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【Fate】アースセル「真なる聖杯を手に入れろ」【避難所】

1 ◆XFKJOt0a3Y:2014/03/02(日) 00:17:34 ID:lveRSLdE

                    ―――極めて近く――

                   ―――限りなく遠い世界――

                 ―――誰も彼もが真理を求め――

                 ―――世界に淘汰されていく―――

―――貴方は .                                  ./\貴女は―――
                         ――何を目指す?――    /:::::::::::\
                                     _/:::::::::::::::::::::::\
―――世界は常に修正するのなら               ヽ ̄ !:::::::::::::::::::::::::::::::\
           ┌─――──┐               /|  !:::::::::::::::::::::::::::::::::::::\
          `ヽ r―――´                r┐:::::! .!:: ::::::::::::::::::::::::::::_::::::\世界が願いを拒むなら―――
            | |   _         ___     /:l !:::::::|  レ. ̄\::::::::::::/  \::::::\
            | |__ノ |    _   |: レ―┐ ノ .|___::|  __  :!:::::/     \::::::\
            | .__  .!   / r、ヽ  ' ,  「`ヽ !:`┐ ┌:::!  f::::::::! |/          \:::::\
            | |  `;_|   {  }.| !  l .!:::::::i_!::::::|  !:::::!  |::::::::| |             >: ::::::>
―――我々は    ! !        ゙冫'´,. |   ! !:::::::::::::::::|  |:::::!  !::::::::! |\         /::::::/
            | |       イ / | !   | i\:::::::::::::!  !:::!|  |::::::::! レ|:::\       /:::::/
          ___j 〔___ノi {  じ  !ノi ノ |  \:::::::|  |ノ |  !:::::::|   i:::::::::\_/::::::/
         .└――――‐┘ 'ー'^ー  |__ノ    \::!__.人 _ノ:: ::::|_._/::::::::::::::::::::::::::/
         ―――――――――――――――――――――――:::::::::::::::::::/
               __     .__     _     ._.  \::::::::::::::::::::::::::::::::::::/我々は―――
             /r-、 i    .| |       | |      | |    \::::::::::::::::::::::::/
              | |       | ニニ    | |      | |.     \::::::::::::/
              | |_ノi    | |_     | |___  | |___     \/
              .'ー‐ ′   └―‐    └――. └――
               ―――新たな世界を作りだそう―――

153 ◆XFKJOt0a3Y:2014/09/21(日) 02:09:27 ID:hp3ZTkKA


                                 __   ‐- .、
                          . -=ニ : ̄/:ー_ノ.: 丿
                       ア´.: .: .: :./.: .:アー<:、
                     〃./ .: ′/.: .:./.: .} ヽ:. :.\
                        / .:/ :/ :/.: .:./.: .: .: .∧.:. :. :\
                    / .:/.: :/.://.:.:// .: .: .: イ:. :. :. : i:. \、
                      / .://.:7.:/_':∠., / .: .:/.,_|:i .:l:. :. l:: :i 》  >>150 それ採用
                  / .://!i7:/〃 う >:.:.:/ . _ リ! :|:. :: l:i: |〃
                     / .:/∧|:i|:{i:/ `/.:/  '7ぅミ{|i:i|:: l:: l:i::|′       えらいわアナタ百万年無税
                   / .:/:/:/i|:i|:|i:{/ ´     ` ー〈从l:i:i}:i:|:i:i|
                 / .:/:i:':/:i:i|:.l:|从    ′     ノ /i:i:/:i:i|:i:i|
               .: ./:i:i:/:i:i:i:|:.l:|:i:、  `..ー‐     ∠ノi:/:|:i:i|:i:i:|
              .: .:/:i:i:/:i:i:i:i:i|:.l:|i:| 丶  __ . イi:i:i:i:/i:i:|:i:リ:i:i:|
              .: ..:イ:i:i:/:i:i:i:i:i:i:|:.l:|i:!     |i:i:i:i:i:i:i:/:i:i:i:|イ:i:i:i:i|
          / .:/.:i:∠、-- == |:.l:|^ 、   ,{<:i:i:i:i:{:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:リ
        / .:/γ´,   \ ` 》、{.,  `σ´ }ム    ̄ > 、i:i:/i:.
      / .:/.: :/  , し  }'\/ニ7  `゙  ´ }=ムr:/´    ∨i:i:i.:.
     / .:/.: .:,:7   ′   辷 ゝ=∟,.,.,. ___.,.ノニア辷{   , 、 Vi:i:i.:.
   / .:/′.i:/:ゝ }    ; 辷  `ヽ/ ... 、_ヽ´と  ̄ヽ :   ハi:i:i:.:.
  / .:/ ′.:/:i:i:i〈-ゝ _j '{ 辷  /´..,¨´<    厂ヘ _V , ノ:i:i:i:i:i:.:.
/ .:/  / .:i:/:i:i:i:i:i:辷=ー ミ) 辷_/ ‐-、\ノ__ _ ノг彡- Vィ:i:i:i:i:i:i:i:.:.:.、
. :/  / .::i:/:i:i:i:i:i:i:{ニニ二{  ノ_{   t /<二 、, ニ.._!{┌− V{i:i:i:i:i:i:i:i::.:.:.\
"   / .::i:/:i:i:i:i:i:i:i:i〉ニニニ{_ノ=_{  `´ ... --' ー- 、 ヽi_г  ∨!i:i:i:i:i:i:i:.:.\:.\
   / .::i:/:i:i:i:i:i:i:i:i:i{ニニニノニニ廴_∠ア´O!    鄯`ー‐、   ∠}|i:i:i:i:i:i:i:i:.:.:.:.\:.\
.  / .::i:/.::i:i:i:i:i:i:i:i:i:}ニニ/ニニニニア  } |     {  》≧≦_={7i:i:i:i:i:i:i:i:i::.:.:.:.:.\:.\
  / .::i:/.::i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i{ニニニニニニア    } |     {  〈リニニニリ{:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i::.:.:.:.:.:. \:.\
. / .::i:/.::i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:}ニニニニニノ    .}Ol      {   〉二二二{:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i::.:.:.:.:.:.:.:. \:.\

154 ◆XFKJOt0a3Y:2014/09/21(日) 02:19:38 ID:hp3ZTkKA
                                     `ヽー:、
                            _____     }:i:i:i:\
        ___             >=‐-‐≦: ̄/:i:i:i::ベ',  ノi:i:i:i:i:ノ
         {: : : ≧ : 、  >'":〃:i:i:/:i:/i:i:/:/⌒ー=ァ/:i::>'"
         | : : : : : : : '/イ/:i:i:/:i:i:i:/i:/:/:/i:/i:/}⌒T´i:ミi:x
        !: :____ : .:./彡゙7:i:i:i:i:i:i:i:i:i:/゙//i:/i:/ /:i:i:i:i:i:i:i:/:i:ヽ\    じゃあ、礼装は以下から選択かしらね(全部使い捨て)
.       , : Ⅵili鄽彡イ':i:i:鄱:i:i:i:/:/≠< //、 /:i:i:i:i:i:/:i:i:i:i:|\\
        } : Ⅵi√彡イ!:i:i:鄱:i:i:i:i:/.心..ハ\ヽ゛ノ:i:i:i:i:/___!:i:i:i:i|:i| 丶:':,  1.ハーピィの羽箒 効果:1度完全撤退
       〃: : _ヽ√彡イ|:i:i:鄱:i:i:i:/==- '、  /:i:i:i:/___ |:i:i:i:i|:il   Ⅵ
      厶ィ⌒~鄯r=ミ1:i:i:鄱i:i:i:{       /::>'" {.心.}ヽ:i:i:i:l从  }:i  2.光の封殺剣 効果:3ターン必ず有利+1 不利:-1を付与
          >:ミ Ⅵ v゛l:i:i:i:鄱i:i:i:|     / ´     〉ーく,_ }i:i;iリ:i:Λ jリ
      /: : / }、ゝ|:i:i:i:鄱:i:i:i|          ` ′  /'/i:i:i:i:i:Λ'′.  3.強欲な壺  効果:必ず、エクストラターンを発生させる
     /: : /  /:i:i>|:i:i:i:鄱:i:i:i|       、          Λ/:i:i:i:i:i:i:\
    /: : /   /:i:i:i:i:i:|:i:i:i:i鄱:i:i:i|         一     / ∨:i:i:i:i:i:i:i:i:\
  /__ -==ニニ二三三|:i:i:i:i:鄱:i:i:il、                 イ、  V:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:\
r≦ニ二x≦ァ´-=ニニニ|:i:i:i:i:鄱:i:i:il->         ≪:i:Λ  Ⅵ:i:i:i:i:i:i:i:Λ\: 、
Ⅵニ-=>イ-=ニニニニニ|:i:i:i:i:i鄱:i:i:iⅥΛ:.:>   <i:i:i:i:i:i:i:i:i:Λ  酛\:i:i:i:i:Λ \: 、
. `^^´/-=ニニニニニ从:i:i:i:i:鄯:i:i:i:∨‐',  Ⅵ.....ヽニ\:i:i:i:i:i:i:i:i:\ }:!  Ⅵ:i:i:i:Λ  ヽ:,
  /ア´-=ニニ__ニニニ∧:i:i:i:i:i:i:i:i:i:∨_{_  Ⅵ.......Ⅵニ',≧x:i:i:i:i:i:i:iリ、  Ⅵi:i:i:i:i:!     ′
_/´^-=ニニ/⌒;ニニニΛ:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:∨{〜、`\.....Ⅵ_]ニニ>‐x':i:i:\ Ⅵ:i:i:i:i|
=‐-ニ二ニ=彡≦ニニニニニ}リ\:i:i:i:i:i:i:i:i:i:\㌃〜㍉',..}ニ!{-=ニ二〈i:丶:i:i:゛}:I:i:i:i:i|
ニニニニニニニニニニ-=ノⅣ{\:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:\Λく〜Ⅵ]=\ニニ/:i:i:i:i:i:i:i|:i:i:i:i:リー --- ―‐
]二ニニニニニノ\ニ-=//ⅣΛニ\:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:\-、__j..}]=ニノニニ/:i:丶:i:i:i:i|:i:i:i:/-==ニ二三
]ニニニニニ〃==Λ-=//_/ノΛ-= \:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:\......Ⅵニニ/、:i:i:i:i:i:i:i:i:リ:i:/-=ニ二三三

155普通の名無しさん:2014/09/21(日) 02:38:10 ID:2BUqw.Uo
宝具から名前だけ借りたプチ礼装だと参加者が釣られそうだなー
「これで今日から貴方もセイバー」みたいな

156普通の名無しさん:2014/09/21(日) 02:59:19 ID:IlslrQUU
>>152
如何しよう、触媒の名前からどんな鯖が採用されたか予測しようと思ったけど、
頭抱えるほど全くわからねぇ…。とりあえずキャスターは作家なんじゃなかろうかというのは予測したが

157普通の名無しさん:2014/09/21(日) 03:19:32 ID:Bjqz8t3k
有名な手稿といったら、レオナルド・ダ・ヴィンチとかかな

158普通の名無しさん:2014/09/21(日) 03:25:45 ID:7pXExb3.
木の鳥型はカルナさんのライバルくさいがさて

159普通の名無しさん:2014/09/21(日) 03:45:46 ID:BKPHSyCY
礼装からデュエリストが侵食して来そう

160普通の名無しさん:2014/09/21(日) 05:02:16 ID:kAFFb1kk
やばい、あの触媒明らかに俺の考えたサーヴァントのやつじゃないか!
嬉しすぎて眠れねぇwww

161普通の名無しさん:2014/09/21(日) 06:40:05 ID:cXp.pFqI
お、SS速報のログ読みこんだな。とはいえ、すぐに安定するかは判らないけど。

162普通の名無しさん:2014/09/21(日) 07:08:52 ID:Vowva7oA
ふえぇ……灯心草で軽くググってみたら神武天皇とかナガスネヒコとか出てきたよぉ……

163普通の名無しさん:2014/09/21(日) 07:32:40 ID:8WFjohWo
英雄王が蛇の化石だったからまぁいい
土に入った袋は多分土地がファクターなんだろう
...草?

164普通の名無しさん:2014/09/21(日) 08:05:54 ID:v5mqViZM
羽根箒が優秀過ぎてヤバい 実質令呪2画のアドバンテージは超デカい
弱鯖なら弱鯖で同盟やらなんやらのやりようがあるし礼装のが美味いわこれ

165普通の名無しさん:2014/09/21(日) 08:46:17 ID:SmdAJgf6
土埃のついた簪ってアレしか思い浮かばないがどうだろ

166普通の名無しさん:2014/09/21(日) 10:03:03 ID:IlslrQUU
何で皆この触媒群からサーヴァントが予測できるんだよ…www
そして速報、直ったみたいだよー

VIPService 荒巻
@aramaki_vip2ch

見ろ!メモリが32GBのようだ!

167普通の名無しさん:2014/09/21(日) 10:20:05 ID:Jp6vHE92
袋に入った土・・・ 甲子園球児かな?(すっとぼけ)

168普通の名無しさん:2014/09/21(日) 10:58:57 ID:5sv5q3.o
自分のが採用されてるとすれば触媒は土だけど、多分同じように考えてる人多いだろうなあ
どこの土かによって色々だし

169普通の名無しさん:2014/09/21(日) 11:07:13 ID:vuYjOZoU
土で特定するなんて俺には出来そうにない……
俺が採用されてるなら笛だな
……嬉しすぎるww

170普通の名無しさん:2014/09/21(日) 11:19:53 ID:JeI0H7Pg
勝つ事を優先するなら、言うまでもなく地力が高い鯖を選びたいが
(追加行動=基本的に鯖の強さが行動の強さに反映)
誰が呼ばれるか見当つかないからどうしたものか

171普通の名無しさん:2014/09/21(日) 11:24:35 ID:vuYjOZoU
本来サーヴァントなんて召喚されないとわからないからな
運営はそういったものを感じて欲しいんじゃない?(設定的に)

172普通の名無しさん:2014/09/21(日) 11:43:12 ID:1sHLDZhE
翼の化石……アーケオプテリクスかその関係者?

173普通の名無しさん:2014/09/21(日) 12:15:57 ID:.rLXQGUI
鯖に合う鱒を選んだっぽいし、その辺りの融通はどうなってるんだろ
好きな鯖選びたいのもそうなんだけど、敵主従も相性良いコンビがいいな。燃える

174普通の名無しさん:2014/10/05(日) 15:20:25 ID:CQEzzKc6
今のところ良好な関係の鯖鱒ってどの組が居たかな?
自分的には狂組、槍組、騎組、魔暗同盟組かなーと思うんだけど
特殊組は鱒と鯖の基本方針があまりよろしくなかったけど、ペアとしては悪くなかったんじゃないかなと

175普通の名無しさん:2014/10/15(水) 20:39:29 ID:f1piV7Rs
エクストラ組は描写が少ないから仲良かったか悪かったかは分からんなー
剣組も同様だけど手品見せて喜ばせてたらしいから悪くなさそう

176普通の名無しさん:2014/11/01(土) 20:31:57 ID:Du1Z1vGc
レアルタのラストエピソードを彷彿とさせる

177普通の名無しさん:2014/11/01(土) 20:33:05 ID:Du1Z1vGc
興奮しすぎて書き込む場所間違えた……

178普通の名無しさん:2014/11/08(土) 03:53:12 ID:.mrRhLjc
 「独りで迷子は心細いけど、二人一緒なら冒険だ」

練炭のこのセリフほんと好き
ぼっちでトコトコ歩いてるヒルデちゃんの手を笑顔で握って一緒に歩くんだろ練炭?

179普通の名無しさん:2015/04/05(日) 23:15:43 ID:jPbp1rUg
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今のアースセルの戦況はマスター連合側が不利だった。圧倒的と言ってもいいぐらいには。
マスター達が持つ札は多い。だが勝ったことなど数える限り。その現実が現在の参加者達の生存圏だ。

敵の手札が分からない上に、どれだけ通用するのかも分からない。その癖、相手はこちらの手の内を覗くかのようにカードを伏せて配置する。

霧深い夜の街中を彷徨うような先の見えない戦いは集中力も下がる。ミスが続けばあっという間に影送りだ。
守れた領域は一分程。そのなけなしも気を抜けば悪魔は刈り取りのように支配権を奪うだろう。

あの終わりのなかった本戦と同じように、修羅道の中に落ちるのだ。
それを青年は知っている。あの日、戦う事の意味を知った。
対戦相手の胸を焦がさんばかりの渇望を。情報の海に消えていく最期を。
なにより寄り添う女の憎愛を。紡いだ筈の親愛と睦言を。

全てはこの胸の中に。心臓の、魂の奥に刻まれた。彼らの想いは大切に仕舞われた。

だからこそ認めない。

苦難という鎚を、試練という火を。
焼べられ叩かれ心はいつしか鋼を鎧纏う
なるほど闘争の生存競争は人を剣へと鍛えるだろう。
だがそれは触れ合いの健全ではありえない変貌と呼ばれるものだ。

変わらぬ日常こそ価値がある。その営みでこそ育まれる光がある。
安寧は戦争と比べれば遅い歩みであるかもしれないが決して停滞だと切り捨てていいはずがない
堕落と断ぜられていいはずがないのだ。

血では決して贖えない刹那/輝きを知るが故に、男は決して玉座を許さない。

180普通の名無しさん:2015/04/05(日) 23:17:14 ID:jPbp1rUg
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悲鳴。

怒号。

雄叫び、断末魔。

実体なき虚数の影絵があった。
月より産まれ、地を侵す悪性腫瘍。
黒を纏った少女は影の群勢を引き連れて地獄の釜を開け放す。

防衛機構の反転、領域を自らのメモリに変えるだけの人食鬼。
エネミーなど生温い。侵し、潜み、増殖するのみのウィルス。
無形で蠢く海月のような外見は名状し難い不吉さを伴っている。

喰らいつき、潰し合う怪物に戦術が入り込む余地はない。
ただ正面から殲滅させるのが最適解であるから小癪な策など足枷にしかならない。

逃れる術もない怪物が現れた直後に暗い沼に引き込まれる。
誰かが仲間を救い、直後に消えていった。戦士の命は等しく強度を試される。

応戦するマスター達、 多くを削ったが滅するまでは至らない。 襲撃者の正体もわからず結局は物量に圧殺された。

そうして、終わった戦場で誰かがつぶやいた。守りきった、と。

目の前の景色を見て、青年が。サーヴァントは自分を助けるために火に身を委ねた。
だからこそ自分は生きている。その点では、目的を果たせたとも言える。次に繋ぐ希望を残せたのだと思う。

―――大敗なのは確かだ。が、ただ負けたわけでは決して無い。役目を果たし、目的は果たせたのだと。

「……………………………ふざけるなあ!!」

誰かをが叫んだ。生き残った誰もが同じ気持ちを持っていた。
感情が掻き乱れる。声を上げて泣き喚く。それが何に対しての涙なのか、それすら分からない。

―――――負けた。

負けて、負けて、負けて。最後には、逃げた。あの影から。あの、地獄から。
屈した人物は居る。大勢が心を折られていた。

だけど、それでも変わらず空を見上げる青年が在った。

181普通の名無しさん:2015/04/05(日) 23:17:37 ID:jPbp1rUg
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hollow Earth theory : CCC
王国の反転、仮説世界
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182普通の名無しさん:2015/04/05(日) 23:18:06 ID:jPbp1rUg
アースセルに築かれた空洞は同時に奈落でもある。
あらゆる行いは虚構に留まり真実に足りえない。
目の前に有っても存在として成立しない事実は仮説として集積するだけ偽りの楽土。
魂すらプログラムとして有るだけの伽藍堂。

古来よりシャンバラなどの楽園と関連付けられた地底世界は、同時に冥府や地獄としての側面の方が遥かに強い。
必然、その悪性情報の奔流の防波堤/ファイアーウォールたりえる存在も禁忌中の禁忌に限られる。
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予兆なく始まった戦闘、一方的な侵略が終わった時には夕焼けに染まっていった。
時間の概念などない筈のアリーナの空に、橙に染まった雲が風に運ばれ彼方へと流れていく。
その空を見ながら、次なる決意を抱く姿が。
彼こそは、戦火の中に生き残ったもの。

ああ、だがその外観はなんと痛ましいものか。
火を思わせる赤髪と同色の血の涙跡を残す瞳は男が魔に属することを意味する。
現状に抗う決意が端麗な容姿を歪めるのならばこれ以上の皮肉はないだろう。

�������� Denn der G���tter Ende d���mmert nun auf.��
「 誉を頒ち栄光の舞台に幕を引く時が来た 」

彼に許された事象は無窮の加速と無間の視座。
過ぎ去る愛しい景色が美しいままであって欲しい。
何の変哲もない日常でさえ素晴らしき日々と仰ぎただひたすらに繰り返していたい。
それがこの者の願いである。��

So, werf' ich den Brand��in Walhalls prangende Burg.��
「故に永遠なる神々を刹那の内に焼き尽くすのだ」

しかし、その想いは穢され砕かれた。
魔人の行軍によって人食街に呑まれかけた男は女の献身によって生き残る。

すなわち、力ある者たちの残酷な運命

���������������� ラグナロク
「 終楽章・天魔失墜 」

かつて竜殺しの英雄の魂と呪いを天界に届けた破滅の焔。
愛を求める誰もを愚かな役者と嘲るローゲの対界宝具。
かつての巫女の預言の再現によって彼女を対価に生き残ることを余儀なくされた。

183普通の名無しさん:2015/04/05(日) 23:18:43 ID:jPbp1rUg
ただ感じたのは悲憤。
押し寄せる絶望に対比して膨らむのは、守りきれなかった己の非力さに対してか。
その思いは烈火のような憤怒にも似て、膝をつくことを認めさせない。

男に与えられた自身を改造するスキル。��
AIの原則から外れた例外アバターは嘆きに任せて語源通りの維持の化身に男を拡張させた。
バグの増大による自己崩壊も厭わぬ後付け増築。

事実、記憶の多くはすべからく不鮮明。
記憶と呼べるものはまさに砂のように埋もれてただ流されていくだけのモノ。
しかし、それでも失うことの絶望的なまでの恐怖感と憤怒の感情をけして忘れたことはなかった。

許せない、認めない。��
駆け抜けた過去を無駄になどさせない、誓った未来を無為にしない。
光のような一瞬の真実をうつろだと嗤わせてなどなるものか。

消えゆく女の残照を掻き集め、約束された刹那の先の消滅を永遠に引き伸ばし異界を展開し続ける。
他のことなど見えない、聞こえない。堕天して魍魎と化し、魂が焼き尽くすまで唯一つの想いを持ち続ける。��

絶対停止の命令はフロアに黄昏の帳を落とす。
全体からすれば芥子粒程。だが残っている限り栓となり胎蔵曼荼羅を押し留める。
あらゆる生命が飲み込まれる筈の影の再侵略を自身の階層で留め、拮抗を続けている。

愛する日常を守護る限り男は決してうつろわない。

守るという事だけがそれにとっての全てであり、それを侵そうとする者には全霊を以て攻撃するのみ。

ここは求め続けた天上楽土。ここが永遠に続けばいい。
ここは二度と渡さない。

そう渇望を歌い上げながら、それは鳴動を開始する。
かつての舞台の主役が全身全霊で世界に抗おうとしている。

男のことを世界はツァラトゥストラと語った。

184普通の名無しさん:2015/04/05(日) 23:19:22 ID:jPbp1rUg
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命にて満たす
定命なる人間の命にて
力持つ者らの城を朱に染める

いつかノルンが語った古い詩篇の欠片

だから目を開けたときから、これは夢だと分かった。
だから目を瞑らないように必死で擦った。
そうして、恐る恐る、震える声で。

「レン……」��

その言葉は届き、けれど呼ばれた彼の方が驚いたような顔をして。��

「……ああ、おはようヒルデ」��

彼はいつものような声で、いつもより少し強張った表情で――多分、無理をして、笑みを浮かべた。��
疲弊した躯を薪に火を灯す痛ましさ
嘗ての女の相似であることを男は気付いているのか

何故自分が生きているのかと訊くと男は、ごめん、とだけ呟いた。
それが、今の自分と彼との距離を感じさせて悲しかった。

ぱちぱちと音を立てて燃える残り火が、彼の顔を仄かに染め上げている。
目覚めた場所は何処とも知らぬアリーナの端。

いつものように隣ではなく、正面に座ったのは、どこまでが本当なのか分からなかったからだ。

狂気を脱いだ自分が彼を見間違えるはずがないだろう
嘆きの水底から引き上げた彼の言葉を違えるはずがない
ーーーでは触れることはできるのか。��

安らぎの中で呼んだ名前も、駆け抜けた日々も、繋いだ指の感触も、噛み締めた幸福も確かだったと確信できる。
例えこの身が座に還っても忘れるものか

でもその姿はあまりに儚くて、触れれば崩れてしまいそうで
ただ男の存在を確かめることだけが怖かった。

185普通の名無しさん:2015/04/06(月) 23:36:28 ID:615LA7m.


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Gott ist tot
神無月にて
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186普通の名無しさん:2015/04/06(月) 23:37:03 ID:615LA7m.


■■■が人理の定礎となった運命から数年後。

『城』と呼ばれる砦がある。

欧州奥地に人知れず佇む館だった。
便宜上、城と呼ばれていたが由来も正式名も知られず、名称も外見からつけられたにすぎなかった。
ただ在ることにこそ意味がある。そう言わんばかりの、奇妙な砦だった。

曰く、あの砦は獅子の別荘である
曰く、封印指定をうけた魔術師の領土である
曰く、あの鮮血魔嬢2世が監禁されている
曰く、世界を裏から操る魔術結社のアジトである

魔術を知るものは様々な憶測を立てるがどれも真実に足りえない。

その砦の大広間には、今、ふたつの人影がある。

ひとりは黒い姿をしていた。黒い男は笑みを顔に貼り付けている。
背の高い、仕立ての良いコートに身を包んだ男。彼の瞳には隠しきれぬ喜悦があった。

ひとりは白い姿をしていた。白い男は決意を瞳に宿らせている。
白色の何処か水晶を思わせる兵装。彼の瞳には揺るぎない意思があった。

黒い男に名前の類がない。
祝福の人、と集う人もいるという。
だが、その言葉が皮肉にもならないことを白い男は知っていた。
獣の王の祝福など、末法論者や教会の懐古派のことも笑えない。

187普通の名無しさん:2015/04/06(月) 23:37:48 ID:615LA7m.


『ようこそ。貴様の到来を待ち侘びていた』

微笑を貼り付けたまま、黒い男が言った。
その灼熱の生き様に似合わぬ声で、冷酷な王者にそぐわぬ声で、静かに。穏やかに。

敵意はない。
同胞を迎え入れるかの所作はこの場において限りなく不整合であると同時に適切だ。

『まずは讃えさせてくれ。私に貴様の勇気を』

「勇気か」

白い男が言葉を返す。僅かに震えるその声に込められた感情は、ただひとつ。

「君はそう言って世界を捻じ曲げる。民を嘲笑う残酷な魔王。ようやく君を追い詰めた。ここを失うのは惜しいか」

『私が惜しいと思うのは貴様の存在だよ。錬鉄の騎士より、五大の元素使いより、誰よりも先に貴様はここに辿りついた。
 魔道に挑む尊き者よ、私はその勇気が世界から失われることを心から惜しんでいる』

「抜かせ。君は人間を選り好みしているだけだ。君の語る楽土など目で分からないと安心できない独善の理想でしかない」

魔術王、双角王、蒼き狼、第六天魔王、伍長閣下。
魔王の側面を持つ王たちの示す道は確かに人類の範図を広げただろう。
だが彼らの存在は常に戦と犠牲の業の夢にしかないと白い男は告げる。

『だが抑止はアレを受け入れた。人類のシンカを対価に、訪れる破滅のみを制する契約を』

言葉を切ると同時に黒い男は表情を削ぎ落とした。

人らしさを捨てながら優しさに満ちた少年王の笑みを捨て去って。
人らしい強さの為に人に試練を与える冷酷なる魔王のそれへと。

『気高き人よ。外法にありながら誰よりも人間であった者よ。私と共に人類のシンカを見届けようじゃないか』

「返答はひとつだ」

『ほう』

「ふざけるな」

瞬間、白い男は群体と化していた。
結晶化した飛蝗蟲が命の熱量を全身へ伝え体皮を鎧へと変える。

現れるのは燃え盛る炎に生き物がたじろぐように、広間に差す影が揺れるかのような錯覚。
それを見て黒い男は再び目に喜悦を灯す。

「夢と区別出来ないような世界より俺は子供が笑える明日が欲しい」

誇りを薪に、魂を糧に、自らの存在をより高みへ。
特別なスキルではない、あらゆる人間が持ち得る意志の力。

それでこそと惜しまぬ礼賛と共に黒い男は前に、前に。
白い男の跳躍は人の限界とっくに突破して石床に罅を入れ、虫食いの如く浸食した。

振り抜いた腕が互いに交差して振るわれる。
受け止めるのも同時。激突し合う戟音。

片方は右手に銃を、片方は短剣を。

「だからこそ俺の欲/エゴで魔王、今、ここで君を」

『今、ここで?』

「倒す」

188普通の名無しさん:2015/04/06(月) 23:53:34 ID:615LA7m.


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189普通の名無しさん:2015/04/30(木) 15:44:34 ID:XWIDSXUs
そこは、まるで地を浸蝕する星空の海面 。
青空を模した大地には水が張られ、空には星を模した海峡が続く。
部屋と呼ぶには果てが遠く、周りを檻の如く黒い箱のような機械が埋め尽くしている。

渺茫な空間。事象決定樹、フォールンアンジェリカ。

天上を模倣した海下の世界。
制者の夢/世界を人類史に刻む聖杯そのもの。
40億のサーバーが紡ぐ実体無き量子精神網の仮想空間。

「では、君はこの事態に直接動くつもりはないと?」

その梵に最も近い構造領域にて語る2人の男がいる。
一人はトワイス・ピースマン。
二十世紀末の臨床医学の貢献者にして多くの紛争に従事した医学者。
氷の大地に突き刺す様々な石柱の一角に座っている。

一人はユーサー・ランスロー。
内紛の果てに滅んだ亡国の王にして協会嘱託魔術師。
そして復讐者として多くの戦地で武威を奮い惨めに最期を終える、と観測された騎士の末裔。

共に二つの聖杯戦争の深淵へ辿りついた男たち。
その在り方は無色透明、その中にどこまでも大きい使命感を感じさせる、二人の男性。

190普通の名無しさん:2015/04/30(木) 15:45:22 ID:XWIDSXUs
「場合による、とだけ」

「それは指導者の言う『前向きに検討する』ではないのかい?」

特有の空虚さを放ったまま、トワイスはある種の皮肉を送る。
その口調は、非難というより困ったものだと落胆するように。

「やはり、君は選ばないのだね」

表情に乏しいままにトワイスはメガネを持ち上げる。
氷の大地の真下には、箱型の何かから光が漏れている。ユーサーは、そこからゆっくりと振り返った。

「私としては貴方が彼を拒絶したことが少し意外でした」

「黄金期を迎えないアセンションでは、可能性を潰しかねないというだけだよ。定命の人間が夢を叶えるには世界のリソースは少なすぎる。結果として強者となる者が理想を掴む権利を持つ、それを否定しては人類史は語れない」

すべての人間が望みを叶えることなどできはしない。
様々な要素を満たした人間だけが望みに手を伸ばすことができる。その過程で、争いが生まれることは否定できない現実だ。
流血を忘れて歩み続けるには人間の精神は成長していないと、トワイスは語る。

191普通の名無しさん:2015/04/30(木) 15:46:04 ID:XWIDSXUs
「君がそうであったように成長の為に多くを食い潰した。その喪失を前に、それを無視して完成するなど許されない。君なら、理解できる筈だ」

独善。偏執的。
トワイスの言葉はそんな独り歩きに満ちていながら彼自身がそれを正しいと認めていない。
歪んでいながら真っ直ぐな信念であるのは、それだけ願いに対し真摯であるからだろう。

「その為に聖杯戦争を?」

「地に嵐を。世界を己の色に染める個人を鍛えるのにこれ以上の舞台はないだろう?」

戦争の犠牲者であり、それを憎みながらも過ちだと否定できなかったトワイスが至った答え。
人類が存在する意義であり、本能。

「それは亡霊の言い分ですよトワイス。唯一の結論を得た者が今を生きる者達に干渉すべきでない」

なぜならそれは自由をさ迷う中でこそ選択する生者の価値を貶めることに他ならないから。

真に生きたいと思う時にだけ、人生が生きるに値するのなら、あの戦場こそが至高であり、そんな暴論が通るなら人類は争いを忌諱しない。
それは長い時間をかけて人間が学び、語らい歩んできた証ではないか。

「未来を奪うことなど許されない。機械仕掛けの英雄は最後の最後。終わりきった後でなければならない」

「例えそれが、四万と二千三百を殺し、九千と八百二十四の流浪を無辜の民に課すことになっても?」

「......気に入らないからとやり直して、作らされた笑顔を前に満足するならば、それこそ責任がないでしょう」

192普通の名無しさん:2015/04/30(木) 15:46:46 ID:XWIDSXUs
そんな王はきっと次の危機が瀕した時に国をあっさりと見棄てる。
過去が許せないから未来を用意する。聖杯を以て結末を授け、後悔に喘ぐ必要性を取り除く。
人々に欲などいらない。夢などいらない。
ただ生き、ただ満ち、ただ死ねばいい。それで、すべてが解決する。

「そんなものは思考停止ですらない」

未来は“未だ来ない”
それは現在こそが未来である死者にはない特権だ。

生前の信条に縛られるトワイスは過去を粗末に存在する未来の在り方に怒りを持った。失ったものを嘘にしない為に、どうか歴史をやり直してくれ。

しかし、ユーサーは思う。
人間はそれでも前に進んでいる。
手が届かない程に遠く、息がかかるほどに近い世界。人はそこを目指してどこまでも歩いていける。
現に128人の現在を生きるマスターとそれに応えた過去を刻んだサーヴァントがいたではないか。

そう宣言したユーサーにトワイスは、優しげな――それでもやはり冷めた視線を向ける。

「何であれ、君の決断は戦いに帰結している。中枢に座そうと帰還できるのはただ1人だけ。これは自分以外の世界を消去できなかった君の甘さが招いた結果だ」

「余白があるうちは、絵は完成しない。だからこそ最後の一欠片であり続ける。他ならない貴方の在り方だトワイス」

193普通の名無しさん:2015/04/30(木) 15:47:22 ID:XWIDSXUs
完成してしまった絵は、それで終わり。
どんな生命も、どんな文明も、いつかは終わる。だけども終わる事と続かない事は違う。
終わりを知るということはその物語を閉じ、次へと無慈悲に進むこと。

「我々は、それを踏まえた上で1つの世界に永遠に留まるか、それとも進んでいくのかを選択しなければならない。そうでしょう?」

「それはこの世界を諦めるということかい?」

「いいえ。明日に至る可能性を残し、期待するということです」

今日より明日がいい日でありますように。
そもそも人が生きるということは、その繰り返しなのだから誠意を持って進まなければならない。

未来を残す為の一欠片となってでも、この手で誰かを守れたなら、その時こそ、俺は私を赦せるのだろう。

「その時まで己が栄光の為でなく―――」

許されるなら戦場に漂う悲劇を払う、あの聖剣の輝きのように。
全てを戦場に置いてきた自分を導いてくれたあの騎士王のように。

「………………」

そんなユーサーの言葉を、トワイスは無言で受け止めた。
なぜだか、ほう、と一つだけ息を吐いて。

結果から過程を選び、そのうえで進んだ贖罪の王は堕天の御座より、地上の反転を俯瞰して。
かつての日を偲び、いつかの日をを思い、それを成す時を尊んでユーサー・ランスローはただ見守っていた。

194普通の名無しさん:2015/05/07(木) 22:25:55 ID:CFIRwXk2


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Guardian of Avalon

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195普通の名無しさん:2015/05/15(金) 20:23:48 ID:g0Ae1IeE
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時計が/軋む/音がした。
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キヒヒキヒヒと呻くソレは機械仕掛けの哄笑にも似ていて一度気付いてしまえば微睡みの淵を掻き乱す。
浅い眠りの中で一つの小さな世界を救済した聖者の夢を見ていた。
善でありたい。正でありたい。楽でありたい。清かでありたいと。
我々は天秤の咎なき方であるが故に悪たれ邪たれ苦たれ穢たれと。
二元論の対を自分以外に求めずにいられなかった弱き人々。
例え唾棄され名を奪われ概念に堕とされ人への憎悪が執着せど確かにソレは救いを成したのだ。

故にソレはこの褥に招かれた。
地の底に根付く無窮の闇。鬼子母神の胎盤。
我が身の他に罪はなく、我が身の外に咎はない。
奇しくも遠い日に託された祈りと相似した容を福音に、ソレは再び夢を見る。

196普通の名無しさん:2015/05/15(金) 20:24:39 ID:g0Ae1IeE
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深海に沈んでいる。
繋ぎ合せた意識が主体性を虚ろなままに認識した比喩はある面において的確であり、事実本来ならば2分と持つ前に男は拉げているだろう。
だがそれでも男は暗がりに不遜と考察を重ねている。

不思議な感覚だった。
意識は限りなく鮮明なのに脈絡ある思考が纏まらない。
男自身の精神ではなく、取り巻く世界が混濁し意味を失っているからだろう。
そうでなければ凡夫たる己がコレに浸っていられる道理がない。

『胎児の夢...いやコレは...』

矢継ぎ早に数多の景色が移っては消えていく。目に映る情景は悲劇に満ちていた。
慟哭があった。屈辱があった。無念の怨嗟と喪失が、殺戮が、略奪が、背信があった。
流血の焦土に裏切りと報復を失意と迷走の生命遊戯畦放溝埋樋放頻蒔串刺生剥逆剥屎戸生膚断死膚断白人胡久美近親犯強姦上通下通畜犯罪昆虫災高津波災高津鳥災蓄仆蠱物罪種種ノ罪事此出逆巻一切病苦厄を天狗外道に坐す我が身に返り給えば今日より始て罪と云罪は不在と祓賜ひ清賜事森羅万象諸々憎悪し邪とし醜いと断じて尚認めよう許そう私がこの悪の責を負おうと声高らかに詠いあげるーーー

197普通の名無しさん:2015/05/15(金) 20:25:33 ID:g0Ae1IeE
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全ての罪咎余さず見渡す天望回廊。紡ぐは全人類への呪詛にして祝詞。
こんなものがある場所など、閻魔殿か数多の悲劇の焦点に違いない。

即ち、怨天祝奉“この世最後の悪”

そしてようやく理解する。悪夢の精髄で編み上げられた魔城...ここはかつての男自身の夢/過去そしてその渇望の果てだった。

『全ての悪を負う聖者の杯...例え歪だろうと性善の肯定であることだけは違いない...か』

自らを悪と定めたのは果たして何時だっただろうか。
反定立の軋轢/革新によって時代は航海の血路を転輪する。
時にそうした莫大な犠牲を担う英雄達、その受け皿となる王者が現れる。
秩序とは多数決が善と見做す行動規範。
大衆が正義と奉じるがゆえに強固でありながら移ろいやすく、身を任せる安心感/堕落を代償に個人に対し恐ろしく脆い。

独りだけの英雄では世界を変えられない。救うだけの王者では停滞を止められない。
その事実にこそ男は絶望し破戒者となった。
王や英雄の資質などなくとも意志を持って踏破せよと無理難題を刻んだ。
その夢こそ末法の再現、黙示の受理。
人間に神の如く復楽園を築き上げろなど狂気の理想に他ならない。

198普通の名無しさん:2015/05/15(金) 20:26:20 ID:g0Ae1IeE
今更になって男は自嘲めいた笑みを浮かべる。
秩序の檻、法の守護。どちらも世界に欠かせないものだ。そもそも一人に滅ぼせる世界なら初めから秩序などあるはずがないのだ。
だが男が歩みを止めることはなかった。気づいてしまったなら為さねばならない。
それこそが己の原点、“この世最後の悪”の存在意義。

『ああ、なるほど確かにそんなものは魔王でしかない』

自称したことは数える程しかない筈だが、と零す男こそは魔人の長。
その銘は王器。その試練は血税。拓く荒野は魔道楽土。
遍く戒律をまずは壊そう。己の誇りを世界に示せ。
その願いは確かに多くの勇者を生み、数多の秩序は燃え落ちた。
この世界で庇護者でいる事は難しい。誰もが主人公になる代わりに弱者に甘んじては何も変わらない。
故に今、辿り着いた眼前の扉を前にした時も一切の躊躇はなかった。

199普通の名無しさん:2015/05/15(金) 20:27:30 ID:g0Ae1IeE
『――――』

だが、それを開けたその光景を前にした時、流石の男も瞬間言葉を失った。
窓からは夕日の光が射し込んでいる。黄昏の室内。黄金に照らされた風景。
窓を覗けばきっと疎らになった校庭が目に入るかもしれない。
踏み入れた途端まるで甘い芳香を残す部屋の清潔感に圧せらた錯覚を覚える。
そこは健康管理衛生室、俗にいう保健室だった。
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「――義兄様」

ふと見ると、傍らに少女がいた。
規定の制服を纏っていたが、アシンメトリな前髪に隠した妖しく揺れる瞳が、僅かに染まった頬が、彼女をただの保険委員でないことを語っている。

「あらあら。随分と粗雑な開け方をなさる殿方がいらっしゃると思ったら義兄様だったなんて。こんなのが感動の再開だなんて、わたくし義妹として悲しいですわ、ええ、悲しいですわ」

...訂正。その言動が彼女がアンチ癒し系に属することを雄弁に語っていた。

「どうなさいました?ついに記憶力まで残念になられまして?まあ大変、義兄様から口賢しさを除いたら悪巧みくらいしか能がないではありませんか。貴方の義妹、遠坂胡桃ですわ」

二つに分けて前に垂らした艶やかな長い髪を揺らしながらこちらを小馬鹿に嘲笑う彼女の声。
彼女は男に触れる寸前まで近づくと首元に指を這わせるように腕を回した。
その仕草が脳髄の底を擦るように思考を乱す。混じる花の香りが受け入れよと囁く。
声の主は知らない。だが確かにその声には覚えがあった。

200普通の名無しさん:2015/05/15(金) 20:28:47 ID:g0Ae1IeE
「うふふ。でもよく来てくださいました、義兄様。わたくし、とてもとても嬉しくて、体がぼーっとして...身体が熱くて...」

『インターフェイスを用意するならば彼女の方が最適ではなかったのか?』

話を切り、真実を突きつける。
演出された焦燥感の中で少女の言葉は蜜のようだ。凡庸な己が身にその声は抗いがたい。
手玉に取られてしまえばいい、彼女は自分を害しない。
そう知っているからこそ彼女の前で無様を晒す訳にはいかなかった。

『いや...そうだな...そういうことか。ならば願われた通り斯く在るのが私達だ』

窓を覗くと逢魔ヶ刻の校庭は渦巻く黒い泥に変じている。
深紅の空に黒い雨が降る中で吹き渡る風はまるで怨嗟の様。
それを支える漆黒の太陽に浅く溜息を吐き捨てて男は女に向き直った。

『...あれから十年よく持った方か。だが同じ願いを叶え続けるには足りないすぎてしまったな』

「ええ。お陰で最後に聖杯が触れた願いがこうして体現したようですわ」

女はどこか諦めたかのよう呟くと二歩下がる。
わざわざ領域を確保してまで造った舞台をあっさり看破された事に拗ねているのかもしれない。
もしくは仮に茶番だと分かっていても偽りの逢瀬を続けていたかったのか。

『 ......この世界は楽しいか?』

思考が途切れる。男は不意にそんな事を訊ねた自分に驚いてしまう。
混濁した思考の中でもこの男は人に問わずにいられない性らしい。
それとも、それは在りし日の感傷か。

「ええ、ええ。もちろん。誰も彼もが一生懸命で、退屈で、素敵で、わたくしつい嫉妬してしまいそうですわ」

『ならば私にそう願えばいい』

横目に見た彼女の様子は――静かだった。
男の言葉にも動揺した様子もなく、冷静そのもの。
それはこの願いの問答をすでに終えているものだから。

201普通の名無しさん:2015/05/15(金) 20:29:42 ID:g0Ae1IeE
『未来に興味がない、人間は既に十分幸福だなどもう誰も思わない。人類は再び足を踏み出した。ならばシステムでいる必要はないだろう...君はどうしたい?』

人間が仮に何が正しいかでなく何かを悪だと批判することでしか測れないというならば正義など前提から語るべきでない。
ならば、目前の悪に対し行うべきは勇気をもって糾すこと。
それが何を意味するのか...二人の最悪は理解していた。

「全く貴方はいつも試すようなことばかり言って。わたくしが確かに在た筈の場所は他にありますの」

言葉をあっさり払い除けて、彼女は男に宣言するように語る。
道を示したのは彼、助けてくれたのも彼。だけども選んだのは確かに自分だったから、例え罪深けれど■■■には誇りがあると。

「だから“私”が再び歩き出すなら、それはその場所の筈なんです」

その言葉に男は眩しいものを見るかのように目を細めて、かつての彼女を重ねて間違っていなかったと確かめるように。

『ああ、分かった。 決断する限り私は君の味方だ』

「ええ、わたくしは魔王のエージェントですもの」

頭を侵していた雑音が消える。
同時に、目の前にいたはずの少女の姿も消え去った。
後には1人、保険室に残される。

202普通の名無しさん:2015/05/15(金) 20:30:45 ID:g0Ae1IeE
『...らしくない』

何度目の自嘲か男は思わず顔を手で覆う。
自身が斯く在る以上先の言葉は男の人格が紡いだに違いない。
停滞を打破し試練を以て人類をシンカへ導く。
字面を見れば素晴らしい理想だろう。
だがそんなものは飾りに過ぎない。男の本質はもっと単純で幼稚なものだ。

いつも諦観していた。
非才に見合わぬ特性に焼かれ全てに馴染めず渇いていた。
だからこそ英雄譚に目を輝かせる少年の様にただ、勇気に憧れた。
つまるところ、男はあまりに人間信者すぎたのだ。

『どうやらお互い鏡に向かってのお喋りは苦手らしい』

魔王の殻を被った男は居心地悪そうに音の消えた室内に独り愚痴る。
先程の邂逅はおそらく調査、その為の意思として呼ばれたのだろう。
夢を通しての大聖杯とのリンクの修正。
それが終わったならば次に訪れる時こそ聖杯戦争の終焉に他ならない。

なら君が次に来る時を楽しみにしていよう、と呟いて再び男は無へと還る。
黒い太陽の下で魔王は空亡の姫と共に勇者の来訪を待ち侘びていた。


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