を吐いていないと誓えば、何も問題はないんだから」

 契約書を璃正から抜き取り、礼拝堂から出ようとする衛宮切嗣。

璃正「契約をする! だから、だから待ってくれ!」

 それを、璃正の声が止めた。

 衛宮切嗣は思わず頬が緩んでしまうが、引き締めて振り返る。

切嗣「じゃあ監督さん。よろしくお願いしようか」

 だがその表情は、だらしないほどの笑みが浮かんでいた。

 教会は持っている全てのマスターの情報を明け渡した。

 更にはアサシンを自害させ、言峰璃正が持っている令呪を全て渡し、二週間の訂正を約束された。

 ――――そして言峰綺礼の聖杯戦争からの排除も決まった。

切嗣「いやあ、僕はこれで教会の不正を誰にも話す事が出来ない。悔しいな〜。そうは思わないかい? セイバー」

セイバー「ええ、全く貴方と言う人は外道にも程がある。しかし、交渉術としては中々だ。王とし褒めましょう」

切嗣「いやー、騎士王に褒められるだなんて、参った参った」

セイバー「素直に受け取りなさい切嗣」

 あっはっはと、白々しく煽るセイバーとそのマスター。

 戦場でのジョークも冴えわたることであろう。

 これは言峰親子にとって、人生最大の屈辱であった。

切嗣「さて、これで契約は完了した。さあ言峰綺礼。君はさっさとここから出ていくんだ。部外者さん?」

 自分の歯が噛み砕けてしまいそうな程歯ぎしりを鳴らし、血があふれ出るほど拳を握る。

綺礼「……了解した……ッ!」

 そう答えると、綺礼は教会の奥の方へと去って行った。

切嗣「ああ、残念だよ。僕は不正を訴える事が出来ないなんて、ああ、僕は人間失格だ」

切嗣「――――そう、僕は、ね」

 そう言い残し、衛宮切嗣もまた去って行った。

        ◇

 衛宮切嗣が去った後、分かる限りのマスター達に二週間の停戦を知らせた。

 三つの陣営から文句が来た。それも当然であろう。

 ランサー陣営、ライダー陣営、バーサーカー陣営からだ。

 しかし、内容は予想したものだけではなかった。


 内容は、教会の不正についても含まれていたのだ。

 衛宮切嗣が持ってきていたテープレコーダーと同じモノを、二人とも持っていたのだ。

 何でも、セイバー陣営の関係者と名乗る女性が、テープレコーダーを配りに来たのだとか。

璃正「な、何故……!?」

 自分の手にあるテープレコーダーを見つめる璃正。

 音声もキチンとある。

 だというのに、なぜ同じ音声を録音したものが複数存在するのか!?


 言峰璃正は知らぬところだが、科学は日々進化している。

 種はとても簡単なものだと言っておこう。


 更には時臣師からも使い魔を通し連絡が入ってきた。

時臣『……これをどう収集するつもりかね。言峰神父』

 流石の優雅も、どこか空の彼方へと飛んでいった声だった。

.

78 ◆K7pqbvuGjs:2014/07/08(火) 23:57:16 ID:YeNr5gUc
今日はここまで。

ただ愉悦が無自覚にドジって窮地に陥るところを書きたかっただけです。
(ペラペラ獲物の前でしゃべっちゃうという愚行)
聖堂協会が黙認(というか総意?)してたはずだけど、魔術教会からしてみればどんな対応取るかわからないので、十分脅せるかなと
あと……あれや。これ正直脅しとか焦る内容かはわからないけど、冷静じゃなかったってことで一つ。

79普通の名無しさん:2014/07/09(水) 04:37:15 ID:HKClTKmc

この頃の若き綺礼ならやりかねんミスだな
特に英雄王と愉悦、二人の理解者ができた直後だし精神の均衡が崩れていてもおかしくない

80 ◆K7pqbvuGjs:2014/07/12(土) 17:04:00 ID:/jS385Ck

ギルガメッシュ「――――ハ。無様だな綺礼」

 旅立ちの準備をしていると、アーチャーがワインを片手に問いかけてきた。

綺礼「黙れ! 今は貴様の相手などしている暇はないのだ! アーチャー!」

 あまりにも最悪のタイミングに、そのサーヴァントを睨み付ける綺礼。

ギルガメッシュ「おお、そこまで吼えるか。さぞ悔しい敗北であったろうに」

ギルガメッシュ「今までのお前では考えられない程の激情だな」

ギルガメッシュ「この際だ。神父をやめるのもまた一考だぞ?」

綺礼「そんな事、出来るわけが無いだろう!」

 言峰綺礼は、今まで生きてきた中で、屈辱を感じていた。
 まさしく無様。こんな負け方をするとは、思いもしなかった。

ギルガメッシュ「なあ綺礼よ。お前のその悔しさは、敗北からだけなのか?」

綺礼「何だと?」

 思わずアーチャーの言葉に耳を傾ける綺礼。

ギルガメッシュ「いや、何。貴様はアレと同じことがしたかったのではないか?」

綺礼「衛宮切嗣と、同じこと、だと……?」

 それは一体何なのか。
 戦場での場数なら負ける気はしない。
 人を殺した数も自分が勝っていたと確信を持って言える。

ギルガメッシュ「簡単ではないか。今お前の感じている物を、人に与えたいのではないか?」

ギルガメッシュ「人に苦痛を、人に不幸を。そして人類に最悪を! それがお前の求める物なのではないのか?」

綺礼「……そんな、ことが」

 あってたまるか。
 その一言が言い出せない。

 何故だ。ここで否定しなくては。
 否定しなくては、そんな事を肯定されるなんて許されない。
 まさか、そんな筈はない。そんな筈がないのだ。
 自分は神に殉ずる神父だ。
 そんなことが、あってはならない――――!

麗羅「あれ? 綺礼君、令呪なくなってしまったの?」

 混乱に陥っていた綺礼の前に、綺麗の手に目を凝らしている麗羅が部屋に入ってきた。

ギルガメッシュ「ほほう、この間の盗み聞きの雑種ではないか」

麗羅「貴様、よくも私の前に現れたものだな……ッ!」

 あの時、麗羅が『暗殺者』という言葉を使ったからこうなったのだ。

 八つ当たり気味に麗羅を睨み付ける綺礼。

麗羅「私を責めるのはお門違い。あの女の体を確認しなかった綺礼君もいけないんじゃない」

 麗羅は淡々と真実を述べる。

麗羅「ねえ王様。綺礼君が求めている物は、そういうものなの?」

 首を傾げ、黄金の王に問を掛ける。

ギルガメッシュ「生意気な口だ。童でなかったら、その首を刎ねていたぞ」

麗羅「怖い怖い」

 びっくりするほど棒読みで怖がるフリをする麗羅。
 王の威光に身を委ねればいいものを、と溜息を吐くアーチャー。

ギルガメッシュ「問いに答えてやるが、この神父が求めているのは間違いなくそういった類の愉悦だ」

ギルガメッシュ「それも、本人が最も禁忌としているものであろうよ」

綺礼「……ならば、問おう。私の愉悦とは、私の求めているモノとは、一体何なのかを」

 勝手に話を進める二人を、睨み付ける綺礼。

ギルガメッシュ「もう大分話してやったのだがな。我にしては大サービスだぞ?」

ギルガメッシュ「後はもう、お前が探すしかあるまいて。この冬木の地でな」

 フハハハハハ! と高笑いをするアーチャー。

 アーチャーの言葉を聞き、ふと考える素振りを見せる綺礼。

 彼の中で何かが決まったのか、迷いの無い動きで一つの外へと飛び出す。

 その後を、ヒョコヒョコと付いて行く麗羅。

麗羅「綺礼君綺礼君、もう旅の準備はしなくていいの?」

綺礼「彼の英雄王に、この冬木の地で探せと言われたのでな。この地にいる為の、口実作りをすることにしたのだよ」

綺礼「ちょうどいい。お前も害虫駆除を手伝ってくれ」

麗羅「それってどんな害虫なの?」

 顎に手を当て、考える素振りを見せる綺礼。

綺礼「タコの様な害虫だ」

麗羅「それって虫じゃないよね。タコだよね」

綺礼「……比喩もわからんのか。山育ちというのは」

 二人は、キャスターの工房へと歩を進めるのであった。

.

81 ◆K7pqbvuGjs:2014/07/12(土) 17:04:44 ID:/jS385Ck

 目的地にたどり着くと、早速害虫という海魔達が襲い掛かってきた。

 軽く見積もっても、その数は30を超えるだろう。

綺礼「お前の力量を見ておきたい。その拳で片付ける事が出来るか?」

 能面のような笑みを浮かべ、麗羅は海魔の前に立つ。

麗羅「女の子に害虫駆除やらせるなんて、綺礼君さい・てい」

 一匹の海魔が、麗羅に襲い掛かる。

 それを、麗羅は拳で突く。

麗羅「それ」

 ――――あまりにも、間の抜けた掛け声で。

 拳で突かれた海魔は、呆気なく弾け飛んだ。

 突かれた個所から血肉をまき散らし、吹き飛ばされる。

 声を上げることも許されず、その海魔は文字通り絶命した。

麗羅「しゅっ」

 無論、それだけでは終わらない。

 命令は絶対だ。

 この場にいる海魔を、拳だけで打倒し、絶命させる。


 蝶が舞う様に、蜂が刺す様に。

 そんな表現があるが、それだけでは彼女を表現することは叶わない。

 そんな陳腐な言葉で表現するのもおこがましい。

 そんな次元を越えた――――『殺』の業。


 『死』ではなく『殺』。

 彼女は既に、『殺』の極地に辿り着いていた。

綺礼「――――」

 その業は、本物だとかそんな話の次元ではない。

 それを越えた何かだという事は分かるが、表現のしようがない。

 綺礼は、そんな麗羅を、ただ傍観することしかできなかった。

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82 ◆K7pqbvuGjs:2014/07/12(土) 17:05:04 ID:/jS385Ck

 そして、傷一つなくキャスターの工房にたどり着いた二人。

 そこには、出来の悪い人間オブジェがいくつも転がっていた。

 二人がよく知る血の匂いが、工房内を充満していた。

麗羅「綺礼君綺礼君、この人たち生きてるよ?」

綺礼「そういうのを死に体というのだ。覚えておくといい」

 火葬式典を付属させた刀剣を取り出し、容赦なく一つの死に体に突き刺した。

 すると、その刀剣は炎上し、死に体達を燃え焦がしていく。

麗羅「生きているのにえげつないね」

綺礼「いや、このまま生きている方が辛いだろうよ」

 全てのオブジェが燃えたのを見ると、綺麗はキャスターの工房から去る。

麗羅「ねえ、これで口実作り出来たの?」

綺礼「ああ。今夜辺りに分かるだろう」

 聖職者の様な顔で笑みを浮かべる綺礼。

 事前にアサシンからキャスター達の性格、趣味嗜好は聞いてあった。

 こうなれば、後はどうなるかは予測できる。

 衛宮切嗣に受けた煽りを、ここですっきりと晴らすことができた。

 これで少しだけすっきりとできたとともに、どこか満足感を覚える綺礼であった。

 ――――もう答え見つけてるんじゃないの? この人。

 そんな綺礼をみて、麗羅はそう思った。

83 ◆K7pqbvuGjs:2014/07/12(土) 17:10:52 ID:/jS385Ck
 ――――夜。
 冬木大橋が架かる未遠川にて、その海魔は存在した。

キャスター「ご期待あれリュウノスケ! 最高のCOOLをご覧に入れましょう!」

 全長百mを越える海魔に、誰もが驚愕した。

 冬木に住む人々も、その神秘を括目する。

 その中には、綺礼と麗羅の姿もあった。

麗羅「これが綺礼君の言っていたヤツ?」

綺礼「そうだ。そう、なのだが……」

 正直、予想を超えていた。

 代行者として冬木の地にいる口実さえ作ればいいと思っていた。

 その為にキャスターやそのマスターが逆上しそうな行動を取ったのだ。

 キャスターの情報は、アサシンに以前監視させ報告していたから、考えを読むのは容易かった。

 だが、まさか、ここまでとは。

 舐めていたとしか言いようがない。

麗羅「で、どうするの?」

綺礼「代行者として、神秘の漏洩は防がねばな」

麗羅「もうダダ漏れだよね?」

綺礼「私の父は優秀だ。この程度の騒ぎなら何とかなる」

 実際は教会で頭を抱えて何とかこの事を大きくしない様に頑張っているのだが、息子は知らない。

麗羅「私も行くべき?」

綺礼「いや、お前はここで様子見だ。私の答えを得る前に、キャスター以外のマスター達を殺されては困る」

 もう絶対答え得てるでしょうに、と麗羅は睨みつけるが、綺礼はそれに構わず飛び出してしまう。

麗羅「……私は、どうするべきか」

 土手に座り、時折襲い掛かってくる大海魔の触手を消し飛ばしながら、綺礼のすることを眺めることにした。

龍之介「超COOLだよ! 旦那ァ!」

麗羅「――――ん?」

 野次馬の中に、一際興奮している男を見つけた。

 その手には、令呪の痕が刻み込まれている。

 アサシンからの情報として、彼こそがキャスターのマスターだと確信した。

 キャスターのマスターであれば、綺礼君にも問題ないだろう。

 これも仕事だ。殺さなくては。

 麗羅は騒いでいる男の後ろに立ち。

 ――――その首を握り潰し、川に投げつけた。

.

84 ◆K7pqbvuGjs:2014/07/12(土) 17:16:41 ID:/jS385Ck
キャスター「龍之介ぇ! おお、龍之介ぇぇえええ!!」

 土手にいる野次馬の一人が殺された事により、キャスターが怒り狂い始めた。

 もっとも、既に狂っていたのだが。

 その時切嗣は、ライダーのマスターと共に川の近くで行動していた。

 誰が殺したのかと気になったが、キャスターのマスターからは人が引き始めていた。

 人が突然死んだのだ。そうもなるだろう。

 離れている切嗣たちからは、誰が殺したのかは判断できない。

切嗣(アサシンは自害させたはず。なら、一体誰が……?)

 そう切嗣が思考を巡らせているその時だ。

 言峰綺礼が降り立ったのだ。

切嗣「何をしに来た」

 綺礼が河原に降り立つと、切嗣が真っ先に銃を向けて来た。

綺礼「いや何。代行者として見逃せないのでね。アレを討伐しに来たのだよ」

切嗣「……人間である君が? アレに?」

綺礼「人間であると同時に代行者だ。聖杯戦争のマスターではなく、代行者の使命としてここに来た」

 なるほど、そこまでしてこの地に残りたいのかと、哀れみの眼差しを向ける切嗣。

 黒鍵を構え、川に溢れる小さな海魔達へ討伐しようと駆け抜ける。

ウェイバー「お、オイ!」

 ライダーのマスター、ウェイバーが引き留めようとするが、綺礼は意にも返さず走り出す。

切嗣「……僕としては、このままアイツをライダーの固有結界に引き込んでくれると助かるんだ」

切嗣「お願いできるかな? ライダーのマスター」

 実を言えば、大海魔を一時的にライダーの固有結界に閉じ込めて時間稼ぎをするという作戦の真っ最中。

ウェイバー「ぼ、じゃなくて……私は別に構わないけどね、反則したマスターをこ、殺すなんて」

ウェイバー「でも、そこまでしなくてもいいんじゃないか?」

切嗣「君はもう少し非情にならなきゃ、この世界はやってけないよ」

ウェイバー「……キャスター倒した後の二週間の停戦同盟、正式に引き受けてやるのに、その言い方は無いだろう?」

 監督役が信用ならないと分かった今、ルールなんてあって無いに等しい。

 切嗣はこの後、冬木が混沌とした戦場になるだろうともちろん予想している。

 そんな事をしたら、サーヴァントが早く落ちるのではないか?

 だがそんな事はどうでもいい。

 監督役が信用を失った。これが重要。

 そして、この事によって信用を得たのは誰か?

 監督役の不正を暴き、それを公正に、公平に教え与えた者。


 ――――セイバー陣営に他ならない。


 そこまでくれば後は簡単。

 信用が『セイバー陣営>他の陣営>監督役』となれば、聖杯戦争の主導権はある程度こちらが握る事が出来る。

 勿論容易くは無かった。

 だが幾多の戦場をありとあらゆる方法を持って切り抜けた手腕によって、それは可能とされた。

 現に、ライダー陣営、ランサー陣営は二週間の停戦に賛同し。

 それを聞いたバーサーカー陣営、アーチャー陣営も同意してくれている。
 
 同意していないのは既に脱落しているアサシン陣営である綺礼と、この戦いの敵であるキャスター陣営のみである。

 このキャスター陣営に勝利することが出来れば、信用は確固たるものとなる。
 
二週間の停戦も、現実帯びたモノとなるだろう。

 大海魔の姿が消える。どうやらライダーが固有結界に取り込んだらしい。

舞弥『切嗣、こちらの準備は整いました』

切嗣「さて、と――――」

 ランサーに呪いを解呪するように頼むとする。

 セイバーの宝具が使えなければ、この戦いは破綻する。

 ランサーの騎士道精に期待するとしよう。
.

85 ◆K7pqbvuGjs:2014/07/12(土) 17:18:04 ID:/jS385Ck
今日はここまで。

ちなみに、停戦を引き受けた理由は以下の通り。

ライダー陣営(ウェイバー)→赤ん坊に情がわいた
ランサー陣営(ソウラ)→令呪を使ってディルムッドとゆっくりたっぷりねっちゃりとイチャイチャしたいから
バーサーカー陣営(雁夜)→皆が停戦してるって聞いたから
アーチャー陣営(時臣)→監督役の不正? 関係ナイヨーアピール

お前ら聖杯戦争をしろ!

この後の戦いはZeroと大体同じなので、またもやカットです。

86普通の名無しさん:2014/07/12(土) 19:30:44 ID:2OXPfDJI

なんか前回に続いて、切嗣があんまり切嗣っぽくない気がする

87 ◆K7pqbvuGjs:2014/07/12(土) 22:40:42 ID:/jS385Ck
>>86
切嗣はプリヤ時空が主軸。
士郎とかも引取った影響もあって、かなり丸くなっちゃってます。

戦い方が切嗣らしくないのは、できるだけ鯖を落とさないようにするため。
鯖が落ちたら母体と赤ちゃんにどんな影響を与えるかわからないから。
魔術師を殺せばいいってわけじゃないんで、かなりの縛りプレイです。
セイバーと話してるのは、結構切羽詰ってるっていうのもある。
けどいざ話してみたら、意外と戦場トークが弾んだりしたのであんまり毛嫌いはしてない。

という設定。
作者的には、物語前半は幸せ一杯を表現していっていう思いもあった。
……だって終盤は、アレだから(遠い目)

.

88 ◆K7pqbvuGjs:2014/08/04(月) 00:58:53 ID:tVRtN2Ek
ギルガメッシュ「中々に有意義な夜だった」

 教会の地下に戻ってきたアーチャーは、不服そうにしながらワインを口に含んだ。

 狂犬に宝具の一つを破壊されたが、征服王は中々見込みの在りそうな男だ。

 できれば酒の席の一つでも設けたかったが、今からだとそれも出来なさそうだ。

 何故なら――――

麗羅「王様、お帰り」

 この童がいるからだ。
 子供だというのに、その目に生気は無い。
 何かに焦がれる熱い感情が、この少女には無い。
 それがギルガメッシュには気にくわなかった。

ギルガメッシュ「……なんだ雑種? 我に何か用か?」

麗羅「ちょっとね」

 手に刻み込まれた令呪をギルガメッシュに見せる。

 すると、面白そうに頬を緩ませた。

ギルガメッシュ「ほう、よりによって貴様か! 聖杯もずいぶんと壊れている物だな!」

麗羅「で、どうすればいいと思う?」

ギルガメッシュ「何故我に聞く?」

麗羅「王様だからよ」

 気にくわないのは、目だけではない。

 この少女の表情というのは、全て仮面なのだ。

 確かに、笑う事ができる。

 しかしそれは、表情筋を動かしただけのモノ。

 その奥底に、心は無い。

 彼女の生まれ持つ対極の破片の影響だとは思うが、気にくわないのだから仕方がない。

ギルガメッシュ「まあ良い。盛り上がりに欠けていたところだ」

ギルガメッシュ「――――どれ、俺が一つ自覚させてやろう」

 王の財宝から一つの宝具をとりだし、麗羅の額に、当てた。

89 ◆K7pqbvuGjs:2014/08/04(月) 01:00:08 ID:tVRtN2Ek
雁夜「時臣ィィィイ……ッ!」

 間桐雁夜は遠坂時臣に燃やされ、ビルの下へと落ちていた。

 遠坂時臣が憎い。
 自分から最愛の人を奪ったアイツが憎い。
 さも当然の様に葵さんから子供を奪った魔術師が憎い。

雁夜「……う、ぁ。カッ……!」

 まさしく虫の息。
 それでも間桐雁夜は生きている。
 歪んだ 愛情/思考 に執着しながら。

 意識が落ちる。
 黒い暗い微睡に、身を任せる。

 すると、揺りかごの様に暖かいモノを感じた。

『もう大丈夫よ。雁夜クン』

 そんな声が聞こえたような気がして、目を開く。
 もちろんというべきか、目の前には誰もいない。
 しかし、自分がいる場所はビルの真下では無かった。
 自分の最愛の人の子供が囚われている 家/檻 の門の前に他ならない。

雁夜「……もしかして、葵さんが俺を?」

 そうだとしたらなんと恥ずかしい事か。
 自分は時臣に敗北し、醜態をさらしてしまった。
 ああでも、葵さんに手当されるのも悪くない。

 そんな事を考えながら門を潜り抜ける。
 聖杯戦争中に、葵が冬木市にいるなんてありえない事だというのに。

          ◇

 言峰綺礼は、ずぶ濡れになりながらも帰路を歩いていた。
 そんな綺礼に、黄金の王が問いかける。

ギルガメッシュ「どうした綺礼? 死にそうな顔をしおって」

綺礼「――――正直死ぬかと思った」

 ライダーの固有結界に巻き込まれ、
 数多くの兵隊達に襲われながらも戦い抜き、
 セイバーの聖剣からぶっ放されるビームから泳いで逃れた。

 神は今、自分に味方してくれている。
 聖職者である綺礼は、それを確信持って言えるだろう。

ギルガメッシュ「いやはや、あの聖剣から逃れることが出来るとは思っていなかったぞ。お前は我を飽きさせぬな。綺礼よ」

綺礼「……黙れアーチャー」

 恐らく、衛宮切嗣は躊躇いも無く行動を起こしたのだろう。
 躊躇いの無いその決断力に称賛を送りたいほどだ。

 とぼとぼと歩いていると、遠坂葵の姿が見えた。

葵「あ、綺礼君」

 こちらに手を振ってくる始末。

綺礼「ど、どうなされたのですか? 禅城のご実家に帰られているはずでしょう?」

 流石の綺礼も驚かずにはいられない。
 聖杯戦争が行っている期間は冬木市に近寄らない様時臣も言っていたはずだ。
 だというのに、なぜ彼女がここにいるのか?

葵「あら綺礼君。本当に気が付かないのかしら?」

綺礼「何の――――」

 言われてみれば、その顔は綺礼の知る遠坂葵ではない。
 彼女は、虚木麗羅の様な仮面の様な笑みは浮かべない。

麗羅「時臣の奥さんかと思った? でもラッキー。可憐な美少女の私でした」

 クルリと一回転しながら、その姿を四歳児の幼いそれになって、綺礼の知る虚木麗羅の姿に成る。

綺礼「なんだそれは? 貴様は魔術の類でも身に着けたとでもいうのか!?」

 麗羅は、うーんと腕を組んで悩んだそぶりを見せる。

麗羅「さあ? 王様が手心を加えてくれたの」

綺礼「……どういうことだ? お前はこの暗殺者を嫌っていたと思っていたのだがな」

ギルガメッシュ「この聖杯戦争を面白おかしく彩ってやろうと思ってな」

ギルガメッシュ「なに、お前の答えもすぐに見つかるだろうよ」

 そう英雄王は言った。

90 ◆K7pqbvuGjs:2014/08/04(月) 01:00:40 ID:tVRtN2Ek
ギルガメッシュ「して綺礼、今夜はこの後、どう過ごすつもりだ?」

 言峰綺礼の戸惑い等気にも留めず、英雄王は問いを投げかける。

綺礼「――――時臣師を殺す」

ギルガメッシュ「ほう、随分と思いきるな」

綺礼「そしてお前を私のサーヴァントにしようと思っていたのだが……」

 自分の手を見る。
 マスターの資格である、令呪はどこにもない。

ギルガメッシュ「それなら心配するな。代わりにこれを我のマスターの代用できる」

 気にくわんがな、と言いつつ、ギルガメッシュは麗羅の右手を綺礼に見せる。
 そこには、確かに令呪が浮かび上がっていた。

綺礼「貴様、いつの間に……!?」

麗羅「ランサーのマスター殺した辺りから」

 聖杯はマスターにふさわしいモノを選ぶというが、これでは英雄王のスペックは自分と契約した場合より落ちるだろう。

ギルガメッシュ「まあ我のスペックが落ちるだろうが、問題は無かろう」

 その言葉に溢れる自信は流石というべきか。
 何を根拠にそこまで言えるのか、綺礼には不思議である。

麗羅「それで、このまま私が英雄王のマスターってことでいいの?」

ギルガメッシュ「ああ、吐き気がする程遺憾だが。仕方があるまい」

 話は大体終わった。

 さっさと時臣師を殺しに行くとしよう。

91 ◆K7pqbvuGjs:2014/08/04(月) 01:01:35 ID:tVRtN2Ek

 師父から受け取ったアゾット剣で、その師父を殺した言峰綺礼。
 彼は麗羅を師父のサーヴァントと契約し、笑みを浮かべる。

麗羅「殺したね」

 ふいに、どこからともなく現れた無機質な少女が、真黒な無垢な瞳で問いかける。

綺礼「ああ、そうだとも」

 さて、この少女はどうしようか?
 山猫風情に自分が後れを取るとは思わないが、念には念を入れておくべきか。
 ギルガメッシュもこの小娘は気に入らないと言っていたし、彼に始末してもらおうか。

 綺礼が考えをめぐらせ考える中、少女は遠坂時臣の死体に触れる。

麗羅「ねえ、綺礼君。私、貴方の愉しい事が、わかったかもしれない」

綺礼「ほう、それはどういったい――――」

 綺礼は己の眼を疑った。
 遠坂時臣の死体を、遠坂時臣が触れているからだ。

 いや、違う。これはあの無機質な少女。それ以外の何者でもない。
 あの少女は、瞬時に遠坂時臣に化けたのだ。
 死んだ人間が蘇る例は死徒化位のモノだが、それが目の前で起こったのかと思って動揺した。

麗羅「ねえ、綺礼君。 コレを使って、貴方に面白い物を見せてあげようと思うの」

時臣「その剣よりも、君が喜んでもらえると思うな」

 声までもが、完全に模倣される。

時臣「――――今までにない愉悦というモノを、君に与えよう」

 その遠坂時臣は、目の光を失っており、その笑みでさえ無機質だと感じさせるモノ。
 
綺礼「ほう」

 しかし、綺礼は感嘆の声を上げた。
 この少女は、今まで笑みを浮かべようとすらしなかったのだ。
 それが今ではどうか?
 自分の愉悦を理解し、それに対してプレゼントを贈ると笑みを懸命に浮かべている。

綺礼「いいだろう。好きにやらせてみるのも一考だ」

綺礼「虚木麗羅。私に愉悦を与えるというのなら、私の満足できるものを用意しろ」

 自分の師父を殺した言峰綺礼は、今までにない強欲な目で麗羅に命じる。
 遠坂時臣は黒い少女へと戻り、ソファに座る。

時臣「任せたまえ。私を誰だと思っているんだい?」

 何ともわざとらしい応酬。
 しかし、何とも様になっている光景であった。

ギルガメッシュ「山猫、精々我を満足させろよ?」

 ソファで優雅にくつろぐ自分のサーヴァントに遠坂宗臣という虚木麗羅は、躊躇いなく頷いた。

92 ◆K7pqbvuGjs:2014/08/04(月) 01:02:23 ID:tVRtN2Ek

 それは、まだ太陽が昇り切らない頃の、禅城家にて。
 遠坂葵が目を覚ます。

時臣「やあ葵。よく眠れたかい?」

 寝室の扉には遠坂時臣が立っていた。
 
葵「と、時臣さん? どうしたんです? 聖杯戦争でお忙しいんじゃ……?」

葵「もしかして、また凛に会いに来てくださったんですか?」

時臣「……聖杯、か」

 時臣は目を伏せ、後悔するような表情を浮かべた。

時臣「確かに、聖杯も大切だ。 ……遠坂の悲願ばかりを考え、私の眼は曇っていたのだ」

時臣「一番大切なモノを、私は置いてきてしまった。どうか、どうか、愚かな私を許してほしい」

 目に手を当てる時臣。
 葵はそれが、とても悲しく泣いているように見えて、戸惑った。
 今まで自分の主人がこんな反応を見せたことは無かった。
 故に、どういう反応をすればいいのか分からなかったのだ。

葵「一体、何のことです? 時臣さん」

 戸惑う葵。
 時臣は彼女の手を引き、優しく、そして力強く抱きしめる。

時臣「これからいう事は、とても残酷だ。聞いてくれるかい? 葵」

葵「ええ、貴方の為なら、どんな言葉も聞き入れます」

 葵の迷いのない凛とした言葉に安心したのか、時臣は彼女に耳にささやく。

時臣「――――桜と、もう一度家族になろう」

 それは、何という言葉だろうか。

 葵には一瞬何を言っているかわからなかった。
 だが、意味を理解すると、目から感情の雫を溢れ出させる。
 その感情の意味は、いったい何だろうか。
 とても、言葉では言い表せない感情だった。

葵「それは、それは本当ですか? 時臣さん」

時臣「ああ、本当だとも。私が嘘を吐いたことがあったかい?」

 そう優しく囁くと、葵は一際大きな声で泣き出した。

凛「ん……んぅ?」

 一緒のベットで寝ていた凛が、目を覚ます。
 当然だろう。自分の母が泣き喚いているのだから。

凛「……あ、お父様ぁ。ぅん? おはようございまぁす」

 まだ寝ぼけているのだろう。
 状況をまだ把握していないようだ。

時臣「……凛、また桜と一緒に暮らしたいかい?」

 時臣がそう尋ねると、凛は眠気が飛んだのか、目を大きく開かせて頷く。

凛「暮らしたい! また桜と一緒に暮らしたいです! お父様!」

 凛の頭を撫で、時臣は決心する。

時臣「じゃあ、今から迎えに行こうか」

凛「はい!」

 何ともまあ仲睦まじい家族の姿なのだろうか。
 遠坂家の事情を知る者は、感動の展開のあまり涙を流すだろう。



 ――――まあこんなの、全部嘘なんだけどね。


.

93 ◆K7pqbvuGjs:2014/08/04(月) 01:47:28 ID:tVRtN2Ek

臓硯「雁夜、雁夜や。ちょっと来い」

 朝、間桐家にて。
 臓硯が雁夜の名を呼ぶ。

雁夜「……何だ妖怪。聖杯戦争は二週間の停戦だっていっただろう」

雁夜「破れば他の陣営に叩かれるって言ったのはお前だろう?なんだ、ついにボケでも来たか?」

臓硯「その聖杯戦争についてなんじゃがな。ほれ」

 臓硯手紙を渡す。

臓硯「教会からじゃよ。なんでも、キャスターとの戦いの件で話があるらしい」

臓硯「アレじゃないか? ほれ、戦闘機をのっとった件じゃよ」

雁夜「……あれはキャスターを倒すのに必要だったろう」

 実際の所、キャスター戦に置いてバーサーカーはこれといった活躍はしていない。
 だがそれと同時に、あれは神秘の漏洩とはあまり関係が無い様に思える。

臓硯「表面上はセイバー陣営である衛宮切嗣が仕切っておるが、監督役はあくまで教会じゃ。 行かないと大変なことになるかもしれんな」

臓硯「教会とは揉め事を起こしたくない。ほれ、さっさと行って来い」

雁夜「わかったわかった。行ってくればいいんだろう!」

 雁夜はフードを被ると、そそくさと門から家を出る。
 それを眺めていた臓硯だったか、雁夜の行った方向とは逆から、見覚えのある影がいくつか見えて来た。
 遠坂の一家だ。

 この二週間の停戦とはいえ、いったい何を考えているのか。
 危険なことには変わりがないだろうに。

 三人は、迷いなく間桐の門をたたく。

臓硯「……一体何の用なんじゃか」

 臓硯は躊躇いながらも、門を開いた。

94 ◆K7pqbvuGjs:2014/08/04(月) 01:48:29 ID:tVRtN2Ek

 間桐家の客間にて、臓硯は時臣の話を聞いていた。
 臓硯は時臣の話を聞き、ふむと頷く。

臓硯「成程。桜を返してほしい、と」

時臣「虫のいい話だとは分かっております。ですが、私には、私達には桜が必要なのだと、ようやく分かったのです」

 時臣は真っ直ぐな視線で語り掛けてくる。
 それが臓硯にはたまらなく嫌だった。
 まるで、自分の体の弱点を見透かされているような、そんな感覚に陥っている。

 以前の遠坂時臣とは、明らかに何かが違う。
 こんな戦場に立つ風格を持つ男ではなかった。
 現に、表情はあるものの、それは仮面を付けているかのようだと思える。

臓硯「……しかしじゃ。 既に桜は間桐の教育を受けておる」

臓硯「遠坂の魔導を極めるのはちと無理があるだろうし、こちらの魔術を漏洩したくはない。引き取ってもらおうかの」

時臣「そんな事はどうでもいいのです。私は、私達は、もう一度桜と家族に成りたい」

臓硯「こちらは――――間桐との同盟を破る覚悟だ」

 『殺』を宿した眼光が、臓硯を捉える。
 恐怖こそはしないが、言いようのない焦りに襲われる。
 時臣に一体どんな心境の変化があったのか、予想が付かない。
 だが、

臓硯「カカカカカ! 吼えたな若造!ここは間桐の家、ワシの胃袋も当然よ!」

臓硯「もう一度聞き直しておこう。どんな覚悟じゃと?」

 部屋の隅から、蟲をという蟲が集まり、時臣たちを囲む。

凛「お、お父様ぁ……!」

 怯えて時臣に縋り付く凛。

時臣「凛、遠坂の家訓を忘れたのかい?」

時臣「――――遠坂たるもの、どんな時も優雅であれ。動揺などはしてはいけない」

凛「……は、はい! わかりました!」

 涙を流しながらも、自分の宝石を構える凛。

時臣「さて、臓硯殿。聞き直しの答えだが、こちらに二言は無い。耳はまだ健在だろう。確認しなくとも、分かっているはずだ」

臓硯「カッ! いいだろう。遠坂との長きに渡る同盟はここで終わりじゃ。死をもって終止符を打ってやるとしようかのう」

 臓硯は蟲に命令を出そうとした。

 だが既に、臓硯の体は朽ちていた。

臓硯「――――ガ!?」

 燃やされる。
 蟲達と共に、いや、この部屋を巻き込んで、共に燃やされている――――!

綺礼「時臣師、ご子女を連れてきて参りました」

 見れば、代行者が眠っている桜を抱きかかえている。

時臣「よくやった綺礼。流石は私の弟子だ」

ギルガメッシュ「ハ! 全て我任せの癖に、よくいうな」

 時臣の隣には、黄金のサーヴァントが鎮座していた。

ギルガメッシュ「もう用はないな? 帰るぞ綺礼。ここにこれ以上いる意味はないだろう」

時臣「いいや、まだです英雄王」

 黄金のサーヴァントの話を遮り、前に出る時臣。

時臣「臓硯。私の家族を殺そうとしたのだ。という事は、貴様も殺される覚悟は出来ているな?」

 レイピアの様に杖を構える時臣。

 ――――それはまたしても、瞬く間の出来事。

 時臣は臓硯に近づき、臓硯の体から一匹に虫を取り出す。
 それは臓硯の核、その体の中の蟲では、本当に大切な蟲の部分で――――

臓硯「た、頼む。許して――――」

 許しを請おうとした。
 だが、瞬く間の出来事だ。何もできずに

 臓硯の核ともいえる蟲は、貫かれた。

時臣「さあ、家に帰ろう」

 遠坂時臣/虚木麗羅は、優雅に凱旋を果たすのだった。

95 ◆K7pqbvuGjs:2014/08/04(月) 01:50:11 ID:tVRtN2Ek

 アイリスフィールの体の調子は順調だった。
 時々陣痛などで苦しむが、医師免許を最近取得した舞弥が言うには、良好だとの事だ。

 現在はアインツベルンの城で使い魔などの情報の整理をしている。
 そして、切嗣はそれを知った。

切嗣「何だと……!?」

 使い魔を通して、それを確認する切嗣。

セイバー「どうかしたのですか? 切嗣」

切嗣「停戦協定を破る陣営が現れた」

 ああ、と納得するセイバー。

セイバー「……それは当然と言えば当然でしょう。既にサーヴァントは二騎落ちている」

セイバー「このまま畳みかけて勝利を勝ち取ろうとした陣営がいてもおかしくない。して、それはどこの陣営でしょうか?」

 確かにセイバーの言うとおりだ。
 こんな協定は破られるためにあるようなモノだ。

 切嗣自身、時間稼ぎ程度にしか思っていなかった。

 だが、これはさすがに予想外だった。

切嗣「アーチャーだ」

セイバー「……なんと」

 これはさすがのセイバーも動揺を隠せない。
 切嗣から渡された資料や、停戦を結んだときにアーチャーのマスターの事は大体理解していたつもりでいた。
 慎重に事を進めるタイプだと思っていたが、いきなり停戦協定を破ろうとは思いもしなかった。

アイリ「え? でも、英霊は二騎しか落ちていないわよ」

切嗣「サーヴァントとは交戦した様子はない。恐らく間桐雁夜は生きているだろう」

切嗣「遠坂時臣は、間桐の家を焼き払った。十分な宣戦布告と見て間違いないだろう」

セイバー「待ってください切嗣。彼の性格からして、その行動はおかしくはありませんか?」

切嗣「アレ一人で考えればそうだ。でもね、言峰綺礼も一緒にいたんだよ」

 それらに唖然とする面々。

舞弥「……セイバーの聖剣から逃れていたとは思いませんでした」

 銃を点検しながら、舞弥は歯ぎしりを鳴らす。

舞弥「すいません切嗣。私のミスです。あの大海魔が倒された時、私が一番傍にいたというのに、言峰綺礼を確認できませんでした」

切嗣「いや、舞弥は十分仕事をしてくれていたよ。合図や場所の指定は、僕一人ではできない事だった。

切嗣「それに、セイバーの聖剣から逃れられるのがまずおかしい。そんな想定外は誰も考えないさ」

 大海魔が一瞬で消し飛んだのだ。
 誰もが言峰綺礼は死んだと確信した。

アイリ「流石は代行者。泳いでセイバーのエクスカリバーから逃れるとは……」

セイバー「それは恐らく違いますアイリスフィール。恐らくは魔術の類を使ったのでしょう」

セイバー「そうでなければ私のエクスカリバーから逃れるはずがありません」

 そうでなければ、アーサー王の沽券に係わる。
 実は泳いで逃れているなど、確かに誰も思う事は無いだろうが。

96 ◆K7pqbvuGjs:2014/08/04(月) 01:50:44 ID:tVRtN2Ek

切嗣「……まあ、それも問題なんだが、もう一つ問題があるんだ」

セイバー「何でしょう?」

 心底理解できない、そんな表情で切嗣は口を開ける。

切嗣「自分の家族を、一緒に連れていた。遠坂葵も、娘の遠坂凛も、そして養子に出していた間桐桜もだ」

 拳を握りしめ、机を叩く切嗣。
 家族の為に戦っている切嗣にとって、それはなんと愚行に見えた事か。
 戦場に家族を連れだすとは、外道にも程がある。

舞弥「他の陣営に伝えますか?」

セイバー「信頼の為には、情報は明るみに出すべきです」

切嗣「だがあのサーヴァントは格が違う。一人で挑めば絶対に返り討ちに会うだろう」

切嗣「監督役はこんなマスター同士の決まりごとはどうでもいいだろうし、討伐令なんか出しちゃくれないだろうね」

切嗣「それに言峰綺礼が関わっているんだ。協力はしてくれないだろう」

舞弥「なら、映像を見せてまた揺さぶれば」

切嗣「揺さぶって交渉した結果がこれだ」

切嗣「奴らは、聖杯の為なら教会側のお叱りや魔術協会の文句なんか気にしちゃいない」

切嗣「迂闊に交渉しようとすれば、お構いなしに攻撃だろうね」

 重くなる空気。

セイバー「ですが切嗣、やはりここは他の陣営にも知らせた方がいいと思います」

切嗣「何故そう思う? セイバー」

セイバー「アーチャー陣営が活動し始めたと警告し、警戒をさせた方がいいかと思います。

セイバー「もちろん。どの陣営も一応の警戒はしているとは思いますが、やはり知っていると知っていないでは判断力も違うものです」

セイバー「これは私の経験談といいますか、戦場で変に隠し事をすると、信頼を失いそこから争いになることもある」

 セイバーのいう事はもっともだ。
 しかし、アーチャー陣営が動いたと知れば好戦的になる輩も多いだろう。
 それでは乱戦は必須、サーヴァンとも確実に落ちるだろう。
 これ以上、アイリに魂が収納されると、子供に影響が出る。

 だが……しかし……。

切嗣「……警戒を、促しておくか」

舞弥「分かりました。所在不明のライダーとバーサーカーのマスターに、何とかして伝えます」

 セイバーの意見を尊重し、衛宮切嗣は他の陣営にこの事を知らせることにした。

97 ◆K7pqbvuGjs:2014/08/04(月) 01:52:37 ID:tVRtN2Ek
時臣「葵、君と子供達に、見せたいものがある」

 時臣に言われ、葵は子供達を連れて玄関までやってきた。

 聖杯戦争が始まってからというモノの、時臣さんは魅力的になったなと葵は感じていた。

 別に、今までの彼に不満があったわけではない。
 寧ろ魔術師である彼に、葵は心底酔う程愛している。

 だが突如、『桜ともう一度家族になろう』と言われた時には困惑した。

 しかし時臣が葵を引き連れ、間桐を訪ねて桜の救出劇を見た葵は、そんな些細な問題などもう感じることは無かった。

時臣『葵、すまなかった。君の事も、子供達の事も考えていなかった』

時臣『遠坂の魔術師として根源は目指さなければならない』

時臣『しかし、桜を間桐に預けたのは間違いだと気が付いたんだ』

時臣『家族とは、同じ屋根の下で過ごさなければならない』

時臣『それが何よりの幸せなのだと、私は気が付かなかった……』

時臣『こんな愚かな私を、どうか許してほしい』

 むしろ時臣がそう言って、自分の事を今まで以上に愛してくれているのだと感じた。
 まるで自分の心が全て見透かされ、甘い蜜を注ぎ込まれたような感覚を味わい悦に浸った。
 抗いがたい、甘い、甘い蜜で、自分は支配されていると思ったときは、今までのどんな夜よりも興奮した。
 体が熱く、今まで以上に彼の事を求めている。

 つまりは、葵今まで以上に遠坂時臣に酔っているのだ。

 玄関にたどり着くと、言峰綺礼が大きな箱を背負っていた。

葵「あら、言峰さん。今回は本当にありがとうございました」

 挨拶をすると、言峰も笑みを浮かべて挨拶を返す。

綺礼「こんばんは葵夫人。今夜も貴女は美しい」

 葵は驚いた。
 何故なら、『あの』言峰綺礼が、笑みを浮かべて、あまつさえ冗談を言ってのけたのだ。
 葵の知っている言峰綺礼という男は不愛想という印象だったので、そのギャップに混乱した。

時臣「こらこら言峰。人の妻に手を出すのはいただけないな。君をそんな風に育てた覚えはないぞ」

 葵が困惑をしている中、時臣はいつも以上に優雅を醸しながら歩いてきた。

 色気、というモノだろうか? 今まで見る事の無かった時臣の一面を見るたび、葵は魅せられて行く。
 時臣の笑みは今まで以上に輝いていて、ほれぼれと葵は眺めてしまう。

時臣「もしもこの遠坂時臣の愛する妻に手を出そうとするのなら、直々にお仕置きをしなければならない」

綺礼「これは失礼しました。しかし、私は事実を述べたまでですよ」

時臣「言峰、君も言うようになったじゃないか」

綺礼「いえいえ、貴方には敵いませぬ」

 二人は顔を見合わせると、突如笑みを浮かべた。
 綺礼は心底おかしいというかのように、腹を抱えて笑っていた。

98 ◆K7pqbvuGjs:2014/08/04(月) 01:56:59 ID:tVRtN2Ek

 娘達は突如綺礼が笑い出していたので困惑していた。
 それもそうだ。あの言峰綺礼が笑っているのだから無理もない。

 時臣は綺礼の頭をコツンと杖で叩くと、綺礼はなんとか笑いを止めようと口を押える。

時臣「いやすまない。ここ最近働き尽くしで、疲れているらしい」

 笑いが収まると、時臣は言峰に箱を下すように命じた。

時臣「突然笑い出して済まなかった。君たちが驚くお顔を思い浮かべると、つい、ね」

凛「驚く? この箱の事ですか?」

桜「これは何ですか。お父様?」

 凛と桜は、キョトンと首を傾げ、自分の父に問いかける。

時臣「プレゼント……というのも違うな。これは、君たちが大切に思っているモノだ」

時臣「開けたらきっと、とても驚くだろう」

 葵にはそんな物に心辺りは無かったが、時臣の言葉に胸を躍らせていた。

 ――――最近の時臣さんはロマンチックだ。

 ――――きっと、自分が思いもよらない、とびっきり素敵なものに違いない。

時臣「開けてみると良い」

 時臣にそう言われて、ときめきながら箱をを開けた。
 中にあったのは――――。



 死の匂いを醸し出す、遠坂時臣の死体。



葵「……え?」

 予想を上回る贈り物に、葵は戸惑わざるをえなかった。

 ――――何故この中に時臣さんがいるんだろう?

 一瞬、そこで思考が停止した。

葵「―――――あ」

 しかし、遠坂葵の脳は正気を取り戻した。

 あまりの異常事態に遠坂時臣に酔っていた意識が、一気に覚醒した。

葵「わ、悪い冗談は、やめてください。どういう事です? これは」

 隣にいる、自分の旦那のハズの男を見る。

 時臣は嗤っていた。言峰と一緒に笑っていた時と同じ笑みで、葵を嗤っているのだ。

時臣「簡単なことだよ。葵」

 怯える葵を笑いながら、優雅に両手を広げ時臣は語る。

時臣「全てが嘘! それだけの事なんだ」

葵「う、そ?」

時臣「そう、嘘だ」

 時臣は軽く頷き、話を続ける。 

時臣「――――君を愛した夫はいなかったんだよ。今日の朝からね」

時臣「君は私の嘘の蜜に浸っていただけに過ぎない」

麗羅「もうバカみたい! 自分の夫でしょ? ――――それ位わかりなよ」

 その人物は既に時臣の姿ではなく、黒い少女へと姿を変えた。
 年齢だけ見れば、凛や桜よりも小さい。

99 ◆K7pqbvuGjs:2014/08/04(月) 01:58:06 ID:tVRtN2Ek

麗羅「あーあ、かわいそうな時臣さん」

麗羅「浮気ですよー見てますか? あ、死んでるから分からないか」

麗羅「アンタみたいな夢見がちな女って扱いやすくて、すっごく助かった。」

麗羅「お蔭で私と綺礼は大爆笑! 四歳にして悦をしった私ってイケナイ子だと思う? 思う?」

 言峰にねーねーと呼びかける黒い少女。
 当の言峰は、左手で顔を抑え、右手で壁を段々と叩いて爆笑している。

麗羅「うーん、でもちょっとチープだったかな。初めてだったから勝手がよくわからないや」

麗羅「やっぱこういうのって時間を掛けないとダメなのかな?」

 うーんと血まみれの腕を組んで考える黒い少女。

葵「それこそ嘘よ! 時臣さんを返しなさいよ!」

 葵は逆上して、黒い少女に襲い掛かる。

麗羅「ていや」

 しかし、葵は突如としてその場に転んでしまう。
 ただ単に黒い少女が足を引っ掻けただなんて、葵には分からなかった。

麗羅「もう返してるでしょ? ほら、あれあれ」

葵「嘘! あんなの作り物よ! 時臣さんを返しなさいよッ!」

 足が動かないのか、腕を使ってミノムシの様に這って黒い少女に近づく。
 それを見て、言峰は一際大きく笑い出す。

麗羅「……うーん、しょうがないな」

 箱に入っている時臣の元に走り出し、黒い少女手際よくソレを取り出す。
 黒い少女は、ソレを葵の手の中に収めた。

葵「う、ぁあ……」

 ソレに触れ、見た葵は理解した。

麗羅「――――ねえ、貴女は夫の綺麗な目を見てもわからないの?」

 ソレは、今さっき黒い少女から取り出された、遠坂時臣の、青く聡明な目玉だった。

葵「うあああああああああああああああああああああああああ!!」

 葵はそれを投げ出し、現実から逃げる為どこかへと這って逃げようとする。

麗羅「ああ、もういいや。お疲れ様」

 黒い少女は葵の首を蹴り飛ばず。

 壁にぶつかった頭は、ボールの様には弾まず、悲しみの表情を浮かべたまま潰れた。

.

100 ◆K7pqbvuGjs:2014/08/04(月) 01:58:51 ID:tVRtN2Ek

綺礼「して麗羅、この後はそうするかね?」

 笑いおさまった綺礼は、黒い少女である麗羅に尋ねる。

麗羅「もう、大人なんだから分かりなさいよ綺礼。オーイ王様。またまた出番だよー」

 麗羅はギルガメッシュに呼びかけ、黄金の王は現れる。

ギルガメッシュ「――――ハッ! 貴様の在り方は気に入らん。異端にも程がある」

ギルガメッシュ「が、これは醜悪なるよい劇であった。褒めて遣わす。今宵ばかりは、飲み明かそう」

 王の財王の中から、極上のワイン瓶を取り出し、麗羅と言峰はワイングラスを渡す。

麗羅「さすが王様。よくわかってる」

 麗羅は笑みを浮かべながら、ギルガメッシュにワインを頂戴とオネダリをした。

ギルガメッシュ「綺礼」

 だがそこまで気を許してはおらず、ギルガメッシュはワインを灌げと目で綺礼に命じる。

麗羅「王様ってば、イケずー」

ギルガメッシュ「フン、弁えろよ山猫風情が。これは貴様を称したワインではない」

ギルガメッシュ「綺礼がまた一つ、己の愉悦を理解できたからこその祝いの品よ」

 綺礼は三人のグラスワインを注ぎ、二人はそれを優美に愛でる。
 注ぎ終わると、それぞれワイングラスを手に持つ。

綺礼「……しかしだ。この小娘共を生かす価値はあるのか?」

 綺礼は飲む前に、時臣の子供二人を一瞥する。
 今までにないほどの奈落の底に叩き落とされた少女達。
 一人は現実を認めず、耳を抑えて顔を伏せる。
 一人は現実を認めて、母の血で何かを描く。

麗羅「魔術とかよくわからないけど、英雄王の魔力になったりしない?」

綺礼「ふむ、可能ではある。が、それだと私の父が邪魔だ」

麗羅「殺せばいいじゃない」

 不思議そうに首を傾げる麗羅に、綺礼は悩みを吐露する。

綺礼「どうやって殺せばあの人が苦痛に顔を歪ませるのかを思案していてな……」

綺礼「自分でも分からぬ私の本性をどうやって教えればいいのやら」

麗羅「それじゃあ仕方がないか」

 綺礼はワインを口に含み、味を堪能する。

綺礼「……ああ、ワインがうまい」

 今までに感じたことが無いほどの至福。

 麻婆豆腐でもここまでの感覚に陥ることは出来ないだろう。

 特に絶望している時臣の娘二人を見ていると、胸に湧き上がるモノが有る。

 これが愉悦。

 そして、この先に自分の求める答えがあるのだ。


 ――――答えは、もうすぐ目の前に。


 綺礼は人の不幸に酔い、溺れていった。

101 ◆K7pqbvuGjs:2014/08/04(月) 02:00:51 ID:tVRtN2Ek


今日はここまで。
本当はこの後サーヴァントとして式さん出す予定でいたけど、勝てるビジョンが見えなかったので取り消し。


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